八百万の神に問う1 - 春 (C・NovelsFantasia た 3-10)

著者 :
  • 中央公論新社
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本棚登録 : 257
感想 : 26
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  • Amazon.co.jp ・本 (253ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784125012452

作品紹介・あらすじ

楽土の門をくぐらんとする者達よ、心して聞け。傷つき疲れた「人」のために、楽土はある。この地に争いはない。が-楽土の門は天路ノ国の北の果てに開かれた。かの地で人は、"音導師"に助けられ争うことなく穏やかに暮らす。楽土へ至る神の約定はただひとつ-多崎礼の新世界、ここに開幕。

感想・レビュー・書評

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  • 多崎さんの新シリーズ!!
    イラストレーターは「夢の上」と同じ天野英さんで、嬉しい限り。

    「煌夜祭」から追っかけ続けてきましたが、
    本当にこの作家さんの描く世界観は素晴らしいな、と思います。
    誰もが抱える切なさ、痛みを、人間の温かさでふんわり包んでくれる。
    自然と涙が出てきてしまうような優しさに溢れています。

    今回は和風ファンタジーという事で、今までとは毛色が違います。
    傷つき疲れた人のために存在する土地<楽土>。
    そこでは悲しみも苦しみもなく、皆が穏やかにクラス事ができる。
    たまに起こる諍いも<音導師>が<音討議>によって収める。

    …という、なかなか特殊な設定なのですが、そこはさすが多崎さん。
    読み進めていくうちにスッとこの世界に馴染む事ができます。

    表紙のイーオンは、最初少年かと思いましたが、
    どうやら相当酒癖&口の悪い三十路の女性らしい(笑)
    でも大きな猫さんとのコンビが微笑ましく、彼女が主人公で良かった!

    このシリーズは、「春」「夏」「秋」「冬」と季節に合わせて出るようで。
    いつもは全巻揃えて一気読みが基本ですが、
    今回は過ぎ行く季節を感じながら、リアルタイムに読んでいきます♪

  • 楽土という世界と音導師という職業、面白いと思います。1巻を読むと、この物語世界がどのようなところか、音導師とはどのような仕事なのかを知ることができます。
    伝説の音導師と言われるイーオン、そして彼女が連れ歩くことになった少年シンはどんな過去を持ち、物語がどう進んでいくのか楽しみです。

  • すっっっごい良かった。
    多崎さんの大ファンになってしまうわ。Cノベルスだけで納まってるのはもったいないと思う。もっとたくさんの方に読まれて欲しい。
    ここは争いも病も飢餓もない楽土と呼ばれる土地。去る者は追わず、来る者も拒まない。では諍いが起きた時どうするか。音導師と呼ばれる人々が持論を展開し合い、聴衆を納得させた方の意見を取り入れるわけです。
    ナナノ里と呼ばれる地に伝説の音導師のイーオン(ただし酒は飲むは性格は悪いとみんなに責められるわ)が降りてきてから物語は進みます。この音導師は音叉の杖を全員持っていて、それを鳴らすことが出来なければ音導師にはなれない、とか、その場に居合わせた人々の八つの魂(詳細は省きますごめんなさい)を共鳴させた時、音叉が力強く鳴り響く、とか、音討議と呼ばれる音導師たちの戦いの最後に、音叉の杖をどん、と大地に突いて、「以上、八百万の神に問う」と尋ねるシーンとか、もーう好みすぎてふおおおおおってなってました。
    今回の主人公はサヨという音導師の女性なのですが、彼女が過去と対峙し悪夢に自分の手で引導を渡す姿が良い。
    面白かったです。続き読みたいです。
    イーオンは男性かと思ったら女性だったけど、煌夜祭にもそんなキャラがいたなあと。
    おっきな猫、いいなあ。

  • ハードな世界に息づくソフトな人たち。
    本当にこの人は世界を作るのがうまい。
    主人公は何やら傷を抱えた三十路女性だが(表紙から少年だと思ってた)、物語の中心は春にふさわしい青春真っ只中の少女の恋と家族との葛藤という筋書き。
    追想は半ば辺りからあのお相手かと読めてくるが、今巻ではその老人たちのエピソードは世界観を匂わせて終わっている。巻を重ねればリンクするところも出てくるのだろう。
    物語の進め方は作者が得意の伏線を至るところに張り巡らしざっざっと回収していく展開。
    終盤、前半で微妙に気になる言い回しをしていた彼女の真意と事実にやられたと思うはず。

