ユニコーン ジョルジュ・サンドの遺言

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  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140056417

作品紹介・あらすじ

タピスリーの貴婦人は、ジョルジュ・サンドに助けを求めた。中世美術の最高傑作「貴婦人と一角獣」に秘められた物語が、幕を開ける。ジョルジュ・サンドの短編も収載。

感想・レビュー・書評

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  • これから謎が解き明かされていくそんな小説だった。
    フィクションでありながらノンフィクションに近い。
    でもミステリアスでひきこまれていく。
    ジョルジュ・サンドの子どもたちが一瞬にして城主の女性に懐いていき、サンドは毎晩同じ夢にうなされる。
    今まで名前しか知らなかったジョルジュ・サンドが時を超えて身近な人になっていく錯覚。
    せっかくだから、サンドの恋人だったショパンを聴きながら読もうとBGMにしたが、
    ショパンよりも悪魔的な音楽の方があっているかもしれない。
    「アマデウス」でいうなら交響曲第25番。
    いや「ドン・ジュバンニ」かな。

    マハさんは、是非続編を、、、。

  • 「貴婦人と一角獣」タピスリーのに魅せられた小説家、ジョルジュ・サンドを主人公にした物語。開いてすぐ、タピストリー6点の美しさに惹き付けられる。

    「それが、それだけが、私の唯一の望みー」
    ある一つの望みを未来に託し、ジョルジュ・サンドは永遠の眠りにつく。
    パリの左岸にあるクリュニー美術館の初代館長・ソムラールは、サンドから託された遺言に対し「最後にあなたに会ったとき、あんなにも強く働きかけられた提案を、あなたが生きているあいだに、なんとしても実現させたかった。けれど、やはり、障壁は厚く、高かったのです。なかなか、飛び越せなかった。ーけれど、あなたが、最後の最後まで気に留めていた、あの作品をーなんとしても、私は、手に入れるつもりなのです。あなたの遺言を守らぬような男ではないことを、きっといつか、証明して見せましょう。」と本作では残しており、物語が始まっていく。

    まず、主人公・ジョルジュ・サンドだが、この名前はペンネームである。
    貴族の血を引く軍人の父と、庶民の貧しい家庭の母との間にパリで生まれ、4歳で父を亡くし、祖母に預けられるが、17歳で祖母が他界。18歳でカジミール・デュドヴァンと結婚。19歳で長男・モーリスを出産。24歳で長女ソランジュを出産。26歳で小説家志望の19歳のジュール・サンドと恋に落ちる。
    この時のサンドがジュールと合作小説を書いたとき「J・サンド」のペンネームを使い、「ジョルジュ・サンド」と名乗るきっかけになるなったようだ。

    サンドについて。調べたところ、男女関係においても華やかなようで、さらに社会に対しても非常に革新的な考え方を持っていた。例えば、男装をして葉巻を吸うスタイルで知られた流行作家のようで、デビュー当時は男性として世に知られていたようで、今から考えるとフェミニズムの先駆者的な存在の人物であろう。

    そのサンドとユニコーンとの繋がりが記された本作だが、盛り上がる前に、タペストリーの謎、「貴婦人と一角獣」に秘められた謎、ソムラールが遺言執行をなす前に終わってしまった…泣

  • 主人公はジョルジュ・サンド。
    実在の人物であり、ショパンの恋人であった人。
    私のイメージでは恋多き自由人という感じ。

    そして主人公はもう一人、古城のタペスリーに描かれている美女。
    彼女は高貴で若く美しくユニコーンをも従え、手に入られないものは無いという雰囲気で、300年の時を過ごしていました。

    本書のテーマは多分この美女の望み、a mon seul desir.
    それは、美術品としての永遠の命だと解釈されていったようですが、私には他にもありそうに感じられました。
    望みを託される人物であるサンドは、世間に何と思われようが女性として自由に人生を謳歌している人。
    タペスリーの彼女も又、そのように生きてみたかったのかもしれません。

    ちなみにこの貴婦人と一角獣のタペスリーは、2013年に日本で見られた様です。当時の私は全く興味が無くて、見に行っていません。現在はパリで見られるそうなので、中だるみになっているフランス語のレッスンを再開しようと思った次第です。(デュオリンゴで)

  • フレデリック・ショパンの恋人として有名な作家、ジョルジュ・サンドとブサックの丘陵地帯にある美しい田園風景の広がる、中世の城の城主の女性と貴婦人と一角獣『ユニコーン』のタピストリーを巡る物語。

