- 本 ・本 (232ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140814987
感想・レビュー・書評
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東日本大震災において取材に入ったNHKの記者等の手記を集めた本。読売新聞社の「記者は何を見たのか」と同種の本だが、NHKらしいと思ったのは、文化部が障害者などの弱者の被災状況の取材に取り組んだこと。健常者でさえも避難生活はかなりのストレスなのだから、いわんや障害者においては、というのはよく分かる。しかし非常時にどこまでケアすべきかという問題もある。難しい問題だ。
もうひとつこの本で判明したのは、ヘリからの空撮映像では、津波に飲み込まれる車の映像はわざと撮っていなかったということ。「アップにしすぎてはいけないと即座に感じた。カメラ映像は生中継になっているからだ。」なるほど。 -
読み途中なんだけど、とても感動したので一言。
釜石小学校の児童達が(大人・先生の指示なしで)全員避難し助かった話。
日頃からの防災教育。自分より弱い人(年下の子供、お年寄り)などを助けつつ素早く避難出来たこと。
犠牲者ゼロで「釜石の奇跡」なんて呼ばれているらしいけど、奇跡って言葉ですませられない子供たちの知恵と勇気、そして日頃の訓練の大切さを感じた。 -
スコップ団 を紹介する一文を読みたくて入手。
大震災を前にして、NHKの現場がどう相対(あいたい)したかの小冊子。 -
【東日本大震災関連・その25】
(2011.09.10読了)(2011.09.06借入)
「本書は大震災を取材してきたNHKの記者、ディレクター、カメラマンの現場からの報告である。」(「はじめに」より)
「NHKで働く者は、公共放送の「公」の文字を強く意識し、災害報道は総力を挙げて当たる特別な責務だと認識している。情報の発掘と発信という仕事を通じて被災者に寄り添い、時代の証言者になりたいと考えている。」(「おわりに」より)
章立ては以下の通りです。
第1章、地震発生―その現場では
第2章、力強く立ち向かう
第3章、残された傷跡
第4章、明日へ
●取材ができない(25頁)
津波の威力は広範囲にわたり、すぐには沿岸に近い被災地に踏み込んでの映像取材ができずにいた。取材するために使う車の燃料も限られていた。当時、三陸海岸は大津波警報が2日間続き、カメラマンとして「早く状況を伝えなければ」という思いと、「危険な場所には近づけない」という安全の両立にずいぶん悩んだ。
●すべて流された(29頁)
教室の片隅に警察署の所長が呆然とした様子で座っていた。「警察署も役場もすべて流された。市街地には町の人口の半分が住んでいる。少なくとも8000人は消えたのではないか」。その数を私は実感できなかった。(南三陸町)
(9月11日、死者・行方不明者合わせて900名)
●何もなかった(30頁)
道の両脇に瓦礫の残骸が見え始めた直後、視界が突然開けた。その先には何もなかった。およそ人間が作ったものは何も形が残っていなかった。左手にはひっくり返った消防車。右手の3階建ての建物は、爆撃にでもあったように窓ガラスがすべて割れ、鉄骨だけが無残に残されていた。(南三陸町)
●瓦礫の下に(43頁)
無数の釘が突き出た針山のような瓦礫の海。そこかしこに立つ遺体の存在を示す旗。自分が踏んでいる瓦礫の下にも誰かが埋まっているかもしれない。でも前へ進まなければ伝えることができない。足もとを覗き込んでは何も見えないことを確認し、「申し訳ない」と心の中で繰り返し唱えながら、瓦礫の上を縫うように歩いた。(陸前高田市)
●原爆の後のよう(78頁)
壊滅状態となった市の中心部を目の当たりにしたとき、まず頭に浮かんだのは、長崎局勤務時代に繰り返し見た「原爆フィルム」でした。眼前に広がる陸前高田の惨状が原子野の映像と重なり、不思議な既視感を覚えました。
●高齢化社会(119頁)
東日本大震災が浮かび上がらせたものは、高齢化が進んでいるにもかかわらず、高齢者を「支える医療」がなおざりにされたままの日本医療の現実であった。高齢者が行き場を失った状態は、4か月たった今もなお続いている。
●報道が支援、捜索に影響(131頁)
大規模災害を巡る情報の格差は支援物資の偏りだけでなく、捜索にも影響を与えるのだと実感した。被災地では行方不明者の捜索においても、支援物資の提供においても、記者は直接的には無力だという現実が苦しかった。
●破傷風で呼吸困難に(209頁)
3日前、津波で飲まれた自宅の片付けをしていた時、指先をガラスで切ってしまった。津波が運んだヘドロには危険な細菌や化学物資が含まれており、わずか1ミリの傷口から、破傷風菌が感染したとみられている。
☆関連書籍(既読)
「平成関東大震災」福井晴敏著、講談社文庫、2010.09.15
「被災地の本当の話をしよう」戸羽太著、ワニブックスPLUS新書、2011-08-08
「生きる。-東日本大震災-」工藤幸男著、日本文芸社、2011.09.20
(2011年9月11日・記)