天、共に在り アフガニスタン三十年の闘い

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  • NHK出版 (2013年10月26日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (260ページ) / ISBN・EAN: 9784140816158

作品紹介・あらすじ

第1回 城山三郎賞受賞
第4回 梅棹忠夫 山と探検文学賞受賞

困っている人がいたら手を差し伸べる――それは普通のことです。
1984年よりパキスタン、アフガニスタンで支援活動を続ける医師・中村哲。治療のために現地へ赴いた日本人の医者が、なぜ1600本もの井戸を掘り、25.5キロにもおよぶ用水路を拓くに至ったのか?「天」(自然)と「縁」(人間)をキーワードに、その数奇な半生をつづった著者初の自伝。

みんなの感想まとめ

人間と自然に対する深い信頼と誠実さが描かれたこの自伝は、医師・中村哲の壮大な人生と活動を通じて、彼がどのようにアフガニスタンの人々に希望を与えてきたのかを伝えています。現地での医療支援に加え、灌漑事業...

感想・レビュー・書評

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  • 「人は何に人生を捧げうるのか」と問われるような生き様。ただ、ダラダラ生きている自分を顧みるような読書。それで良いのか。何かに捧げてしまえば人生なんて一点突破であっという間。単純な人生だという気もしていたのだが、だからといって何にものにも本気にならないなら、その方が無為な人生なのかも知れない。

    著者の中村哲という人物は、臨床医でありながらアフガンで飢え、旱魃、疫病に出会い「病人だけ診ても意味がない。水がなければ人は死ぬ」という結論に辿り着き、修正し、その地での用水路建設へ向かっていった人だ。理想を求めたというより、本質と対峙しようとした覚悟を感じる。

    印象的だったのは、アフガニスタンを破壊したものとして「戦争」以上に「旱魃」を重視していた事。日本では銃撃戦や米軍介入のニュースばかりが語られていた。しかし中村哲は、農地の砂漠化によって共同体そのものが崩壊し、人々が流民化していく過程を見ている。つまり彼にとっての“本質”とは、「人間が生きられなくなる環境」の方が重要だという判断であり、そこにリアリティというか、戦争の迫力にも流されていない強い軸があるような気がした。

    このように自分の人生を差し出していく姿は、叔父であると本書でも紹介される火野葦平 の文学ともどこか重なるだろうか。火野は戦争作家であったが、それで名声を得た一方、戦後、「戦争協力作家」という批判に晒され、また私生活でも女性問題など色々疲弊も重なっていたようで自死を選ぶ。

    戦争という巨大な流れに人間が呑み込まれていく。それを描いた自身は、次に世間の批評に呑まれていく。重なるとも対照とも、言えるか。

    火野は戦場を記録し、中村は戦場で生を支える側に回った。一点「自らを賭ける壮絶さ」が通底しているようだが、無理やりか。

    人生の意味とは「自己実現」ではなく、「関係の中で引き受けてしまった責任」から動き始めるのかも知れない。自分自身にはその条件は決められないのだが、踏み出すのは自分だ。誰かがやらねばならないなら、自分がやる。その、引き受けた覚悟と行動を示す本。圧倒的な迫力。

  • 中村哲さんは現代の偉人だ。

    人間と自然に対する絶望を一心に引き受けながら、
    人間と自然を裏切らず信頼し続けた人。

    アフガニスタンの医療支援する医師でありながら、広大な砂漠地帯に、農業用水路や堰などを建設するなど、途方もなく壮大な人生だ。

    氏はそれを英雄気取りせず、淡々と事実だけを書き記されている。
    9.11すら日常の一コマのように思えた。

    アフガニスタンでの飢えや貧困は、アフガン戦争、テロ報復戦争による被害だけでなく、地球温暖化による旱魃被害が大きな要因であるとはなんとも無慈悲だ。

    「己の分限を知り、誠実である限り、天の恵みと人のまごころは信頼に足る」

    なぜここまで自分を捧げることが出来たのか?と思うけれど、氏のこの言葉が全てを物語っている。

    • コウさん
      医者としての立場以上に、一人の人間として尊厳を持って生きる姿に現地の人々は励まされたのだろうと思いました。

      米軍撤退後も中村さんに関係のあ...
      医者としての立場以上に、一人の人間として尊厳を持って生きる姿に現地の人々は励まされたのだろうと思いました。

      米軍撤退後も中村さんに関係のある日本の支援者による活動が続いているとか。どんな環境でも人は志があれば生きられると感じました。
      2021/11/27
  • 「アフガニスタンの診療所から」を読んで中村先生の活動に感銘を受け、こちらの本を手にしました。

