普及版 モリー先生との火曜日

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140810071

感想・レビュー・書評

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  • 社会心理学の教授だったモリーは筋萎縮性側索硬化症(ALS)という治療法のない神経疾患にかかります。

    そして元教え子のスポーツライターでこの本の著者であるミッチが、毎週火曜日にモリー先生の経験をもとに語られる最後の講義を記録したノンフィクションです。

    テーマは「人生の意味」。
    題目はさまざまで、愛、仕事、社会、家族、老い、許し、死に及びます。
    生前葬儀では、モリー先生も一緒に泣き笑いし、心から感謝の言葉を口にします。

    モリー先生は病気で体を動かせなくなるのだと言い、予言通り、自分で自分のお尻が拭けなくなります。

    モリー先生と闘病をしながらミッチは学びます。

    モリー先生は言います。
    「もうじき死ぬとは言っても、私のまわりには愛してくれる人、心配してくれる人がたくさんいる。世の中でそう言える人がどれだけいるか?」
    「人生でいちばん大事なことは、愛をどうやって表に出すのか、どうやって受け入れるのか、その方法を学ぶこと」
    「ほんとうに満足を与えてくれるものは何か。自分が人にあげられるものを提供すること。それは時間。家や車ではない」

    そして、最後にモリーがミッチに「もうひとり息子が持てるんなら、君がいいなあ」と言ったのにはうるっときました。
    「生まれるものはみんな死ぬんだ」。

  • 難病ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患う大学の恩師、モリー先生の元を、スポーツコラムニストとして活躍する著者が毎週火曜日に訪れ、人生について、愛について、死について語り合う。著者とモリー先生との最後の講義を綴ったノンフィクション。

    著者のミッチは大学でモリー先生の社会学の授業を受ける。合理性や金だけが重要視される当時のアメリカで、人と人とのつながりを大事にすることを説くモリー先生の授業に感動した彼は、夢と希望を胸に卒業したのだが、待っていたのは厳しい現実だった。
    夢をあきらめ、時間を削って金を稼ぐ自身の生活に引け目を感じ、卒業後一度もモリー先生の元を訪れることがなかったミッチだが、モリー先生がALSを患ったことを知り、十数年ぶりに会いに行く。

    自分が先生と同じ境遇になったら、やれなかったことを列挙して悲しくなるのではないか、と話すミッチに、モリー先生はこういう。人間はいつ死ぬかわからないのに、現代では自分が死ぬ間際でないとそのことに気づかない。いつだって今日死ぬかもしれないと思いながら生きていると考え方も違ってくるのではないか。

    モリー先生はまた、こうも言う。いかに死ぬかを学べば、いかに生きるかも学べる。いずれ死ぬことを認識すればあらゆることの見方ががらっと変わる。現在時間を費やしている様々なことのうち、大切なこと、これまでしていなかったもっと大切なこと(精神的なもの)が見えてくる。

    先日読んだ『死の講義』という本にも同じようなことが書かれていた。どのように死ぬかを考えることは、どのように生きるかを考えることと同じだと。確かに、日頃から自分の中の芯のようなものを意識していれば、どのような状況になってもぶれることが少ないのかもしれない。

    先のことを考えてつらくならないのか。
    これに対するモリー先生の対処方法は、「経験から自分を切り離す」こと。まずは恐怖や苦痛の感情に頭からどっぷりつかり、その感情をくまなく経験する。そのうえで、意識的にその感情から離れるのだという。
    これはある程度の訓練が必要かもしれないが、モリー先生のような境遇でなくとも誰でも実践してみるのがよさそうだ。

    ALSというと、2019年に起きた京都ALS嘱託殺人事件が記憶に新しい。当時、報道を見ながら、もし自分が彼女の立場だったらどうするか、ということを繰り返し考えた。この本を読むにあたって、彼女のことも考えながら読んだが、モリー先生と彼女では、発症した年代、性別、当時の環境などが違うので、ALSという難病に向き合った人の話、として読むより、人生の先輩から生き方のヒントをもらう話、ととらえる方がよいように思う。

    「死で人生は終わる、つながりは終わらない」
    死んだらどうしよう、と考えるのではなく、今を大切に生きること。大切に思う人を愛し、与えられるものを与えること。そうして得たつながりは、きっと終わることはないのだろう。

  • 筆者は、ふとした偶然から、大学時代の恩師である、モリー先生を毎週火曜日に訪ねて、人生の色々な話をする、あるいは、恩師の考えを聴くことになる。
    対話は14回目の火曜日で終わる。モリー先生がそこで亡くなったのだ。モリー先生は、ALSを患っていたのである。
    ALSは、ホーキング博士が患っていた病気。身体中の筋肉が脚の方から動かなくなり、最後は呼吸が出来なくなり、死に至る。現代の医学では治療の方法はないし、患者は自分が遠くない将来に死ぬこと、どのような死に方をするのかを知ってしまうという、残酷な病気だ。
    そのような状態の中で、人生にとって本当に大事なものは何かについて、モリー先生は語る。それは、人生の絶対的な真実ということではないのだけれども、モリー先生の人生にとっての真実であり、心に響く。
    それは、下記のような考えだ。

