深海生物学への招待 (NHKブックス)

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (235ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140017753

作品紹介・あらすじ

太陽に背を向けた生物たち。口も消化管も持たず、細菌を細胞内共生させることで生命維持に必要な有機物を得るチューブワームなど、光合成に訣別した別世界の住人を臨場感溢れる筆致で描く。

感想・レビュー・書評

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  • 高校生(いやぷーたろー時代か)のときに読んだ本。
    あれから15年以上、先日放送(2013年1月NHKスペシャル。2012年に撮影)のダイオウイカの初映像のように、もうこの本が出た頃とは比べ物にならないくらいたくさんの発見があったんだろうな。

    というわけで、一段落したら、この辺の本を改めて読みあさろうと思います。

  • 1

  • 光合成に頼らず、地球の奥から沸いてくる化学成分で成り立つ深海生命圏のお話。深海でのフィールドワークのよもやま話から、他の星に生命がいる可能性まで、様々な話題を繰り出して飽きさせない。

    ・深海の水は南極沖やグリーンランド沖で冷やされて沈みこんだもの。中生代は、今より温暖だったし、南極が他の大陸とつながっていて南極を巡る海流がなかったので、南極海での冷却は進まなかった。代わりに赤道付近で水分が蒸発して高塩分になった(比較的)高温水が深海へ沈み込んでいたと考えられる。

    ・深海の圧力に耐えるには細胞壁の柔軟性が大事。深海生物は、細胞壁を構成する脂肪酸のうち、不飽和脂肪酸の割合が高い傾向がある。

    ・表層の生物生産は95%が表層でリサイクルされて、5%がマリンスノーなどで深海へ降りてくる。表層での植物プランクトン→動物プランクトンの食物連鎖の強弱は、両者の出現タイミング、フェージングによる。フェージングがよいと表層での生産が増え(北太平洋)、わるいと深海へのおこぼれが増える(北大西洋)。

    ・海の食物連鎖には「鉛直移動のハシゴ」がある。昼間、上でエサを食べてきたやつが、下に降りていって捕食者に食われる。これを何層か繰り返して表層の光合成由来の栄養が深海へ、早いと数日で降りる。

    ・熱水噴出孔付近などに住むチューブワームは、口も消化器官もなくて共生バクテリアに栄養分を作ってもらっている。バクテリアは硫黄分を酸化して化学エネルギーを取り出し、あとは光合成と同じ過程で有機物を作る。メタン湧水域に住んでいるやつもいて、メタンを還元して硫化水素を作るバクテリアと、そこからイオウ酸化反応をするバクテリアの両方と共生していると著者は予測する。チューブワーム体内で還元的環境と酸化的環境の両方が並存できるかがミソ。

    ・なぜか大西洋にはチューブワームが少ない。だがスペイン沖で沈んだ船には11年後にチューブワームが確認された。積荷の穀物が分解して硫化水素が発生したらしい。どこから来たのか?幼生が海の中を漂っているらしいが、鯨の遺骸が幼生の飛び石(または道の駅)になっているのではないかという大胆な説がある。

    まだまだ分からないことがたくさんあるのが魅力。

  • 偶然見かけたNHKドキュメンタリーのダイオウイカに衝撃を受けた。なんと美しくも巨大な生物が真っ暗な深海に潜んでいることか!ワクワクした。
    長沼先生もテレビで時々見かけて、魅力的な人間だな~と思ってた。
    というわけで、読んでみました本書。
    おもしろかった~。生命に対する長沼先生の賛歌。生き物に対する畏敬の念と詩情がひしひしと伝わってくる本でした。

  • 「生物は太陽がなければ存在できない」そんな我々の思い込みを覆す大発見があったのが1970年代末。深海底で見つかったチューブワームなどの化学合成生物群集は、太陽のない所で、噴出物に依存して生態系を展開していたのだ。

