白の闇

  • 日本放送出版協会 (2001年2月27日発売)
3.93
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Amazon.co.jp ・本 (368ページ) / ISBN・EAN: 9784140053621

AIがまとめたこの本の要点

プレミアム

みんなの感想まとめ

独特な形式で描かれたこの作品は、登場人物の名前や会話文が一切なく、発言者の区別が難しいという珍しいスタイルが特徴です。それにもかかわらず、読み進めることができるのは、作者と訳者の技量によるものと感じら...

感想・レビュー・書評

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  • 登場人物の名前が一切出てこない、
    会話文に「 」がない(発言者の入替りが不明確、地の文との区別も不明確)
    という、とても珍しいタイプの小説。
    とは言え、特に読み難いということもなくスラスラ読めるのが逆に不思議なくらいでした。
    これが作者&訳者の力量なのでしょうね。

    あらすじは紹介されている通り。
    結末については賛否両論ありそうですが、私はこれで良かった派です。

  • ル=グウィンの書評から、早速気になった一冊を読了。ディティールの具体性や感情移入感を好む身としては、こういう寓話的で細部のリアリティに欠ける作風はあまり肌に馴染まないのが正直なところだが、しかし一つの思考実験のような作品として面白かった。視力という、肉体的なファンクションの一つに過ぎないものが多数から奪われただけでいとも容易く獣へと堕ちる、人や社会とは何なのか。

  • コロナ禍/パンデミックになった初期の混乱時に一番に思い出した作品。

    ホラー体験とは違う恐怖が描かれている。読んだ当時、もうやめてと思いながら頁をめくった記憶。

  • 感染性の「失明」により町が恐慌を来すという、カミュの『ペスト』のような劇が展開されるのだが、カミュのように主役の医者の超人的な姿はどこにも見えない。

    隔離された患者たちの内部で起こる争い、保菌者(?)たちの全滅をひそかに願う行政組織、など、人間社会のおぞましい姿が描かれて非常に不気味である。

    都市中の人間が失明したら、というワンテーマSFのような設定を梃子にして、人間の呆れるほどの暴力性を暴く。
    げに恐るべきは作家の想像力。

    ジョゼ・サラマーゴは大半の長編が日本語訳されているようなので、続けて読んでみたい。

  • 眼が見えなくなるという伝染病に国民全てが罹ってしまったら。想像を絶する世界が繰り広げられるのに、まるでその世界の様子すら白くぼやけて見えてくるような不思議な小説。

  • 突然目が見えなくなる奇病。しかも伝染するため、人々は次々に視覚を失いパニックが起こり社会(的なもの?)が崩壊した。
    社会的秩序を失った時に現れる人間の本性のようなものを2タイプに分けて描いている。すなわち自分の本能に従い暴力的になるタイプと、自らを組織し助け合うことを選ぶタイプ。突き詰めると人間との本性というのは、暴力と組織、なのかな。
    それとも「組織する」能力が人と動物を分ける鍵なのかも。

  • 結構分厚い本だが一気に読んでしまった。突然目が見えなくなると言う病気。しかも人に感染する。まさに今読むべき本だと感じた。

  • 人々が次々に視力を失うというシンプルなテーマをこれでもかと掘り下げた内容。その人間性への深い洞察力には気分が悪くなってくる。文体は確かに読み難いし、皮肉な語り口が鼻につくところもあったが、次々に人々が白い闇に閉ざされていく冒頭部分から「次はどうなる、どんな酷いことが起こるんだ?」という不謹慎な好奇心をかき立てられ、流れるように最後まで読み進めた。好き・嫌いを別としても凄い小説を読んだという満足感と充実感がある。

  • 3.87/188
    内容(「BOOK」データベースより)
    『ある男が突然、失明した。視界がまっ白になる病気。原因不明のまま、伝染病のように感染は広がってゆく。政府はかつての精神病院を収容所にして、患者の隔離をはじめる。そこでは、秩序が崩壊し、人間の本性がむきだしになってゆく。阿鼻叫喚の世界。やがて国中が目の見えなくなる病気に侵されて…。圧倒的な空想力で描かれる現代の寓話。ヨーロッパで最も独創的な作家の衝撃的作品。1998年ノーベル文学賞受賞者・サラマーゴの最高傑作。』


    原書名:『Ensaio sobre a Cegueira』(英語版『Blindness』)
    著者:ジョゼ・サラマーゴ (Jos´e Saramago)
    訳者:雨沢 泰
    出版社 ‏: ‎日本放送出版協会
    単行本 : ‎365ページ
    ISBN‏ : ‎9784140053621

    メモ:
    ・世界文学ベスト100冊(Norwegian Book Clubs)
    ・死ぬまでに読むべき小説1000冊(The Guardian)「Guardian's 1000 novels everyone must read」

