家族進化論

著者 :
  • 東京大学出版会
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (380ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130633321

作品紹介・あらすじ

家族はどのようにして生まれ、どこへ向かうのか-人類がアフリカから旅立って180万年、悠久の時間のなかにその起源と進化のストーリーをたどる。前著『家族の起源-父性の登場』から20年、日本の霊長類学が追い続けた壮大なテーマに"山極進化論"が迫る。

感想・レビュー・書評

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  • 山極寿一さんの他の著書を読んで霊長類学に興味を持ったので手に取ってみた。人間の性質を捉えるためにホモ・サピエンスと遺伝的に近い類人猿を観察するという発想は個人的に目から鱗だった。

    本書では様々な調査の結果を元に色々な霊長類がなぜ現在の生活様式に行き着いたかを考察し、そこからホモ・サピエンスのどのように社会形態を変化させていったかに目を向けている。最終的には、現代社会が失いつつあるものを指摘している。

    著者自身の経験と調査結果を通して現代人を解釈しており個人的には非常に楽しめた。


    以下、本書の内容を踏まえて感じた事を記す。

    人間と他の類人猿の大きな違いとしては家族を中心とした大きなコミュニティを形成する点が挙げられる。その中で分かち合いの精神をもつことにより人間の祖先は上手く繁栄することができた。これは現在でも狩猟中心で生活を行う民族に見られる。ここで重要なのはそのような民族は狩猟生活を営む上で権力が集中しすぎないようなうまい仕組みを持っている事である。

    資本主義が中心に掲げられる昨今では権力が偏ってしまっている。これは人類が農耕技術を発明することで土地の奪い合いが発生し、果ては血生臭い戦争を繰り広げた末に辿り着いた結果である。国のような大きすぎるコミュニティは元々人間には扱いきれないのかもしれない。

    現代人は隣にいる家族よりも顔も合わせないインターネットの向こう側の人間とコミュニケーションをとる傾向がある。しかしながら、人類の歴史は家族を中心とした対面コミュニケーションを前提とする期間の方が圧倒的に長い。そんなに早く生物は進化しない。我々はスマートフォンに気を取られがちだが、人と人との対面コミュニケーションの価値を再確認するべきではなかろうか。

  • 家族
    社会
    歴史

  • ☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
    http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB09526368

  • 家族の成立を
    サル学と進化論から考察しています。

    とても広い知識で
    まとめられています。

  • 家族、とタイトルについているから最近の社会を考える、かと思うと大間違いで、霊長類の話である。ゴリラの群れと僕らの家族という単位はどう違うのか。性差の大小やら、脳の発達やらといった霊長類研究が、現代の人間社会にたどりつくまでの軌跡、だけど、人よりも猿関係が中心に見える。
    最後の方で、現代の人間が持つ情報技術によってコミュニケーション方法が変わり、本来もっとも濃密であったはずの「家族」というものが破壊されてしまうのではないか、と。ドッキリ。家族というのは人間が人間たる仕掛けであって、それが壊れていくと、僕らは何処へ行くのだろう。温猿知人。

  • 山極寿一『家族進化論』東京大学出版会、読了。霊長類研究の第一人者が霊長類の社会における「家族」の萌芽について様々な側面から論じた一冊。人類が「家族」を創造するきっかけになったのは多産。そして共感能力(歌と身振り)が共同体を形成した。自然科学の知見が現代を鋭利に写す一冊だから驚く。

  • 資料ID:W0169096
    配架場所:本館1F電動書架C
    請求記号:489.9||Y 23

    家族の起源を、霊長類学と化石人類学から探っていく本。
    サルも仲間に共感し、類人猿も対面コミュニケーションを使っている。人間の家族も、これに共通する社会的知性によってつくられているでは、という結論に至った著者は、最後に現代社会のあり方に疑問を投じます。
    「言葉を用いたコミュニケーションはまだ歴史が浅く」、「家族は人間のもっとも古い文化的な装置」という表現がとても印象的でした。(S)

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著者プロフィール

第26代京都大学総長。専門は人類学、霊長類学。研究テーマはゴリラの社会生態学、家族の起源と進化、人間社会の未来像。

「2020年 『人のつながりと世界の行方』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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