社会科学の理論とモデル 5 コミュニケーション

著者 :
  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (244ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130341356

作品紹介・あらすじ

情報や感情・経験はいかにして共有されるのか!社会的コミュニケーションの全体像をダイナミックに描き出しインターネットの普及がもたらすインパクトについて検証する。

感想・レビュー・書評

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  • コミュニケーションに関する幅広な知見が記載されている良書でした。コミュニケーション初学者にも十分理解できる内容だと思いますし、1対1のコミュニケーションだけでなくマスコミの役割やインターネット時代のコミュニケーションのあり方についても記載されていて大変満足しました。まずもっとも目を開かせられたのが、コミュニケーションの目的の1つは共有であること。言い方を変えると、「社会的リアリティ」を確認するためのプロセスであるということです。会社で同僚と何気ない会話をするのは、それを通じて、どんなトピックが重要課題として認識されるべきなのか、職場の人間はどういう立場をとっているのかを感じ取ることを通じて、自分の立ち位置を確認したり、意見を修正したりするわけです。また本書では、コミュニケーションには「説得達成の相」「リアリティ形成の相」「情報環境形成の相」の3つがあることが示され、全編通じてこの視点で解説がなされています。個人的にはインターネット時代の分析をさらに進めたアップデート版が読みたいと思いました。ソーシャルメディア、あるいは今年急進展したテレワークでコミュニケーションがどう変わっているのか、のあたりについても興味が湧いてきました。

  • 2940円購入2010-07-08

  • ちょっと分類法が昔っぽかった。

  • 実証性を厳格なまでに追求した本。これまでの研究の予断を許さず、実証を試み、試みられないものは差し置くという姿勢を貫いている。その意味で、本書は入門でもなく、応用でもない。基礎研究である。

    私はメディア・コミュニケーションに関心を持っているが、本書では、テレビ、新聞が主で、インターネットについては危険性、可能性、予測困難性を指摘するに留まっている。

    気になった記述。
    ・コミュニケーションの3相(説得達成の相(一方向)、リアリティ形成の相(共有)、情報環境形成の相(制御されないまま伝わってしまう部分))
    ・人は常に一貫した意見や態度の体系を持っているわけではなく、ある許容範囲の中で「ゆれ」をもっている。
    ・聞き手の多い場でのコミュニケーションは聴衆に関するメンタルモデルが必要とされる。(例えば、電子掲示板のROMの存在を意識)
    ・日本の有権者は重要他者がほぼ同じ政党で占められている。
    ・フェスティンガー:人が意見の一致を追求し、集団の中に等質性を創り出すのは、何が現実かの社会的リアリティを維持するためである。
    ・主観的な他者の行動のリアリティが客観的な根拠に根ざしているときに、人びとの行動は大きく他者に規定される。
    ・メタ認知はコミュニケーションする相手との勢力関係と微妙に関連している。
    ・マスメディアによる社会的情報環境は、ドラマやスポーツのように受け手の生活の文脈から離れたコンサマトリー性の要素の強い素材である。
    ・(テレビと新聞では)メディアが互いのシェアをつぶし合っているというよりも、相互補強的な共存をしている。※ネットでも見られる。
    ◎一覧性、保存性、詳報性を有し、受け手が情報処理のスピードをコントロールでき、ポータブルでどこでも読めるのが、紙媒体の利点なのである。それは、テレビの速報性、印象性、インフォーマル性などと相補うことは容易に見て取れよう。※ネットではフォーマル、インフォーマル両方がある。
    ・生放送は臨場感を増幅する。
    ・吉見:必要なのはそうした「能動性」を個人の「自由」な意思に帰属させるのではなく、それを可能にしている権力の布置と矛盾やせめぎあいを解明いていくことなのである。
    ・テレビニュースの中で、失業問題のテーマ的フレーミングを行い、問題を経済統計として提示すると、人はそれが重大な社会問題だと認識はできるが、その心理的なインパクトは弱い。ところが、失業ルポだと記憶に残る。が、社会問題としての認識は弱くなる。※トレードオフ。
    ・経済状況を個人の経済問題としてより、テーマ的に社会問題としてフレーミングする方が在職者への責任帰属は重くなる。
    ・政治的争点について、マスメディアは紛争や葛藤、それらへの対応策といった側面を中心に報道するが、これを見る側では、そこから「人間的関心」を引き出し、そして評価的で倫理的な判断を交えて語る。
    ・有権者の語りは評価的というだけなく、感情価も高い。
    ・メディアによる注意の引きつけを経て、メディアの内容について他者と語ること自体がメディアの成功を支えている。
    ・ハックフェルト:家族に比して弱い絆である非家族のネットワーク成員からの情報が、個人の選択を変容するきっかけとなる。
    ・社会全体の情報を伝えることが、社会を画一化するわけではない。
    ・インターネットにより情報収集の効率はあがる。
    ・少数派でも生き残り可能なのがインターネットのシステム的特性。

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著者プロフィール

池田 謙一(いけだ けんいち) 同志社大学社会学部・大学院教授。博士(社会心理学)。東京大学文学部卒業,東京大学大学院人文社会系研究科教授などを経て,2013年より現職。編著書に『統治の不安と日本政治のリアリティ』(木鐸社,2019),『「日本人」は変化しているのか』(編著,勁草書房,日本社会心理学会第20 回出版賞),The International Encyclopedia of Political Communication, 3 Volumes(2015, Wiley-Blackwell),Social Network & Japanese Democracy(Routledge, 2011)他,著書・論文多数。

「2022年 『日本人の考え方 世界の人の考え方Ⅱ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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