頼むから静かにしてくれ (2) (村上春樹翻訳ライブラリー c- 2)

著者 : レイモンド・カーヴァー 村上春樹

• 中央公論新社 (2006年3月10日発売)

感想・レビュー・書評

[kamisanchinさんの感想 · 2023年3月19日]

わかる話とわからない話があるけれど、わかる話は自分のことだと思わせるような普遍性があって面白いし、主人公が神経質なところとか、ああわかるよと思う。生きていくと少しずつ狂う、人生の歯車って確実にあるよなあ。
1回読んだら終わりという作品ではないと思う。ときどき読み返すとその時の自分の状況によって感想が変わってきそう。

[くさんの感想 · 2023年1月20日]

初期短編集なので、傑作揃いの「大聖堂」と比べるとやや小粒な印象はあったが、どの短編もじわりと効いてくるユーモアの感覚や、人生に突き放されてにっちもさっちもいかない場所に放り込まれた人間のどうしようもなさを描いていてとてもよかった。短編だからこそできるクリーンな切れ味が沁みる。レイモンド・カーヴァーの作品は地味と言ってしまえば地味なんだけれども、奥底からじわりと何かが溢れ出てくるような読み味。「大聖堂」を読んだ時にも思ったが、なかなか読みこなすには力量が必要なのではないか。

[気ままな風さんの感想 · 2022年11月15日]

「鴨」「他人の身になってみること」「自転車と筋肉と煙草」「頼むから静かにしてくれ」が心に残った。村上春樹だからこそカーヴァ―の世界を訳せるんだと思う。すごくよかった。
重圧に耐えられない、登場する男たちの弱さをどこまでも普遍化してゆくという解説がわかりやすかった。全部読み終わる頃にはクセになっている。また読みたい。情けない男シリーズを読んでいきたい。


自転車と筋肉と煙草
「一回でもやれば、それはやったことなんだよ、ロジャー。お前がそんなことをするなんて、びっくりだし、とても残念だ。それからキップ、君にもがっかりしたよ」

[パウレタ｜小説・エッセイの文体・余韻評価軸！さんの感想 · 2022年11月5日]

①文体★★★★☆
②読後余韻★★★★☆

[おはようまだねようさんの感想 · 2021年8月14日]

どのお話も本当ストーリーとしては完成されているはずなのにどこかに欠損を感じる。それは本心がまるまる書かれていないから。
けれどそれがレイモンドカーヴァーのハイセンスなところ。文章化せず、ちょっとした態度で伝える。

「こういうのはどう？」であれば、そこに結末は書かれていないど、諦めとも言える彼の態度から、想定と異なる田舎暮らしへの決心を感じる。
表題作の「頼むから静かにしてくれ」も、過去の奥さんの浮気を許すのだろうと言うことが、最後のシーンから想像つく。

これらの文章化されていない部分は、もしこれらの出来事を友人に話すとしたら、事実として認めたくないような、女々しい部分とも言える。悪く言えば、「自分のことを棚にあげる」ような書かれ方。
けれど、それは書き手であるレイモンドカーヴァーの優しさであろう。主人公らに愛を込めて、リカバリーを。

[junさんの感想 · 2020年12月24日]

むきだしでとても生々しい短編集。

登場するダメな男たちが情けなくも人間らしい。 人生なんてこんなもんだろうって思える。

「嘘つき」、「合図をしたら」、「他人の身になってみること」、表題作が特に好きでした。

[のっぴさんの感想 · 2020年7月1日]

短篇集。2冊にわかれていてこちらはⅡ巻。ⅠとⅡに収録される短篇の解題がまとめて巻末にある。「頼むから静かにしてくれ」はとても好きな短篇だった。にっちもさっちもいかない人間が出てくるけど、その眼差しは優しい。にっちもさっちもいかない状況なのになぜか絶望しない短篇。

[kaさんの感想 · 2017年6月22日]

少々荒削りの印象があったがそこには当時のアメリカの実情が少しの歪みもなく表現されていることを感じた。理想主義に傾かない、カーヴァーだけの文体というものをひしひしと感じる。カーヴァーの作品は西欧の16世紀風に言えば写実的で、ある観点から見ればリアリズムでもある。そういった文章からは切実さを感じるわけだが、正直救いのなさが心を痛めつけ過ぎて読むのが辛かった。もちろん、そこがカーヴァーの良さであるのは周知のことだが。

[sumimamenさんの感想 · 2015年1月25日]

十年ぶりに読み返すと、書いた当時の作者の年齢や登場人物の年齢と近づいたこともあり、やるせなさ高まる。

[gaogaoさんの感想 · 2014年3月16日]

デビュー作の後半（2)。
図書館で借りて1が無かったので先に2から読みました。

特に表題作が良かった。

人生のひとつの場面をこうやって渋く語る感じは、他の小説ではなかなかないなと思う。

次は1を読みます。