日本の近代 6 戦争・占領・講和―1941~1955

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  • 中央公論新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784124901061

作品紹介・あらすじ

リーダー不在が「敗戦」をもたらす。再生・新日本を領導したものは。一人一巻の書き下ろしシリーズ。

感想・レビュー・書評

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  • 太平洋戦争と戦後を考察したこの本は、近衛、東条、廣田ら個人の一瞬ごとの判断の誤りが時代を変え、社会の運命を決めた怖さを感じると共に、戦後の日本が東久邇宮、幣原、吉田茂、片山哲、和田博雄らの優れた指導者を持った幸せを感じさせます。それは彼らがそのように判断しなかったら、歴史は別の方向に進んだと考えさせるだけ、楽しい本でもあります。東条がどちらかというと戦争反対だったのに巻き込まれていったような記載は「A級戦犯」となった今では考えられない話ですが、不作為の罪の重みを改めて痛感します。

  •  本書の「戦争・占領・講和」という1941~1955の時代は、比較的知っている時代であると思っていたが、これを読むとまだまだ歴史の深掘りがされていなかったことを思い知らされた。
     「日米開戦」における「グルー文書」を引用した考察や、多くの膨大な知識を駆使した本書の記述は、新しい認識とともに、この時代の全体像をくっきりと浮かび上がらせている。
     米国の「戦後計画委員会」による「対日占領政策」の策定には驚く。日本が先行きの見通しもなく戦争への坂を転げ落ちるように進んでいた時に、米国ではすでに「戦後」を見据えて政策立案を行っていたとは。
     そして、米国の「知日派」や「政治家」「軍人」それぞれの動きを克明に追いかけた考察も実に興味深い。
     「敗戦の方法」を読むと、戦争とは始めるよりも終わる方が難しいことがよくわかる。
    また、敗戦から戦後政治の枠組みができる本書の経過を読むと、これは「偶然」であったのかそれとも「必然」であったのかという感慨さえいだく。
     戦後に生まれた我々にとっては、これらの歴史は当たり前に進行したように思っていたが、本書を読むと決してそうではなく、多くの指導者のそれぞれの方針がぶつかりながら現実が紡ぎ出されてきたことがよくわかった。
     しかし、「歴史家は神の眼をもつ」とは言われるが、著者の視点は、徹底して「上から目線」である。また主張や考察の典拠や論拠がほとんど示されていないことにもちょっと違和感を持つ。
     なかには、異論もあると思われる考察も、自信たっぷりに断言していることにはちょっと?という思いを感じうるが、この時代の全体像をこれだけのボリュームで読んだ満足感の方が勝る良書であると思う。

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著者プロフィール

熊本県立大学理事長・ひょうご震災記念21世紀研究機構理事長・神戸大学名誉教授

「2014年 『戦後日本外交史〔第3版補訂版〕』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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