番号を創る権力: 日本における番号制度の成立と展開

著者 :
  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130362719

作品紹介・あらすじ

日本において国民番号制度が挫折を繰り返してきたのはなぜなのか.福祉国家の発展に伴う行政機能の拡大が生じた時期に着目して国際比較のなかでその理由を明らかにするとともに,マイナンバー制度が日本の福祉国家のゆくえに与える影響について考察する.

感想・レビュー・書評

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  • 論文ベースで書かれていることもあり、認知負荷は重め。

    だが、番号制度という観点から、フラットに歴史的経緯も含め解説がされており、今のマイナンバー制度を考えるに非常に有意義だった。
    番号という観点から言えば、福祉がそれぞれの分野において発達した状態からの共通番号付番がうまく行った例が乏しかった点は直感と異なる新たな視点だった。

    また、個人的に一番学びだったのは、日本の行政学が「国民番号制度」の失敗に対して、国家と国民の間の情報のやり取りに着目し、プライバシーを重視する市民の抵抗にクローズアップするのみで、失敗の詳細に立ち入った検討をしていないという指摘だった。
    よく語られる一般論としては耳馴染みがある論だが、実態と乖離していると筆者は指摘し、その政治的経済的な団体対立を根本原因を指摘する。
    歴史的観点から丁寧に経緯を追っていくとともに、現行制度に対して早急な評価を下さない本書の流れと結論には、うまく言語化できないがとても良いと感じた。

  • 第4章 韓国における国民番号制度の成立

  • 東2法経図・6F開架:317.6A/N11b//K

  • 【書誌情報】
    著者:羅 芝賢[Na Jihyun]
    ISBN:978-4-13-036271-9
    発売日:2019年03月14日
    判型:A5
    ページ数:240頁
    ジャンル:社会科学 > 政治
    税込 4,968円
    本体 4,600円

    内容紹介
    日本において国民番号制度が挫折を繰り返してきたのはなぜなのか.福祉国家の発展に伴う行政機能の拡大が生じた時期に着目して国際比較のなかでその理由を明らかにするとともに,マイナンバー制度が日本の福祉国家のゆくえに与える影響について考察する.

    【目次】
    序 論
     1. プライバシー意識論の限界
     2. 近代国家と番号制度
     3. 本書の課題
     4. 本書の構成

    第1章 日本の戸籍制度と番号制度 
    第1節 住民管理の始動
     1. 近代国家の勃興と変貌
     2. 日本の近代国家建設と戸籍制度
     3. 制度間の矛盾の克服
    第2節 住民管理行政の漸進的発展 
     1. 制度転用と制度併設
     2. 戸籍事務のコンピュータ化
     3. 番号制度の統一化
    第3節 番号制度の形成過程
     1. 医療保険制度
     2. 公的年金制度
     3. 運転免許制度
    小括

    第2章 プライバシーの政治的利用 
    第1節 言説と実態 
     1. 日本人とプライバシー
     2. プライバシー保護と本人確認制度
    第2節 国民総背番号制の浮上と挫折 
     1. 冷戦とコンピュータ
     2. 行政改革と国民総背番号制
     3. 労働組合の反合理化闘争
     4. 革新自治体の隆盛
    第3節 反対世論の形成 
     1. 政治エリートと世論
     2. 派閥抗争とグリーンカード
     3. 地方分権と住基ネット
    小括 

    第3章 情報化政策の逆説 
    第1節 行政組織と情報技術 
     1. 情報技術への期待
     2. 情報化の帰結
    第2節 コンピュータ産業政策をめぐる政治 
     1. 産業政策の「成功」
     2. 市場としての行政機関
    第3節 産業政策の意図せざる結果 
     1. 「電子計算組織のあらまし」
     2. 分割された政府調達市場の維持
    小括

    第4章 韓国における国民番号制度の成立 
    第1節 植民地時代の住民管理 
     1. 近代的な戸籍制度の成立
     2. 内地と外地の差異
    第2節 住民管理の新たな展開 
     1. 制度の置き換え
     2. 「洞籍」と「登録票」の出現
     3. 冷戦と身分証明書
    第3節 住民登録番号の誕生 
     1. 誕生の経緯
     2. 国民番号制度と行政機能の拡大
    小括

    第5章 多様な番号制度への道 
    第1節 福祉国家と番号制度 
     1. 番号制度の中途半端な統一化:アメリカとイギリスの事例
     2. 冷戦と国民IDカード:ドイツの事例
     3. 国民番号制度と普遍主義型の福祉国家:スウェーデンの事例
    第2節 帝国主義の陰に生まれた国民番号制度 
     1. 台湾の統一番号
     2. エストニアの個人識別コード
     3. 電子政府の目的
    小括 

    結論 
     1. 国家権力の両義性
     2. マイナンバーと日本の福祉国家

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著者プロフィール

國學院大學准教授

「2023年 『権力を読み解く政治学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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