パックス・モンゴリカ: チンギス・ハンがつくった新世界

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (477ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140811436

作品紹介・あらすじ

定住を望まぬ草原の民が、太平洋から地中海にいたる巨大な版図を持ったのはなぜか。モンゴル人の習慣・思想から見てみると、チンギス・ハンが求めたもの、彼の一族が世界を根本からつくりかえた理由のすべてがあきらかになる。アメリカの文化人類学者である著者は、モンゴル人学者と共同研究チームをつくり、5年にわたってモンゴルをフールド調査した。小説を読むようにおもしろい、新しい視点のモンゴル史。

感想・レビュー・書評

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  • 目からウロコというか・・覚醒せよ!

    ・モンゴル人にとっての唯一の神は、地平線から地平線まであまねく四方に広がる<久遠の蒼穹>だった。神はすべての大地を統べている。神が囚人か檻に入れられた動物のように石の家に閉じ込められたり、神の言葉が一冊の書物に封じ込められたりすることなどあり得ない。
    ・結局のところ、モンゴルに輝かしい成功をもたらしたのは優秀な武器ではなかった。モンゴル軍の成功は小集団で行動する遊牧民として何千年も培った団結力と厳格な規律、そして指揮官へのゆるぎない忠誠によるものだった。チンギスハンは一兵卒たりとも無駄死にさせるのを望まなかった。
    ・もしも汝らが久遠の神の意志を聞き理解したにもかかわらず「フランスはモンゴルから遠い、われらの山は険しく、海は広い」などといって神の教えに心を向けず信じようともせず思いあがってモンゴルに刃を向けるようなことがあれば、その時は目にもの見せてくれよう
    ・チンギスハンが部下を生まれ落ちた身分ではなく能力と業績にもとづいて、社会の最下層から最高峰の指導者へと昇進させたように・・・
    ・宗教面での寛容さ、どんな国の言葉もあらわせるアルファベット、駅伝制度、カード遊び、暦の印刷、貨幣制度、天宮図の作製のいずれをとっても、モンゴル帝国の統治者たちは頑固なまでに普遍主義を貫いた。彼らには臣民に押し付ける既成の制度などなかったからどこからでも喜んで優れた制度を取り入れて組み合わせた。これらの分野で文化的に強いえり好みがなかったモンゴル人は、問題が起これば理論ではなく現実に即して解決した。何が一番効果的かを模索し、それを見出した時は他の国にも広めた。
    ・征服によってモンゴル帝国を樹立するさい、彼らは戦そのものを革新しただけではなく普遍的な文化と世界的な制度の基本を作り上げた。

  • チンギスハンの出自からもンゴル帝国の消滅まで、時系列で書いてあり、とてもわかりやすい。ありとあらゆる文献を参考にしているので、内容も確かだな、と思える。チンギスハンの優秀さ、柔軟さがわかり感動します。民族も宗教も包括していくやわらかさ。戦略、社会組織、交易、文字などなど、その素晴らしさは枚挙にいとまがない。そして、ペストが帝国崩壊に大きくかかわってしまった。ヨーロッパではそれでアジア人を蔑視するようになったし、ついでにユダヤ人いじめちゃったりしたのね。
    何度でも読みたい一冊。

  • 「パックス」とはラテン語で「平和」を意味する。つまり本書は「モンゴル支配による平和」となる。残虐非道なイメージの強いモンゴル帝国に対し、新しい視座を与える一冊。属国目線で事実が歪んだり矛盾したりする記述が多い中、足掛け5年のフィールド調査を行い、よくぞ調べあげた、という内容だ。

    世界史に忽然と登場して自然消滅していった彼らを、単なる「征服者」として経済や行政システムの優れた面を分析・評価している。モンゴル帝国を知るには、堺屋太一氏の「世界を創った男チンギスハン」と並び、お薦めである。

  • モンゴル帝国史。歴史家ではなく文化人類学者による書。なので、歴史小説のようなドラマティックな躍動感や抑揚はない。が、膨大なフィールドワークと調査に裏付けされた詳細で正確な記述は、これまで知らなかったことを知る喜びや正してくれる喜びを与えてくれる。壮大で楽しかった。

