戦後日本の歴史認識

制作 : 五百旗頭 薫  小宮 一夫  細谷 雄一  宮城 大蔵  東京財団政治外交検証研究会 
  • 東京大学出版会
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レビュー : 3
  • Amazon.co.jp ・本 (288ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130230728

作品紹介・あらすじ

靖国問題,従軍慰安婦問題,歴史認識問題…….戦後日本がいまなお抱えている問題について,第一線の研究者が戦後の歩みからあらためて紐解き,戦争の記憶,とりわけアジア諸国との和解への新たな可能性を探る.

感想・レビュー・書評

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  • 「はじめに」にこう書かれている。
    2015年は第二次世界大戦終結70周年であり、多くの諸国であの戦争、さらにはその後の70年の歩みを回顧する記念行事が行われた。
    その中でも、8月14日の安倍晋三首相の「70年談話」いわゆる「安倍談話」や、8月15日の韓国の朴槿恵大統領による日本からの独立を祝う光復節演説、さらには9月3日の習近平主席の「抗日戦争勝利70周年軍事パレード」は、報道などでもその内容が大きく注目された。
    現在の東アジアでは、歴史認識そのものが国際政治の歴史を大きく変えてしまうことがある。
    すなわち、歴史が歴史認識を創るだけではなく、歴史認識が歴史を創ってしまうこともあるのだ。
    それゆえに、東アジアの国際政治の将来を展望して、望ましい外交政策を構想するうえで、歴史認識問題は避けて通ることができないきわめて重要な外交のイシューとなっている。
    という基本的な考え方のもと
    以下の内容でまとめられた本である。
    序章 歴史認識の歴史へ
    1 戦後歴史認識の変遷を読む
    第1章 吉田茂の時代――「歴史認識問題」の自主的総括
                をめぐって
    第2章 佐藤栄作の時代――高度経済成長期の歴史認識
                問題
    第3章 中曽根康弘の時代――外交問題化する歴史認識
    第4章 沖縄と本土の溝――政治空間の変遷と歴史認識
    Ⅱ 歴史認識と和解をめざして
    第5章 歴史和解は可能か――日中・日韓・日米の視座
                  から
    第6章 東アジアの歴史認識と国際関係――安倍談話を
                       振り返って
    第7章 歴史認識問題を考える書籍紹介
    第8章 戦後70年を考えるうえで有益な文献を探る
    となっています。

    最後にのところで重要なことが書かれていました。
    和解は容易ではない。
    とはいえ放置すれば危機を招来する。
    その間にあり得るのは「不断の危機管理」という観点ではないか。
    恒久的な和解は容易ではないにしても、当座の危機管理の必要性を否定する論者はいないだろう。
    忍耐強くそれを続けることが、結果として歴史認識問題をめぐる「不断の危機管理」体制を構築することに繋がる。
    とありました。
    如何に困難な状況が生じようと、政治家、識者、国民が共通のコンセンサスを得られるよう、とにもかくにも不断の努力を継続するしかないようであります。

  •  一般向けの概説書と銘打つソフトカバーだが、豪華執筆陣の冷静で幅広い記述や座談会は、じんわり染み込んでくるほどに良質だった。
     戦後日本政治の中で、吉田茂の時代は歴史認識の自主的総括を回避することで米国の同盟国として国際社会に復帰。佐藤栄作の時代は日韓・日中国交正常化により法的解決に目途が立つ一方で次の時代の国際問題化の準備となる。80年代の鈴木・中曽根の時代は、中韓の側が日本との友好関係を欲していたとともに日本の政治家・外交官も自覚して抑制的であったという。裏を返せば、その後、近年の「歴史認識問題」の噴出はこのような80年代の要素が失われたためということだろうか。
     後半の座談会では、歴史認識問題については、「和解は不可能」としつつも、二倍謙虚になり相手に対しては二倍寛容になること、受け入れる側の姿勢も重要であること、妥協や調整の余地の必要性、といったことが指摘されている。また中国については決めつけをせず観察すること、韓国については歴史認識以外で交流が進展しつつある領域へも目を向ける必要性、がそれぞれの専門家から語られている。現実的には容易ではないのだろうが。また、この座談会は2015年に開催されたものだが、現在、既に米韓では当時とは大いに異なる性格の指導者が誕生している。歴史認識問題のどこまでが指導者の性格により左右され、どこまでが左右されない構造的なものなのだろうか。

  • 319.1||Io

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