  • 涙の犬
    人々が視力を失った世界で起こること いかに普段当り前のようにソーシャルワークを享受しているか、人間性の崩壊、無秩序
    高橋源一郎氏は社会の構造を見えなくさせるのが“白の闇”ではないか?との指摘 我々はパンデミックの以前から見えているようで見ていなかったのではないか

  • 水が飲めることの幸せ
    食べ物が食べられることの幸せ
    目が見えることの幸せ
    当たり前のことがありがたいと思える。
    自分の悩みはまだまだ贅沢なんだなと感じさせられる。
    そういう話だった。

    非現実的な話なのにそこまで思わせてくれるのは、極限状態に至った時の人間の言動がとても生々しくて、想像できたからだろうなあ。

    また自分がくだらないことでうじうじしたり悩んだりしたら読みたいと思う。

    しかし、この結末の先を想像すると、そっちの方が怖いよな……
    最後の描写は、いっそ目が見えなくなってしまいたい、という隠れた願望もあるような……

  • 突然の盲目、それが伝染する恐ろしさ。
    不潔な環境の描写がリアル。
    こういう状況でも、男はそこまで性を求めるものなのかなぁ・・
    医者の妻の行動力がすごい。

    途中から文章に飽きて、斜め読みで読み終えたが
    雰囲気にはどっぷり浸かったので
    しばらく「今ここで全員盲目になったら」妄想しそう

  • 今まで読んで来た本の中で、人間の残虐性を最も深く描いた作品ということを先ず、一番に思った。
    「わたしたちすべての目が見えなくなったら?」、「極限状態に追い詰められた人間の、弱さと魂の力」と、本の紹介文にあるが、「魂の力」? それはあったかも知れないが、人間の弱さが圧倒的で、その「力」は今にも消えそうな、乏しいものに感じた。
    1998年ノーベル文学賞受賞作品であるらしい。カミュの「ペスト」が読みたかったのに、手に入らないので読んだ本だが、自分の好みの世界ではないなぁ、と、感じつつも、あっという間に読まされてしまった。

  • 文庫本が発売されたので、欲しかったのだが即売り切れ。
    図書館で初版を見つけて読了。
    まず、文体が独特です。語りと会話の間に記号(「」)がない。1ページに活字が詰まっているので、読みにくく感じましたが一気に読み進みました。
    ある日突然視界が真っ白になる病気。原因は不明。伝染病のように広がっていきます。
    人間が理性や尊厳の念を失った時、何が起こるのか…
    暴力的な描写に(特に性暴力)読んでいて胸が苦しくなります。これは小説の世界だけではなく、リアルな行為だと感じるからです。哲学的な投げかけが印象的な小説でした。

  • コロナ騒ぎの今を映したようで、リアルで怖かった。
    我々は見えているが見えていない。みんな盲目なのだ。  
    目が見える事を前提として作られた文明の中で、視力がなくなれば、人間は理性を失い、無秩序の混沌の中でとことん自己中心的に、暴力的になれる。社会は崩壊し、人間の尊厳は地に堕ちる。言葉の死、という表現が何回か出てくるのは、秩序が消滅したことを示しているのだろうか。
    一方で、売春をしてきたサングラスの娘が黒い眼帯の老人を愛し、目が見えるようになってもなおその愛を失わないように、何も見えない極限状態の中で見えるようになる真価もある。
    医者の妻の勇敢さと愛がかっこいい。50手前の彼女のことを美しいと女たちが褒める場面があるが、目に見える世界では美しくないものも、心の目で見れば美しいこともある。

  • なんて言うか、すごい深遠なテーマを扱った本なんだけど、とにかく文章が読みにくいことこの上ない感じ。異常な事態に陥った人々の人間性が試されると言うか…。内容はすごく考えさせられるものなんだけど、訳なのか元の文章なのか。主体がしょっちゅう変わるし、「」がないうえに、誰の言葉なのかがその都度変わっていたり。
    ものすごく読むのに時間がかかってしまった。
    それにしても恐ろしい世界だった。今自分にその事態が起きたらと想像すると、とても医者の奥さんグループのように生きられるか…

