ソフィーの世界 新装版 哲学者からの不思議な手紙 (下)

  • NHK出版
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感想 : 39
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  • Amazon.co.jp ・本 (320ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140814796

感想・レビュー・書評

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  • 小説の形式で哲学を語る、ということがはたして可能なのか? 本作と出会ったとき、最初に胸に兆した疑問がこれだった。
    読み始めると、殊の外相性がいい。著者ヨースタイン・ゴルデルの筆力に負うところが大きいのだろうが、日ごろ「哲学」と聞いただけで忌避してしまいがちな人にこそお勧めしたい。

    このレビューは、『ソフィーの世界』の上下巻を通読しての感想となる。
    著者はノルウェー出身なので、ここで語られる「哲学」は、西洋哲学である。
    古代ギリシャのソクラテス・プラトン・アリストテレスと続く哲学に始まり、中世哲学やルネサンス、啓蒙主義などに触れ、近世の合理論や経験論の解説がなされる。最後に近代哲学に分類されるニーチェやサルトルが語られる。
    せっかくなので現代の哲学についても触れてほしかった思いはあるが、本作を一通り読めば、西洋哲学の系譜を俯瞰することができるだろう。小説なので、なおかつ読みやすいのはうれしい。
    深く掘り下げるには、なお専門書の類を渉猟しなければならないが、哲学の入り口としては申し分ない。子供たちに向けたバージョンも発行されているのもうなずける。

    小説としては、物語の中で、別の世界の物語が語られる。メタ構造の物語であり、それがミステリー要素を生み出している。こうしたギミックも小説ならではであり、ややもすればとっつきにくさを感じてしまう哲学を、平易な次元に下ろして読ませることに寄与している。
    哲学を学ぼうとするよりも、物語を楽しむという気持ちで読み進めるほうがよい。
    本作でも哲学が投げかける命題は難解だが、ソフィーと先生の軽妙なやり取りのなかで、自然に何となく理解できたような気になる。

    読んでいくうちに、普段とは異なる哲学的な思考方法にいくつも触れて、その中から多くの発見をすることになるだろう。そして、同時に優れたファンタジー小説を読み終えた満足も得られる。
    一つの物語で、たくさんの楽しさを感じることができる。非常に「お得」な作品だと思う。

  • 上巻に感想を記す。

  • 買った当初はまだ10代で、かなり難しかった…
    また挑戦したいかどうか?
    他に読むものが無くなったらという感じで優先順位は低いです。 読み解けたら面白いんだろなとは思うんだけど。

  • ◎信州大学附属図書館OPACのリンクはこちら:
    https://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB06071920

  • 戦慄のミステリーでしょうか、哲学史の指南書としても秀逸ですし物語としてもぐいぐい引き込まれていきます。ヒルデとソフィーの交錯がなんとももどかしい。

    キェルケゴールあたりの実存主義は全くノータッチだったので、大前提としてそこにあるのであって、生きる意味といった根本的な真理は存在しない、個々人がそれぞれに見出さなければならないのだといった思想の到達点だと知れただけでも有意義。そこに暗澹たる雰囲気とシュールレアリズムが内包されているけど、どうも自由を付与されたことでがんじがらめになって指針を無くした個人主義たる現代に通ずる空気をびしびし感じます。

    占いや霊媒師やらなんやらのオカルト物に関する痛烈な批判、生きることとはその生まれた時代ごとにアジャストした思想を構築していく、そんなことが大切なのではと思ったり。娘に将来お勧めしたいリストに加えねば。

  • 後半の方が断然面白いね!
    ソフィーとヒルデの二重構成ってのが非常に◎
    この2人のストーリーを通して哲学を学べる!

    哲学の話も近代になってきて、より興味深い。
    人間の心理?的な事に興味があるので、前半は、生物や世界の成り立ち?的な感じであまり自分の興味分野ではなかった。
    けどそれはその当時分かっていた事が少なく時代を重ねる事に生物とは、人間とは、世界とは、って事が分かってくるからや!

    現代はどんな主義で、これから先どのように変化するんやろ?!

  • 哲学って割とマニアックな文系の学問、という間違った知識を持っていた。とはいえ難しいけども、この本だから読み切ることができた。

  • 大分ボリュームがあったけども、まだ半分。哲学の歴史を物語風に追っていくので、色々な時代の思想に触れられてよかった。でも、自分のキャパ的には詰め込み過ぎた感もあってそこは気になる。
    プラトンやホッブス、はたまたシェイクスピアが出てきたりと、これまでに目にしたことのある作品もでたりと、俯瞰的な視野から読んだことのある実績を追えたのは良かった。

    ソフィーの世界の下巻。
    下巻の冒頭でようやくこの物語世界の仕組みが明らかになった。
    ありがちではあるけれども、本という媒体でこの内容は生きると思う。
    哲学の歴史を上巻の頃から引き続き追っていくが、下巻からは中世の次、現代へとシフトしており、ヘーゲルやニーチェ、ダーウィンやフロイトといった科学が旧来の神々の存在を否定し始めている。特に、ダーウィンの功績は物凄く、人類の創造主の存在を真っ向から否定しているのには驚く。科学が神話に終わりをもたらし、実存という舞台に話が移り変わるきっかけになっている。
    GANTZやカミュの異邦人、カフカ作品のようなシュールな残虐、非日常感、が自分たちの実存を実感として浮き彫りにしているという指摘については、考えさせられた。
    俺は感触や自身の実感への虜なんだと思う。
    時間のある時にまた読み直してみたいと思う。
    また、ソフィーと哲学者は物語世界の住人として永遠を手にするが、現実への干渉は非常に希薄で、物語という作品の力の影響力をここで伝えようとしているのだと思う。
    この物語世界からの干渉を受け付けるには、繊細で挑戦的、探求心と慎重さを持つ哲学者であれば、彼らの声を聴くことが出来るといった意味合いもあるんじゃなかろうか?

  • 若干上巻よりも下巻の方が読みづらかった記憶がある。機会があったら読み返して理解を深めたい。

  • 一番読書をしていた小学生の頃に読もうと思って2度も挫折した本書でしたが、それから何年も経ちふと大人になってから読んでみました。
    それがとっっても面白い!哲学の通史について分かりやすく説明されているし、小説の中で教えられた哲学の考えが小説全体の構造にまで練り込まれて作られているという、二重に楽しみのあるとても良い本でした。
    またふとしたときに読み返したいです。

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