バースト! 人間行動を支配するパターン

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (440ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140815540

作品紹介・あらすじ

人は自分が数学的に解明されるほど単純な生き物だとは思ってもいない。しかし、中世の十字軍騎士の人並み外れた行動にも、アインシュタインが書く手紙の頻度にも、そして現代人のeメール送信にも、みなバーストのパターンが現れていた。著者のアルゴリズムによる解析が、その衝撃の結果を明らかにする。複雑な数式を一切使わずに最新の複雑ネットワーク理論を展開する、知的好奇心を大いに刺激する一冊。

感想・レビュー・書評

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  • 歴史に擬えながら、ネットワーク理論を混ぜていく

    読みやすいのに、読み落としたところが多そうな不思議な本

  • バースト べき法則=ポワソン分布+優先順位

  • なるほどビッグデータ時代の何が面白いのかというと、大量のデータの蓄積と取り回しが可能になることで、ランダムでないバースト・パターンがそのまま扱えるようになるから、なのか・・以下監訳者あとがきからほぼそのまま拝借。

    人間行動には、驚くほど普遍的なパターン-バースト‐が見られるということだろう。バーストとは、短時間に何かが集中的に行われ、その前後に長い沈黙の時間が存在するというパターンのことだ。
    このパターンが発見された背景には、我々の行動は実のところ「ランダムではない」という、ある意味ではあたり前のことが、近年、ようやくまともに取り扱えるようになってきたという事情がある。科学者は従来、物事はランダムに生じると仮定することにより、大きな予測力を手に入れてきた。本当にランダムならいっそ話が簡単になり、統計的な見地からいろいろなことが言えるようになるのだ。しかしその先に歩みを進め、規則性やパターンを探ろうとすると、とたんに大きな壁が目の前に立ちはだかる。その壁を乗り越えるためには、膨大なデータが蓄積され、それを扱う方法が開発されるのを待たなければならなかったのである。人間は溜まった仕事を処理する際に、先着順ではなく、何らかの重要性に基づいて優先順位をつける。それがバーストを引き起こしているのでは?

    ただ、やや過度に装飾的な文章はちょっと読みづらいのが残念。

    [more]<blockquote>P67 ちょっとした思いつきや普通の人々やありふれた出来事が見過ごされる寸前で拾い上げられてスポットライトを浴び、ひと時世間のあこがれや反感や熱狂の対象となった後、本格的に忘れられるといったことが起きている。こうした新しい種類のニュースや娯楽は、マスメディアに作られたのではない、自律的な『生態系』をなしている。

    P182 時間は最も貴重な、再生不可能な資源なのであり、もしこれを大事にしたければ、優先順位をつけるしかない。そしてひとたび優先順位をつけたなら、べき法則とバーストは避けられないのである。

    P260 ドル札がレヴィ軌跡のような足取りを示すのは各人間がレヴィ軌跡をたどっているからではなく、大勢の人間の中に外れ値が混じっているからだということだ。【中略】社会にはいろいろな人がいるために、ドル札はある近辺にずっと留まっていたかと思うと、時折急に大陸をひとっ飛びに移動する。奇妙ではあるが、ごく自然なパターン、これがディルクのもともとの発見の核心なのである。

    P285 冗長性を説明する例「この文○ら約半○の○字を削○ても、そ○で○なお意○は読み取○る」
    いいかえると、冗長性のない言語とは、すべての文字の組み合わせに意味があり、したがって誤字脱字があると単語の意味が全く変わってしまう言語である。

    P324 (ハサン・エラヒ)「ある意味で、僕はすべてを公開しているとも言えるし、なにも公開していないとも言えるでしょう」「あれだけデータのノイズに埋め尽くされると、どれほど生活をオープンにしても、どれほど大量の情報を流しても、極めてプライベートな生活が送れるものですね。【中略】僕は自分のプライバシーを完全にあきらめることで、それを守っているんです。」

    P351 生命はよどみなく現れるわけでもランダムに現れるわけでもなく、バーストがあらゆる時間尺度を支配している。【中略】バーストは生命の奇跡の欠くべからざる一部であり、適応と生存を目指しての絶え間ない格闘の証拠なのだ。

