ドキュメント・プーチンのロシア (NHKスペシャルセレクション)
- 日本放送出版協会 (2003年8月28日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (400ページ) / ISBN・EAN: 9784140808092
みんなの感想まとめ
テーマは、プーチン大統領の権力の昇進とロシアの現状、未来に向けた展望です。本書は、NHKスペシャルで放映された「ドキュメント・ロシア」の内容を基に、さらに取材を重ねたもので、400ページにわたる読み応...
感想・レビュー・書評
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以前にNHKスペシャルで放映した「ドキュメント・ロシア」<前編 プーチン 権力への階段><後編 プーチン 苦渋の決断>という番組の内容に他の機会に取材した内容を加えてまとめた本です。
400ページもあるのですが、番組などの取材を中心に構成されているので、NHKスペシャルのようなドキュメンタリー番組を見ているような感覚で非常に読みやすいです。KGB出身の政治界では無名に近かったプーチンが権力の座に就くまでの逸話、領土問題をめぐる対日政策、米国でのテロ前後での対米協調路線など興味深い話が満載で、ロシアの現在を知り未来を考えるのに必要な最低限の知識は網羅できるでしょう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
NHK番組の書籍化なので、
著者の意見というより事実を淡々と述べている感じの内容。
プーチン政権下でのできごとがほぼ広く浅くですが網羅されています。
部屋に1冊置いておいて、記憶が飛んだときに参照できる辞書のような本。
だから感想あれこれでなく目次のようなものを残しておきます。
というか欲しいなこれ。
■プーチン関連
▼エリツィンファミリー関連
●時事関連
【第1部 権力への階段】
【第1章 サンプトペテルブルク時代】
■KGB東ドイツ・ドレスデン時代
■大学の恩師ソプチャクとの再会と、彼のサンプトペテルブルク市長当選
→対外関係委員会議長就任
→サンクトペテルブルク市第一副市長(外国企業誘致に貢献)
■市長選でのソプチャク敗北とプーチンの辞職
→一時無職に・・・
■エリツィンファミリーのパーヴェル・ボロジン大統領府総務局長からの抜擢
→ロシア大統領府総務局次長に就任・モスクワに異動
【第2章 クレムリンの権力闘争】
■アレクセイ・クドリンによるロシア大統領府総務局長・大統領府副長官への推薦
→中央省庁や地方の行政機関の監視という仕事はつまらなく辞職も考える
■大統領府第一副長官に就任
→地方の監督や知事との連絡という仕事内容は最も楽しい仕事だった
■スピード出世でFSB長官に就任
▼エリツィンは「傀儡にされないような強く進歩的で共産主義と無縁」の後継者を探していた
→チェルノムイルジン首相を解任 : 高齢と人気不足と決断力不足
→キリエンコ政権崩壊 : 財政再建策が議会で否決され危機を乗り切れなかった
→プリマコフ首相就任 : 高齢で中立的なため後継者としてでなく中継ぎとして採用
▼プリマコフ首相がベレゾフスキー(エリツィンファミリー)らの汚職摘発を開始
自身がエリツィン大統領から解任されない法改正の提案を挙げる
■FSB長官としてスクラートフ検事総長の女性スキャンダル摘発
→これがエリツィンの信頼を得るきっかけに・・・
▼IMF追加融資などで実績をあげ、人気の出てきたプリマコフ首相を突如解任
→反エリツィンが多数の下院でエリツィン大統領への弾劾手続き審議開始するも失敗
【第3章 エリツィンの後継者】
▼就任したてのステパーシン首相を解任
同時にプーチンを自身の後継者として指名(無名の人物に国民驚愕)
→プリマコフが中道連合「祖国・全ロシア」結成・リーダーに就任
●チェチェン武装勢力ダゲスタンに進行
■プーチン、首相に任命される
● クレムリンで無差別爆弾テロが発生
第二次チェチェン戦争へ突入
→強い軍事侵攻により国民からの首相支持率急上昇(プリマコフを抜く)
▼エリツィン大統領が突然の辞任・プーチンを大統領代行に指名
【第2部 強いロシアの復活を目指して】
【第4章 大統領就任】
■2000年3月6日大統領選挙で半数以上の支持を受けて当選
