愛について語るときに我々の語ること (村上春樹翻訳ライブラリー)

  • 中央公論新社 (2006年7月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (308ページ) / ISBN・EAN: 9784124034998

みんなの感想まとめ

テーマは、短編を通じて人間の哀しみや慰めを描くことにあります。作品は、村上春樹が敬愛するレイモンド・カーヴァーの影響を受けた文体で構成されており、清新さとともに深い余韻を残します。登場人物たちのシーン...

感想・レビュー・書評

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  • タイトルがほんとう独特で印象深い言葉の使い方で、こういう言い回しを読むと自分もやってみたくなります(でも、おそらく下手くそになってしまうんでしょうね)。

    バカなことをしたものだなという人物や暴力的な人物、情けない人物も、話の中央に位置するかたちでよくでてきます。また、運命やタイミングなどが、それこそ人間たちのその状況や状態などの一切に構わず、まるで「まったく空気を読まずに」やってきて、人間たちを振り回したり掻き回したりする理不尽ともいえるさまをよく描いているなあと思えました。そういったものはもうしょうがなくて、そういった瞬間以降、人間たちはそれぞれどう考えたりふるまったりするかというところにカーヴァーらしいドラマがあるのではないでしょうか。

    急に直角にカーブするような力技のユーモアのキレがいいです。また、「これは見事だ」「すごい」とのけぞってしまうような、これまた違う意味でのキレのある締めくくり方にしびれるのですが、そこで作者は読者の予期できない方向に話の流れを一瞬で放ってきているし、放られたあと確認するべく後ろを振り向いてみても一体どこにどう放ったのかすらうまく説明できないような放り投げ方をしてきている。それが、「これはやられた!」っていうキレなのです。そしてこのキレは手品的と形容するよりも、鉄棒競技でのシンプルで効果的な種類の着地技と形容したほうがちょっと言い得るような技術ではないかなと思うところでした。

    雰囲気としてちょっとO・ヘンリを思わせるような小編『何もかもが彼にくっついていた』などは僕の好みの話なのでした。しかしながら、執筆の手本とするなら僕の場合では『菓子袋』です。さらに言うなら、目標のひとつに据えるとすると『足もとに流れる深い川』になります。『菓子袋』は地の文が淡々としていて、物語をまるで語らないままの文章で通しています。物語を語っていくのは息子と父親の会話で、はっきりいえば父親のセリフ部分のみだと言えます。構造として分かりやすくあるのにそれに反して効果的ですし、語られる物語の温度(体温を感じられるか)や湿度(乾湿)が快適で、なおかつ強さがあるかが問われるものではないかと感じました。つまり、温度や湿度や強度に注意を払ってから書こうと思ったものを書き始めたならば、『菓子袋』に負けないくらいのものは書ける可能性はあるのではないか、と。また、『足もとに流れる深い川』は筆がのっているような文章だと感じました。書けるぞという気持ちになっているときに書いてみて、このくらいの文章を書けたならけっこう喜べそうな気がします。そういうひとつの尺度として覚えておきたいです。

    ほんとうに短い作品も多いのですが、すべてにおいて作品が上滑りしていません。それこそ一筋の川にたとえたなら、その深いところでの、表層とはちょっと違ったうねりにも支えられているような感覚があります。というか、川に喩えるのはまずかったですね。海に喩えましょう。海は表層の流れと海底での潮流が違います。目に見えていない海底の潮流もきちんと含まれている短篇たち、といったほうがより的に近いんだと思います。

    ひとつひとつの文章に味がありますし、またマクロに見てみても筋やテーマの流れ方に敬意を持てる作家です。またそのうち、別の作品を読んでみるつもりなのですが、すでに今から楽しみなのでした。

  • 村上春樹が文体における我が師と仰ぐレイモンドカーヴァーの転換期にあたる作品。
    文体それ自体は以前読んだ「アメリカの鱒釣り」でリチャードブローティガンが見せた清新な文体に近いものを感じた。
    しかしながら、意味性を排した文というわけではなく、むしろどんなに短い短編にも哀しげな余韻とともに慰みが込められている。そういう意味もこの作品のイメージカラーは表紙にあしらわれているのと同じ色調のブルーだ。
    村上春樹自身これらの作品からどんなエッセンスを引き出したのか最初は疑問に思ったが細かい設定や人物描写をあえて省くことで逆説的に主題を浮かび上がらせるという手法を学んだのでは無いかと思う。