  • 難しい事を解りやすく、硬い事を柔らかく、ノーベル賞作家が読者に歩み寄った快作。

  • 世界最高小説100の一冊。ポルトガル出身のノーベル賞作家、ジョゼ・サラマーゴ著。
     あるとき、突然、自動車を運転していた男が失明する。目の前が真っ白の闇になり、何も見えなくなってしまうという奇病である。しかもそれは瞬く間に伝染する、男を助けた男性、男の妻、最初にかかった眼科医、その診療所の待合室にいた少年、サングラスの女、受付の女性。最初の男が失明してからほぼ1日経ち、その深刻さを薄ぼんやりと自覚し始めた政府は患者と患者予備軍の感染者を精神病院として使っていた建物に隔離する。始め、10人に満たない隔離患者だったのが、時が経つと数十人に増え、最後には病院に収まらない300人ほどの白い失明者で溢れた。主人公ははじめの男がかかった眼科医の妻。ただこの妻だけはなぜか失明を免れた。理由は最後までわからない。しかし、自分が患者だと偽り、眼科医とともに最初の患者として精神病院に送られ、そこで巻き起こる予想しうる最悪の出来事たちをつぶさに見届ける目撃者になる。
     完全隔離の施設である。外に出ようとすれば、監視している軍隊に銃殺される。近寄るだけで失明する伝染病である。巷ではその視界に入るだけで、失明すると言われてもいるらしい。恐怖のあまり自失した兵士に撃ち殺された10人を越える患者も現れ、その病院内の隔離された空間で、それぞれが生き延びなくてはいけなくなる。当たり前の生活が当たり前にできなくなる。トイレ、シャワーから始まり、食料問題がすぐに起こり、その空間の中でも支配しようとするもの、されるもの、反抗するものが骨肉の闘争を繰り広げる。院内での問題が深刻化する中、外の世界は白の闇がより深刻に世界を蔓延していた。

     サスペンス・スリラーのようなプロットを持ちつつ、現代の我々の社会が直面する問題をえぐる。白い闇の患者と読者をリンクさせるためか、登場人物はすべて、名前ではなく職業や外面の特徴だけで語られる。より無機質であり、しかしそこにより強い現れ難い個性のくすぶりがこもる。我々は盲目であるというのが、著者の気づきであり、メッセージであった。
     物語の最後、医者の妻が夫に語る言葉が印象的である。
     「私たちは目が見えなくなったんじゃない。私たちは目が見えないのよ。目が見えないのに、見えていると?目が見える、目の見えない人々。でも見ていない。」
     最後にはすべての人の目が開ける。見てくれを超えた愛の実りも私たちに与えてくれる感動がある。発表されて60年近い時がたったが、この寓話が我々に投げかけるものは、当時よりも一層深刻に感じる。

    J.S.バッハ「音楽の捧げもの」を聞きながら

    13/12/9

  • 突然人々が失明した世界がおぞましいほどリアル。最後まで登場人物に名前はない。一人だけ失明を逃れ、すべてを目撃する医者の妻・涙の犬・教会で眼を白く覆われていた人物像、物語として面白いし示唆的。「目が見える、目の見えない人びと。でも、見ていない。」

  • 車で信号待ちをしていた男が突然失明した。パニックに陥る彼を家まで送り届けた親切な男は、彼の車を盗んだ後に失明する。道端でうろたえる車泥棒を助けた警察官も失明し、最初に失明した男の妻も、彼を診察した眼科医も、眼科医の患者達もみな失明する。彼らの視界はミルク色の白い闇に覆われ、病はやがて国中に広がっていった。政府はもとは精神病院だった建物を利用して、失明した患者達と、彼らと接触のあった者達を隔離する。だが病院はすぐに満杯になり、秩序は崩壊する。病院の見張りを命ぜられた軍隊は、病気の感染を恐れるあまり、外に出ようとする患者を射殺し、中にいる者たちは食料と支配権を巡って争い合う。凄惨な暴力が蔓延していった結果、病院は火事になり、生き残った者達は地獄のような世界から外界へ戻る。そこは既に、地獄以上の場所に成り果てていた。

    ある日突然、全ての人々の目が見えなくなったらどうなるか?
    もしもボックスに入っても容易に口には出せなさそうな世界を、淡々とした筆致で書き切る、見事な想像力と創造力。現実的に考えれば、もともとの視覚障害者がアテンドすることになるのだろうが、更に考えて行くとやはり世界は無秩序のち崩壊へと進むしかないかもしれない。
    そんな世界を、悲壮なまでの冷静さで見つめているのが医者の妻で、何故か彼女だけが失明していない。夫の為に目が見えなくなった振りをして病院に入り、そこで巡り会った縁ある人々の為に行動する。話は彼女の視点で進むことになるかと思いきや必ずしもそうではなく、誰にも添わない三人称の語りは、遠くから世界を眺めているようでありながら、いつしか自分も視力を喪った人々の中に入り込んでしまっているような気にもさせられる。だから、ラストで医者の妻が『わたしの番だ』と思うとき、足元が崩れるような恐怖を感じるのだ。
    人々が突然失明した理由は明らかにならず、突然快復した理由もまた分からない。喪失があり破壊があり、癒され再生したとき、そこに見える世界を支配しているものは絶望だけかもしれない。だが見えない地獄を生きてきたように、見える地獄をもまた、人々は生きて行かねばならない。医者の妻の言葉は、示唆に満ちている。
    見えるか見えないか。見えているか見ていないか。いずれにせよそこには、命という名前がついている。

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著者プロフィール

1953年東京生まれ。早稲田大学文学部卒業。翻訳家。訳書にサラマーゴ『白の闇』『だれも死なない日』、P・ハミル『マンハッタンを歩く』、N・スパークス『きみに読む物語』、S・キング『ドラゴンの眼』など。

「2023年 『見ること』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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