アナトリア発掘記 カマン・カレホユック遺跡の二十年 (NHKブックス 997)
- 日本放送出版協会 (2004年5月29日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (216ページ) / ISBN・EAN: 9784140019979
みんなの感想まとめ
考古学の情熱と古代のロマンが交錯する一冊で、著者の32年にわたるアナトリアでの発掘奮闘記が描かれています。著者は、トルコの遺跡を掘り進める中で、発掘権を得て自前の現場を持つという夢を実現し、数百万点の...
感想・レビュー・書評
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「アナトリア発掘記」大村幸弘著、NHKブックス、2004.05.30
214p ¥914 C1322 (2025.07.23読了)(2005.11.30購入)
副題「カマン・カレホユック遺跡の二十年」
【目次】
はじめに
第一章 トルコ留学とヒッタイト発掘―「鉄」との出会い
考古学との出会い
ヴィンクラーのボアズキョイ発掘
アナトリアに渡る
ほか
第二章 自分の考古資料を持つ―「発掘権」獲得
不安と無力感
厚い「壁」
自分の遺跡を持ちたい
ほか
第三章 地表から底まで掘り下げる―文化編年の構築
五千五百年の堆積
基礎研究の重要性
「攪乱」に惑わされたⅠ層
ほか
第四章 ヒッタイト、無敵の強さの謎―「良質」の鉄
ヒッタイトの鉄の「その後」
カマンでも鉄製品が出土
ヒッタイト帝国時代に「鋼」が存在した!
ほか
終章 今後の展開に期すること
今後の課題
文化編年の構築にかかわる課題
製鉄にかかわる課題
ほか
あとがき
参考文献
☆関連図書(既読)
「古代への情熱」シュリーマン著・村田数之亮訳、岩波文庫、1954.11.25
「埋もれた古代帝国」大村幸弘著、日本交通公社、1978.04.01
「鉄を生みだした帝国」大村幸弘著、NHKブックス、1981.05.20
「古代アナトリアの遺産」立田洋司著、近藤出版社、1977.01.10
「埋もれた秘境 カッパドキア」立田洋司著、講談社、1977.10.30
「トルコ史」ロベール・マントラン著・小山皓一郎訳、文庫クセジュ、1975.10.10
「スレイマン大帝」三橋冨治男著、清水書院、1971.09.20
「シルクロードの幻像」並河萬里著、新人物往来社、1975.03.10
「地中海 石と砂の世界」並河亮著、玉川選書、1977.12.25
「トルコという国」大島直政著、番町書房、1972.08.30
「遊牧民族の知恵」大島直政著、講談社現代新書、1979.06.20
「遊牧の世界(上)」松原正毅著、中公新書、1983.03.25
「遊牧の世界(下)」松原正毅著、中公新書、1983.03.25
「オリエントから永遠の都へ」大島直政・加藤久晴著、日本テレビ、1983.08.19
「ケマル・パシャ伝」大島直政著、新潮選書、1984.05.20
「トルコ民族主義」坂本勉著、講談社現代新書、1996.10.20
「トルコ 建国100年の自画像」内藤正典著、岩波新書、2023.08.18
(「BOOK」データベースより)
日本隊が初めて発掘権を獲得したカマン・カレホユック遺跡。オスマン時代から前期青銅器時代までの文化層を二十年にわたり掘り下げる。ヒッタイト崩壊後の「暗黒時代」解明のカギを握る曲線文様土器、ヒッタイト帝国時代に「鋼」の登場を告げる鉄片、古王国時代の巨大穀物貯蔵庫と大量の炭化小麦、アッシリア商人居留地時代の終焉を伝える焼土層の人骨-出土した遺構・遺物を分析し、五千五百年の歴史を考察する。「鉄」を追い求めた前著『鉄を生みだした帝国』から二十余年、そののちの展開をつづった待望の書。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
図書館で借りていたが時間がなく、走り読み。
冒頭の著者と考古学との出会いのエピソードがよかった。 -
2004年に執筆された書。
72年にトルコ(考古学上は、トルコ全域にあたる地域をアナトリアと呼称)のアンカラ大学に留学して以来32年間、現地に滞在して考古学研究、遺跡の発掘作業に従事してきた著者。苦労の末カマン・カレホユック遺跡の発掘権を得、発掘責任者として自分の発掘現場を持って19年。長年の遺跡発掘の夢を実現した著者の、発掘奮闘記。
アナトリアは東西文明の交差点で、オスマン帝国、ビザンツ帝国、ヒッタイト帝国の三つの帝国が栄え、国中に遺跡がゴロゴロしているが、そのほとんどは手付かずのままという。また、発掘の仕方が粗っぽく、興味関心のない遺物は保存・記録されず、しかも狭量の研究者が牛耳っている世界で、他人の発掘現場や遺物は調べることが出来ない。鉄に取りつかれ、何とかアナトリアに製鉄技術があったことを突き止めたい著者は、自前の発掘現場を持つことが夢になっていったという。
幸運にも発掘権を得た著者は、自前の発掘現場で、敢えて、コストを惜しまず土器のかけらを含めて全ての発掘品を整理し保管している。毎年百万点に及ぶ遺物が出土し、既に二千万点の遺物が収納されているという。何層にも過去の遺跡が折り重なった発掘現場は、掘れば次々と遺物が出てくるというが、その労力は半端ない(そのほとんどは論文ネタにならず、研究者として報われることの少ないボランタリーな作業なんだろうなあ)。鉄への拘りを捨てて「文化編年の構築」に徹している、という発掘姿勢も凄い。
著者によれば、ヒッタイト帝国(紀元前1700年頃~紀元前1200年頃)は製鉄技術を確立し、しかも良質の鋼を製造しており、そのノウハウは帝国外に漏れないように秘していたという。ヒッタイト、実際のところどんな国だったんだろう?
考古学者の情熱に古代のロマンを感じた一冊だった。 -
学者もサラリーマンもやっていることはあまり変わらないとおもった。一瞬のひらめきを得るためには地道な行為が必要。考古学ってロマンティックなひびきがあるけど現実は人間がうごかしているもの。なにかに固執するあまり周りや時間の距離感がつかめなくなってしまうのは残念なことだ。人間という単位では人生はみじかくはないが歴史単位ではみじかい。そのなかですばらしい業績をのこすひともいるし、後からくるひとのために道をのこすひともいる。
著者プロフィール
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