言語学バーリ・トゥード 言語版SASUKEに挑む (Round 2)
- 東京大学出版会 (2024年8月20日発売)


- 本 ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784130841023
作品紹介・あらすじ
レイザーラモンRGの「あるあるネタ」はどうしておもしろいのか。「飾りじゃないのよ涙は」という倒置はなぜ印象的なのか。猪木の名言から「接頭辞BLUES」まで縦横無尽に飛び回りながら、日常にある言語学のトピックを拾い出す。抱腹絶倒の言語学的総合格闘技、Round 2スタート!
感想・レビュー・書評
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相変わらずの面白さ!
さらさらと読めるけど、思わず笑っちゃったり考えさせられるところも多く、印象に残ったトピックも多かった。
レイザーラモンRGのあるあるネタ、実は素人が考えられるレベルじゃないというのも初めて感じたし、
古い言葉を聞いて「イタい」思うための必要条件は、「それが使われていた時代をリアルタイムで知っている」ということというのも言われてみれば確かに!と感じた。
"それに乗っかったことを自分の「黒歴史」あるいは「若さゆえの過ち」と認識させてしまう効果があるのだろう。" …うっ…わかるし、そんな死語と感じてしまう言葉なんていくつも思いつく…
"咎められても何が悪いのか分からず「不快に思ったのなら謝ります」といった可燃性の高い謝罪文を発して自ら消し炭のように燃えることになりかねない。"
上の文章とかも、『炎上』にセンスよく絡めまくっていて笑ってしまった。
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前作と同様に気軽に読めて面白かった。
川添さんは、「日本語を話す人の無意識レベルの知識」の研究者。
言語学の話題から直ぐに脱線するが、脱線する方向がプロレスなのでプロレスファンには嬉しい。
プロレスラーの発する言葉を分析したりするのだが、その時の状況を知っているので理解しやすい。
例えば、「お前を倒すのに3分も要らねえ。5分で十分だ!」
これは「日本語は非論理的な言語なのか」の章で引用された、プロレスのあるシーンでのセリフ。
言われた猪木が何も言い返せない支離滅裂さが実に味わい深い。
第3章に「死語」の話題が出てくるが、私的に「これは死語か?」と思う言葉が最近増えている。
アベック、ドンピシャ、など、聞いたことがない若者にとっては単に知らない言葉。
死語かどうかは、その言葉がどの年代まで伝わるかを実感している年長の人が決める。
俵万智さんは「日本語の使い方が上手いアーチスト」は、3位:中島みゆき、2位:桑田佳祐、1位:レイザーラモンRG、と言う。
レイザーラモンRGの、あるあるネタには「そこに目を付けるの?」と感じる面白さがあるようだ。(私はよく知らない)
「重言」に関する話題も面白かった。
頭痛が痛い、馬から落馬する、は多少のわざとらしさを感じてしまうが、
およそ5分くらい、まず最初に、あとで後悔する、違和感を感じる、といった「重言」表現は普通に受け入れている。
本書は日本語の曖昧さに関する話題も多い。
湯を沸かす、やかんが沸騰している、鍋を食う、モーツァルトを聴く、などは皆おかしな日本語だ。
曖昧なのは言語自体の問題ではなくて、わざと曖昧な表現にして使う人間の問題なのだ。
こうした曖昧さに目を付けて、意図的に読者を騙し注意を引くネットニュースの見出しの作り方も載っていた。
「人気アイドルBを恐喝の疑いで書類送検」→「えっ!アイドルBが恐喝した?」と思わせる。
記事は、人気アイドルBを恐喝したとされる人物が書類送検されたという内容。
最近はアクセス数を稼ぐために、ミスリードを誘うセコイ手法が乱発されている。
あざといテクニックでアクセス数を増やすのではなく、記事の内容で勝負して欲しい。
読者もバカじゃないので、何度か騙されればおちょくられていると感じ離れていく。
見出しも記事の内容も酷いと思うのが「現代ビジネス」と「プレジデントオンライン」。
単にウケ狙いで根拠が薄くガッカリする。
時間の無駄になるので、私はこの2つのWebサイトは読まないようにしている。
最近特に嫌だなと思っているのは、曖昧な日本語を使いこなしている政治家。
〇か×かで答えることはなく、どのようにでも言い訳できる言葉や表見しかしない。
曖昧表現をたくさん知っていると、責任回避能力は有能とみなされるから、皆が真似をするようになる。
はっきりモノ言う小泉進次郎や村上誠一郎が必要以上に叩かれる世の中も困ったもんだと思う。
しつこく文句を言ってくる厄介な奴が鬱陶しいから、曖昧な表現を使うようになるのかも知れない。
言葉の曖昧さは、わざと曖昧な表現にして使う人間の知恵なのだ。