    ジョルジュ・サンドが、まだショパンに出逢って間もないころ、城に子供たちと逗留したサンドは、城主の女性ポーリーヌになぜか、新しい恋の予感まで話してしまいます。
    ポーリーヌは壁にたくさん掛けてある貴婦人と一角獣のタピストリーについて不思議な話を聴かされ、「タピストリーを買いとって欲しい」と言われます。
    ーわたくしを連れていってくださらなかったら、決して帰しませんことよ-とポーリーヌにせまられてサンドは城を離れますが、城から離れても、同じ夢を何度も見ます。
    あのタピストリーの貴婦人は、ポーリーヌ、その人だったのか?
    タピストリーの謎。
    ショパンの他に、仲間の画家ウジェーヌ・ドラクロワ。パリ左岸にあるクリュニー美術館の初代館長のエドモン・デュ・ソムラール他、華やかなパリの社交界の顔ぶれが何名か登場します。
    ショパンとの恋を期待して読んだら、貴婦人と一角獣の不思議な物語でした。
    真夏の夜に読むのにふさわしい大人のおとぎ話のような小品でした。

    赤を基調とした美しいタピストリーの実物写真が数枚と城の写真つきです。
    ジョルジュ・サンドのタピストリーについての文献も二篇ついています。

  • 本のページをめくると、まず始めに目に飛び込んでくるのは、赤を基調とした美しいタピスリー。
    6枚の連作が見開きで掲載されており、まじまじと作品を眺めることができます。
    貴婦人の物憂げな表情やうっとりとした一角獣の眼差しに、その後ろに隠された物語への好奇心を刺激され、心の準備が整ったところで原田マハさんの作品が始まります。

    謎めいたタピスリー「貴婦人と一角獣」をモチーフにした物語。
    主人公はこのタピスリーに魅了された小説家・ジョルジュ・サンドです。
    彼女とタピスリーの出会い、不思議な夢、そして最期に彼女が託したこと…。

    短いストーリーでしたが、どうやらこれは序章であるとのこと。
    少し物足りなさを感じましたが、映画の予告編のようなもの…と思うことにしたら、俄然本編が楽しみになってきました。

  • 「貴婦人と一角獣」という美しいタピスリーをめぐる物語。
    カラー図版が何枚も入り、美しい装丁で持っていたくなる本です。

    19世紀の女流小説家ジョルジュ・サンド。
    男名前でデビューし、サロンの花形となり、男装や芸術家との恋愛遍歴で有名でした。
    ゆかりの人々が駆けつける葬儀の場面から始まります。
    弔辞は「レ・ミゼラブル」の作家ヴィクトル・ユゴー。

    サンドはノアンに祖母から継いだ館を持ち、ノアンとパリを行ったり来たりしていました。
    病気が流行したために、かねて招かれていたブサックの城に滞在することに。
    城の女主人ポーリーヌは寡婦で一族の最後の生き残り。品のいい女性でサンドの愛読者なのでした。サンドの子供達もすぐに懐きます。

    サンドが驚いたのは、城中にかかっている見事なタピスリー。
    中でも、赤い地に貴婦人と一角獣の絵が織り出されたものには不思議な魅力がありました。
    謎めいたモチーフの意味は何なのか。
    オスマン帝国の王子ジェムが亡命していた時代に、ジェムが恋した女性を描いたものという伝説もあるという‥

    サンドが、城を訪れた際にこのタピスリーに強い印象を受けたのは、史実。
    それを元に、古城の女主人、サンドの見た夢、高名な作家や画家や美術コレクターなどが登場し、タピスリーの謎と行方を描いたムードのある展開。
    ただ直接出てこないショパンは有名だけど、もうサンドの作品もあまり読まれていないし、他の人物がどういう人なのか‥

    サンド自身が書き残したものも巻末に載っています。
    文中の言葉が冒頭に載っていますが、「まだましだ」という言い方ではタピスリーをあまり褒めてない。
    直訳なのでしょうが~文章全体の意図からすると、もっと違う表現がよかったのではと思います。

    これは序章なのだそうで、そうとは知らなかったから、この短さはいささか肩すかし。これから何年もかけて、この続きを書くんだそう。
    サンドをはじめとして濃厚なキャラが多いので~話はまだまだこれから☆楽しみに待ってますよ!

    • kwosaさん
      sanaさん

      Eテレの『日曜美術館』で、おそらくこの物語のモチーフになったであろうタピスリーを観ました。
      その時のゲストがまさに原田...
      sanaさん

