クジラアタマの王様

著者 :
  • NHK出版
3.62
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本棚登録 : 2534
レビュー : 338
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140057063

作品紹介・あらすじ

待望の最新書き下ろし長篇小説

巧みな仕掛けとエンターテインメントの王道を
貫いたストーリーによって、
伊坂幸太郎の小説が新たな魅力を放った
ノンストップ活劇エンターテインメント。


異物混入、政治家、アイドル、
人々の集まる広場、巨獣、投げる矢、動かない鳥――。

伊坂幸太郎の神髄がここに。

感想・レビュー・書評

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  • 伊坂先生に子どもが生まれてからか、作品に、”大切な存在を守るため”という部分が協調されるようになってきている感じがする。
    一方で、「シーソーモンスター」からの伏線、P236、P253!他にもあるのかもしれないけれど、古参を放置しない、過去作品とのリンクを取り入れてくださっているところは、なんとも言葉にしがたい喜びがあります。

    漫画部分を物語の本筋部分に載せるのではなく、本筋とは少しずれた部分に載せることで、読者側にも「あー、そんな描写あったなー」と、ぼんやりとだけれど鮮明に思い出させるような、つまりは夢で見たような感覚を彷彿とさせる、そうした効果があったのか、どうか。

    伊坂先生の、ラストへ向かっていくシーンは毎度のことながら苦しく、震えが止まらなくなったりする。それでもページをめくる手が止まらないんだ。
    あとがきで、アクションシーンについてこう触れています。
    「アクションをただ文章化するだけでなく、文章だからこそ楽しめる工夫を凝らすことを意識したくなります」
    ここ何作品か、思い当たるところありまくりで。最近は本当に、躍動感・臨場感あるシーンをとても丁寧に、ページを割いている感があって、そうかそういうことか、と、妙に納得したり。アクションシーンだけでなく、アクションシーンへ盛り上げていくまでのパフォーマンスや、それに付随する細やかな心理描写も毎度のことながら秀逸です。これが、手を震えさせながらも、ページを次から次へと進ませる。

    ずっと一人の作家さんの作品を読み続けていると、作家さんの変化に気付けたり、今大切にしていることが分かったり、それを体感できるのが、醍醐味。

    次回作では、どんな世界へ連れて行ってくれるんだろうと、またそんな気持ちにしてくれる。

  • う〜ん、どうかなぁ。
    エンターテインメント性はあるし、するする読める語り口とか、いつもの伊坂ワールドで嫌いではないんだけど…

    伊坂さんの文体は、村上春樹さんの文体に似ている、と常々思うが、この小説は「あっちの世界」と「こっちの世界」を主人公が行き来する構成まで似ていた。
    村上さんは何の脈絡もない2つの世界が繋がっているように読ませてしまう力があるけど、伊坂さんのこの小説に関しては残念ながら多少強引さが否めない。

    次作に期待します。

    ちなみに、「クジラアタマの王様」とはハシビロコウの学名(ラテン語)。ハシビロコウは嘴と目つきがとても凛々しい鳥で東京だと上野動物園で見られるらしい。

    • やまさん
      たけさん
      こんばんは。
      やま
      たけさん
      こんばんは。
      やま
      2019/11/09
  • 伊坂作品らしい冒険小説。
    モンスタークレイマーとか 炎上とか 自然災害によるインフラ破壊とか 薬屋と政治家の癒着とか 使われている素材は 生々しくイマを反映する。
    社会風刺であり 政治風刺である。

    中でも 後半に据えられているのはパンデミック。
    たぶん  SARS MARS 豚インフルなどから着想を得ていらっしゃるのだろうし 2015年のTEDでのゲイツの発言や ダン・ブラウンのインフェルノ 上橋菜穂子の鹿の王 など ウイルスをモチーフにしたヒット作もある。
    作品作りのリサーチをすれば 普通に出会う素材ではあったのだろう。

