一週間 de 資本論

著者 :
  • NHK出版
3.24
  • (1)
  • (10)
  • (20)
  • (2)
  • (1)
本棚登録 : 132
感想 : 16
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140814383

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 資本論の要点をまとめた本です。
    資本論に挑戦する前準備として読みました。

    NHKの番組をまとめた内容であり、識者の対談が半分占めていますが、概要をしることができます。
    ただ、識者対談は左寄りの人ばかりで、もうちょっとバランスを取ってほしかったです。
    対談部分は読み飛ばしても問題ありません。

  •  同タイトルのテレビ番組を元にした本。難解さで知られる大著『資本論』を、一週間(放送は全4回/100分)で読んでしまおうという番組だったそうだ。ただし、本文は放送原稿から大幅に書き換えられているとのこと。

     各章の章末に著者と識者(森永卓郎、湯浅誠、浜矩子、田中直毅)との『資本論』をめぐる対談が収められている。この部分はほぼ放送内容そのままであるようだ。
     対談は、“『資本論』の現代的意義”ということが通しテーマとなっている。各対談から浮かび上がるその答えが四者四様であるのが興味深い。

     恥ずかしながら私は『資本論』を通読したことがないので、「大枠くらい知っておかないとな」ってことで読んでみたもの。
     入門書である本書で読んでさえ、やっぱりかなり難解。マルクス経済学者の人たちって、こんな難しいものに生涯をかけているのだなあ。

     本書は逐条的な解説本ではなく、『資本論』の肝の部分にのみグイッと寄る形で作られている。
     たとえば、全4中の第3章は「恐慌は資本主義にとって必然か?」で、『資本論』の中の恐慌をめぐる論考のみを抽出して解説している。

     ともあれ、一読して『資本論』の大枠が理解できたような気分(笑)にはなった。

     各章の前半では、『資本論』に関する一般的解釈が解説される。対して後半では、「裏読み」と銘打って、章テーマについての一重立ち入った解釈が開陳されている。
     
     いちばん面白かったのは、第1章「資本主義社会の謎」の「裏読み」部分。そこでは、『資本論』の深層にある宗教性・呪術性(!)が論じられている。

    《どんな商品が貨幣になってもいいのに、貨幣になれる商品はあらかじめ金(きん)と決まっていた。
    (中略)
     なぜなら貨幣になれるものは、神々しさ、呪術性が必要だからです。最初から金にしか可能性はないとマルクスはいうのです。その理由は、金が等質であり、分割可能であり、劣化せず、もち運びが便利で、しかも稀少で膨大な労働が必要だからではありません。最初からその商品が品格において神々しいからである。
    (中略)
     資本主義社会は中世の魔術を脱魔術化し、それを再度魔術化することで、資本の謎を呪術のような世界にしてしまったわけです。》
     
     かつて、共産主義を宗教の一形態としてとらえ、キリスト教との関係から論じたのは歴史家アーノルド・トインビーであった。『資本論』も、思いのほか宗教的な書物であるようだ。

  • 的場昭弘 「一週間 de 資本論 」 資本論の中で現代でも通ずるテーマとして 貨幣論と恐慌論をわかりやすく説明した良書。用語解説、コラム、対談も 資本論の深読みの役に立つ


    未来社会(資本主義から社会主義へ)の啓示として 資本論を読むのは 違和感があるが、初期資本主義の経済モデルとして 読むと、恐慌すら資本主義の成長のために組み込まれたシステムとする恐慌論は 資本主義の膨張的破滅を象徴している


    資本論の現代的解釈は、格差と自由のバランサーとしての政府の影響力、格差に苦しむ多数者の社会行動のあり方を問題提起しているのだと思う。自由な社会を強く望みながら 資本主義の格差を批判するのは 矛盾している



    労働時間を増やすことで資本家に帰属する剰余価値を増やし、資本に搾取されている労働者像というのは 現代とのギャップを感じる


    森永卓郎氏との対談が面白い「資本論は 資本家という〜おカネの妖怪が生まれるメカニズムが書いてある〜妖怪誕生物語」





  • 筆者によれば、1週間で資本論を語るという企画は大変恐れ多い取り組みなのだが、とっかかりがないと資本論は読まれないし、理解されないだろうという想いがあるそうだ。

    商品の価値には、オタクが希少なフィギュアに求めるような内在的な価値である使用価値と、流通されて貨幣などと交換することができる交換価値がある。
    労働力もまた商品である。
    資本家は商品に余分な交換価値をつけて取引する。その余剰な価値を生産するために、労働者を長時間働かせ、労働力を搾取する。
    人の欲望にはキリがないから、価値を上乗せして利益をうみ、他人から搾取する資本主義は所得格差をつくり破滅する。
    土地を所有し、共同体の営みによって社会経済は回ってきたが、それを否定して工場や原料を所有し、労働力を雇い、自由に競走させることで資本主義が生まれた。今度はそれをも否定する。否定の否定。
    マルクスは、資本論に結論をつけていない。だから時代によって資本論の解釈は変化する恐れがある。長期的な視点が必要だ。

  • 資本論を砕いて?紹介.

    資本主義社会=商品の集合
    ここでいう商品は老走力や貨幣も含まれる.

    全ての商品同士は等価に繋げられる
    X量の商品A=B量の商品B

    商品には使用価値と交換価値が存在
    ・使用価値=その商品の利用で得られる実際の利得
    ・交換価値=その商品を他の商品と交換するときにどれだけのものと交換できるのか.

    貨幣はその商品交換の潤滑油
    我々は商品Wー貨幣Gー商品ー貨幣W...の交換を繰り返す
    この交換における貨幣Gー商品Wー貨幣Gでの最初と最後の貨幣差分が剰余価値
    剰余価値は絶対的剰余価値と相対的剰余価値の二つが存在.

