自治制度 (行政学叢書)

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  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (271ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130342339

感想・レビュー・書評

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  • 本書は、2000年の平成の分権改革以降の国と地方行政の関係や地方公共団体の制度等について、行政学の観点から検討した本です。分権改革は、地方自治制度を所管する官庁が旗振り役となることから、当該官庁の存在意義を残すために、永遠に未完のものとなるという指摘に驚きました。なるほど、さもありなんと思われる。市町村合併が進展したから分権改革が進んだのではなく、分権改革の連鎖で市町村合併が進んだという点が、興味深い。平成の分権改革やその後の市町村合併の特質など、地方公共団体の職員にはぜひ勧めたい書です。

  • 分権改革はなぜ未完のままなのか?という観点から執筆された本。筆者曰く、分権改革は飽くまでも、「漸進的成長」でしかない。なぜならその理由は、その改革の性質によるとされている。このような観点から、分権改革や地方自治に関する制度について、いくつかの論考が掲載されている。
    各アクターが相互に納得する形で改革が行われると、当然その改革は「漸進的」なものでしかない。しかし、その中で改革が必要な分野で改革を完遂する必要がある場合、あるいは「漸進的」なレベルでとどまっていてはならない場合は、いかにしてそれを進める理由付けをするかが問題である気がした。

  • 政令指定制度に関して分析した本を読みました。政令指定都市制度は、挫折、妥協の産物と評価されています。東京、横浜、大阪、神戸、京都、名古屋の6大都市は、県と同等の権限を持つ特別市を目指しました。しかし、政府や都道府県の抵抗により、府県から独立した特別市ではなく、府県の枠組みに組み込まれながらも、府県なみの権限を持つ政令指定都市への移行に留まりました。この本では、政令指定都市は妥協ではないと指摘しています。府県から独立した特別市になることは、大きな権限を得ると同時に、下部の行政組織である区との権限闘争の開始を意味します。つまり、府県のような上部機関を置くことは、区との権限闘争を押しとどめることが出来ます。と同時に、府県なみの権限を持つのですから、6大都市側には、妥協したわけではなく、自らの利益を最大化したのです。あまりにも生々しくて、旧自治省関係者のバックグラウンドブリーフィングが感じられる文章でした。

  • 自治制度について読み解くカギは、総合性と普遍主義にあると筆者は整理します。総合性とは、自治体の行う政策・施策・事務事業等が広く「総合」的に運営されていることです。また普遍主義は、自治体の行う政策・施策・事務事業や組織体系等に特例を持ち込まず、基本的には同一の体制を求める意味です。

    この総合性と普遍主義は関連しているのですが、自治制度官庁はこれを担保するために、様々な改革等を提起します。制度官庁は改革をし続けなければ存在意義を証明できず、自壊する恐れがあります。

    これを防ぐために、制度の根本的な思想である総合性と普遍主義を壊さない程度に、部分的に特例主義を導入したり(市町村合併等による市の「格」上げなど)、改革を行うことが求められます。

    その点で、総合性と普遍主義を乗り越えた改革を自治制度官庁では生み出せず、他のパワーが必要になると考えられます。それは特区制度における経済産業省の役割などにみられるものです。

    その他、自治制度に関する基本的な視座を提供してくれる非常によい本であり、すべての自治制度に関心のある方にお読みいただきたい本です。

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著者プロフィール

金井 利之(東京大学大学院法学政治学研究科教授)

「2018年 『地方自治論 変化と未来』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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