赤いツァーリ 下 スターリン,封印された生涯

  • 日本放送出版協会 (1996年4月1日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (488ページ) / ISBN・EAN: 9784140802564

みんなの感想まとめ

権力の渦巻く歴史を描いた本作は、スターリンの圧倒的な存在感とその影響力を中心に展開します。上巻から続く物語は、スターリンがヒトラーとの戦争を経て、仲間を次々と粛清していく様子を描写し、彼の私生活にも焦...

感想・レビュー・書評

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  • 赤いツァーリ(皇帝)となっていく、スターリン。ソ連樹立の政争劇から、その皇帝の崩御まで。物語は佳境に入り、佳境を超え、静かに終わりに向かっていく。

    この本と並行してマルレーヌ・ラリュエルによる『ファシズムとロシア』を読んでいたが、読めば読むほど、ロシアの置かれた複雑さが日本にも通底する事に気付く。それと、スターリンというツァーリを生み出した構造的な事象について。目の前の人間を殺戮しながら追い求めるコミュニズムの理想とは何か。その過程にファシズムは必要だったのか。だとしたら、ヒトラーと何が違うと言えるだろうか。

    ― 彼はある時自分に向けられた拍手喝采について言った。「国民はツァーリが必要なのだ」と。ツァーリ、つまり国民が服従し、その名において生き、そして働くことができる人である」彼は何度かツァーリについて語っている・・「何世紀もロシア民族はツァーリの治下にあったことを考えなければならない。ロシア民族はツァーリ主義者だ、ロシア民族はトップに誰か一人の人間を戴くことに慣れてしまったのだ」。そして今、強情なレーニン親衛隊の撲滅を準備しながら、彼は未来のツアールストヴォ(帝国)を考えていた。亡命者の一人が彼の血の粛清後に「ロシアの専制君主を生み出すためには、多くの血を流さなければならなかった」と言ったのも、故なきことではない。

    頭が混乱する。真のツァーリであった、ニコライ・ロマノフを銃殺したのは、1917年の 二月革命後、革命派(ボリシェビキ)だったではないか。皇帝を否定したボリシェビキが、ゾンビのように再びツァーリを作り上げた。

    レーニンは「プロレタリア独裁」という概念を持ち出し、理想に至るまでの過渡期には強力な国家権力が必要だと正当化した。スターリンはそれをさらに拡大し、事実上のツァーリ的独裁を築いた。つまり、「共産主義の理想=国家が不要になる社会」だったのに、現実のロシアでは「理想に至るためには国家と強権的リーダーが必要」という逆説に陥っていく。

    コミュニズムの理想にツァーリは本来必要ない。しかしロシア的条件(社会構造・歴史・外圧)では、理想に向かうために「強いツァーリ」が必要だとされ、結果的に理想が裏切られた。この延長上に、フランシスフクヤマのいう歴史の終わりを錯覚し、私たちの世界がある。スターリンという役者が問題だったのか。また、理想は別の形で成就し得るのか。興味は尽きない。

  • ふむ

  • 上巻はスターリンがレーニン死後に権力をにぎるまでであったが、下巻はスターリンがヒットラーとの戦争を経て、さらに仲間をどんどん粛清して殺していく場面であった。それだけでなく、スターリンの妻、息子の話まで出てきた。最後はスターリンの死で終わっていた。

  • なんともいえず読了感でいっぱいになる。キーロフ暗殺から始まる大静粛を経て、第二次世界大戦、着々と準備される第三次世界大戦へと物語りは進むが、何といってもスターリンのエネルギーに圧倒される。関わりある者全てを疑い、操り、思いのままに動かして静粛していく人物と、その歴史。膨大な資料やインタビューを基に、本書はこれをドラマチックに描き出している。

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