→国民が求めていたのは「金融危機の克服」「秩序の確立」「治安の安定」
■大統領就任直前に「千年紀のはざまにあるロシア」という論文などからの政策検証
≪経済面≫
経済面で原料エネルギーや軍需産業を偏って重視し、
高度技術などの最重要部門に関心を払わなかったことによる世界的競争力の低下。
GDPは1990sから半減し、アメリカの10分の1であるという現実。
毎年8%の成長率を実現してもスペインらに追いつくには15年かかるということ。
≪市場経済と民主主義≫
官僚の不正、新興財閥や大企業の特別扱いを防ぎ市場を守らねばならないこと。
税金を引き下げ、徴収額を増やす税制に改革し、合計の税収入をあげること。
≪法治国家の建設≫
法律を遵守し、長期的展望の開ける社会を作ること。
【第5章 権力とメディアと財閥】
■メディア・モスト強制捜査とグレンスキー逮捕・事実上の国外追放
→海外出国と引き換えにメディアモスト売却に同意させられたと海外から暴露
■ORT(ロシア公共テレビ)大株主のベレゾフスキーを事実上の国外追放
→ORTの株式をプーチン政権に忠実なアブラモヴィッチに売却
■NTV(独立テレビ)の筆頭株主がメディア・モストからガスプロム・メディアへ
→ガスプロム・メディアはプーチン政権寄りの天然ガスの会社
政権批判したキャスターが事情聴取されたり、経営陣交代などで直接介入
→反発した政権批判急先鋒のキセリョフらが民間でTV6を立ち上げ
この立ち上げには国外追放となったベレゾフスキーも関わっています
→突然TV6の放送免許剥奪・放送停止に・・・
これによりベレゾフスキーの所有するテレビの支配権はほぼゼロに。
(新聞社は所有するもののロシアにおける影響力が強いのは圧倒的にテレビ)
→TV6の所有していた放送免許は非営利の民間組織メディア・ソツィウム(TVS)へ・・・
プーチン政権を支持するプリマコフ元首相や財閥によるテレビ局
キセリョフらの復帰も認められるが1年後、TVSも突然打ち切られた
現在国営のスポーツ放送局がチャンネルを使用している
●チェチェン武装勢力による劇場占拠事件:報道への批判
■プーチン政権下の巨大財閥グループ
→経済の枠を越えて政治的な問題に踏み込まないように締め付けを強化
≪A≫≪エリツィン前大統領の側近グループ「ファミリー」に属する財閥関係者≫
ロマン・アブラモビッチ氏
(大手石油会社シブネフチの実質的オーナーで、エリツィン一家の金庫番)
オレク・デリパスカ氏
(ロシア最大のアルミニウム企業ロシア・アルミニウム会長)
ミハイル・ホドルコフスキー氏
(石油業界最大手のユコス会長)
≪B≫≪石油・銅・アルミニウムなどの資源を握る産業財閥関係者≫
【第6章 強権政治で国内の安定実現】
■プーチンの連邦改革構想3法案
→地方知事・市町村長・議会への解任権を持ち、彼らの免責特権を剥奪
共産党に対抗して地方支持を得るために規制緩和していたエリツィンとは異なる方向性
「国内的な脅威の方が外からの脅威よりも深刻」
「この脅威は国の憲法的な体制にかかわるもの」
→表面上は支持するもののバルコルトスタン共和国などは強く抵抗
中央に歯向かう知事の追い落としの実施
≪クルスク州ルツコイ知事≫
エリツィン時代初期に副大統領も勤めたが大統領と対立。
立てこもった最高会議ビルに砲撃を浴び、逮捕されるが、恩赦を受けた人です。
しかしプーチン政権にも歯向かったことで、再選が確実視されていたにも関わらず
突然選挙違反で占拠から外され、政権非難したが退けられた。
≪カリーニングラード週ゴルベンコ知事≫
地元の利益独占を行っていたことから中央に睨まれ、
バルト戦隊エゴーロフ司令官を対立候補に立てられて敗北。
■政界再編
→130もの小党乱立から「左派・中道・改革派」のブロックに大幅削減
→以下の4政党に再編成
中道主義・愛国主義「統一ロシア」(=旧「統一」+旧「祖国・全ロシア」)
左派主義・共産主義「ロシア連邦共産党」
極右・強い民族主義「ロシア自由民主党」
中道主義・社会主義「公正ロシア」
→エリツィン時代の激動に疲れた国民は改革より安定を求めている
そのため共産主義への逆戻りはありえず、改革派は深刻なジレンマを抱えている
【第7章 高度成長で豊かな国へ】
■「戦略策定センター」
→エリツィン政権の最大の負の遺産・経済問題解決のための機関
