冬の夢 (村上春樹翻訳ライブラリー)

  • 中央公論新社 (2011年11月10日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (360ページ) / ISBN・EAN: 9784124035339

作品紹介・あらすじ

天衣無縫に、鮮やかに、痛切に――80年の時を越えて読む者の心を打つ、20代の天才作家の瑞々しい筆致。来るべき長篇小説の原型を成す「プレ・ギャツビー」期の名作五篇をセレクト。

みんなの感想まとめ

テーマは失われた夢や思い出の追憶で、心の奥深くに潜む感情を描き出しています。作品には五つの短編が収められ、特に表題作と「メイデー」は読み応えがあり、満足感をもたらします。各短編には村上春樹からの注釈が...

感想・レビュー・書評

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  • 「その火花の片鱗は、その少女の中に既にほの見えていた。彼女が微笑むと、唇の両端がぐいとねじれたように下がるところや――」
    ラストの言葉
    「ずっと昔、僕の中には何かがあった。でもそれは消えてしまった。それはどこかに消え去った。どこかに失われてしまった。僕には泣くこともできない。思いを寄せることもできない。それはもう二度と再び戻っては来ないものなのだ」

    図書館で借りたが、他の作品を読む必要があり、「冬の夢」だけ読んだ。

  • 五つの短編が収録されておりそれぞれに村上春樹さんからの注釈が付けられている作品。表題作とメイデーはとても読み応えがあり満足感も高かったが、残りの罪の赦し、リッツくらい大きなダイアモンド、ベイビーパーティーは時代背景や私の理解力のなさもあるだろうが十分面白かったもののいまいち要領を得なかった。
    ただ、風景描写や心情描写はとても美しく訳者との相性も合っていたと感じた。描写の美しさのためだけにでも読む価値はあると思う。どことなく作者はメイデーのようなマルチプロットが得意なようにも思えた。また仕方ないことなのかもしれないが個人的には訳者が「華麗なるギャツビー」との比較やそれに向けてということをしつこいくらい書いていることに少し嫌気が差した。

  • フィッツジェラルドのそれぞれの短編に、村上春樹のコメントがあり、ノートが導入となって読み始めることができる。
    ガイド付きで鑑賞できるのがいい。

  • 表題作「冬の夢」を盛りに盛ったのが「グレートギャツビー」という感じだった。ラストは「冬の夢」の方がええな。帯の文句「若さの発熱と人生の哀切」が胸に迫った。

  • およそ100年前の小説。美しい少女が女性になり、翻弄される主人公の物語。といってしまえばそれまでなのだけれど、自然現象や生き物の営みの中で現れる、ほんの一瞬のきらめきを捉えて、それが失われたことを知る心の動きが描かれていた。男女のことに限らず、人生のほんの短い間でしか出会えない理解できない出来事がある。それに遭遇できただけでも、この主人公は幸運だったのかも。

  • 面白い。表題作『冬の夢』は、まんま『グレートギャツビー』の原型のような作品。
    『リッツくらい大きなダイヤモンド』は、意外と大衆的な、ロマンチックなお話。
    全体的に『ギャツビー』の要素が散りばめられたような作品が多く、これを読んだ後また『ギャツビー』を読みたくなった。

  • 共感できない

  • 4度目の再読。
    ギャツビー以前の最も勢いのある時期の短編。例に漏れず遊ぶ金ほしさに書かれた小説ばかりとのことだが、時にその才能が作品を台無しにすることを許さなかったようで、作家としての矜持を発揮し売れ線を無視したことで引き取り手が無くなり商業的には失敗したと言わざるを得ない作品ばかりが、結果的にマスターピースとして後世に残っているというのがフィッツジェラルドという作家の面白いところ。たしかにどれも軽い気持ちで読み飛ばせる作品ではない笑。というか読んだら何日かは引きずってしまうような、クリティカルなボディーブローのような重たさのある作品ばかり。

    冬の夢:問答無用のマスターピース。研ぎ澄まされた聡明さと華美さ、才能と若さの発露、それがいつのまにか失われゆく無常で残酷な人生の流れなど、フィッツジェラルドという作家の良さを凝縮させた短編。ゼルダと自分の物語を、やがて来るであろう無惨な未来まで含めてここまで綺麗にパッキングしてしまうその魔術にはもはや畏怖の念しか生まれ得ない。

    メイデー:フィッツジェラルドの群像劇はこれしか読んだことが無い。技巧的には優れているのかもしれないが、フィッツジェラルドの(自分の人生をフィクショナイズして描くという)物語の構造上、5人以上の人物を頻回に登場させたり特定の思想を必要以上にからめたりする必要性は全く感じないので、個人的にはあまり好きではない。上手いとは思うが彼の魂を感じない。

    罪の赦し:これも個人的にはフィッツジェラルドらしさをあまり感じず、読みづらく感じる。フィッツジェラルドに私が求めるものはここには無い。

    リッツくらい大きなダイアモンド:フィッツジェラルドがファンタジー?と初めて読んだ時は面食らったが、そういえば映画化されたベンジャミンバトンもフィッツジェラルドなんですよね。春樹翻訳短編の中では案外4,5番目に好きかもしれない。筆が、文章が踊っている。終わりのセリフがとても好き。

