必要になったら電話をかけて (村上春樹翻訳ライブラリー c- 11)

  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (202ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784124035117

感想・レビュー・書評

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  • 『大聖堂』を読んだことがあるので、2冊目のカーヴァー。生前刊行されなかった小説を集めた短篇集ということで、やはりどこか『大聖堂』と毛色は違う。それをAクラスの作品ではないとか、そういう捉え方をするのはどこか違うと思う。翻訳者の村上春樹はそういう表現をしているのだけれど、この違いはいわばよくヤスリをかけられてニスの塗られた木肌と、無垢材との違いのようなものだ。

    作者に何度も手を入れられて磨き上げられた作品はもちろん面白く読めるものだけれど、推敲の手が回らなかった小説も、読者は充分愉しむことができる。完成度という評価軸は必ずしも、作品を読む歓びを左右するものではない。書き上げられたばかりのような、木の匂い立つような小説を私は愉しむことができた。

  • 著者の死後に発掘された未発表短編集。翻訳は村上春樹さん。

    村上春樹さん曰く、著者のAクラスの作品とは異なり、荒削りで推敲の余地があるらしいが、著者の作品を初めて読む自分にとっては、読みやすく心地よい短編集だった。

    再生の物語に心が温まる、村上春樹さんが好きなら必ず気に入るであろう短編集。

  • ラストの一行の、ふと醒める感じ。
    自由律詩のような。

    我々は時代の波に振り回されずに一歩一歩自分の道を進んでいかなければならない。
    例え取るに足らないようなものに見えるささやかなのであっても、それはしっかりと誠実に守られねばならない。
    村上春樹

  • ①文体★★★★☆
    ②読後余韻★★★★☆

  • カーヴァー没後に発表された未発表短編集。著者が没にしたものなのでそこまで洗練はされていない。著者の死後に未発表の作品を読めるのは読者としては喜ばしいが、作者は草葉の陰でなにをおもうのかといつもおもってしまう。

  • カーヴァーの没後十余年を経て発掘された未発表短篇集。
    この人の作品はハラハラドキドキという描写はなく日常でありそうな出来事を淡々とした文章で描かれているのだがとても惹かれる。
    村上春樹さんのシンプルで飾らない翻訳も好き。

  • 具体的な描写無しで暖かさや寂しさを表現できる稀有な作家
    薪割りが一番良かった

  • 図書館員が薦めるうちに帰るまで中味がわからない大人向けの本1冊目。この空気感。他人との関係に対する絶妙な距離感。情景が淡々と描かれているわりには人との関係があいまいな感じ。村上春樹訳だから余計に強調されているのかもしれないが。。短編だから読みやすかった。「夢」がよかった。序文と後書きが長かったのが残念。

  • 【薪割り】一月、アル中療養施設に入っていたあいだに、妻に逃げられたマイヤーズ。バスで1時間のところの貸し間へと足を運び。そこの夫婦と交わらないように暮らしていたが。ある日家主に届けられた木材の山を目にして、報酬も求めず、薪にしたくなり。その作業を無心な進めるうちに、何かがマイヤーズの中で回復していき、そこを出る決意を告げるまでの短編。ままならぬ人生に、心を閉ざしがちの日々に、何か光明が射したような流れが印象に。【どれを見たい?】 引っ越したあと、別々に暮らし、その後はおそらく別れると思われる夫婦が、引っ越す前夜に、大家夫妻に招かれ、夕食をともにする短編。家族のような交流を持ち、いなくなることを寂しがってくれる夫妻。そして、見きれないほどのスライドを持って来て、どれが、みたい?と レバノンとアラスカのスライドを見つつ。別れを予期する二人はその夜も淡々と。大家の発電機が焼けた中、私たちもう行ってもいいわよね、という一言が乾いた後味 【夢】毎晩夢を見る妻と夢を見ない夫。話す妻と書き留めておいたらと夫。隣家とのささやかな交流。突然の家事と隣家の子供達の死。何が欲しいのよ、という隣家の夫人の叫び。最後は彼女を食事に招待するところまで。悲しみをつたるために、といいあぐねつつ、招待することに決めた夫妻。彼女の悲しみが癒えたのかは、日々の暮らしに紛れてわからない。何が欲しいの、は理不尽に彼女の子供を連れ去った運命に向けての叫びだったのか。【破壊者たち】新誘同士、二組のカップル。片方の妻は略奪愛で別の男の妻へ。新たな夫を含む四人がすごすひと時。これ以上深く付き合おうとは思わない、と描かれ。あるとき近所で火事が起こり、皆でその見物に出かけたが...。「ロバートの顔は紅潮し、表情は険しかった。まるでここで起こったことのすべては-放火、投獄、裏切り、密通、秩序の破壊-ニックのせいであり、ニックが責めを負うべきものだと言わんばかりの顔つきだった。ニックはジョアンの身体に手をまわしたまま、ロバートをにらみ返した。」/「ビルのことを考えていたの」「ねえ、ときどき彼のことを考えてるのよ。結局のところ、私が初めて愛したのは、あの人だから」【解題】(村上春樹) より 「我々の人生にとって大事なのは、自分にとってまっとうと思える決意をどこまでも維持することであり、自分にとってまっとうに見える姿勢をどこまでも維持することである。」/いずれの話も、誰か彼かが、以前酒に溺れ、今は酒を断っている様が語られ。これは著者の体験に根ざしたモチーフのようで。何年かぶりの再読、味わい深い思いは変わらずであった。

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