リベラルな側近らにより10年に渡る長期経済発展戦略をまとめた
エリツィン時代に賃金や年金の未払いによりおきていたデモが激減
(世界的な原油価格の高騰などの幸運も後押ししていたが)
→法人税・追加価値税(消費税)引き下げによる横行していた脱税の減少
土地売買の自由化(※下記で説明)
法改正による外国からの投資の呼び込みと、国内企業流出防止
初めての赤字の無い予算の作成
■土地改革
→大統領支持派が下院の多数を占めたことで強行実施が可能に
(エリツィンも実施しようとしたが当時多数を占めていた共産党の猛反対で断念)
市場の活性化のため国有化されていた土地の私有化を認めるもの
→もともとレーニンが「人民に土地を」と土地の国有化を宣言していたが、
スターリンによるコルホーズなどの農業集団化により国有化されていたのです。
→ただし農地は反対が強いので規制つきの法案で妥協。
■経済効果
→2001年(△5%)2002年(△4.3%)
効果は数字にしっかり出ているもののまだ国民が其れを享受するには至らず
国民に経済活動に専念する姿勢を明示し、彼らと対話をして解決中
→だが一方で石油分野への依存も指摘されている
また電力・ガス・鉄道の改革や値上げが手付かずで断行できるかが課題
【第8章 非エリツィン化への動き】
■旧ソ連国家の復活(強い大国ロシアの復活)
→反共産主義を掲げたエリツィン政権から離反するプロセスの開始
■エリツィンと対称的な人事対策
→圧倒的な人気と経済好調を背景に議会や政党を統制し、メディアを支配した政権は
内外を驚かすような大幅な人事が行われていない。
最大の人事はエリツィン時代の古参のセルゲーエフ国防相を解任したこと
(後任は事実上ナンバー2の側近・イワノフ安全保障会議書記:初の民間登用)
→エリツィン時代からの官僚を排除し、郡や治安機関を側近で固める政策
【第9章 プーチン現象】
■常に70%以上の高い支持率
→1)強権的ともいえる手段で国民の望んでいた安定を実現、中央集権体制を確立
2)原油価格高騰と言う幸運に支えられた4年連続の経済成長
3)「強いロシア」という支持基盤を作りやすいスローガン
4)メディアを活用した強い大統領のイメージ戦略
→特に賃金や年金の未払いの解消は国民に実感できる成果として支持を支えている
→プーチンの熱狂的な崇拝すら現実に起きている
執務室に胸像を置くブームや、視察ルート「プーチンの道」への観光客の殺到など
【第3部 冷戦後の新たな世界秩序を求めて】
【第10章 内政が外交に優先する】
■対アメリカ
→二国間におけるSTART2(第二次戦略兵器削減条約)を批准
核軍縮を訴え、アメリカのミサイル防衛構想に圧力をかけた
その後も各国を精力的に訪問。イタリア・スペイン・ドイツ・中国など。
また北朝鮮も公式訪問し、沖縄サミットでの存在感を示した
→国防政策の基本方針「軍事ドクトリン」
負の遺産として受け継いだ膨大な核兵器を大幅削減して資金を捻出し、
兵器の近代化に向けて、内外の紛争や脅威に危機感を示した
■軍内部での深刻な意見対立
≪アナトーリー・クワシニン参謀総長≫
・地上発射のICBM(大陸間弾道ミサイル)大幅削減
・戦略ミサイル軍を空軍に吸収合併させ、規模を縮小
→これらで捻出した資金で通常戦力の近代化を行いチェチェン武装勢力を撃退
≪イーゴリ・セルゲーエフ国防相≫
ロシア軍の兵力削減によって資金を捻出
→大国ロシアの威信維持のため、核戦力を拡充すべきと主張
※クワンシン参謀総長の勝利。セルゲーエフは解任されイワノフ親国防相が誕生
→原子力潜水艦クルスクの沈没事故で、通常兵力の増強を求められたことが影響
【第11章 対米協調へ方針転換】
【第12章 同時多発テロとソチの一週間】
■北部同盟指導者アフマド・シャー・マスード司令官暗殺による不吉な前兆
→同時多発テロの発生直後、誰より早くブッシュ大統領と通話し脅威を警告。
アフガニスタンという国はソ連とイギリスも煮え湯を飲まされ、
アメリカと国交の無いイランやウズベキスタンら諸国を隣国とする難しい相手。
プーチンは「悪は罰せられるべきだが事実に基づいて行われるべき」と曖昧な対応。
■ソチの別荘に滞在し、対応を決断
→チェチェン問題がアルカイダと密接な関係があると証明したい思惑
これによってチェチェン政策の正当性を認めさせられるか?
