神の手(上)

著者 :
  • 日本放送出版協会
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  • Amazon.co.jp ・本 (368ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140055830

作品紹介・あらすじ

現代医療では、安楽死の問題は避けて通れない。法律では認められていないが、それに近いことが、現場ではさまざまな形で密かに行われている。安楽死は慈悲か、殺人か。それを行う医師は「神の手」を預託されたのも同然である。安楽死法の制定をめぐって、医師、患者、政治家、官僚などが、それぞれの思惑から闘いを繰り広げる。安楽死法が制定されていちばん得をするのはだれなのか。医療の世界の光と闇を、余すところなく描き切る。

感想・レビュー・書評

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  • 目の前に痛みに苦しむ末期がんの患者がいて、これ以上治療を続けても苦痛ばかりになると予想されるなら、本人の意思で楽にあせてあげてもいいんじゃないかと考えてしまう。
    ちゃんと治るなら頑張りがいもあるけど、そうでないなら苦痛を取り除いて欲しいな。
    ただ、どこまで人が介入していいものなのか。
    考えてもなかなか答えが出そうにない。

  • WOWOWの放送が始まったので読んでみたが、原作はドラマ以上にどろどろで、読むのが辛くなってきた。下巻は飛ばし読みになりそうだ。医師が本業の作家は例えミステリーであっても感動系のストーリーが多いのに、この作家の作品は読後感が悪い。

  • 21歳の若い男性が末期の肛門ガンで入院している。
    常時激しい痛みに苦しんでいるが、若く体力があるためすぐに死が訪れることはない。
    この患者の主治医である白川が、この作品の主人公。
    助かる見込みの全くない患者が苦しみ続けても延命治療をするのが医療なのか。
    苦痛を取り除くために安楽死を選択するのが医療なのか。

    安楽死の是非から、医師会や政治家の権力争い、安楽死法の成立・医療庁の設置と、話がどんどん大きくなり、白川が大きな流れに翻弄されていく。

    安楽死をテーマに書かれた作品と思って読んでいたのだけれど、医療改革 → ロビー活動とどんどん奥が深くなっていって、もともと暗~い重~い内容が、底なし沼が渦を巻いてくる。読了してもその渦がそのまま残っている。

    『廃用身』も暗~く重かったけれど、この人の書く作品って、みんなこんな感じなんだろうか?

  • なんという壮大なスケール!安楽死(尊厳死)の是非がテーマなのは知っていたけれど、まさか日本医師会を崩壊させて、医療庁が発足、安楽死のための薬の開発、そして安楽死のための具体的な法律、そしてネオナチ思想まで絡んでくるとは!安楽死にまつわる医者と患者の複雑な気持ちから、金の動き、政治の変化、安楽死を行う根本的な思想を見つめなおしたりなど、これ一冊ですごい充実感を得られた。久坂部さんのこれまでの書籍を何冊も読んでいると感じられる、「医者と患者の関係」「無駄に長生きする弊害」などに対する久坂部さんの思いや迷いが、さらに凝縮されている書籍でもあるとも思った。

  • 現代医療の葛藤、不条理さを、安楽死とゆう医療の一生抱え得る問題をテーマで綴った、非常に秀逸な作品でした。また、理想と現場、どちらも欠くことは出来ない医療の真理であると、考えさせられる作品でした(_ _)

  • 久坂部 羊「神の手」上下

    久々のどっしりとした医療もの。
    日本における安楽死(尊厳死)の考え方を、あらためて思い直させるとても深くて意味のある内容。実際に自分だったらどう考えるか、読者にストレートに問いかけています。
    「廃用身」や「破裂」のような衝撃は無いものの、じわじわと真綿で首を絞めるような怖さと不安感。政治と医療の複雑な関係。”センセイ”と呼ばれる不気味な黒幕。ぞくぞくするほど面白かった。

    主人公白川だけが正気を持ち、最後まで自分を貫いていることが救いです。その白川をも普通の中年男として描かれていることが、全体の生々しさを増長させていてひきつけられます。

    長さを全く感じさせない展開の早さ。今年一番のお勧めです。

  • 医療小説と言ったら、久坂部羊は外せない。今回のテーマは「安楽死」。「安楽死」に絡む医療従事者の苦悩が悶々と描かれるのかと思いきや、医療現場の葛藤から始まり、「安楽死法案」成立に向けての政治の世界の駆け引き、マスコミのグロさ、世間を包む”空気”の変わり方などなど、実に広く深く描かれている。「えっ!」っとなった所で『下』に続く…。

  • 最初の苦しんでいる描写で興味を持った分、後半で政党とか制度とかの話が多くなってきて読むのがきつかった。下巻も読んでみる。

  • 読んだ。下巻に感想あり。

  • テーマは安楽死。

    若い肛門がんの患者を治療するのですが上手くいかず、最後は麻薬系の麻酔も効かないぐらい痛みに苦しみます。

    面倒を見ていたおばさんが、正常を保っていられなくなり、結果的に医師が薬を大量に投与し、安楽死みたいな感じになります。

    それが後日問題になり、安楽死反対側や賛成側の争いにその医師が巻き込まれるような感じになっていきます。

    まだ下巻もあるのでここまでの感想として、患者の母親に腹がたちます。

    いや、あんた、仕事と子供、どっちが大事よ?仕事をとったなら、後でぎゃあぎゃあ言うな!と、言いたいです。

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著者プロフィール

医師・作家・大阪人間科学大学教授

「2016年 『とまどう男たち―死に方編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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