    • Big Bさん
      こんにちは。なかなか咀嚼が難しいですが間違いなくいい作品です!
      すごく選びがたいですが映画化されたものが良かったこともあり、ドライブマイカー...
      こんにちは。なかなか咀嚼が難しいですが間違いなくいい作品です!
      すごく選びがたいですが映画化されたものが良かったこともあり、ドライブマイカーの入っている女のいない男たちが心に残ってます。
      2021/12/29
    • おはようまだねようさん
      返信ありがとうございます。奇遇なことに、ちょうど今日ドライブマイカー観てきました(上映直前にこの返信受け取ったまであります)! 年の終わりに...
      返信ありがとうございます。奇遇なことに、ちょうど今日ドライブマイカー観てきました(上映直前にこの返信受け取ったまであります)! 年の終わりに本作も観れ、村上春樹を味わい尽くした一年になりました。
      2021/12/29
    • Big Bさん
      まだドライブマイカー上映してるんですね!
      終盤の雪景色と共に音がなくなるシーン。一生忘れません。
      まだドライブマイカー上映してるんですね!
      終盤の雪景色と共に音がなくなるシーン。一生忘れません。
      2021/12/30
  • 印象に残る短編集。全体にゆったりシーンが展開されていくがエンディングが不思議な終わり方になって、余韻がずっと残る。癖になる。時間をおいてまた読みたい。

    登場人物がお酒を飲むシーンがよく出てくるので、わたしも次からはブランデーでも飲みながら読むと没入てきるのかもしれない。

  • 大聖堂より好みだったかも!
    なんていうんだろ、ストレートに崩落していく姿とかが読んでいて入ってきて。
    タイトルは相変わらずカーヴァー節(村上春樹節なのかもしれないけど)

    ファインダー、私にはどんな小さなものも見えた、菓子袋、足もとに流れる川あたりは好きだった
    私にはどんな小さなものも見えたのナメクジ・・・・・

  • 作品に対する村上春樹も説明も興味深かった。「出かけるって女たちに言ってくるよ」のラスト、村上春樹の説明を読んで、理解しました。読みが浅い自分を恥じます……。一番好きなのは「風呂」でした。

  • 衝撃的な出来事も別れも哀しみも怒りも、静かに過ぎ去っていく。でも、何かが決定的に変わってしまっている。
    こんなにサラサラ流れていくけれど、余白も余韻もあるお話たちでした。
    堕ちていく・堕ちている人たちを見ている冷徹なほど淡々とした視点に、距離を感じる村上春樹さんの訳がぴったり。ハルキの訳、しみじみ好きです。

    「出かけるって女たちに言ってくるよ」のラストの一文の意味がわからないなんて、随分純粋なのね…と「解題」読んでて思ってしまった。そんな事ある?「ある日常的力学」もそうだけど、全部書いてしまうと野暮天だ。でも確かにずるずるついてってしまう主人公も怖いな。
    「何もかもが彼にくっついていた」に漂う哀しみが素敵でした。

    カーヴァーは確か昔あまり眠れなかった頃にブログかなんかでやり取りしてた方がよく話題にされてたので、それで知った作家さんです。
    ようやく読めた。他の本も読もう。


    2026/3/15追記
    カーヴァーの、「夢を叶えるコツは、なんとかして生き延びることだよ」という言葉を教えてもらい、よい言葉だなぁと思いました。
    長生きするというより、1日ずつ生きている日を増やしていくことかな、と受け止めました。
    生きているとこういう贈り物があるんだな。

  • 愛について語るときに我々の語ること

    1980年代のアメリカの片田舎で暮らすさまざまな問題を抱える人々。
    ヒッピームーブメントもヤッピーやヤンエグからも無縁で普通に生きたアメリカ人たちの物語。
    短編集の鑑と言えるくらいうまい描写・展開・落ち。何よりも読後の余韻が素晴らしい。
    でも、決してこの物語に出てくる当事者たち(敢えて主人公たちとは言わない)にはなりたくないなあ。
    みんなメロドラマのように不幸でいながら退屈して絶望している。僅かですが、救われる短編はあるけど。
    次は、村上君がカーヴァーの真骨頂と言っている短編集「大聖堂」を読んでみます。

