白い犬とブランコ 莫言自選短編集

著者 :
  • NHK出版
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本棚登録 : 60
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (261ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140054369

作品紹介・あらすじ

中国農村の営みを詩情豊かに描く。ここに、中国で最もノーベル賞に近い作家の原点がある。

感想・レビュー・書評

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  • 2012年ノーベル文学賞受賞、莫言(1955-)の短編小説集である。基本的には下卑で残酷で醜く愚かだが、とても、たくましい中国の農民たちの物語である。時代は清末から文革ごろまで、著者の軍隊経験や祖父・曾祖父に托して語られている。題材はプロレタリア文学だが、柳田国男がいっているように百姓というのは農業だけをやっている存在ではなく、ときに匪賊ともなり、人を簡単に殺したりするが、人間なので悩みもし、悲しみもし、極貧なるがゆえに生活の喜びも鮮烈なのである。小説のつくりとしてはうまい。農民のリアルを書いていくうちに、一種不思議な世界にいってしまうのである。構成も凝っていて十分鑑賞に堪える。川端康成の『雪国』から表題作を着想したという序文や、スタンフォードで2000年に行った公演「飢餓と孤独がわが創作の財産である」という「あとがき」がとても面白い。1960年代、石炭を見たことがなかった著者らはみんなで食った。「確かにうまかった」そうだ。知識青年と障害者になった幼なじみの恋愛を書いた表題作、出産神話のような「洪水」、農民の飢餓を書いた「猟銃」、農村の美しさを書いた「夜の漁」、「豚肉売りの娘」「初恋」などとても面白い。

  • 莫言ファンです!映画も観ました。
    2003.10.25(平成15)発行

  • 配置場所:摂枚フマニオ
    請求記号:923.7||M
    資料ID:20400147

  • あの懐かしい中国の田舎が描かれる。異国なのに懐かしいです。

  • 不衛生な短編集。きつくはないけど、リアルな不潔描写。読んでいて埃っぽさがまとわりついてくる。ゆえに莫言は優れているのだろう。

    ノーベル賞は村上春樹の1Q84かなって思っていたら莫言だったので読了。

    この人が生きた60年代の中国の風景が伝わってくる短編集でした。
    きっと現代の人が当時の生活をしろって言われたら、気持ち悪くて吐瀉物まみれになるだろう。
    けれど、当時を生きた著者にとってそれは日常だった。だからか、文中での表現は、決してその不衛生な生活に苦しさのようなものを感じない。

    だから読みやすいと思う。ポジティヴである。

    小説を読んでいて胸糞悪いと思うことがあるが、それは胸糞が悪くなるよう表現されたものだからである。この莫言のように、自分の思うままに描けば、汚い物も自然のままのように表現できるのだと思った。
    今後は表現の味方が変わると思う。

    ___

    さて、この物語一つ一つを読んでいると、昔の人は本当に逞しくて、驚く!!
    また、現代人はいざという時本当に大丈夫だろうか・・・と、不安にさせられる。

    もし今、天変地異でも起きたら、除菌世代の私たちは免疫力の低さであっという間に命を落としていくんだろうな。
    莫言の生きた文革時代の中国は行き過ぎだが、現代にもある程度免疫力とか体力を鍛えられるシステムがあった方がイイよなと思う。
    まぁ、実際にそういった危機が起きてからじゃないと無理だろうけど。次の関東大震災で感染症で死者多数になったらどうかなぁ・・・。

    前に、齢を迎えた方に人生を語ってもらったんだが、生きる上で必要な能力をこう教えてもらった。
    ①食にありつく力 ②言語能力 ③忘れた

    この本を読みながら①のことを思った。

    何としても生きるためには、何が食えるか、どうやったら食えるかを身につけなくてはいけない。
    現代人は穀物を収穫したまま渡されても、食べられない。いや、食べて腹を壊すだろう。

    現代人は、都市という個の生存を可能にするシステムを手に入れたが、一度そこから外れたら、まず食っていけなくなる。

    そうならないように私はなりたい。

  • 比較的初期の短篇集。コーリャンが重要な小道具として登場する点など、赤いコーリャンに通じるところがある。短編ということで実験的な作品であったり、感情に訴えてくる作品であったりなど、長編とはまた違った味わいがある。

  • 川端康成の小説の一節にインスピレーションを受けたという短編で始まった故郷を描いたシリーズ。中国で深刻な飢饉や文革を生き延びた、同時代人とは思えないほど濃い内容。解放軍の話はほとんど自伝というか私小説?中国のガルシア・マルケスという異名があるとか…納得。

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著者プロフィール

中国・山東省高密県出身。小学校中退後、1976年に人民解放軍に入隊し、執筆活動を開始。『赤い高粱(コーリャン)』(1987年)が映画化され世界的な注目を集める。「魔術的リアリズム」の手法で中国農村を描く作品が多く、代表作に『酒国』『豊乳肥臀』『白檀の刑』など。2012年10月、ノーベル文学賞を受賞。

「2013年 『変』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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