    ■多くの人が無意味な人生を抱えて歩き回っている。自分では大事なことのように思ってあれこれ忙しく立ち働いているけれども、実は半分ねているようなものだ。まちがったものを追いかけているからそうなる。人生に意味を与える道は、人を愛すること、自分の周囲の社会に尽くすこと、自分に目的と意味を与えてくれるものを創りだすこと
    ■人生でいちばん大事なことは、愛をどうやって表に出すか、どうやって受け入れるか、その方法を学ぶことだよ
    ■いずれ死ぬことを認めて、いつ死んでもいいように準備すること。そのほうがずっといい。そうしてこそ、生きている間、はるかに真剣に人生に取り組むことができる
    ■みなまちがったものに価値をおいている。それが人生へのはなはだしい幻滅につながる
    ■ほんとうに満足を与えてくれるものは何だと思う?自分が人にあげられるものを提供すること。時間、あるいは心づかい。話をすること
    ■人を愛することにみずからを捧げよ、周囲の社会にみずからを捧げよ、目的と意味を与えてくれるものを創りだすことにみずからを捧げよ
    ■人に与えることで自分が元気になれるんだよ。自分の時間を与え、悲しい思いをしていた人たちをほほえませることができれば、私としてはこれ以上ないほど健康になった感じがするんだよ。
    こうしてあげたいと、心の底から出てくることをやるんだな。そうすれば、不満をおぼえることはない。うらやむこともない、人のものをほしがることもない。それどころか、そうすることによって、山のように多くのものが自分に返ってくる

  • この本は、ニューヨークタイムズ紙ベストセラーリストで4年間1位を続けるなど、世界的ベストセラーになったノンフィクションの不朽の名作です。
    恩師との温かいやりとりが綴られていて、とても羨ましくなりました。
    一生の付き合いが出来る先生に出会うというのは、なかなかないですよねー。
    ぜひぜひ読んでみて下さい。

  • 死を目前にして、人生で何が一番大切かを語る姿は心打たれます
    ものをもつのはいいことだ、お金は多いほうがいい、そういった間違った価値観にとらわれず、愛を大切に生きることを教えてくれます
    父がなくなる前に読んでいたらしい
    ガンになってからの数年間、手術をせずに最期まで自分らしく生き、家族を大切にしてくれた父の姿を思い出させる本

  • 再読。15年ぶりぐらいかな。コーチ(≒師)を持てるか持てないかは、人生において重要なことの1つだろう。愛(≒博愛)を語る。訳者あとがきにもあるが、こういった本質的な語りがいつの世にも必要なのだろう。嘲笑せず、蔑まず...。また、いつか読み返したい一冊。

  • 今から約20年も前に出版された本だったけれど、たまたまKindle日替わりセールで安かったから購入した。
    読んでみると、想像以上に引き込まれている自分に気づきあっという間に読了した。

    モリー先生の数々の言葉は、常日頃から生き急いでいるぼくにとって、立ち止まって大切なものに目を向けさせてくれた。

    「誰か心を打ち明けられる人を見つけたかい?」
    「君のコミュニティーに何か貢献してるかい?」
    「自分に満足してるかい?」
    「精一杯人間らしくいているか?」

    ひとつ目の質問には答えられるけれど、誰かのために一生懸命になることを忘れていたような気がした。満足しているようでもどこか満足していない自分もいる。なにが物足りなさを感じているのか?
    未来のことを不安に思い、焦っている。幸せは目の前にあるはずなのに。ついつい不安に支配されてしまっていた。
    目の前のこと、人に一生懸命向き合う。それが人間らしさなのかもしれない。


    「われわれのこの文化が人々に満ち足りた気持ちを与えないっていうことがある。われわれはまちがっあことを教えているんだよ。文化がろくに役に立たないんなら、そんなものいらないと言えるだけの強さを持たないといけない。自分の文化を創ること。多くの人はそれができない。私よりよっぽど不幸だよ。こんな状態の私より。」

    周りの価値観に流されず、自分の価値観を持つこと。これがどれくらい難しいことかはよくわかる。いわゆる洗脳というのは「同じことを何回も聞かせること」で成立する。だから、社会的正しいとされている価値観に曝露しながらも、自分の価値観を保つ力。これが必要なのだろう。
    でも、そう考えると1人では限界がある。だから、親しい人と対話することがぼくにとっても改めて大切な時間なのだと再認識できた。

    そして、最後に、
    「死ぬ前に自分を許せ。それから人を許せ」

    ぼくは、根に持つタイプでなかなか人を許せない気質がある。自分の根幹を揺るがすほどの怒りを覚えたときに、自然と距離をとってしまっているが、それはその人を許せないからなのだろう。そしてそういう風に距離を取る自分自身もどこか許せていないのかもしれない。
    スピリチュアル的な話になるけれど、自分も人も許して、受け入れることができれば幸せに近づけるのだろう。

    と、いろいろ考えさせられることがあったけれど、帰ったら愛する人に全力で向き合おう。

  • ALSに侵されたモリー先生と著者である教え子との、人生についての対話。

    モリー先生の死が穏やかで。こんな死に方ができたら幸せだと思った。
    死について考えることは怖くて避けたいけど、考えておかないと生きていく上で大事なことを見過ごしてしまうのだろう。そして死に際に後悔するんだろうなぁ。

    本の中に心にグサッとくる言葉がたくさんあった。
    また読み返したい。





  • 電車の中でぼろぼろ涙が零れるのに、どうしても読むのをやめられなかった
    この暖かな気持ちのまま、最後まで読んでしまいたかったから
    『こんな夜更けにバナナかよ』の時も同じ気持ちになった
    表現は人それぞれ
    それでもそこに在るのは愛だったのだろう

    感動のままに感想を書くと、ちょっと臭くなるな(笑)

  • 2019.11月。
    何回も読んで染み込ませないといけないな。全ての基本は愛か。

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