が、言葉の曖昧さを楽しむのは芸人に任せて、政治家や評論家はもう少し明確に考えを伝えて欲しい。 -
自分、不器用なんで
この本の1章ごと、
読み終えるや否や
「しょ〜〜もない!ガハハ(笑)」
ってツッコミを
入れてました。とめられないです。
作者の川添愛さん、すっごく調子に乗って
ノリノリで書いてらっしゃいます。
やばい本でした。
おもしろい! -
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↓ヤンキーが漢字を使用する切っ掛けの話に唸る。
【言語学バーリ・トゥード】26 漢字は長~い友達(川添 愛)
UP 2024-7
https...↓ヤンキーが漢字を使用する切っ掛けの話に唸る。
【言語学バーリ・トゥード】26 漢字は長~い友達(川添 愛)
UP 2024-7
https://www.utp.or.jp/book/b10086252.html2024/07/20
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Round 1をとても楽しく読めたので期待値高めに飲み始めると、趣向は変えてきていて斜め上に行かれた。川添さんのプロ意識の高さに感服した作品。
言語学に関心のある人はもちろん、プロレス好き、ジョジョ好きにもたまらない。かつてのナンシー関を思わせるものごとのとらえかた、視点もグッとくる。
川添さんの妄想が止まらなくなる「言語版SASUKE」はハラハラしながらサスペンスを読む感覚、「言語モデルに人生を狂わされた男」はAI社会の恐ろしさと皮肉が体験できる。かつ書き下ろしも2章ある。
川添さんのAI時代の言語の変化についての問題意識も垣間見えて、読後感もよい。
とてもお得な本でした。次作にも期待。 -
日常生活のアレコレを、言語学的観点から解説してくれる本書。文章はもちろん、妙にリアルなイラストも素晴らしい。
著者は「日本語は他の言語と同様に素晴らしい」と言い切ってくれており、変に自虐的にならずに素直に読める。
最初の「気楽な文章が、気楽には書かれていない」という告白」から、「接頭辞たち(!)が語るあとがき」まで全編一読の価値あり。読み返しにも耐えうる内容。
連載が続いているので、Round3 が今から楽しみだ。 -
前作がおもしろかったので続編が出るのを心待ちにしていたが、その間にアントニオ猪木さんが亡くなったり、ChatGPTが世に出たり‥。
AIは劇的に進化しており、今やちょっとした問合せや契約はAI対応で完了することも多くなってきて気が楽な事もある反面、話が通じなくて余計に手間が掛かったり味気なく感じる事もある。結局、AIもヒトも「悩みながらもトレーニングし続けるしかない」のかも!
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相変わらず小ネタ満載で、小気味よい文章で、ほんとおもしろい。こういう文章を書ける人間になりたいなあと思います。そして、あいかわらず似顔絵が全然似てない。絵自体はうまいのに、不思議です。【2024年8月23日読了】
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2作目になって、だいぶ連載にこなれてきたのか、学術的な内容よりも読んで楽しい内容になっている。それでも日本語が曖昧か、非論理的か? などといった考察は楽しい。
3作目も出ますように。 -
東京大学出版会のPR誌「UP」連載(2021年4月号〜2024年1月号までの12回分)の書籍化、待ってましたのラウンド2。連載も欠かさず読んでいるけれど、新たな書き下ろしが3本も読めるのがうれしい。連載にはないイラスト(コジマコウヨウ、カバー装画も)がたっぷり加わるのもうれしい。連載が100とすれば、書き下ろしとイラストが加わってパッケージで200ぐらいになっている。
とりあえず書き下ろしから読み始め、また始めから読み返す。二度目に読んでもおもしろいのは、ラウンド2の初回にもあるように三ヶ月に一度の連載を時間をかけてねりあげているからだろう。
タイトルからカバー・帯文まで格闘技の引用だらけで、「隙あらばプロレスの話をしようとする駄文」と著者自身は謙遜するが、その方面にまるでうとい私でもまったく問題なく楽しく読める言語学談義。コントあり(←接頭辞BLUES最高)、短編小説仕立てありで飽きさせない。そして、どの回もバカバカしくて最高なのに、同時に(落ちこぼれ言語学徒が読んでも)学術的に得るものもちゃんとあってありがたすぎる。おもしろおかしく読ませつつ、伝えたいこと伝わるものがしっかりあるので、そりゃ入試の問題にも採用されるわけだ。
リレーゾーンでSTO先生からのバトンがしっかり手渡された「UP」の連載が末永く続いていきますように。
著者プロフィール
川添愛の作品