    しかし本来であればG1-W-G2 でG1=G2になる交換をする人はわざわざいない.実際にはG1とG2には差があり剰余価値を生んでいる.しかし両者はWで繋がってて等価である.この矛盾は何....?→剰余価値=労働!

    8時間の労働では8時間の使用価値分の商品を生み出すが,労働者がもらえる賃金は満額ではない(例えばその4時間分)この4時間はその労働者が自らの労働力を再生産するのに必要なコスト,余った分は資本家に,というロジック

    資本が商品を作るとき,それに必要は工場や機械,材料はその購入コストと等価であるが労働力だけは労働者と不等価に交換できる.つまり,剰余価値は不等価交換で搾取した労働力がその根源,というのが資本論の主張

    工場や機材はほかっておいても価値ある商品を生まない.労働力が投入されることでその価値が高まる.
    これらが持つ価値を不変資本c, 投入される労働力を可変資本vそこにその商品が利益をもたらすのに必要な剰余価値mが生まれる商品を形作る
    W = c+v+m
    しかし,mも元々は労働者により生み出されるもの.
    vは商品を生み出すのに必要な必要労働時間(労働者の労働力再生産のpayが必要),mは労働者から搾取できる剰余価値の部分.
    したがって資本家はvに対するmをどれだけ引き出せる(労働者を搾取できるか)が儲けのキモになる.

    →産業革命時代の資本主義の世界観だから成り立つ話だよなあ...現代は後述の効用価値をある程度狙った商品作りをしないと商売にならず,労働力の搾取が儲けの肝にならないから.(なるところもあるけど)

    剰余価値は絶対的剰余価値(労働時間を伸ばす),相対的剰余価値(payが必要な必要労働時間の割合を減らす)のどちらか.

    資本論では触れないが価値には効用価値というのものもある.その商品を作るのにかかったコストではなく「どれだけ買い手が幸せになるか」でプライシングする.
    *ブランディングが当たり前になった現代では効用価値の役割はとてつもなく大きい,つまり資本論のロジックだけで世界を説明できない.

    恐慌とは経済活動の一連のプロセスの歪みが限界を迎えその機能が鈍化,それに伴い他のプロセスも連鎖的に鈍化していくこと.歪みの生産が恐慌となって現れる.
    資本論では商品の過剰生産(労働者の過少消費の発生)を恐慌の本質とついている
    →だから計画経済という理想論が出てくるのね...

  • 膨大な量の資本論
    さわりだけって感覚で読み始めたけど、やはり内容は濃いものだったら

  • 資本論 全三巻 2,500ページ
    カール・マルクス 1867年 第1巻 資本の生産過程
    フリードリッヒ・エンゲルス 1885年 第2巻 資本の流通過程
    1894年 第3巻 資本主義的生産の総過程

    1917年ロシア革命

    労働力もまた商品である。
    労働者は資本に搾取される。
    価値を生産過程のなかで移転させるものは労働力であり,労働力は不変資本の価値を移転させる仕事を担う。

    高度経済成長期の日本 選ばなければいくらでも仕事がある。→アメリカに保護されていた。

    部門間不均衡

    1847年恐慌 鉄道投機の最中 資金が鉄道に拘束 農産物の不作→輸入 巨額の金が海外へ→資金ショート

    1866~67年恐慌 アメリカ南北戦争 アメリカ産綿花輸入困難→インド綿への投資→造船業への投資後,破たん→恐慌

    浜矩子 日本「高度経済成長の夢をもう一度」→×成熟戦略が必要

  • マルクスは「労働者は搾取されているから団結して使用価値に見合う賃金を獲得しろ(or等価交換の社会主義国家を作れ)」と言っているイメージがあったが、どうもそうではないようだ。
    この古典はいまの経済も説明できる普遍性があるように思う。
    「賃金は労働の再生産に必要な金額」という前提は興味深い。ブルーカラーやなんちゃってホワイトカラーの賃金は、労働による創造価値ではなく、その人の生活費に対して賃金が払われているというのは、今の状況を反映しているのではないだろうか。

  •  資本論の入門書。
     時代背景などに触れていて、資本論を読む前に読んでおく良いと思います。

     当たり前のことですがこの一冊読めば資本論が分かる!なんて本ではありません。
     そんな本は存在しないか、資本論より分厚い本になりますからね。

  • ん~、難しかった・・・・内容が十分理解できなかった。ただ、資本家と労働者の階級闘争の雰囲気は感じることができました。当時の時代を考えるとこの考え方が支持されたのも頷けるところです。

全16件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

的場昭弘(まとば・あきひろ)1952年宮崎県生まれ。マルクス学研究者。1984年、慶應義塾大学大学院経済学研究科博士課程修了。経済学博士。一橋大学社会科学古典資料センター助手、東京造形大学助教授を経て現在、神奈川大学教授。マルクス学の提唱者。マルクスの時代を再現し、マルクス理論の真の意味を問い続ける。原資料を使って書いた作品『トリーアの社会史』(未來社、1986年)、『パリの中のマルクス』(御茶の水書房、1995年)、『フランスの中のドイツ人』(御茶の水書房、1995年)をはじめとして、研究書から啓蒙書などさまざまな書物がある。本書には、著者による現在までのマルクス学の成果がすべて込められている。

「2018年 『新装版 新訳 共産党宣言』 で使われていた紹介文から引用しています。」

的場昭弘の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
ジャレド・ダイア...
シーナ・アイエン...
クリス・アンダー...
J・モーティマー...
ウォルター・アイ...
村上 春樹
村上 春樹
村上 春樹
リチャード P....
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×