    それでも、人々やメディアの反応 薬事をめぐるあれこれは 現在進行形でのコロナ禍とかなりシンクロしている。伊坂氏の社会を見る目の確かさをあらためて感じる。
    ちょうど 1年前 2019年7月9日に出版された作品ゆえ、”伊坂は預言者か!?”というコメントが並ぶのも当然でしょう。

    ただ あくまでも娯楽作品らしく お話自体は軽やかに進む。小説のアクションシーンを補完するために 漫画を挿入したい というアイディアが以前からあったらしい。
    本作ではそれを実現。
    ハシビロコウの登場も いかにもビジュアルを意識した作品にふさわしい。
    エンタテイナーだなぁと思う。

    ずっと放置していたのだけれど コロナ禍の時期に読んでちょうどよかった。
    これ、子供向けにも 書き直されないかなぁ ......

  • ハシビロコウ、火事、そして夢。
    幾つもの共通点が、出逢うはずのなかった三人の男達を結びつける。
    自分の中に存在する別の"自分"が、こことは違う場所で闘い続ける。
    そして現実と夢が重なり合う時、新たな敵に追い詰められる。

    要所要所に漫画を取り入れる、という伊坂さんの新しいチャレンジに楽しませてもらった。
    作品のイメージを崩さずに、むしろいいアクセントになったと思う。
    相変わらず伏線の回収も鮮やかで。
    伊坂さんの挑戦はどこまで続くのか。
    次回作への期待感も高まってくる。

  • 製菓会社広報部に勤める僕こと岸は製品の異物混入のクレーム電話をかけてきた女性の夫で、都議会議員の池野内、ダンスグループの人気メンバーの小沢ヒジリと知り合います。
    三人は八年前、金沢のホテルに偶然、一緒に宿泊した際火事に遭っています。

    そして僕と僕の妻は、サファリランド「サンファンランド」で猛獣に襲われ、側にいたヒジリと池野内議員の機転により救われるという事件も起きます。

    その後、池野内議員が、自分たち三人が「夢の中で、あの生き物に勝つと現実で直面している問題が解決するんですよ」と言い出します。
    「異物混入も戦いに勝ったから大事にならずに済んだのだ」と言います。
    「八年前の火事の時、助かったのも、オオトカゲに三人で、夢の中で勝ったからだ」と言います。
    僕は半信半疑ですが、小沢ヒジリも同調するようになります。

    そして、十五年後、僕の娘の佳凛が世界的に流行し始めた驚異的な新型インフルエンザに患り、強制的に隔離されます。そして、海外から帰ったヒジリもり患して重篤で、命が危険になります。

    そして僕は、池野内厚生労働大臣の甚大なる助けにより、解決策を見出していきますが、そこにまた敵が現れて阻止しようとするのと、最大の戦いが始まります。

    最後は、いつも通り伏線が鮮やかに回収されていくさまが見事です。
    伊坂さんの作品は『フーガはユーガ』『スピンモンスター』と少々つらい話が続きましたが、今回はちょっと不思議な冒険活劇です。安心して読めました。
    川口澄子さんのコミックパートがついていて、優しいタッチの線に癒されます。

  • 2020年積読本消化36冊目。

    伊坂さんの作品は『重力ピエロ』『死神の精度』『クジラアタマの王様』の3作品しか読んだことがない。どれもこれも世界観がまったく違っていて、その幅広さに驚かされた。

    夢の中で出合い共に戦う3人の戦士たちは、ふとしたことから現実世界でも目に見えない縁にひき寄せられて協力し合う同士のような関係になる。

    “トラブルの連続こそが人生と言っていい。”(257ページ)
    様々なトラブル、荒波を越えてみな必死に生きているのだということが伝わってきた。リスクマネージメント、リスク分散、それを阻むプライドや古い因習。指示するだけで、後は知らずの動かないトップ。痛烈というか風刺めいていて、ちょっと自己啓発じみていて、、、
    世の中って何も変わっていないんだなぁ…いつも同じことの繰り返しで人類は何も学んでないのかな…なんて思ってしまいました。

    栩木係長の話のあたりが一番歯がゆくて、(くっそー、この部長たちめ!と腹が立ち)つい感情移入した。
    動物よりも
    “人間同士のほうがよほどぎくしゃくしている”(111ページ)

