美学辞典

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  • 東京大学出版会
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784130802000

作品紹介・あらすじ

いくたの思想家や芸術家によって、くり返し問われてきた美と芸術をめぐる主題について、概念史を踏まえつつ、現代美学の研究水準をさし示す。美、自然美、芸術、想像力、創造、かたち、価値、美的体験など、25の主要な概念を通して、読者は美学体系のすべてを一望することができよう。

感想・レビュー・書評

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  • 美学および芸術学における25の重要概念について、それぞれ解説がなされている本です。

    各項目の記述は三つの部分に分かれています。最初に、それぞれの概念の定義およびその定義を理解するうえで必要な基礎知識の説明がなされ、つづいてその概念が美学史においてどのように論じられてきたのかということが、ていねいに解説されています。最後に、著者自身の見解が示されています。

    とりわけ第二の概念史的な説明が充実していることが、本書のもっとも大きなメリットであるように思います。「本書においては、わたくしが自分の意見として断定したものを除いて、思想史的な事実に関する記述には、可能な限りその典拠を注記するようにした」と著者は述べています。たとえば「表現」や「想像力」、「象徴」など、美学上の基本的な概念が、美学史のなかでどのように論じられてきたのかということを知りたいときに、本書の解説は非常に有益です。もちろん、それぞれの概念史にかんするくわしい考察は、それぞれが一冊の研究書を要するものであり、本書の説明でじゅうぶんというわけにはいかないでしょうが、すくなくともそうした関心をもつ読者にとって、本書の解説が研究の入り口を教えてくれていることはたしかであるように思います。

    なお、「美学」という学問そのものの由来にかかわることではあるのでしょうが、本書の解説は、近代以降、とりわけカント美学によって切り開かれた学問的領野における概念の変遷に重点が置かれており、それ以前の哲学者・思想家たちによる美学的な考察についての紹介は、やや手薄であるように感じます。

  • 「美」「創造」「価値」「美的体験」など、美学に関した
    概念を項目立てし、それぞれに定義や議論点、著者の考え
    などを列記した本。辞書の体裁を取ってはいるが読み物と
    しても面白かった。この前に読んだ同じ著者による「美学
    への招待」に比べれば専門的でありやや難しいこともあり、
    一度読んでおく本と言うよりは、美学を学ぶ物が手元に置き
    折に触れ読み返す、見返す本なのだと思う。

    美学については、まだ読み足りない気分が続いているので
    しばらくは関連本を漁ってみたいと思う。

  • 美学に関するあらゆる語句について論じた本。筆者はわかりやすく記述したそうだが自分にとっては理解しにくい箇所が多かった。数年後にまた読み返したい。

  • 美学の教科書としてよくできていると思いますよ。
    網羅的だし、割とくわしいし。

  • 美に関連するさまざまな概念について、定義と説明をした本。
    著者自身の言葉と、著名な学者や哲学者の言葉を織り込みつつ、地道に概念を定める作業を続けることに終始している。

    専門的な言葉をほとんど使わず、一般的な言葉で美の概念を丁寧に説明しようとしていて、著者にとても好感を持ちました。
    ただ、ほんとに定義と説明に限っての記述がえんえん続くので、読んでいて面白いものではなく、途中しばしば退屈に感じたりしました。
    絵を描く者としてちょっと読んでみようかなと手にしたんだけど、どちらかというと、学者が美について勉強するための本なのかな。
    冒頭にこの本は教科書として構想されたものだと書かれてあるし。どうしてだかわからないんだけど、なんで教科書ってこうつまらないものになるんだろう。

    内容に興味はあるし、読み込んでいけば勉強にはなるのかもしれないのですが、本来は絵を描きたい自分としては根本的に、これを読んでどうするのかと疑問を持ってしまいました。
    確かに書かれてあることは著者や先人の知識がつまった、とても価値のあるものなんだけれども、自分は美学を勉強したいんじゃなくて、美学を自分で体験したいんだ。
    誰かがまとめた定義や説明よりか、まず手を動かして自分なりの考え方を泥臭くとも発見していきたいんだ。
    と、いろいろ考えた末そういう結論になったので、ほとんど目を通せてはいないんだけど、読むのをやめることにしました。

    たぶん、とてもいい本なのですが、自分には合わなかったです。
    これから何十年して自分の美学というものを持てるようになったら、答え合わせをするように読み直してみたいな。


  • 凡例
    Ⅰ 基礎的な諸概念
    美学

    自然美
    芸術
    Ⅱ 生産に関する諸概念
    模倣
    表現
    即興
    図式
    想像力
    天才
    創造/創造性
    Ⅲ 対象に関する概念
    かたち
    修辞的文彩
    様式
    象徴
    作品
    美的質/美的範疇
    価値
    Ⅳ 消費と再生産に関する諸概念
    美的態度
    趣味
    美的判断
    解釈
    批評
    美的体験
    コミュニケーション

    あとがき
    参照文献表
    人名/事項索引
    (目次より)

  • 美学会(界)の重鎮佐々木健一によって、〈美学〉〈芸術〉〈作品〉〈天才〉といった、美学上の基本的且つ重要な項目について美学史を踏まえつつ説明されたもの。

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著者プロフィール

1943年東京都生まれ。東京大学文学部フランス語フランス文学専修課程卒業。同大学院人文科学研究科美学芸術学博士課程修了。埼玉大学助教授、東京大学文学部教授、日本大学文理学部哲学科教授を歴任。元国際美学連名会長。現在、東京大学名誉教授、国際哲学系諸学会連合副会長。文学博士。1982年、『せりふの構造』でサントリー学芸賞受賞。著書に『せりふの構造』『作品の哲学』『ミモザ幻想─記憶・藝術・国境』『美学辞典』『美学への招待』『日本的感性─触覚とずらしの構造』『ディドロ『絵画論』の研究』ほか。

「2016年 『講座スピリチュアル学 第6巻 スピリチュアリティと芸術・芸能』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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