新しい世界史 (2) (新しい世界史 2)

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  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130250665

作品紹介・あらすじ

スルタンガリエフは、きらめくようなひと筋の光芒を歴史の舞台に残しながら、またたくまにロシアの暗がりの中に姿を消した星である。ロシア革命の閃光と共に登場したスルタンガリエフは、ムスリム民族共産主義の父であった。このタタール人革命家は、ボリシェヴィキの思想にはらまれる「普遍主義」や「オリエンタリズム」の限界をいちはやく見ぬいていた。かれは、ムスリム自身の手で旧ロシア帝国のムスリム民族地域の脱植民地化をはかろうとした知られざる預言者でもある。スルタンガリエフは、生き急ぎ非業の死にたおれた須臾の人生において、社会主義とナショナリズム、それにイスラムの調和と総合を目指した。この「第三世界社会主義」の忘れられた先駆者は、ベン・ベッラ、フランツ・ファノン、アリー・シャリーアティーなどにも深い感銘を与え、激動する中東イスラム世界の現代史にも大きな衝撃を静かに及ぼしている。

感想・レビュー・書評

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  • メモ/ 1917年ボリシェビキ入党後、スターリンに抜擢されてムスリム・コミュニストとしては最も高い中央の役職を歴任したが、ロシア共産党の意向にことごとく沿わずに、スターリンの民族共産主義への批判がきっかけとなって除名後姿を消す。階級問題よりもロシア人によるタタール人の抑圧という民族問題の方を強調し、都市プロレタリアート中心の革命に反発をしてロシア人に搾取されすぎたタタール人全体がそもそも「プロレタリア民族」であると位置づけ、ムスリムの自治国家の必要性を訴えて解放を訴えるが、ロシア共産党からはブルジョワ・ナショナリズムと糾弾される。またシャリーアを尊重しながら共産化するという特殊な条件下で「植民地インターナショナル」を構想、ムスリム共産党を結成し西欧の労働者階級が中心だったコミンテルンの国際革命戦略に公然と異を唱えカザンをイスラム世界における国際革命の拠点にしようとする。弁証法的唯物論がイスラム文明の所産であるとすら主張する。私的所有が主な生産関係になっていず、対立し合う諸階級に分解していないムスリム社会でも社会主義への移行を考えた。

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著者プロフィール

一九四七(昭和二二)年札幌に生まれる。
現在、東京大学大学院総合文化研究科教授、学術博士。中東調査会理事。
最新著書として、『岩波イスラーム辞典』(共編著、岩波書店)、『歴史の作法』(文春新書)、『帝国と国民』(岩波書店)、『歴史のなかのイラク戦争』(NTT出版)など。

「2004年 『イラク戦争データブック』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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