    ベイビーパーティー:前に読んだのが結婚後すぐで子どもも生まれる前だったのであまり印象に残る作品では無かったが、子どもが4歳2歳になり結婚8年目にもなるととんでもない良さを感じる作品になる。父親ってのはこういう類のタフネスを強いられることばっかりだよなと。相手の夫と殴り合った後に握手してハグする所とか、最後の毅然と妻に謝るよう言い伏せるところ(相手も夫がちゃんと付いてきているのがまた良い)とか、とにかく痺れるぜ。めちゃくちゃハードボイルド、たまらん。

  • 名作「グレートギャツビー」執筆前の短編小説集。翻訳の村上春樹の解説も併記され、小説家、翻訳家の視点もあり、より深く楽しめる。全体的にダークな雰囲気と閉塞感が漂う。

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/719178

  • グレート・ギャツビーしか読んだことなくて、それも10年以上前。
    この短編集を読んで、もう一度読んでみようと思う。他の作品も。
    「メイデー」を読んだのが偶然にもメイデーだったことに驚きつつ。

  • カーヴァーよろしく、作品毎に村上春樹氏のコメントがついており、合わせて楽しめました。

    収録作品では『冬の夢』『メイデー』が良かったです。『メイデー』にかんしてはシェルショックの観点から描かれた論文などもあり、人によって解釈が変わる作品だと感じました。面白かった。

    感想メモ。表題作『冬の夢』だけ

    デクスターはジュディー・ジョーンズにたいして深い愛情を抱き続ける。すべてを投げ打ってでも尽くし続ける。
    でもかれが愛したのは、人間としてそこにいる彼女ではない。

    彼の、完全な理想の具現として。青春そのものとしての彼女を愛した。だからこそデヴリンのことばで、あんなにも深い喪失感を得た。それは、一過性の失恋の痛みとは比べ物にならないだろう

    これは男と女の恋物語ではなくて、男の夢とその挫折の物語なのかもしれない。限られたページ数で描ききるフィッツジェラルドの筆力に舌を巻く

  • 自分にもジュディー・ジョーンズのような人がいた。若さゆえの一時的な感情の彩りだったのか、今はわからないし、きっと確かめたくはない。僕は失ったことで得た彩りを"更に"は失いたくないから…(でも死ぬ前に一度会いたい、いややっぱりやめとく、、 でも、、)

  • 『グレート・ギャツビー』の前あたりにかかれたものをあつめた短編集。フィッツジェラルドの全盛期にあたる作品集とのこと。表題作「冬の夢」は主人公とヒロインにギャツビーとデイジーが重なる。

  • 冬の夢 ★4.5
    メイデー ★4
    罪の赦し ★2.5
    リッツくらい大きなダイアモンド ★4
    ベイビー・パーティー ★3

  • 表題作を含む5つの中・短篇を収録。いずれもフィッツジェラルドの初期、概ね『ギャツビー』に先行するもの。この時期、フィッツジェラルドは既に流行作家となっていたが、ここに収められたのは商業誌に「売られた」ものではなく、彼が作家として書きたかったものが集められている。ことに「冬の夢」と「メーデー」には、作家の生い立ちの影が濃い。ミネソタからニューヨークへ、そしてまた東部の(「メーデー」ではイエール大学)エリート子弟たちの生活と、そこに至ろうとする夢。あるいは、そうした世界から排除された者たちを鮮やかに描く。
     私は表題作よりも、当時の社会と痛切にリンクする「メーデー」こそが、この時期のフィッツジェラルドを代表する作品だと思う。

  • カポーティとフィッツジェラルドが、僕の中では、最も美しい文章を書く作家である。そしてフィッツジェラルドは、このうえなく乾いた、美しい文章を書く。

  • もしかして、ここに集められている短編のどれかは高校時代に図書館で借りて読んだかなと思って見てみましたが、どれも読んだことのないものでした。さて、ちょうど最初の短編「冬の夢」を読み終えました。これは本当に1920年代に書かれた小説なのかというのが、第一の印象です。高校時代のとき、フィッツジェラルドの小説について、具体的な印象は残ってなかったのですが、大人になって読んだから受け止め方が違ったのかも知れませんね。あらいる描写表現が自分のツボのようで、どうやらこのような文章が今は大好きなのだということがわかりました。古い作品にこんなに心が揺さぶられるとは。今度はぜひ、原文で読んでみたいと思いました。

  • フィッツジェラルドの世界観が色濃く表されている。

  • 描写の美しさに呻る。村上春樹は、関西出身で東京で苦労したのではないかと、また経済的に人生において腹を括って何かを成し遂げたことがある人(店の借金などで?)ではないのかと思った。フィッツジェラルドへの惚れ込みぶりを見ていて。

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著者プロフィール

1949(昭和24)年、京都市生まれ。早稲田大学第一文学部卒業。’79年『風の歌を聴け』(群像新人文学賞)でデビュー。主な長編小説に、『羊をめぐる冒険』(野間文芸新人賞)、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』(谷崎潤一郎賞)、『ノルウェイの森』、『ねじまき鳥クロニクル』(読売文学賞)、『スプートニクの恋人』、『海辺のカフカ』、『アフターダーク』、『1Q84』(毎日出版文化賞)などがある。2006(平成18)年フランツ・カフカ賞、オコナー国際短編賞、’09年エルサレム賞、’11年カタルーニャ国際賞、’16年アンデルセン文学賞、’22(令和4)年チノ・デルドゥカ世界賞を受賞

「2025年 『街とその不確かな壁(上) (新潮文庫)』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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