    「アフガニスタンの診療所から」ではほとんど触れられていなかった灌漑事業に関する部分をメインに、中村先生の生い立ちからアフガニスタンに行くまでの経緯、その後の灌漑事業について書かれています。

    日本ではほとんど報道されないアフガニスタン大干ばつの現実。先生やペシャワール会の方々のひたむきな活動に心を打たれました。

    「地域の自然条件を理解し、地域の文化を尊重すること」の大切さは、日本に生きる私たちにも重要な考えなのではないでしょうか。

  • 2019年末に逝去された中村医師の自伝。
    彼が行ってきた偉業の紹介は別の場所に置いておき、この本で彼が語るのは、徹底的な現場の辛苦。
    中村先生の数多の苦労、葛藤、そして決意と失望と希望、そういったものが淡々と描かれる。
    ハンセン氏病に苦しむ少女から声を奪う決断をしたとき、9・11の後の混乱、築き上げた水路に大雨がきたときのとっさの大洪水を間一髪で防いだとき。凄まじい苦難と決断をしてきたのだとわかります。

    沙漠という強大な環境に水路を引いた。戦争・空爆もあり、多くの命が失われる場面を目にしながら、彼は「天と共に」進んできた。
    いつの時も、なにかを完遂するのはこういう覚悟だと思い知らされます。改めて中村先生に合掌を。

  • 「FACTFULNESS」を読み終えた後に手にした本なだけに、互いの距離感にギャップを感じ世界を見渡す視線の測り方、遠近感を養えた一冊。中村さんはじめ一人ひとりの命をかけたひとつひとつの積み重ねが世界を形ずくっているんだ・・・と考えさせられた。人類が文化の枠組みを超えて他の生物と本当の意味で共存し合える生命体になれる日はくるのだろうかと考えさせられた。この世に生を受けたひとつの人間としてこれまで巡り合った本から何を学び、何を育めるのだろうかと思いめぐらした。

  • 本当に中村哲さんという方の人生の生き方の素晴らしさを感じた。私にはなぜ、死ぬかもしれない場所に自ら身を捧げられるのかわからなかった。
    しかし、この本を読んで、なぜそこまでして身を捧げられたのか分かった。本当にオススメの本です。この人の人生の生き方を他の日本人いや世界に住む人々が真似していけば、日本という国が変わるのではと思いました。
    人は自然の一部であるということを身を持って証明され、天(自然・神様)共に在りというタイトルをつけられたことが最後にわかりました。

  • 距離が離れてしまっていることを実感する。

    私は山が好きで、ならすと月に1回近く山に行っている。

    その度思うのは、「人間は小さい」ということだ。

    中村哲さんはこの本で「生殺与奪の権を持つのは自然」ということを言っているが、まさにそうで、整備された、しかも1,000mに満たない低い山でも、油断すれば死の危険はそこここにある。

    人間は自然の一部であり、恵みを分けていただいている。

    そんな謙虚さを保ち続けなければ、資源は枯渇し、減った資源を奪い合う末路が待っている。

    > 現地三十年の体験を通して言えることは、私たちが己の分限を知り、誠実である限り、天の恵みと人のまごころは信頼に足るということです。(p005)
    >

    中村哲さんはこう言う。

    人間の分限をわきまえ、節度を持った生き方をしていきたいものだと思う。

  • ハンセン病患者の治療から始まり、戦争や厳しい環境の中、医療行為をし続け、人を救うこと。医療行為から、発展し、井戸を掘ること。温暖化による旱魃という今後世界が直面するであろう環境問題に対して、灌漑事業を素人ながら成し遂げ、砂漠を緑化すること。「本質的に人を救う」ことを継続し続けた30年間。何人分の偉業を成し遂げているのだろうか。
    例えではなく、本当に命をかけて仕事をまっとうするということのすさまじさが表されている。
    不条理な現場で、翻弄され、命を落としていく貧しい人たち、その中に分け入り、弱音を吐いたり、批判をするのではなく、本質的に求められている真に必要なことをつかみ、すさまじい推進力で推し進める。気合と熱意で進めたといわれても、絵空事には聞こえない。にわかに信じがたい偉業は、コツコツと本質を曲げず、志をもつことによって成し遂げられるのだろう。その志を持つことによって、たくさんの犠牲者が、人の命がなくなっていること、一筋縄でいかない挫折、人間の醜さ、常人であれば、くじけてしまうことがたくさんあっただろうことが推察される。
    現場で起こっていることはマスコミや政治家は正しく伝えない。何らかの力のために歪曲して伝えるということが四六時中おこっていることもよくわかった。

