自由を考える―9・11以降の現代思想 (NHKブックス)

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レビュー : 29
  • Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140019672

感想・レビュー・書評

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  • 社会学者の大澤真幸と思想家の東浩紀が、3回にわたっておこなった対談を収録している本です。

    「自由を考える」というタイトルが示すように、管理社会の問題が中心的なテーマとなっています。本書のもとになった対談がおこなわれたのは東が『動物化するポストモダン』(講談社現代新書)を刊行したころでしたが、その後彼が『一般意志2.0』(講談社文庫)で展開するテーマがすでに明瞭なかたちで論じられています。同時に、東の初期の評論であり、現在は『郵便的不安たち#』(朝日文庫)に収録されている「ソルジェニーツィン論」に関心がつながっていることも語られていて、オタク論から東の思想に触れたわたくしにとっていささか把握しづらかった東の思想の領域が、かなり明瞭に見わたすことができるような気がしました。

    対談のなかで東は、大澤の弁証法的な議論の運びに対する批判をしばしば述べているのですが、たしかに弁証法的な図式に回収することで問題がクリアに見通せるようになることは否定しがたいように感じました。もちろんそのことにある種の危険性がともなうということも理解はできるのですが、東のほうも現代における「自由」について明瞭な結論を提示してはおらず、オープン・エンドのかたちで対談は締めくくられています。この点に不満をおぼえる読者もいるかもしれません。

  • 大学の頃に買ったと記憶していますが、買って以来おそらく7、8年本棚の肥やしになってました。買った当時は『動物化するポストモダン』が大変話題になった時期で、東浩紀がホットな思想家だったので、哲学科の学生だった私も気になって手に取ったと、そんなところでしょう。東浩紀の顔写真が若い上に、まだぽっちゃり(余計なお世話)。ともかく、何の気なしに手に取った今になってようやく通読し終わりました。

    3回にわたる対談で構成されています。大澤真幸が『文明の内なる衝突―テロ後の世界を考える』 (NHKブックス、2002)という本を出して(これはまだ私は未読)、その出版記念トークイベントが行われた。これが第1回。そして、それを発端に東氏と2回対談を行った記録が本書です。ベースとして、一方には「9.11」論である『文明の内なる衝突』までの思索の蓄積があり、また東浩紀の『動物化するポストモダン』(講談社現代新書、2001)の「動物化」論までの思索の蓄積が一方にある、そういう文脈の流れですね。その二人が、テロ以後の世界情勢、情報化社会についてそれぞれの視点からの分析をぶつけ合っています。これも本当にどうでもいい余計なお世話ですけれども、3回目の対談はクリスマスの日にホテルの一室というクローズドな形で行われたようですが、「対談を終えて高層階のレストランで夕食をとっていると、突然、聖歌隊を模した集団が現れ、クリスマスソングを合唱し始めたのを覚えている。周りはカップルだらけで、キャンドルが灯り、まるでバブル期のドラマの一画面のようだった。」(p.11)そうですね。いい年したおっさん二人が小難しい議論を戦わせた後にそれって……お前らのクリスマスの過ごし方こそ大丈夫か?……

