必要になったら電話をかけて (村上春樹翻訳ライブラリー)

  • 中央公論新社
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感想 : 19
  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784124035117

感想・レビュー・書評

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  • 『大聖堂』を読んだことがあるので、2冊目のカーヴァー。生前刊行されなかった小説を集めた短篇集ということで、やはりどこか『大聖堂』と毛色は違う。それをAクラスの作品ではないとか、そういう捉え方をするのはどこか違うと思う。翻訳者の村上春樹はそういう表現をしているのだけれど、この違いはいわばよくヤスリをかけられてニスの塗られた木肌と、無垢材との違いのようなものだ。

    作者に何度も手を入れられて磨き上げられた作品はもちろん面白く読めるものだけれど、推敲の手が回らなかった小説も、読者は充分愉しむことができる。完成度という評価軸は必ずしも、作品を読む歓びを左右するものではない。書き上げられたばかりのような、木の匂い立つような小説を私は愉しむことができた。

  • 図書館員が薦めるうちに帰るまで中味がわからない大人向けの本1冊目。この空気感。他人との関係に対する絶妙な距離感。情景が淡々と描かれているわりには人との関係があいまいな感じ。村上春樹訳だから余計に強調されているのかもしれないが。。短編だから読みやすかった。「夢」がよかった。序文と後書きが長かったのが残念。

  • 【薪割り】一月、アル中療養施設に入っていたあいだに、妻に逃げられたマイヤーズ。バスで1時間のところの貸し間へと足を運び。そこの夫婦と交わらないように暮らしていたが。ある日家主に届けられた木材の山を目にして、報酬も求めず、薪にしたくなり。その作業を無心な進めるうちに、何かがマイヤーズの中で回復していき、そこを出る決意を告げるまでの短編。ままならぬ人生に、心を閉ざしがちの日々に、何か光明が射したような流れが印象に。【どれを見たい?】 引っ越したあと、別々に暮らし、その後はおそらく別れると思われる夫婦が、引っ越す前夜に、大家夫妻に招かれ、夕食をともにする短編。家族のような交流を持ち、いなくなることを寂しがってくれる夫妻。そして、見きれないほどのスライドを持って来て、どれが、みたい?と レバノンとアラスカのスライドを見つつ。別れを予期する二人はその夜も淡々と。大家の発電機が焼けた中、私たちもう行ってもいいわよね、という一言が乾いた後味 【夢】毎晩夢を見る妻と夢を見ない夫。話す妻と書き留めておいたらと夫。隣家とのささやかな交流。突然の家事と隣家の子供達の死。何が欲しいのよ、という隣家の夫人の叫び。最後は彼女を食事に招待するところまで。悲しみをつたるために、といいあぐねつつ、招待することに決めた夫妻。彼女の悲しみが癒えたのかは、日々の暮らしに紛れてわからない。何が欲しいの、は理不尽に彼女の子供を連れ去った運命に向けての叫びだったのか。【破壊者たち】新誘同士、二組のカップル。片方の妻は略奪愛で別の男の妻へ。新たな夫を含む四人がすごすひと時。これ以上深く付き合おうとは思わない、と描かれ。あるとき近所で火事が起こり、皆でその見物に出かけたが...。「ロバートの顔は紅潮し、表情は険しかった。まるでここで起こったことのすべては-放火、投獄、裏切り、密通、秩序の破壊-ニックのせいであり、ニックが責めを負うべきものだと言わんばかりの顔つきだった。ニックはジョアンの身体に手をまわしたまま、ロバートをにらみ返した。」/「ビルのことを考えていたの」「ねえ、ときどき彼のことを考えてるのよ。結局のところ、私が初めて愛したのは、あの人だから」【解題】(村上春樹) より 「我々の人生にとって大事なのは、自分にとってまっとうと思える決意をどこまでも維持することであり、自分にとってまっとうに見える姿勢をどこまでも維持することである。」/いずれの話も、誰か彼かが、以前酒に溺れ、今は酒を断っている様が語られ。これは著者の体験に根ざしたモチーフのようで。何年かぶりの再読、味わい深い思いは変わらずであった。

  • ほとんどの物語に、飲酒に関する問題を抱えた人が出てきた。飲酒運転しまくっていたり、アルコール依存の更生施設に入っていたり。なんなんだこれは、と思っていたが、レイモンド・カーヴァーさん自身がかつてアルコールに依存し、施設に入って更生したという経歴の持ち主だったらしい。(年表で知った)

    『必要になったら電話をかけて』のオチが一番醜くて、人間味があって最高だった。

    壊れてしまった夫婦仲を修復するために息子を預け、二人だけで生活してみるが、妻の心は戻らない。でも、二人で過ごす最後の夜に、庭先に迷い込んだ馬たちを眺めて、彼らはこのことを忘れない、と胸に誓う。結局、二人の心の距離は戻らなかったがお互いの幸せを願うことができた。感動のフィナーレの予感。そして、妻が出て行ったあと、すぐにその家へ浮気相手を呼ぶ夫。

    流行語的に言うのなら、彼は間違いなく”ゲス”。
    けれど、こういうゲスでクズみたいな行動が人間の本質だという気もする。不倫は文化なのか。

  • 「必要になったら電話をかけて」、私もラストがあまり好きではない。電話かけちゃうの?!と思ってしまった。

  • 2014.3.7

  • テス・ギャラガーという方が序文を書いています。
    あとがきで知りましたが、この方はレイモンド・カーヴァーの夫人ということで、本書が未発表作品集だということを語ってます。

    初レイモンド・カーヴァーでしたが、すごく良かった。
    最初に未発表作を読むのもなんだか申し訳ない気持ちです。
    本当に素晴らしい小説!

    この小説は短編集で、人生の岐路に立った主人公たちが次のステージへ向かおうとしている話ばかりです。
    どこにでもあるような人生の場面を、静かに、息づかいがわかるくらいにリアルに表現してます。
    最初の「薪割り」がすごく好きです。
    こんななんでもないような話が「で?」って感じで終わるので、それもまたすごくいい。

    初期の作品から全て是非読んでみたい作家です。
    楽しみがまた増えました。

  • 村上春樹が翻訳者でなければ。おそらくカーヴァーを読むことはなかっただろう。そうすると、20世紀アメリカ文学についての、ある一側面を知ることもできなかったことになる。本書に収録された5つの短篇は、いずれもカーヴァーの没後に発見された遺稿を編集したものであるが、そうは思えないくらいに短篇集としての統一感を持っている。いずれの物語にも、大きな事件が起こる訳でもなく、もはや若くないカップルのいわば淡々とした日常が描かれるのだが、そこには生きていることの確かさのようなものが強いリアリティを持って迫ってくるのである。

  • ついつい、で?と突っ込みたくなる短編でしたが、そんな続きも、あれこれ考える楽しみもあるのかな…。

  • どこで間違ったのか帯を読まずに買ったせいで、
    はじめて読むカーヴァーに未発表作品集を選んでしまった。

    それでも十二分に個性的な作品集になっていて、
    読み終えても失敗したとは思わなかった。

    というのも、本人が世に出さなかった作品ということもあり、
    確かに散漫な印象を受けるところもあるのだが、
    それがかえってサバサバした作風に拍車をかけるようなところがあって、
    もっとこの人の作品を読みたいという気持ちになったから。

    村上春樹とはだいぶ作風が違うから、
    彼のファンにばかり読まれるのはちょっと損してるかも。

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