    竹蔵

  • 独特で不思議な雰囲気な短編集
    妻が家出して自暴自棄になる中年
    家族がいて順風満帆な男の内なる異常性
    愛について異なる4人が語りあい救済を見つけるなど
    どれも短編ながら1つの文章で読み取るのが面白い作品が多かった

  • 洋書にしては読みやすい
    「風呂」が1番印象的だった。
    事故にあった息子という非日常的な現実を受け入れられないがために、風呂に入るという日常的な行為をすることでいつもと変わらない日常だと思い込もうとしている両親が人間味を醸していた。

  • こんなふうにたまに丸テーブルを囲んで酒瓶を朝まであおってぐでんぐでんになりながら本音を打ち明けたくなる。誰かに。

  • 真夜中になめくじ退治してる人と話しながら上の方で飛行機飛んでるシーンがよかった

  • 1年ぐらいかけて少しずつ読んだ。
    日常のある部分を切り取ったような、でも物語性も感じられるような作品たち

  • 静かな物語にそれぞれの孤独と愛が語られていた。
    ジム・ジャームッシュのような世界観を感じさせられた。
    「静けさ」の床屋との最後の会話や、「私の父が死んだ三番目の原因」のジミーのように、シリアスな人物とかれが背負う空気が絶妙に冷たい。
    1話目のダンスしないか?が入り口としてリズミカルだが、他の作品は水黙にスニーカーでハマってしまったかのように心が重く濡れ続ける感じ。雨の続く秋の休日に読むにはぴったりであり、晴れた日の南国リゾートで暇つぶしに読むには少し暗すぎた。

    ダンスしないか?
    ファインダー
    ガゼボ
    出かけるって女たちに言ってくるよ
    私の父が死んだ三番目の原因
    静けさ
    何もかもが彼にくっついていた
    愛について語るときに我々の語ること
    以上が気に入ったかな。

  • アメリカの郊外で起こるストーリー、というか何も起こらないといったほうが正しいかも。静かで、モダンな雰囲気、そうまるで村上春樹の作品のような。と思っていたら、日本語訳はなんと彼。

    What We Talk About When We Talk About Love
    Raymond Carver, 1981
    英語で読了

  • 解読があるので、自分の感想と擦り合わせが出来るから助かる。
    ただただ淡々とした日常風景を切り取ったかのよう。

  • 短編の集積。村上春樹は訳でもドットをつけないと気が済まないらしい。

    https://als-j.org/contents_880.m.html
    この記事を読んでブロティーガン理解のためにカーヴァーをと思ったが、思ったより技巧的で頭を使って読まなければならなかったし、あまりやさしさは感じなかった。殆どが浮気の話で埋め尽くされていたし。
    タイトルにもなっている作品は乞食の後輩が記事タイトルでオマージュしてたな。
    石のところとか無駄に暗示させてたけどあのラストに感慨はないので、何なら直接的にして別な感じで含ませた方がいいと個人的には思う。
    読んで損はないが好きになれないタイプの作家だ。

  • あるものは屈曲した愛を、ある者は失われ損なわれた愛を、あるものは常識で測ることのできぬ愛を、そしてあるものは憎しみに転じてしまった愛を語る。

  • 83/100点

    カーヴァー短編の中では抑えめ

  • 2023.8.6中日新聞で、大久保佳代子さんが紹介していた本。

  • 詩を読みたい気分だから、カーヴァーを読んだ。ただしそれはいささか極端な選択だったのかもしれない。大好きだと思った話には読み終わった後、題名のところに二重丸を付けたのに、なぜ好きだったのか思い出せない。丸を付けといてよかった。少なくともこれを読んだ時には感動していたのだと確かめられるから。

    ミスター・コーヒーとミスター修理屋

    ◎ガゼボ

    ◎私にはどんな小さいものも見えた

    足もとに流れる深い川

    ◎私の父が死んだ三番めの原因

    何もかもが彼にくっついていた

    愛について語るときに我々の語ること

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