- Amazon.co.jp ・本 (326ページ)
- / ISBN・EAN: 9784124902105
感想・レビュー・書評
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石井進
中世のかたち 日本の中世 全12巻の1巻。信頼しうる学説や豊富な文献を基に中世史をまとめた本。中世史のキーワードと細かい知識が満載。1巻でお腹いっぱい。
動乱、飢饉、階級、差別など 中世は 不幸で 不条理。こういう現実だからこそ、生き抜くために「存在=無」とする 中世の思想が生まれたのか? とも思う。生きるのを諦めるより、「生=死」というゼロ思想の方が 環境に関係なく 生き抜く人間のエネルギーを感じる。
中世を特性から定義することにより、通常の中世(鎌倉時代以降)より 早く 平安時代後期以降とし、さらに 中世における日本国土を辺境から定義。なるほどなアプローチ。
中世の特性を 政治権力の分散、軍事台頭、人間の鎖(上下の人間関係)、荘園、仏教としている。人間が鎖で繋がれたような社会という例えは 大袈裟にも思ったが、読むにつれて 納得。
中でも エゾの中世史は とても面白い。前後も含めて もう少し知りたい。蠣崎氏や「新羅之記録」の本を探そうと思う。
気になった中世のキーワード
*温暖化、東北が農業フロンティア
*安藤氏、十三湊
*エゾ島、蠣崎氏、「新羅之記録」
*飢饉、忍性の極楽寺、日蓮「立正安国論」
*連雀(レンジャク)商人
エゾの歴史書「新羅之記録」
*武田信広が安藤氏とともにエゾ島に渡り、上ノ国の館を預かり、アイヌ側のコシャマインを討ち取る
*上之国の蠣崎季繁&武田信広と下之国の安藤家政とが盟約
*蠣崎氏が 安藤氏を滅亡させ、松前藩主の地位を奪った
気候変動
*中世は温暖化の絶頂期=温暖化が生んだエネルギー
*温暖化→東北は農業フロンティア→東の源頼朝が有利
*西の大飢饉→西の平氏滅亡
日蓮「立正安国論」
*死せる者は大半をこえ、これを悲しまぬ者あえて一人もいない
*天変地異、飢饉を憂いた日蓮
*日蓮の出自=せんだら(最下層)
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鬼界ヶ島や十三湊などの地理的な境界や、網野的な非人考察など、多岐に渡る参考文献の量を見てもわかる通りに、かなり詳細な論考がいくつかされている
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秀吉は連雀商人か?
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私の大好きだった歴史家の1人だった石井進氏。読みやすい・わかりやすい文章で中世の魅力について語られていました。発掘関係の著作などは土の香りがしそうな、当時の建造物がリアルに想像できました。