    まぁでも真面目な話、この本での現状認識、この本で予測していることは、かなりの部分で的を得ている気がします。今これを書いている2016年現在までの、例えばイスラム国に至るまでの流れであるとか、ブッシュからオバマ、トランプに至る流れだとか、SNSの爆発的な流行だとか、監視カメラだらけの商店街だとか……。15年前に書かれたものだということを考えるとちょっとびっくりですが、それだけやはり「時代の閉塞感」みたいなものは15年前あるいはそれよりちょっと前くらいから、変わっていないんですね。
    今の時代は物質的に豊かでアクセスできる文化も多様で、一見自由を謳歌しているような気がするけど、どこか自由が奪われている気がする。そして、その奪われていると思う自由を考えてみろと言われてもどうも、しょーもない。社会は確かに進歩しているのかもしれないけれど、逆にその進歩は社会が自分をコントロールする方向で、進歩しているのではないか。自分が社会を作るんじゃなくて、社会によって「こういう社会でしか生きられない」ような自分にどんどん作り替えられていくような感じ。とにかく、神様とかそういうものではない、もっと物理的で直接的な何かに操られているような感じ。この本で問題にしている自由とは、自由に関する感覚というのは、平たく語ろうとすればこういうことなんじゃないでしょうか。
    大変分かります。端的に言えば、目に見えて「苦労」が減りましたよね。快適に、便利に、効率的に、そういうラク出来る方向に改善されていってますよね。そして、だからと言って不快になる自由、不便になる自由、効率が悪くなる自由、要するに苦労する自由、欲しいですかって言われるとそんなもの欲しいと思わないわけですよ。いや、欲しいと思う発想すら、私自身の生活を振り返ってもどこからも出てこない。
    ただし、その一方で「苦労」が減る代わりに、「苦労」を減らしてくれるもの(この本でいえば「情報技術」とそのの産物)に自分を預けなければいけない。というより、預けさせられる。現代人はスマホに自分の人生握られてますね。望んで、自分の意志でというより、望むように仕向けられてさえいますね。
    もう、「これが現代社会の現実だ」と言われれば、ぐうの音も出ない。時代認識としては真っ当です。そして、そういう時代認識に対抗しようとしても、既存の哲学・思想はほとんど役に立たない。そこで、「もう哲学に仕事はない」と諦めてしまうのは簡単だけど、それってどうなのか、まだできることってないだろうか、という危機感が読みながら伝わってくるようです。カフカの「掟の門」とかアガンベンとかアーレントとかデリダとかドゥルーズ=ガタリだとか飛び交いますけれど、根本にはともかくそういう危機感がこの本にはあると思います。ただ、危機感は期待の裏返しですから、どこかには必ずあるって信じてもいるはずで、そういうのも読んでいて感じました。
    大学の先生が考えそうなことだと思います。大学の頃、アカデミックの道に進むか悩んだときに「哲学に仕事はあるだろうか」ということについて私自身も考えていたことをふと思い出しました。そのことについてこの本を読んで改めて考え感じたことがあります。
    一つは、この本で「島宇宙化」というのが問題に挙がりますが、この対談で問題にするまでもなく、もっと以前から哲学・思想の世界は極度というか末期なほど「島宇宙化」してたんじゃないかなということ。世の中の流れとして「苦労」を避ける以上、「自分にとって都合が悪く、耳が痛いけど真実をついている話」にもやはり耳を貸さなくなってきているのは道理でしょう。そして、そういう話に耳を貸さなくなる必然の結果が「島宇宙化」だと私は思います。そういうことである以上、本来「自分にとって都合が悪く、耳が痛いけど真実をついている話」であるはずの哲学・思想の話がモテないのも道理だと思うんです。ただ、哲学・思想の世界も結局は自分の都合を優先しているというか、乱暴な言い方をしますが要するに殆どがワイドショーのコメンテーター以上の仕事をやってない。「哲学学んでもそこまで未来は明るくないなぁ」と、かつてそういう思いがよぎったのも、やはりあれは道理だったなぁと思いましたよね。
    もう一つは、古典の言葉自体がもう、錆びた包丁のようなもので、今日の現実に起きている問題を切り分けるということに関して全く使い物にならない、歯切れが悪くなっているんですね。だからこそこの本も、「新しい概念作っていこう!」みたいな、そんな終わり方です。そういう意味で仕事はあると思いますけれど、それにはやはり、大学に引きこもってカビの生えた本ばかり読んでいては(歴史の勉強とか、教養という面では非常に大事ではあるんですが)、もうダメなんでしょうねぇ。

  • 過去の著作からの繋がりも言及されつつ、『弱いつながり』に繋がっているのかなと思えるところが多々あったように思う
    そういう一貫性みたいのは結構好き
    しかし対談とかを読むたびに思うけど、いくら編集してるとはいえこんな長くてややこしいやり取りを口頭で行ってよくちゃんと認識できるな

  • 「人文的な方法で解決するしかない」がちょっとアレだけど
    面白かった。すっきりする。


    管理社会/監視社会/アーキテクチャ/環境管理型権力/ハッカー倫理

  • ラカン読みたいけど二万円はきつい。。。齋藤環の生き延びるためのラカンにつなげる。。

  • 自由は所詮、エネルギー消費量に規定されるのでは?

  • アレント読まんと

  • 2008.07 ちょっと難しいけどなんとなく、両著者の不自由な現代社会への危機感を理解することができたかな?

  • ¥105

著者プロフィール

東浩紀(あずま ひろき)
1971年東京生まれ。批評家・作家。ゲンロン代表。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。専門は哲学、表象文化論、情報社会論。
著書に『存在論的、郵便的』(サントリー学芸賞思想・歴史部門)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞受賞作)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015受賞作)ほか多数。『ゲンロン0 観光客の哲学』は第5回ブクログ大賞人文書部門、第71回毎日出版文化賞受賞作。

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