    人間は見たいものしか見ない――
    今回もまた胸に突き刺さる言葉が提示される。
    過去の傷により長年直視を避けてきた真実。それとどう向き合い乗り越えるのか、三十路前後の主人公の慧眼が盲目のヴェールを優しくめくりあげる。

    余談だが、ロクノ里以降存在している八百万に宿りし可見も、実はどこにでも宿っているがクラス人の性質上見えなくなっているだけなのではないだろうか。
    そうでなければゴノ里以下でも神問いができるわけはない。

    春は心のあたたかくなる物語だったが、先には夏、秋、冬が待っている。
    春の終章のラスト一行は夏の遠雷を思わせる。
    いや、その前から一神教との楽園の争いという遠雷がちらちらと聞こえている。
    思えば主人公が里に下る物語の冒頭から影の色濃い雷が遠くで不気味な音を響かせていたのだった。

    あとがきには季節に応じて成長、実り、別れをなぞるとあり今回も楽には読ませてくれなそうだが、さて三十路間近のあの達観した主人公にはどうも成長という言葉はしっくり来ない。実りもしかり、別れもしかり。
    もしかしたらそれは無名の少年に仮託されているのではないかと思うのだがどうだろう。

    まずは八月刊行予定の夏を待ちたい。

    余談だが、半年と待たずに多崎作品の続きを読めるなんて今年は僥光な年だなと思った次第である。

  • 多崎礼さんの新シリーズ、新しい世界。独自の世界はまだわからないことが多いけれど、もっと知りたいと思えるだけの魅力に溢れている。今回はまだ導入で世界の紹介的な感じにでしたが、次の巻以降、少年がどうなっていくのか…。全4巻とのことで今回は春の巻。次の夏の巻
    は八月発売だから、季節と合わせて出してくるかな? だとしたら今年はたくさん多崎さんのご本を読めそう。楽しみ。とりあえず水の可見をなで回して大きい猫さんを大いにもふりたい(笑

  • どちらかというと、漢字いっぱいのファンタジーより、西洋などが舞台になっている、横文字多めのファンタジーの方が馴染みがありました。そのため、最後まで読めるだろうか?という不安もありましたが、杞憂に終わりました。すっかり物語の世界にのめり込んで、先が気になって、気付けばあっという間に読了。舞台を見ているかのようなセリフの言い回し。スッと染み込み流れるような描写に、あぁ、多崎先生の作品だな、やっぱり、この綺麗な文章が好きだなと再確認させられる。 はやく続きを読まなければ。

  • 軽めの文章のおかげでサクサク読める。異世界を舞台としているのに「メタボ」や「黒歴史」といった現実世界の単語が頻出する点は没入感が削がれて馴染めなかった(コミカルにしたかった気持ちは分かるが、著者ならもっと他の方法で実現できたはず)。でも心温まる大団円のラストが好き。

  • 昔の日本ぽい雰囲気の国にある「楽土」には、争いはない。もめごとを解決するために「音導師」が存在した。口が達者なのがとりえの幻の「シン音導師」が復活!?
    お待ちかね、多崎礼さんの異世界ファンタジーです!流行とは全く関係のないこの雰囲気がいかにも多崎さんだー。今回もはらはらどきどきというより、にまにまと一冊読めました。どこかくすっと笑わせてくれるところも味のひとつです。

  • 暴力ではなく言葉での解決、今の社会にも大切だと思われること。楽土が舞台だからか、優しい人が多くてとても安心感がある。でも登場人物だいたいに影があって過去があって、それが透けて見えるので、魅力的なキャラクターばかりだと感じた。心のキズが、話が進むごとに見えてきてツライけれど、その時々で支えてくれる人がいて、また顔を上げるサヨは、支えたくなるヒロインだなあと思った。これが、恋!

  • 音叉を持つ、特別な職業である音導師たる女。
    知己にお願いされ、専属になるためにその村に降りた。

    そもそも最初からいる専属に、息子が連れてきた言葉。
    抜けてるのかとも思ったのですが、完全に
    そのままのような気がします。
    と思っていたら…でしたが。

    勝負をする前にやってきた、他からの依頼に
    連れられた先の依頼。
    主人公は彼女ですが、話の軸というか
    握っているのは、降りてきた女。
    話というか、事件はとんとんと終わりますが
    その間に葛藤する気持ちや感情。
    背を向けて、なかった事にするのも手ですが
    解決するのが、一番すっきりします。

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著者プロフィール

2006年、『煌夜祭』で第2回C・NOVELS大賞を受賞しデビュー。著書に「〈本の姫〉は謳う」、「血と霧」シリーズなど。

「2023年 『レーエンデ国物語』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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