鬼哭青山遥かなり

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (441ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140054802

作品紹介・あらすじ

60年前に花岡で何が起きたのか。中国人強制連行労働者による一斉蜂起事件を現代に問う、渾身の書き下ろし長編ミステリー。

感想・レビュー・書評

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  • 【鬼哭青山遥かなり】 北上秋彦さん  身元不明の浮浪者風の老女が「さいーじ・・・」の言葉を残し、東京・九段坂の雑居ビルの前で口から血泡を吐き息絶えた。外表監察の第一所見では毒物による中毒症状と判断され自殺とも他殺ともわからない。翌日、監察医による行政解剖の結果が出た。死因は「トリカブト」による中毒死で、自他殺の判断はつきかねるというモノだった。

    麹町署の女刑事・広瀬紅巡査は本庁から応援に来ている捜査一課の白鳥清美巡査部長とコンビを組まされ現場周辺の聞き込みを命じられた。頑固親父を絵に描いたような白鳥の強引で独善的な捜査手法に憤る紅。白鳥は老婆の死に場所に着目し、現場のすぐ目の前にある檜山建設が老婆の目指した目的地だと推測する。そして、この事件は60年前の花岡事件と関連していると断言する。

    捜査が進むにつれ紅は、終戦間際に日本人が中国人強制連行者に対して行った悪行を知りその非道と凄惨さに胸を痛める。。。



    初めて読む作家さんですが、すごくよかったです。イロイロと考えさせられて、内容に引き込まれました。日本人の感覚(加害者の感覚)と中国人の感覚(被害者の感覚)の隔たりが
    なるほどと思いました。日本人は「あの時は戦争だったから仕方が無い」「上官に逆らえばただでは済まない、だから仕方がなかったんだ」「国をあげて、そういう軍国主義の教育をしてきたから」などなど。。 けれども、家族を殺された被害者の立場にしてみれば、それでは済ませられない。そんな言い訳は聞きたくない。。というコトでしょう。。

    それぞれが、相手の立場を想像するコトは出来ても、当事者にならないと理解できないコトも多いというコトを、この本を読んでいて何度も感じました。

    最後に「悲惨な歴史を忘れず、若い世代に事実を伝え、戦争のない平和な世界が続く事を祈ります」という行があります。

    戦争の事実を伝える事は再び戦争を起こさない事。日本人が中国人に対して行った非道の数々を伝える事も、再び同じような悲劇が
    起こる事のないようにという願いを込めて伝えるべきなのに、今の日中関係を見ていると逆に火種になっているような気がする。

    歴史を伝えるということは憎しみを後世に語り継ぐのではなく、過ちを犯さないために語り継ぐべきものであると信じます。

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著者プロフィール

1950年岩手県生まれ。ミステリー短編「現場痕」でデビュー。第三回北東文芸賞受賞。著書に『種の終焉 The Killer Virus 殺人菌』『クラッシュ・ゲーム』『種の復活』『戒厳令1999』『種の起源 The Origin of Species』『闇の殺戮者』『呪葬』『白兵』『火炎都市』『現場痕』『鬼哭青山遥かなり』『吸血蟲』『死霊列車』『異郷の夏』など。

「2018年 『謀略軌道 新幹線最終指令』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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