  • 自分自身が河川技術者であり、灌漑施設更新の施工監理の経験があるから、肝が河川からの取水部であり、あの施工の難しさを思い出しながら読み進めた。

    そもそもは、キルギスに行くにあたり、中央アジアの本を読もうと、積読になってた中から選んだ。近い地域で、集中して読みたいと。

    大正解。気候変動の影響はキルギスでもあり、山頂の万年雪が完全に解けるようになったらしい。アフガンの旱魃も同じ気候変動による。

    世界のメディアや政治家達が、タリバン対世界という単純な図式で自分達の勝手な正義を吹聴している下、現実の世界では生きていくための様々な闘いが個人レベル、血族や地縁、渓谷レベルであったのだ。事実は自分から取りに行かねば、知ることはできなくなっている。

    河川技術・灌漑技術に最新は無い。その地域に合わせて、最適化されていく。各地で先人から今に至るまで各地で工夫されているそれら土木施設をいま一度、ただある物ではなく、学ぶ施設という視点で見つめてみよう。

    常に様々な事に神経を尖らせながら最期を迎えてしまわれて…思いを知る皆に託されたのだろう。

  • まずは、中村哲さん、素晴らしい方です。
    最近、何かと話題になるアフガニスタン。当然中村哲さんの話も出、では一冊読んでみようとこちら手に取りました。
    ところどころに写真挿入があり、何もない砂漠が緑化していく様は目を見張るものがあります。また、アフガニスタンの風習や、人柄にも言及。用水路建設では現地での人間関係や根回し、関係機関や日本サイドのやり取り等、想像を超える苦労があったことが伺えます。
    用水路建設の詳しい説明は、こちらの知識がなく、難解な部分が多少ありました。
    単なるお金の援助や型だけのものより、現地の人と手を取り合い、共に成長していくことこそが本当の意味での人道支援のあり方だと。
    また、いかに日本の報道がアメリカよりなのか。ワールドトレードセンターが崩壊したとき、悲惨な状況に自分自身洗脳されていた気がします。でもアフガニスタンの多くの人は私達と同じ日常があり、普通の生活を送っています。その人たちのことも忘れてはなりません。各個人がしっかり情報収集をし、真実を自分で見極めて、判断することが大切です。
    これは教科書に採用されて、全国民に読んでほしい本の一つです。
     

  • 中村哲さんの壮絶なアフガニスタンでの活動の記録。生半可な決意ではここまでのことはなし得ない。
    アフガニスタンは、ソ連の侵攻、大旱魃、米国の攻撃など、相次ぐ災厄に巻き込まれていく。こうした中、中村哲さんは、日本の昔の治水技術を独自に調べ、アフガニスタンに適合するよう、上手く工夫し、大規模な灌漑を実現させていった。怯むことなく、淡々とおこなっていった。私もこのように生きていきたい。

  • いつか読んでみたいと思っていた中村哲さんの著作にようやく触れる機会が得られた。
    灌漑事業に関する専門的な説明は理解が追いつかないところが多かったが、本書の核はそこではない。
    縁に導かれてとしか言いようのない経緯でアフガニスタンでの治水事業に当たられた中村さんの行動の数々。そこに込められた思い。
    至誠にして動かざるものなし。
    この言葉が真実なのだなぁと実感する。

    我が身を振り返って、恥ずかしい限りではあるが、少しでもこういう無私・至誠の境地に近づきたい。

  • 中村さんについては、逝去された際のニュースを微かに覚えている程度でした。「アフガニスタンに国際協力で多大な功績を残された方が不幸なかたちでお亡くなりなった」その程度の認識しか持ち合わせていませんでした。

    本当に大人物であったのだと本書を読んで認識を改めました。残された功績は言うに及ばず、異文化に対する深い理解、自然と人間の関係性に対する堅固な思想、困難を乗り越える忍耐力、自身の知識を常に更新する柔軟性、これらを持ち合わせて変化を生み出す為の行動を起こせる稀有な方だったのだと思います。

    一点最後まで分からなかったのは、何が中村さんをここまで突き動かしたのかです。哲学にも造詣が深い方のようなので、芯になる考え方が何かあったのでしょう。内村鑑三の著作など、本書で述べられた幾つかの本にヒントがあるかもしれない為、読んでみようと思います。

