メイド イン ジャパン 驕りの代償

著者 :
  • NHK出版
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140815847

作品紹介・あらすじ

経営者という人材の劣化が組織の中から異質な考えを排除することを招き、それが「新しい価値」の創出を阻み、「メイドインジャパン」の衰退を加速させている。家電・自動車業界は浮上するのか。企業そして日本再生への道を探る渾身のノンフィクション。

感想・レビュー・書評

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  • 日本の経営者に辛口の評価で珍しい産業記者 今日の体たらくをみると全く正しい
    日本の記者クラブは「建設的批判」を許容せず、ガバナンスの一翼を担えなかった
    著者の近著「自動車会社が消える日」も大傑作 トヨタに厳しい

    1.パナソニックの中村邦夫会長へは糞味噌 「天皇」と呼ばれ、ゴマすり部下ばかり
     社内の根回しに奔走、根回しに疲弊、すべてを予定調和の会社に変質 リスクオフ
     トップの判断に意見を挟めない企業風土になった 無謬性らしさに無限の努力
     抜本的な改革を怠ってきたのに、株価や世間評価を異様に気にする変な会社
     松下幸之助の経営理念まで破壊 自信喪失 誇りとやる気を失わせた
     (PHP研究所社長 江口克彦)者」

    *危機局面の経営
     沈没する船から救命ボートに移す、人数と人を判断することに似ている
     非常事故の救命士 腕につけた病状判断により救急患者を仕分け

    2.トップ経営者の力量
    経営者が自分の頭でしっかりと「処方箋」を書けない 魚は頭から腐る
    衰退企業の経営は「腐っていくミカン箱」と同じ
    シャープの片山氏 事業本部長の器量 短期の稼ぎは○ 中長期のビジネスモデル✕
    経営者は権力を持つ代わりにその責任は大きい

    3.日産のゴーン改革 評価高い 塙はなわ社長経営責任叙勲・名誉職✕
    プロは複雑な物事をシンプルにするが、アマチュアはより複雑にしてしまう
    会社内のコミュニケーション 経営者の危機意識を共有

    4.組織・人事改革で運営が複雑化
    解きほぐしてシンプルなマネジメントにするには頭脳明晰な経営者が必要
    リスクオフの経営 石橋を叩いても渡らない 挑戦しないことを咎められない
    今の経営陣は、産業が踊り場に来たときに対処する術を知らない

    5.エンジニア流出
    経営者 短期的な収益獲得に走り、非本業の金融業を強化
    トヨタ本社ホワイトカラーの官僚化 収益計画の教条主義化

    7.日本企業の課題
    経営者の最大の仕事は、次の経営者を選ぶこと
    秘書や側近など調整役を後任社長に据えるのは✕
    現代の日本企業トップ 
    ①守り   戦略的な攻めの投資をせず
    ②短期的  人も育てず
    ③自己保身 何かやったふりをしているだけ

  • 元朝日新聞記者であるジャーナリストさんがみた電機・自動車大手メーカのルポと、今後の提言です。
    取り上げているメーカは、パナソニック、シャープ、日産、トヨタなどです。
    特に電機産業の凋落の内情を、経営者の資質や人間関係の視点で捉えており、かなり実情が理解できました。著者に感謝。
    著者と同様、経営者はそれなりの経営学の素養を身につけていないと、務まらないのかなと感じました。
    製造業の大半は、経営陣には技術者出身者が多いかと思います。
    我が社の場合、最近は理系と文系のたすきがけで社長が変わってます。そして、理系社長はイケイケドンドンの拡大路線で、文系社長は組織を整えたり経費引き締めを図ったりといった緊縮路線の傾向があるかなぁ…。
    環境変化への適合もあるけど、要はバランスなのでしょうね。

