「役に立たない」科学が役に立つ

  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130633758

作品紹介・あらすじ

好奇心と想像力から発見された「役に立たない」科学こそ,私たちの生活に「役に立つ」革新をもたらす――
アインシュタインをはじめ多くのノーベル賞受賞者を輩出しているプリンストン高等研究所の創立者と現所長による,研究をとりまく社会に警鐘を鳴らす刺激的なエッセイ.「有用性」という言葉を捨てて,人間の精神を解放せよ.

感想・レビュー・書評

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  • 有用性を無視した基礎研究、ひたすら好奇心に駆られた基礎研究の重要性を説いた、プリンストン高等研究所二人の所長、エイブラハム・フレクスナー(1866~1959)とロベルト・ダイクラーク(1960~)の2本のエッセー。

    「ヘルツとマクスウェルは何も発明できなかったが、彼らの理論的研究を、器用な技術者が借用して新しい通信と効用と娯楽の手段を生み出した。その結果、たいして貢献もしていない人々が名声と巨万の富を得るに至ったのだ」

    「科学の歴史を通して、後に人類にとって有益だと判明する真に重大な発見のほとんどは、有用性を追う人々ではなく、単に自らの好奇心を満たそうとした人々によってなされた」

    「教育機関は好奇心の育成に努めるべきであり、好奇心は有用性の追求から解放されるほど、人類の幸福のみならず、同じく重要な知的関心の満足に寄与しやすくなります。その知的関心こそが、現代の知的生活を支配する情熱だと言えるでしょう」

    「「有用性」という言葉を捨てて、人間の精神を解放せよ、と主張しているのだ。実のところ、そうすれば、無害な変人たちが好き勝手をして、貴重な研究費をいくらか浪費するのは確かだ。しかし、そうした無駄があったとしてもなお、人間精神の束縛を解き、…自由な冒険へ、今ふたたび送り出すことは極めて重要だ」

    枚挙に暇がないほど実例に溢れているので、好奇心に駆られた自由な基礎研究の決定的な重要性には疑う余地がない。

    昨今の、実利一点張りの国や大学の研究方針、短期的成果を厳しく求める公的研究プロジェクト、そして企業の基礎研究からの撤退には、かねてより危機感を覚えていた。
    もちろん、実用化研究が重要であることにも疑問の余地はない。要は、車の両輪のように両者をバランス良く回していくことが必要であるはずなのだが…。国の財政赤字が膨らみ続ける中で、遊びが無くなってしまったんだな。

    環境問題やエネルギー問題、食糧問題など、地球規模の課題の解決策も、自由な基礎研究からこそ生まれてくるのかもしれない。何れにしても、変化の激しさが増す昨今、基礎研究の位置づけもまた変わっていくだろうな。本書は、今、政府や大学関係者に読まれるべき本だと思った。

  • 基礎研究は、大事だ、というエッセイ。
    アメリカのプリンストン高等研究所の創設者の言葉です。

  • なぜ基礎研究が大切なのか、好奇心のおもむくままに自由な精神で行った研究が、後の社会に大きな恩恵をもたらすことが多々あることが、わかりやすい言葉で語られている。

    基礎研究に対する研究費の配分の減少については、日本人のノーベル賞受賞者のインタビューでも何度も耳にしているが、短期的な実利を第一優先する政治家や株主が社会を動かしているかぎり、いくら科学者が基礎研究の大切さを説いても、平行線を辿るばかりだろうな…

  • 『「役に立たない」科学が役に立つ』刊行イベントが8/22開催 - 東京大学出版会
    http://www.utp.or.jp/news/n35879.html

    『「役に立たない」科学が役に立つ』(青木薫) - HONZ
    https://honz.jp/articles/-/45737

    「役に立たない」科学が役に立つ - 東京大学出版会
    http://www.utp.or.jp/book/b510449.html

  • 2023.07.22 朝活読書サロンで紹介を受ける。プリンストン研究所。知識よりも発想。新しい技術は役に立つか役に立たないか分からない。
    時代が役に立つことにフォーカスし過ぎではないか。
    2023.11.15 品川読書会で紹介を受ける。
    2023.12.03 読了

  • とても良い本だった。

    当日、国や政府の方針で研究者達の環境は厳しかった。しかし、それを変えたのがフレクスナーであり、プリンストン高等研究所。

    研究者達は周りの雑音が耳に入らない、自由な環境で研究を進め、その時も地道な研究が今の世の中を支えている。

    そして、研究者達はそれを悪用しようと考えてなく、原爆や化学兵器など、悪用考えたのは国や政府だということもわかった。

    今の日本の大学は研究費も自由度も少ないと聞く。だから日本が海外より医学や学問で遅れを取ってる部分もあるのだろう。

    とても考えさせられ、歴史の裏側を知れるとても良い本でした!

  • うーん。誰に読んでほしいんだろう。言わんとすることはごもっともなんだけど。

  • エイブラハム・フラクスナー、ロベルト・ダイクラーク「役に立たない科学が役に立つ」読了。科学とは本来実利を主目的とするのでなく、根源的な知的欲求から取り組むべきである事を再認識できた。科学の理想郷であるプリンストン高等研究所にフレクスナーの強い理念が込められている事もわかった。

  • 有用性という言葉を捨て、人間の精神を解放させることが何より重要と言う、フレクスナーの思想に触れられる一冊。100ページない薄手の企画書なのでサクッと読めます。

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