西行の風景 (NHKブックス 857)

  • 日本放送出版協会 (1999年4月23日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (240ページ) / ISBN・EAN: 9784140018576

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  • 西行が生涯をかけて追求した歌の道は、たんに仏の道に通じるのみならず、仏教を日本というローカルな空間に生かすことになったという著者の考えが提出されています。

    日本に本格的な密教をもたらした空海は、サンスクリット語によって仏教の真理が示されるという考えをいだいており、そうした発想にもとづいて悉曇学が展開されました。これに対して西行は、「和歌即真言」の立場に立っていたと著者は主張します。

    こうした考えを裏づけるために、著者は密教における月輪観と、西行によって詠まれた歌の主題がかさなることを例をあげて説明しています。さらに、晩年に伊勢に移り住んだ西行は、神仏習合の考えかたにコミットしており、和光同塵の思想にもとづいて本地垂迹を説く発想が、仏教を日本というローカルな空間に受け入れることを可能にしたという見通しが示されています。

    また、西行の理解者だった藤原俊成・定家の父子や慈円とのかかわりについても、踏み込んだ考察がなされています。慈円については、仏教の原典をことごとしく参照する態度を排して日本の歴史を見ようとする態度に西行と通じるものがあると指摘され、さらに専修念仏に代表される中世仏教の易行の隆盛との関連についても注意が向けられています。

    俊成・定家にかんしては、西行が晩年に自歌合を試み、その評を二人に依頼したことをとりあげ、比較的くわしく検討がおこなわれています。

  • [ 内容 ]
    仏道に徹しきれなかった歌人という従来の西行像を本書は斥ける。
    密教でいう虚空は存在するものの真のすがたをさすが、そのグローバルな虚空空間に出現するローカルな風景を日本語で歌い融合すること、それが西行の求めた「道」であった。
    この「空間と言語の思想」は、晩年、和歌によって仏教を空間化する革新的な神仏習合の思想へと展開した。
    そのように著者は明快に論証していく。
    空間の豊かさと西行像を問い直す力作。

    [ 目次 ]
    第1章 心静かな男
    第2章 和歌即真言
    第3章 浅いことば
    第4章 虚空の所在
    第5章 歌枕の国
    第6章 鴫たつ沢
    第7章 『御裳濯河歌合』
    第8章 『宮河歌合』
    第9章 神と仏の風景
    第10章 凪たる朝
    第11章 花のしたにて

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著者プロフィール

桑子 敏雄(くわこ・としお):一九五一年群馬県生まれ。哲学者。東京工業大学名誉教授、一般社団法人コンセンサス・コーディネーターズ代表理事。一九七五年東京大学文学部哲学科卒業、同大学院博士課程修了。南山大学助教授などを経て東工大へ。一九九九年に上梓した『環境の哲学』が建設省官僚の目に留まり、政策提言を求められ、公共事業(ダム建設など)の地元住民の合意形成にかかわるようになる。「ふるさと見分け」「市民普請」を提唱。東京工業大学リベラルアーツセンター長もつとめた。著書に、『環境の哲学――日本の思想を現代に活かす』(講談社学術文庫) 、『感性の哲学』『西行の風景』(日本放送出版協会一九九九、二〇〇一年)、『日本文化の空間学』(東信堂、二〇〇八年)『生命と風景の哲学――「空間の履歴」から読み解く』(岩波書店、二〇一三年)、『わがまち再生プロジェクト』(角川書店、二〇一六年)、『何のための「教養」か』(ちくまプリマー新書、二〇一九年)など多数。

「2023年 『風土のなかの神々』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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