→9.12 アメリカの軍事作戦の全面支持を公式発表
情報提供、航空機のロシア領空通過の了解、中央アジア同盟国は空港を提供、
平気と軍事技術で支援、以上をTVで国民に演説。
同時にチェチェン武装勢力に武器を捨て投降するよう最後通告を突きつけた
→多発テロ事件でミサイル防衛構想がテロに対応できないと証明されたと演説
ミサイル防衛構想への反対を強め、大量破壊兵器の脅威を訴えた
■決断の背景
→今後の経済発展において西側との協調は必須であると認識
(G8、WTOへの早期加盟など貿易経済関係を強めて投資を呼び込むため)
■ブレア首相のモスクワ訪問
→ロシアをNATO中枢に受け入れる体制を会談
【第13章 西側の仲間入りを目指して】
●アメリカがABM制限条約からの脱退を勧告
→ミサイル防衛問題、一国主義問題
■アフガン戦争終了後の米ロのぎくしゃく関係
→チェチェン侵害におけるロシア政府の対応を批判し、チェチェン代表と会談
→ロシアの友好国イラク・イラン・北朝鮮を「悪の枢軸」と非難
→冬季オリンピック(ソルトレイクシティ)での審判に対しての国民感情の悪化
■米ロの戦略核軍縮交渉の難航
→軍部・保守派の反対を押し切り、核弾頭の廃棄を備蓄に譲歩して合意
現実的な選択をすることで、対米協調路線の成果を国民に提示
「弾をコメタ猟銃を持っているよりも、球を抜いてあるほうが安全だ」と協調
→ただしアメリカと比べ軍事費の少ないロシアは核弾頭の備蓄が出来ない
全廃予定だった多弾頭ミサイルを残して、戦力低下を防止
■一方でエネルギー面でアメリカとの協力
→中東への原油の依存度を減らし、供給源の多角化を急ぐアメリカと思惑が一致
大手石油会社ユコスがタンカー利用でアメリカへの直接輸出を開始
■サミットの正式メンバー入り
→対米協調路線による最大の成果・WTO加盟に向ける前進
【第14章 プーチンの対日戦略】
■G8沖縄サミットにおける森総理との会談
→日本以外とも領土問題を抱えているから領土問題解決は困難だと示した
≪クラスノヤルスク合意(橋本総理対エリツィン大統領)≫
「2000年までに平和条約を締結するよう全力をつくす」ことで合意
≪川奈提案(橋本総理対エリツィン大統領)≫
「択捉島とウルップ島との間に国境線を引き、四島に対する主権を認めれば、
返還の時期には柔軟に対応する」という日本側が譲歩できるギリギリの提案
≪イルクーツクでの日露首脳会談(森総理対プーチン大統領)≫
日本は以下の交渉を同時に進めるよう主張(同時並行協議方式)
1)日ソ共同宣言で歯舞・色丹の日本への帰属は明らかで引渡すべく行う協議」
2)国後・択捉の帰属に関する交渉」
プーチンは覚書は無効だと主張。話はまとまらず。
≪小泉政権発足後の失われた1年≫
クラノヤルスク合意以来橋本・小渕・森が関心を寄せてきた関係改善は小休止に。
田中真紀子外相による外務省の混乱と、
同時並行協議方式に反対してイギリスに飛ばされたロシア課長を復帰させた人事。
これはロシアにとっても日本の方針変更を期待することとなったが、
日本の対露方針は変らず議論は平行線。
その後、エネルギー協力などを掲げて仕切りなおすも手詰まり状態に変化なし。
【第15章 イラク戦争と試練の対米協調路線】
■ロシアとイラク(バース党)は友好条約を結ぶ間柄
→米国との大量破壊兵器の破棄と査察を求めた「イラクに関する共同声明」で悪化
一方的にロシア企業との油田の開発契約を破棄
急遽外務次官や企業代表者らの交渉によって契約撤回に漕ぎ着ける
アメリカとの関係も損なわないよう配慮しつつ、
平和的解決を目指すドイツ・フランスとの共同歩調を強めた。
■独仏露VS米英下での拒否権行使の決断への迷い
→アラブ問題の専門家で、フセインとの仲介役の経験もあるプリマコフ元首相を派遣
交渉にあたらせたが戦争回避のためのこの最後のチャンスを拒否。イラク戦争突入。
■「政治的にも経済的な意味からも、ロシアはイラクでのアメリカの敗北を望んでいません。
私たちはイラク問題の解決を国連の枠内に移すことを望んでいます。」
→はっきりと対米融和姿勢を示し、フセイン政権と距離を置いた
→そしてイラク戦争後には米英統治の中で以下の内容を認めさせた
1)国連の特別代表が復興全般に関わる作業を行い、定期的に安保理も報告
2)フセイン政権時代の油田開発の露権益において、従来の石油輸出制度を半年間継続
終わり。
ざっとプーチン政権の流れを理解するにはとってもよかったです。 -
NHK『ドキュメント・ロシア』のプーチン大統領に関連する部分をメインに活字に直した感じですかね。
プーチン大統領の半生のみならず、ロシアの諸問題やそれへの取り組み。これから進んでいくであろう道などを詳しく書いてあって実に参考になります。