    これは「自然史における20世紀最大の発見」と言われている。熱水活動があれば、地球以外の星にも生命が存在する可能性を秘めているからだ。

    深海底での発見が、宇宙史をも書き換えようとしている。そのあたりのドラマティックな展開がこの本の読みどころのひとつだ。

  • 初心者にも分かりやすく、文学的な面もある。

  • [ 内容 ]
    太陽に背を向けた生物たち。
    口も消化管も持たず、細菌を細胞内共生させることで生命維持に必要な有機物を得るチューブワームなど、光合成に訣別した別世界の住人を臨場感溢れる筆致で描く。

    [ 目次 ]
    はじめに 深海に新たな生命観を求めて
    第1章 深海アナザーワールド
    第2章 深海の多様な住人たち―深海砂漠での生き残り戦略
    第3章 謎の深海生物チューブワーム
    第4章 熱水性生物の楽園「深海オアシス」
    第5章 化石となったチューブワーム
    終章 チューブワームは時空を越えて
    付章 深海へのあくなき挑戦の物語

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    [ 参考となる書評 ]

  • タイトルのとおり、専門書というよりドキュメンタリーのような本。
    ところどころに小説や詩の引用や改変があって、心が和む。著者の気軽な語り口調に引き込まれてすいすいと読み進めていくうちに、深海の魅力に捉えられ、最後は深海へのロマンがむんむんわいてくる。「生物」へのイメージが変わるとともに、道の可能性への期待がきっと膨らむことだろう。

  • 水深数百メートル、そして数千メートル。一帯は青い、青い闇。その中にポツポツと浮かぶ無数の光。目にも見えないような小さな生き物が何のために光るのか。光るために光る。生きるために光る。

    そんな世界が地球上の海洋全体の88%以上で存在しているのだから、狭い地上で必死になってる私の悩みなんて何てちっぽけなんだろうと痛感する。人間、いつかは海(母胎)へ還るのだ。そうだ、心を海にしよう。

    「付章・深海へのあくなき挑戦の物語」では、太古の昔から世界中で深海に魅せられ、試行錯誤した様子が描かれている(と言っても目的は学術の調査だけでなく、沈没船の財宝探しや軍事目的でもあるのだが)。特に1950年以降の米ソの深海底への到達レースのくだりは興味深かった。

    ところで著者は、宇宙飛行士よりも少ない深海世界への旅行者なのだが(現在は大学助教授)、とてもお若い。61年生まれでこの本を発行する96年には既に深海潜水の体験をしておられるのだから、今の私の年齢くらいで世界的な潜水船に乗り込まれておられるのだ。チャレンジ精神があれば年齢が若くても実現できるということを立証されたのだろう。

  • 燦燦と輝く太陽。
    地球は太陽の子惑星。
    誰もが思う。
    「もしも太陽が無かったら地球は死の星になるだろう・・・」

    しかあああああし!!!!!
    深海底には太陽の事なんか御構い無しで繁栄している生物達がわんさかっといるのだああああ!!!!!

    特にこの本の主役を張っている
    チューブワームこと「ガラパゴスハオリムシ」

    こいつらは生物の癖に消化器官をもっておらずなんと呼吸すら行っていない。

    いったいこいつらはどうやっていきているのか????

    その答えはこの本を読んでからのお楽しみ・・・

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著者プロフィール

1961年、人類初の宇宙飛行の日に生まれる。深海生物学、微生物生態学、系統地理学を専門とし、極地、深海、砂漠、地底など、世界中の極限環境にいる生物を探索する。筑波大学大学院生物科学研究科博士課程修了、海洋科学技術センター(JAMSTEC、現・海洋研究開発機構研究員)、カリフォルニア大学サンタバーバラ校海洋科学研究所客員研究員などを経て、現在、広島大学大学院生物圏科学研究科教授。『宇宙がよろこぶ生命論』(ちくまプリマー新書)、『形態の生命誌――なぜ生物にカタチがあるのか』(新潮選書)、『辺境生物探訪記 生命の本質を求めて』(共著・光文社新書)、『地球外生命 われわれは孤独か』(共著・岩波新書)、『生命の始まりを探して僕は生物学者になった』(河出書房新社)ほか著書多数。

「2016年 『ビッグヒストリー われわれはどこから来て、どこへ行くのか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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