遺体科学の挑戦

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  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (209ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130633284

作品紹介・あらすじ

遺体に"第2の生命"を吹き込み、限りない知を引き出してゆく遺体科学。新たな知を創造するサイエンスの現場からの熱いメッセージ。

感想・レビュー・書評

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  • 『#遺体科学の挑戦』

    ほぼ日書評 Day586

    Day581の黒柳徹子編『読むパンダ』でも触れた通り、Day577の『キリン…』の著者の師匠である。

    タイトル自体が、「遺体科学」という耳慣れない用語だ。学問としては、一般には解剖学とか形態学とかいった領域を扱うものなのだが、筆者はこれらの、やや手垢のついた学問に、いわば現場現物主義を持ち込むことで新たな光を当てようというアプローチと、評者は理解した。

    そしてこの、現物主義を徹底するためには、動物の遺体の構造調査が何よりも最優先されねばならない。

    文中幾度も繰り返される、「遺体は臭いゴミなのか?」という問いは、デスクに座って、コンピュータをいじることで、何らかの結論を得ようとする姿勢、さらには研究予算配分における実利主義・公立主義への痛烈な批判である。

    この学問を突き詰めるためには、解剖学の知識や、解剖実技だけでは全く足らない。
    具体的には、どこそこの動物園で、このサイズの動物が死んだら、その動物園の獣舎の構造から、必要な重機(クレーンやフォークリフト)や輸送車両(象ならトラック2台)、さらには移送経路(道路)までを的確に思い浮かべられる物流のプロスキルも必要とされる。マインドセットとしては、遺体引き渡しの連絡を受けた後の行動の迅速さは、火災通報を受けた消防士に遜色ないとも言う。

    そのような一種、刹那的な研究生活を送りつつ、目線の先にあるのは百年単位の科学知識の蓄積だ。

    (骨格標本を作るために)動物の遺体を骨にする方法にしても、煮る、微生物や昆虫に食べさせる、埋める等があり、象クラスになると埋めて白骨化させるには2-3年を要するという。
    その一方で、剥製は100年単位で長持ちする。製作時には100年後、200年後の人類の知に対する貢献を意識しつつ、作業を進めるのだ。

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  • 【展示用コメント】
    「おまえの身体に隠されている進化の謎はなんだ?」

    【北海道大学蔵書目録へのリンク先】
    https://opac.lib.hokudai.ac.jp/opac/opac_link/bibid/2001325728

  • 最初は、ポピュラーサイエンスの本かと思ったけど、実際には思想書でした。「科学は文化だ」「無目的無制限に遺体を収集する」「遺体は材料に非ず」「遺体は全人類のものだ」。この思想が、筆者の熱い思いと行動を通じて描かれており、とても面白かったです。
    特に生物系の一般向けの本には、説明のための図が多用されると思うのですが、この本はそういった慣習を意識的に避けているようでした。実際、ホッキョクグマの解剖方法や主成分分析をすべて文字だけで説明し、出てくる図は動物の頭骨のみだったのが、印象的でした。

  • どちらかといえば古典的でイマドキの学問とは言い難い(らしい)解剖学を通じて、理学そして知識のあるべき姿、本邦科学の将来像の一部を逆照射的に示す、しかもわかりやすく面白く。ワタシには、筆者の少年時代の体験が面白かった。

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著者プロフィール

東京大学総合研究博物館教授

「2019年 『アニマルサイエンス3 イヌの動物学 第2版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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