  • 自分用キーワード
    有田焼・輪島塗の衰退 匠の蔵プロジェクト 意味的価値 パナソニック・ショック 「天皇」中村邦夫 山下芳生共産党議員(エコポイントの意味は) ハイアール(パナソニックの洗濯機・冷蔵庫部門を買収) ドメイン経営による本社への権力集中 広告主の力 Commercial Paper コンサルティング会社への丸投げ(シャープ) 日産のリバイバル・プラン クロス・ファンクショナル・チーム ポスコ盗用問題 日本人のなかにも情報提供者がいる IAT(中国の自動車ベンチャー企業) トヨタ「一日三回手を洗いなさい」 GMを助けるためのバッシングか ジェームズ=C=コリンズ「企業凋落5段階説」 アトム電器 日本テクノロジーソリューション オール与党化の弊害 

  • 地元の図書館で読む。シャープに関する記事を読む。問題は経営者だと指摘している。当事者能力がない。誰が責任者なのかわからない。

  • ・経営陣の決断力の弱さにより、会社の良し悪しが決まる。
    ・今の日本企業弱体化の原因は経営層の人間(ジジイ)に問題が有る
    ・経営が若者に移され、自分で考えて行動できることが大切

  • 企業再生の仕事を10年以上携わってきましたが、この本で挙げられている問題については実に共感します。それを最初にクリヤしなければ、どんなに優秀な人材を入れても、どんなに美しい絵を描いても何も生まれないという信念のもとにずっとやってきました。

  • 書評では既存の記事の寄せ集め、と言っているものもあったが、そんなことはないと思う。何よりも、筆者が長年に渡り取材してきた事実が内容に厚みを加えている。戦後、アメリカに追い付け、追い越せでやって来た日本が、今、目標を見失っている。元々、独創性や過去を否定して新しいことにチャレンジする事が苦手な日本人の悪い面が、今の日本の苦境の原因である。筆者も書いているが、今の日本企業の問題は経営層にある。決して現場は腐っていない。現場を理解しつつ、過去や前任者に囚われず、確固たるビジョンを持って事業を推し進める経営者が求められる。

  • 非常に面白い本でした。NHKのドラマの内容とは関係ありません。しかし、NHKのドラマは酷かった、ああいった製造業の醜態をドラマにするるから、若者が製造離れをするのでは。
    大手企業の陥りやすい失敗事例がドキュメントタッチで思わず引き込まれてしまいました。最終章で私の所属する「若芽会」が書かれていて思わずドッキリしてしまいました。ぜひ読んでみては。

  • NHKで放映された、テレビ60周年記念ドラマ、「メイドインジャパン」の視聴をきっかけに購入。

    著者の説明通り、本書はドラマの原作ではないが、随所にドラマにあった人々の想いがちりばめられていた点が良かった。

    日本企業の、とくに昨今の電機業界の、衰退の要因は、経営者も社員も今いる場所であぐらをかき、行け行けゴーゴーで突っ走り、驕り続けていた事にあると思う。
    今まで貯めに貯め込んだそのツケを、今この瞬間に一度に払っているのだ。

    本書は特に、第三者の眼で、経営責任を問うている。いろいろと勉強になった。

  • 新聞記者として電機・自動車産業の取材経験の豊富な著者だけに「ジャーナリスティック」な内容としか言いようがありません。やたらと固有名詞が出て来まして、企業内の主導権争いや政治劇などは詳しいのですが、自動車産業や電機産業の世界的な流れや、技術の動向などはほとんど触れられておらず、グローバルな視点での分析はほぼ皆無です。私が求めていたものとは違った本でした。

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著者プロフィール

経済ジャーナリスト。
1964年生まれ。1988年九州大卒。NECを経て1992年朝日新聞社に入社。経済部で自動車や電機産業などを担当。2004年に独立。現在は主に企業経営や農業経営を取材し、講談社や文藝春秋、東洋経済新報社などの各種媒体で執筆するほか、講演活動も行っている。
主な著書に『自動車会社が消える日』『日産vs.ゴーン』(以上、文春新書)、『会社に頼らないで一生働き続ける技術』(プレジデント社)、『メイドインジャパン驕りの代償』(NHK出版)、『トヨタ愚直なる人づくり』(ダイヤモンド社)などがある。

「2021年 『サイバースパイが日本を破壊する』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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