現象学入門 (NHKブックス)

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  • Amazon.co.jp ・本 (238ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140015766

感想・レビュー・書評

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  • 三宅陽一郎氏の『人工知能のための哲学塾』、野中郁次郎氏および山口一郎氏の共著『直観の経営 「共感の哲学」で読み解く動態経営論』と読み、難解な現象学を一度基本から学んでみたいと思ったので、入門書としての評価が高かった本書を購入。

    他の現象学入門書籍と同様、本書も現象学の創始者といわれるフッサールの現象学についての入門書であるが、冒頭は現象学に対する様々な誤解や批判の紹介から始まるところに著者の挑戦的態度が窺える。

    また本書は、第1章で現象学の基本問題として初学者が必ずといっていいほどつまずく「志向性」と、近代哲学の根本問題とされる「主観ー客観問題」の概念説明から入りつつ、デカルト、カント、ヘーゲル、ニーチェなどの近代哲学者がこの根本問題に対してどのように解決しようとしたのかが解説されているため、現象学的アプローチの特異性を把握しながら次章以降を読み進めることができた。

    更に、本書は哲学ジャンルの書籍としては珍しく図が多く用いられているため、難解な用語もイメージとして捉えやすく工夫されているうえに、巻末には付録的に現象学の用語解説が載せられている。この用語解説部分だけでも本書の価値はあると言っても過言ではないだろう。

    本編は200ページ程度の分量でありながら、理論の説明のみに留まらず、現象学の具体的方法論や、サルトル、メルロ・ポンティ、ハイデガーなどフッサールの現象学を受け継いだ哲学者に関する発展的内容も記載されているため、入門書としての評価が高いことは頷ける。

    しかしながら、本書のような優れた入門書を読んだとしても、現象学が容易に理解でき、『イデーン』や『危機書』などの原著が直ちに読めるようになり、現象学を現実世界や実社会に役立てられるかといえば、それは難しいと言わざるを得ない。それは本書の問題ではなく、自分を含めたほとんどの現代人が科学・論理(客観)至上主義にどっぷりと浸かりすぎ、主観から出発する理論に心理的抵抗感があるからではないだろうか。

    ただ、本書が現象学的還元や判断停止(エポケー)の意味や方法論まで踏み込んだ内容であることは疑いないので、現象学的思考を実生活において実践すべく、より深く学んでみたいと思わせてくれる一冊であった。

  • 大変分かりやすかった。現象学に用いられる各種概念とその位置付けについて、これ以上ないほど丁寧に解説している本だった。

    しかし、肝心の現象学の意義は見出せなかった。科学哲学が配備された今、科学的真理を我々の経験に接触しない独立の牙城だと考える人はいないし、独我論ベースで世界を捉え直すということだって、誰でもやっている思考プロセスのひとつのように思う。
    第一、現象学は〈主観-客観〉図式を「解明」したなどと言っているが、その実は、主観からスタートしたのち身体に言及して「類比」などの言葉を整えて無理やりこじつけただけ。風が桶屋の利益になるかのような、脆い説明に思う。

    現象学に触れてこなかった身としては、そのガバガバ理論自体が何を目的にしているか分からなかったし(生の意味などという漠然とした記述はあったが)、新たな思索の潮流の契機になるものも感じられなかった。

    他の本を探す。

  • 主観客観は非対称なもので、徹底的な独我論に立つしか主客問題の解決はない。

    明快な解明で、主客の一致問題はこれで解決したのではないかと感じる。

    ではなお問題として扱われているのはなぜか…

    そして、他者と世界に関する共通理解をなぜ持てているのかはまだ腑に落ちない。

    次なる問題は、生の意味。

  • フッサール現象学の詳細とハイデガー存在論までの一連の流れの概略を、現象学批判やサルトル、ポンティの現象学に見られた違いを取り上げ反論を示しながら明解にまとめた良書。

  • やや難解な現象学をデカルトやカントの基礎的な検証を踏まえて、非常に分かりやすく説明してます。
    フッサールを読む前に読んでみることを勧めます。

  • [ 内容 ]
    この目で見た世界と実存する世界は同じものなのか?
    近代哲学がついに超えられなかった難問を、“世界が造られる場”として意識を捉え直すという発想の転換でかわしたフッサールの考え方の芯を、できるだけ平明な言葉でわかりやすく紹介。

    [ 目次 ]
    第1章 現象学の基本問題(「近代哲学の根本問題」―「主観と客観」;近代の哲学者たち―デカルト、カント、ヘーゲル、ニーチェ)
    第2章 現象学的「還元」について(発想の転換―デカルトの「夢」について;「還元」の意味―「確信」の生じる条件;「諸原理の原理」;知覚直観と本質直観〈本質観取〉)
    第3章 現象学の方法―『イデーン』を読もうとする読者のために(自然的態度、素朴な世界像について;〈還元〉の開始―エポケーの方法;「純粋意識」という残余、超越論的主観について;超越論的主観における「世界の構成」;事象は「志向的統一」である;〈内在―超越〉原理;意味統一としての「経験」;〈ノエシス―ノエマ〉構造)
    第4章 現象学の展開―〈還元〉は誰にでもできる理由(近代的な世界像の成立;超越論的主観性と間主観性 ―他我経験の現象学;生活世界の現象学)
    第5章 現象学の探究(現象学的“反批判”;サルトルとポンティ―現象学の難問;ハイデガー存在論の挑戦)
    現象学入門/用語解説

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    [ 関連図書 ]


    [ 参考となる書評 ]

  • 哲学科に行っていた最初の彼女が別れたかなり後に私に薦めた本。
    主観を論じ客観が存在しないことの証明をフッサールを用いて論じている。
    ものの見方が変わる本。

  • 竹田現象学はわかりやすくて面白い。

  • すこぶるわかりやすく説得力のある現象学解説。ただし、それゆえに「そんなことフッサールは言っていない」という批判も多い。困ったことにフッサール本家にあたってみても判断がつかないのです。

著者プロフィール

1947年生まれ。哲学者、文芸評論家。著書に『「自分」を生きるための思想入門』(ちくま文庫)、『人間的自由の条件ーヘーゲルとポストモダン思想』(講談社)など。

「2007年 『自由は人間を幸福にするか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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