    "征服によってモンゴル帝国を樹立するさい、彼らは戦そのものを革新しただけでなく、普遍的な文化と世界的な制度の基本をつくり上げた。その新しい世界文化は、モンゴル帝国の終焉後もずっと成長を続けた。それが何世紀にもわたって発展し続けた結果、最初にモンゴル人が重点を置いた自由貿易、情報通信の自由化、知識の共有、政教分離、諸宗教の共存、国際法、外交特権が近代世界の基礎となった。"

  • すばらしい!

    この世界の覇者はもんごるじんだ!って叫びたくなるくらい、著者のものの語り方にはまっちまう。

    チンギスハンの神話から始まり後に続く大モンゴル帝国の栄光と衰退。はー、歴史ロマンがあふれすぎな物語だ。

    キリスト教圏の歴史書は、正直宗教的基礎知識や宗教的な物語の勧め方で理解不能なことがおおいなか、モンゴルのこういう本は理解しやすかった。

    なんにせよ、もんごるばんざい!

  • 面白い。
    歴史小説のように、読者を興奮させつつも、要所要所で、帝国が実施した政策の意味と先見性が説かれており、関心させらることがう々あった。興味深かったのは、モンゴル帝国が”寛容”であったことである。
    傘下とした国々に自治権を残し、監視に留める。国ごとの自由な経済活動を残すことで、帝国自身も潤うということであった。反乱も起こらないし、兵士の維持費もかからない。
    また、チンギスの子孫において、妻がほぼ全員、ヨーロッパの王候族であることにも面白みがあった。王たちは、もちろん古来よりの精霊崇拝(アミニズム)なのだが、妻たちはキリスト教。でも、気にしないし、逆に積極的に欧的な文化を取り入れるということが、思想としてあったようです。
    実は、中期には、政治の中心がその妻たちだったようで。今に通じるところもあるかな。

  • チンギス・ハンの業績、生涯を物語のように読ませてくれた。
    色々と間違った認識をしていたとこの本を読み思う。

  • 『逆説のユーラシア史』は東洋史学の杉山正明氏の著書。一方こちらはアメリカの文化人類学社(先住民研究なんだって。アメリカでインディアンの研究してる人って複雑だろうな。日本でアイヌ研究してるひととか。)ではっきりとコンセプトを持った書物とみた。かなり毛色が違いそう。

  • 小説的なおもしろさでモンゴル帝国の興亡を読むことができる。
    読み終わったら例えばラインハルトや延王尚隆と同列にチンギス・ハンを語れるようになっていること請け合いだ。

  • 世界に衝撃を与えた「大蒙古帝国(イェケ・モンゴル・ウルス)」の歴史と、ユーラシア大陸全域に及ぼした影響を描いています。
    政教分離、信仰の自由、紙幣の使用、為替レートの統一、交通の安全と通商の活発化など、世界にさきがけて実施された諸政策と、それがもたらした「モンゴルの平和(Pax Mongolica)」。
    欧州・中東・アジア諸国が見習いながら、何故その後モンゴルは貶められたのか?
    初代チンギス・ハーン(成吉思汗)の生い立ちから、子孫たちの権力闘争、クビライ・ハーン(忽必烈汗)の即位と事実上の帝国分裂。
    男性中心の歴史と見られがちですが、女性が果たした役割も詳述されてます。
    名君とされるクビライ・ハーンの評価が、見方によってはこうも変わるのかと驚かされます!

    著者は歴史家というより文化人類学者で、本書でも遊牧民などの部族社会が近現代の社会に及ぼした影響を考察しています。
    本業(?)のアメリカ先住民の研究でも、彼らの農産物や鉱産物、自治制度が近代の世界の発展において果たした役割を指摘しているそうです。
    その著書、『アメリカ先住民の貢献』というのも読みたくなりましたねw

    ニン、トン♪

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