      Eテレの『日曜美術館』で、おそらくこの物語のモチーフになったであろうタピスリーを観ました。
      その時のゲストがまさに原田マハさん。

      六枚あったタピスリーはどれも引きこまれるような美しさで、特に最後の一枚は神秘的で謎に満ちており、いろいろ想像力を掻き立てられるものでした。

      この本、読んでみたいです。
      表紙も美しいですね。
      2014/03/18
    • sanaさん
      kwosaさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます~☆
      私もその番組、見ましたよー!
      本当に魅力的なタピスリーですよね。
      ム...
      kwosaさん、こんばんは。
      コメントありがとうございます~☆
      私もその番組、見ましたよー!
      本当に魅力的なタピスリーですよね。
      ムードのある女性や、素敵な衣装、細かいモチーフ、色合いも大好きです。
      美術館に保管されたからいいけど、危うく埋もれたままになるところだったそうですね。
      この本は、図版が入っているのが嬉しいんですよ。
      黒地にしたこの表紙も、本当に素敵ですね^^
      2014/03/21
  • シックで素敵な黒い表紙を開く。
    思わず、はっと息をのむ。
    赤く美しい織物の世界が、見開きで何ページにもわたって広がります。
    『貴婦人と一角獣』のタピスリー
    (私には “タペストリー” の方が馴染み深いけれど)の登場です。
    300年以上、今で考えると500年以上の歴史を持つ、
    妖艶で美しいタピスリーの図柄を追って、
    原田マハさんのアートフィクションが展開されます。
    いっとき、少し怖くて不思議な世界に連れ去られました。

    作者本人が巻末に「本作は史実をもとにしたフィクションです」と
    記しているこの作品は、『ジョルジュ・サンドの遺言』と副題がついています。
    ジョルジュ・サンドのタピスリーへの強い想いをめぐる…というより、
    タピスリーの貴婦人からのジョルジュ・サンドへの魂の呼びかけ、
    という設定で物語が進みます。
    ジョルジュ・サンドは、19世紀のフランスの女流作家で、
    初期のフェミニストとしても知られた人のようです。
    恋人のショパン、友人の画家ドラクロワも登場します。
    200年前のフランスで自由奔放に生きた作家と、壁を彩る芸術作品の出会いに、
    幻想性と、そして華やかさも感じた作品でした。

  • マハさんの本にしては散らかった感が。
    これ、NHK出版だから、何かの番組とのタイアップだろうか。マハさんの書く物語が読みたい人にはちょっとお勧めできないけど、タペスリーの写真もたくさんあって、綺麗な1冊ではあります。

  • 史実をもとにしたジョルジュ・サンドの短編3本を収録した1冊。
    「ジョルジュ・サンドって、どこかで聞いたことあるな…」とおもったら、Eテレ「クラシックTV」でショパンについての放送回で、ショパンの恋人として紹介されていたのを見たからでした。

    本書ではジョルジュ・サンドの葬列のさまを描いたもの、ジョルジュ・サンドがまだ30代だった頃、縁あってたずねた古城での出来事を書いたもの、そしてそれから数年後、古城でみたタペストリーについての話が書かれたものが、史実に基づくフィクションとして書かれています。
    そして巻末には、ジョルジュ・サンドの著作より、タペストリーの描写のある部分が付章として収録されていました。

    ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

    短編1本1本のクオリティはとても高かったのですが、これから先はどうなるのだろう?というところでお話が終わってしまい、断片的な物語たちだったので、読み終わったあと、物足りなく感じてしまいました。

    また、当然のことではあるのですが、原田マハさんによる物語部分と、ジョルジュ・サンドによる付章の文章は、まったく印象が違います。
    そのためか、付章は内容に入りこめず、読みきることができませんでした。
    (読みきれなかった本は☆1にしています)

    ネットでジョルジュ・サンドについて簡単にまとめた文章を読むと、なかなかの波乱万丈さに驚きます。
    ショパンの恋人という目線だけでなく、ひとりの女性として、人間として、作家としての生き方が、本当にジョルジュ・サンドという人でなければ歩めない、唯一の人生のようにおもえました。
    この1冊を序章としたジョルジュ・サンドの半生を書いた小説があとに続くならば、この1冊もとても重要な位置付けになったのではないかな、とおもいました。

  • ショパンの恋人で、彼を支えたジョルジュ・サンド。

    彼女がブサック城に逗留したときに目にした「貴婦人と一角獣」のタピスリー。

    その中の女性が
    「ここから私を出して」
    何度も夢に出てきてサンドに訴えかける・・・。

    史実から想像の翼をはためかせるいい小説だと直感では分かる。

    ただ、私の知識不足。堪能まではほど遠い。

    原田マハさん、美術面だけでなく、文章そのものの響き、頭への入りやすさが私にとって非常に魅力的なので、できるだけたくさん、作品を追いかけようと思っている。

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著者プロフィール

1962年東京都生まれ。関西学院大学文学部、早稲田大学第二文学部卒業。森美術館設立準備室勤務、MoMAへの派遣を経て独立。フリーのキュレーター、カルチャーライターとして活躍する。2005年『カフーを待ちわびて』で、「日本ラブストーリー大賞」を受賞し、小説家デビュー。12年『楽園のカンヴァス』で、「山本周五郎賞」を受賞。17年『リーチ先生』で、「新田次郎文学賞」を受賞する。その他著書に、『本日は、お日柄もよく』『キネマの神様』『常設展示室』『リボルバー』『黒い絵』等がある。

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