NHKブックス別巻 思想地図 vol.5 特集・社会の批評

制作 : 東浩紀  北田暁大 
  • NHK出版
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レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140093481

作品紹介・あらすじ

今、社会に対する批評はいかにして可能か。九〇年代以降、社会批評の主役となった社会学。そのあり方を徹底的に吟味し、社会学的思考と社会批評がどこで重なり、どこで異なるのかを探っていく。社会に内在しながら社会を捉えなければならないという、社会学に不可避の困難を見据えながら、哲学から統計学、政治学にいたる隣接領域の成果もふまえ、社会と向き合う「知」の可能性と限界を示す。思想地図第一期、ここに完結。

感想・レビュー・書評

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  • 菅原 琢 (2010) 「アメリカ化」する日本の政治学――政権交代後の研究業界と若手研究者問題
    pp. 381-405.

    この頃の日本の政治学の水準では統計データの分析によるCausal Inferenceの真の難しさがあまり理解されていなかったように思われる。本来は、単に回帰分析を行うだけではとても十分な研究にはなり得ず、媒介変数の影響をできる限り特定し、その上で説明変数と従属変数の間の因果効果を測定するという、従来の(naiveな?)計量分析よりもややこしい手順を踏まないと正しい分析として認められるべきではだろう。

    そうした本来的な難しさがあることに加えて、計量分析研究が粗製乱造されやすい研究環境がある(とした場合)ということは政治学自体の信頼性に対する疑わしさを招くことに繋がるだろう。本論文では「亥年現象」に関する2つの研究において結論が全くの正反対になっているという例が挙げられている。不十分なモデルと不十分な計量分析に基づく研究からは進歩が生まれないのが政治学(社会科学)の難しさだ。政治学には基礎となるべきground theoryがない。Ground theoryのないなかで、マクロ的な政治現象の因果関係を解明しようとすれば、定性的にせよ定量的にせよ、現実のデータに基づいた議論を行わなければならない。基礎理論がない以上、データをよく説明できるような理論を作り上げる必要がある。計量分析はその点において、分析作業の手順が明確であるため、確かに正確な研究を行うのはややこしいとはいえ、社会科学の発展に寄与するはずだと思う。現実のデータをどのように扱えば、よい研究となり、政治学を正しい方向へ進めることができるのか、そのことが研究者に問われているといえる。

  • ccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccccc共同討議 闘いとしての政治/信念としての政治 / 野中広務, 姜尚中, 森達也, 北田暁大 述
    特集・社会の批評 社会の批評introduction / 北田暁大 著
    社会への問い 思想の言葉と社会学の知 / 橋爪大三郎 著
    「社会学」という不自由 / 長谷正人 著
    馬鹿げたことは理にかなっている / 永井均 著
    東京の政治学/社会学 / 橋本健二, 原武史, 北田暁大 述
    社会の批評 サブカルチャー/社会学の非対称性と批評のゆくえ / 佐藤俊樹 著
    キャラクターをめぐる「批評」「社会学」「社会科学」 / 稲葉振一郎 著
    妄想の共同体 / 東園子 著
    俺たちの空 / 瓜生吉則 著
    文学/批評と社会学 / 遠藤知巳 著
    社会の数理 推論の限界 / 小島寛之 著
    統計学で社会を捉える / 星野伸明 著
    「アメリカ化」する日本の政治学 / 菅原琢 著

    著者:野中広務(1955-、南丹市、政治家)、姜尚中(Kang Sang-jung, 1950-、熊本市、政治学)、森達也(1956-、呉市、TVディレクター)、北田暁大(1971-、神奈川県、社会学)、橋爪大三郎(1948-、神奈川県、社会学)、長谷正人(1959-、千葉県、社会学)、永井均(1951-、東京、哲学)、橋本健二(1959-、石川県、社会学)、原武史(1962-、渋谷区、政治学)、佐藤俊樹(1963-、広島市安佐南区、社会学)、稲葉振一郎(1963-、東京都、経済学)、東園子(社会学)、瓜生吉則(社会学)、遠藤知巳(社会学)、小島寛之(1958-、東京都、経済学)、星野伸明(経済学)、菅原琢(1976-、東京都、政治学)

  • 北田 暁大さんの責任編集によるVol.5は王道路線なのですが、やや散漫で迫力に欠ける気がしました。
    自分の関心が本書のテーマから別のところへ移りつつあるのかも知れません。