    P370  このいつの間にかそうなったデータ豊富な社会において、思いも寄らなかった副作用は、我々の生活がかつてないほど詳細に記録されていると言うことだ。その過程で、新たに出てきた科学が人間のすることをすべて定量化するようになり、自由意志の問題からプライバシーの問題まで、これまで当然のように受け止められてきた多くのことに再考を迫っている。【中略】我々の生活を数字や公式やアルゴリズムにどんどん分解していけば、やがて我々は互いに区別がつかないくらい、それこそ自分では認めたくないほどに同じようなものになっていく。【中略】われわれはみなバーストを生じさせていながら、それと同時に、極めて規則的なのである。一見するとランダムでも、根本的には予測可能だ。
    </blockquote>

  • 前作「新ネットワーク思考」で"ベキ分布"の大家となった作者が、更に人間行動を支配するパターンを思索する模様を綴った本。科学者が新たな課題に目覚めそれを探求するプロセスを知るという意味では参考になるかもしれないが、全般的に難解で独りよがり感が強く、「もう少し研究が練れてから出せばよかったのに」と思わざるを得ない内容だった。"バースト"とは人間行動におけるあるパタン(何かが起こると連続的、飛躍的に起き、静まると次のバーストまではほとんど起きない)のようだが、これを理解させるための事例として作者の故郷であるトランシルバニアの英雄であるジェルジュ・セーケイの十字軍譚を別章的に使うのだが、これも話しになじみがなく複雑で成功したとは思えない。電子メールの事例の方がむしろ分かりやすかったので、こういう人間の行動パターンがあるということを理解してこの先、役立てていけばこの本を読んだ意味もあったということだろう。

  • 社会学なんて役に立つのだろうか?
    と比較的感じてしまう本。二つの軸で書かれており、読ませる。

  • 貸し出し状況等、詳細情報の確認は下記URLへ
    http://libsrv02.iamas.ac.jp/jhkweb_JPN/service/open_search_ex.asp?ISBN=9784140815540

  • 複雑系でお馴染みのべき乗則について、その根源を突き止めようと奮闘する研究者の書いた著書。人間の行動や社会に関する現象について、優先順位付け行動をモデルに入れてシミュレーションするとうまく説明できる、というのが結論。

    内容自体は中世の十字軍にまつわる話、著者の研究に関連する逸話、著名な学者のサイドストーリーなどが章ごとに織り交ぜられていて、面白いんだけど、流れをつかむのが大変。なんでこの話が?みたいな状態で読み進めないといけないので少し疲れる。というか、学者なのに妙に文才があって、ちょっとしたエピソードが活き活きと描かれていて、変に気が散ってしまう(いや、物語に集中してしまう?)。それと、具体的な数式なんかは注釈以外には一切出てきません。この辺は割り切ってる。最終的には、これらのストーリーは優先順位によってべき乗則に従う現象が見られた例とわかるのだけど、その辺の伏線が見えてくるのは後半でした。最後もぼやっと終わってしまうので、論点は見えにくいです。

  • 本書籍によらず、人間の行動に関する書籍、特に行動経済学関連の本に目を通した事がある人間ならば、本書で取り上げられている「べき乗則」の話は既知である可能性が高い。
    ただ日常生活の何気ない人間行動も、やはり双曲線関数でフィッティングするとうまく説明が付く事がある、ということを確認する意味では有意義であろう。

    スマートフォンやウェアラブル端末の発展により益々人間行動がデータ化、ログ化され監視される中で、自らの行動モデルをカオス的にしたいのならば、本書を歴史的小説を読む気持ちで軽く眺めれば良い。

  • 人間の行動はどの程度予測可能なのか?という問いに対して、分かりやすく解説されていた。途中で、全く関係ないような、十字軍の話が挟まれているのだが、だんだんまとまってくるのも、質のいい小説を読んでいるかのよう。
    メールを送るのがバーストになるのは、実体験に照らし合わせてもそうだなと思った。

  • 集中と沈黙。人間の行動には16世紀でも、コンピュータ時代の現代に於いても共通するパターンがある。それがバースト。

    マクロにみれば人間の行動パターンは既に予測可能である。原子レベルのランダムな動きを熱統計力学的にマクロな視点でとらえれば十分に記述可能であるというアナロジーが面白かった。

    ビッグデータの時代では個々の人間の行動も予測可能になってしまうのだろうか。監視社会と相まって自分の動きが捉えられ、恣意的に誘導されてしまうのは心外であるが、既に始まっているともいえる。

    予測する側は楽しいだろうが、予測される側はなんとなく虚しい。

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