    うん。うちの子供たちも同じことをよく言ってる。
    動物になりたいし動物たちのほうが序列さえ決まってしまえば無駄な争いを避けるから賢いんだって。

    わたしはいつも笑ってそれを聞いているけど
    この作品を読んで自分のこれからの生き方、身の振り方とかをきちんと考え直さないといけないと思ってしまった。

  • 夢の世界と現実の世界。夢の世界でクジラアタマの王様の指令により敵を倒してゆく。倒してゆくことで現実の世界でトラブルを乗り越えてゆく。二つの世界はリンクしている。そして闘う仲間がいた。同じ世界の夢を見るのは、製菓会社広報部・岸、人気のダンサー、政治家。夢の中で負けてしまったという彼らに現実で待ち受けるものは…
    それはそれは伊坂さんの世界は楽しい。しかし。どうにもこうにも。期待しすぎなのか、こちらが歳をとったのか、いや好みが変わったのか。どうも違う方向に行っている感じがする。笑いがくどいし、面白さに弾みがつかなかった。夢と勇気の物語? 少々期待外れ。自己犠牲とか人間お愚かさとか、教訓めいて(ストレートすぎ?)変な感じ。複線回収、コミック部があるのはいいけど、爽快感やらキラメキ、切れ味は薄いと感じた。

  • この物語の内容を全く知らずに読み始め、途中で恐ろしくなり「この本はいつ発売されたものなの!?」と確認してしまった…
    伊坂氏は予言者なのですか!?

    世界中がコロナに怯える今、読むべき本なのか、はたまたその逆なのか分からないけれど、この物語の結末には希望が見えた。現実にもそうであって欲しいと切に願う。

  • 「クジラアタマの王様」とはラテン語で
    ハシビロコウのこと。
    表紙の絵も。
    ただ、ハシビロコウ大好きの私にとっては、
    「ちょっとね…」というお話でした。

    でも内容はとても面白かったし
    川口澄子さんのイラストも非常に良かったです。

    そして個人的には「短期的には非難されても、大局的には大勢の人を救うほうを選ぶべきじゃないの」がよかったです。
    ちょうど今朝Oさんにあって、久しぶりに笑顔で話しかけられました。
    1年半位前にいろいろあって、「Oさんに嫌われちゃったかな」と思っていたのです。
    でも、それは仕方ないこと(自分は正しいことをしたのだから)と思っていました。
    そのOさんとの事と、この言葉がマッチして、嬉しかったです。

  • 川口さんのコミックとのコラボ作品。
    最初はコミックとの関係が充分にはわからず、結構見飛ばしてしまいましたが、途中からは、それこそ霧が晴れたようになって、物語を補強してくれました。
    あとがきでの伊坂さんのもくろみは、成功していると思います。
    物語は、伊坂さんらしく、不思議な世界観です。よくあるパターンかもしれませんが、コミックで躍動感あふれる作品になったと思います。
    ラストシーンで本のタイトルの意味がわかります。
    仙台が舞台ではないのも、この本の特徴です。
    金沢に行ってみたくなりましたが、火事は嫌だなぁ。

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著者プロフィール

伊坂 幸太郎(いさか こうたろう)
1971年千葉県生まれの作家。東北大学法学部卒業後、SEとして働きながら文学賞応募し、2000年『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞受賞、デビュー作となる。その後作家専業となり、宮城県仙台市に在住しながら執筆を続けている。2004年『アヒルと鴨のコインロッカー』で第25回吉川英治文学新人賞、同年『死神の精度』で第57回日本推理作家協会賞短編部門、2006年平成17年度宮城県芸術選奨文芸部門、2008年『ゴールデンスランバー』で第5回本屋大賞、第21回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。同作で直木賞の選考対象となることを辞退したことも話題になった。上記受賞作のほか、『重力ピエロ』、『バイバイ、ブラックバード』、『アイネクライネナハトムジーク』など話題となる作品は多い。代表作も殆どが映画化されている。最新作に『フーガはユーガ』。

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