  • 一番最後の菅原論文。

    「若手だけ競争し、負担を負うという構造は、最も研究成果を出せる年代を潰し、研究全体の質と効率性を著しく損なわせるという意味で、社会の利益をも損なっている」(p403~404)

    若手は就職のために実績を作らないといけないにもかかわらず、安定した身分もないし、場合によっては色々なプロジェクトにかかわらされて、じっくり研究に取り組めない。それに比して老齢の正規教員は、論文を投稿するメリットがないので研究をあまりしなくなる人がいる。しかも身分保障はされている。これじゃあ、若手はいい面の皮だし、使いつぶされて気がついたら就職が極めて難しい年齢になっちゃうよ、という話だと思う。

    一般的には「そうだなあ」と思うけど、自分自身に置き換えて考えると「そうだなあ」と単純には思えないところもある。僕は〈プロジェクトにかかわらされて使いつぶされる〉位置に、まさに居ると思う。しかも、僕の師匠はあんまり研究然とした研究をしていない(本人にそう言うと、怒るだろうけど)。

    でも僕は実はそのことにあまり怒りを覚えていない。というのも〈もしプロジェクトにかかわっていなかったら、ちゃんとした研究ができて、就職もできる〉とは思えないからだ。僕は研究がそれほど好きではなくて(嫌いじゃないけど)、すぐゴロゴロしたり映画を見たりしてしまう怠惰な人間である。だから、時間があったらあったで、大して何もしないと思う。でも、気持ちだけは焦って、精神的に追い詰められてしまうと思う。現に、博士課程にいたころの最後のほうから、助教になるまでは、そんな感じだった。そういうふうに思うので、まだ仕事があるほうがマシだし、その隙に論文を書いてるほうが、とりあえずまだ気が楽なのである。

    と書くと、「お前はスポイルされている」と言われそうな気もするし、実際4年後「使いつぶされた」典型になるのかもしれない。でも、僕は4年後よりも、明日のご飯の心配のほうをしてしまう短期的視野しか持っていないのだ。研究者に全然向いてないんじゃないか、と前から思うけど、それ以上に他の仕事にも向いていないと思うので、やむをえず研究にしがみつかざるをえないのだ。

    で、ここまでは自分の現状と照らし合わせた感想である。だからといって、就職はやっぱりしたいし、あんまり研究していない老齢の研究者には怒りを覚えることもある(ましてや定年延長なんて…)。いい研究をしてると評価されている人にはしかるべきポストが与えられるべきだし、ほとんど誰も就職できないような状況は、絶対に変えてほしい、変えないといけないと感じている。

    そんなわけで、僕のなかの個別意思と一般意思がなんか奇妙に同居しているということを、論文を読んで感じたのだった。

  • 北田さんの見方が変わった。全体を通して、これまでの「批評」に対する批判意識が通底されており、刺激的だった。
    これを持って「思想地図」を一旦〆るというのは、挑戦的だったんだなあと思う。

  •  北田さん編集。やおいについての論文が秀逸。

  • 社会の数理(統計)のところが記憶に残った。
    2つの話題があった。
    ・進化ゲーム、協調ゲームとしての考察可能性
    ・統計を通した考察可能性
    統計で社会考察するとは、思考のモデル化であるということ。(現実のモデル化ではない)
    また、社会学における母集団の考え方では、有限母集団を拡張して超母集団を考える。そこから層別抽出が正当化され、ベイズともつながるというところが目から鱗だった。

  • 銀魂について述べられてる

  • 関係性の消費かー。

  • 東園子の「やおい」考察が面白かった。

    「やおい」は、原作から人物相関図を抜き出し、原作でなされる「友人」や「ライバル」といった関係性の説明を、「恋人」といった恋愛的なものに置き換えて物語を作るもの。

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著者プロフィール

東浩紀(あずま ひろき)
1971年東京生まれ。批評家・作家。ゲンロン代表。東京大学大学院総合文化研究科博士課程修了(学術博士)。専門は哲学、表象文化論、情報社会論。
著書に『存在論的、郵便的』(サントリー学芸賞思想・歴史部門)、『動物化するポストモダン』、『クォンタム・ファミリーズ』(第23回三島由紀夫賞受賞作)、『一般意志2.0』、『弱いつながり』(紀伊國屋じんぶん大賞2015受賞作)ほか多数。『ゲンロン0 観光客の哲学』は第5回ブクログ大賞人文書部門、第71回毎日出版文化賞受賞作。

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