万葉集をどう読むか 歌の「発見」と漢字世界 (Liberal arts)

  • 東京大学出版会 (2013年9月20日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (296ページ) / ISBN・EAN: 9784130830621

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  • 『万葉集』を成立史や歌人論に還元せず、全二十巻の「漢字テキスト」として、歌がどのように見出され、ひとつの「世界」を構築しているかを析出する研究書。本書の特色は、『万葉集』は単なる歌の詰め合わせではなく、国家が「我々の歴史はこうだ」と宣言するために漢字を駆使して作り上げた巨大な「物語」であることを明らかにする点にある。人麻呂や家持がどのような「役割」を演じさせられているかが見えてくる。

    テキストとしての万葉集が主要論点の一つ。現実の歌人や歴史そのものではなく、テキストにおいて「あらしめられた歌・歌人」を見るべきである。

    天武始祖神話も重要な論点。巻一・二は、天武天皇を天地初発の神の定めに負う始祖として位置づける「歴史」を構築している。

    私情の制度化については、「大夫」が妻を思って泣くといった私的な領域を、歌として公表・社会化することで「歴史」の一部として組み込んでいる。

    天智期関連では、中大兄皇子について、万葉集が構築する「歴史」世界において、「近江宮に天の下治めたまひし天皇」として、その崩御や挽歌が歴史的文脈に定位されている。称制については、斉明崩御から正式な即位までの「称制」期間が、万葉集の題詞や標題において、歴史的時間を画定する要素として機能している。近江大津宮については、万葉集の歴史構成における一つの拠点。天智が「天下」を治めた宮として、その終焉(荒都)が後の時代の歌人によって感傷的に振り返られる。

    東京大学出版会で、大学講義レベル。天智まわり関連度は高く、天智朝から天武朝へ至る「歴史」が、当時の官人や天皇の「歌」を通じていかにドラマチックに構築(あるいは捏造)されたかの論理がわかる。漢字の使い分けや、泣き女の儀礼、鷹を逃した動揺など、キャラの心情を「演出」する小道具が理論的に解説されている一冊。

  • 万葉集を全体として扱うという立場を鮮明にして、この歌集を漢字テキストとして読む観点と方法を提示する。「リベラル・アーツ」の1冊で入門書というべきであるが、根源的な問いかけを含んでおり、専門家も格闘しなければならない。

    熊本大学:日本文学分野 教員

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著者プロフィール

<神野志>1946年和歌山県生まれ。東京大学大学院国語国文博士課程修了。現在、同大大学院教授。著書に「古事記注解」「古事記と日本書紀」などがある。

「1999年 『古事記の現在』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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