    改めてご冥福をお祈りすると共に、中村さんが持たれていた気概の一端でも自身が持てるように努めます。

  • とても信じられない報道を聴いて、先ほどから涙がとめどなく流れ嗚咽を堪え切れず泣きじゃくっています。

    わが敬愛する中村哲医師が身罷った。なぜ彼が殺されなければならなかったのか。

    35年間にわたってパキスタン・アフガニスタンで、民衆のためにそれこそ命を投げ捨てて尽くしてきた彼がなぜたった一発の弾丸で死ななければならないのか、こんな理不尽なことがあっていいものか。

    ・・・12月4日、アフガニスタン東部ナンガルハル州の州都ジャラーラーバードで車の移動中に何者かに銃撃され、胸などに複数の銃撃を受け、緊急手術を受けた。当初は意識があったが、術後に医療施設の整った首都郊外の病院に移そうとして救急車で飛行場に運ばれた際、容体が悪化したという。心臓に近い左胸に2発の銃弾が当たったのが致命傷となった負傷後に現地の病院に搬送された際には意識があったが、更なる治療のためにパルヴァーン州バグラームのアメリカ軍バグラム空軍基地に搬送される途中で死亡・・・

  • 中村哲さんが、アフガニスタンで用水路の建築にあたった30年を振り返った書。

    用水路の仕組みや建築の技術、地学的な部分などは私の知識不足、理解力不足のためよく分からなかったが、中村さんがどのような思いでこの事業にあたっていたがが、強く伝わってきた。

    中でも、報道されていることや、一般的な常識論がいかに表面的なことか、一時的に表面的に関わって、それが全てであるかのように語ることがいかに愚かしいことかを、現地の本当の声、姿、そこに生きる人々の事を知る中村さんの言葉から痛感した。対岸から見る第三者の、なんと身勝手なことか。

    砂漠の地が緑豊かな地になっている写真が多数。これを成して更に自然への畏敬の念を新たにする中村さんの全てに敬服する。

  • かれこれ30年前に福岡に赴任していた頃、ペシャワール会によく足を運んでいた知人が、中村哲さんのことを話してくれたことがあった。私自身は何の関りも持てなかったが、彼の名前を聞く度に一方的な親近感と畏敬の念を抱いていた。

    彼の幼い頃の思い出は、当然だが火野葦平が書いた玉井組の世界と重なる。「花と龍」の、懐かしい読後の空気が戻ってきた。ペシャワールで医療に、アフガニスタンではさらに「水」という生きるための最低限ともいえるインフラを整えるべく灌漑工事に奔走するその一途な姿は、やはり玉井組の、金五郎の血筋だと思わせる気迫がある。

    911後、テロ特措法ができ、難民キャンプで救援活動するNGOなどを守るために、自衛隊派遣の議論をしていた衆院特別委員会で、著者は「不確かな情報に基づいて軍隊が日本から送られるとなれば、住民は軍服を着た集団を見て異様に感じる。自衛隊派遣は有害無益、飢餓状態の解消こそが最大の問題」と話した。当時、議員たちをざわめかせたこの話は、新聞で読んで「哲さんらしい」と思った記憶があるが、「観念の戦いは不毛、平和は戦争以上に積極的な力でなければならない」という言葉は本当に重い。長引くロシアのウクライナ侵攻を見ながら、この言葉は今も生々しく感じられる。

    アフガニスタンという言葉も文化も違う土地の懐深くに飛び込み、人との絆を大切にしながら、人々の命と平和を第一に行動してきた著者。自然の理を知る、ということは「人間の技術の過信を去ることから始まる。人為と自然の危うい接点で知恵と祈りを尽くす。その祈り抜きに技術を語るのは、画竜点睛を欠く」と書く。環境問題に苦悩する今の世界にとっても金言。さまざまな意味で、あらゆる分野に共通する言葉が多く詰まった一冊だった。

  • 読書する良さを改めて感じられた一冊。
    生涯行くことのない場所での、することのできない経験を少しでも知るために私にとって読書は欠かせないものです。

    これまでアフガニスタン情勢については、テレビのニュースで部分的に見聞きする程度でした。
    でもやはり、与えられる情報だけで知った気になるのは大変恐ろしいことだと思いました。
    この本に記されている中村氏の視点が全てではないでしょう。
    違う国籍、立場から見たらまた異なるアフガニスタンが見えてくるのかもしれません。

    この本では主に用水路の作り方が記されています。
    しかしながら、その行程を読み進めるとアフガニスタンの自然環境だけでなく政治的状況、人々の考え方も垣間見ることができます。
    中村氏は自然に対しても、人に対しても決して力業で事を進めることなく相手を理解し、尊重していく姿勢を貫きます。
    これは普通の生活を送る私達にとっても基本的、かつとても大切なこと。その理由がこの本を読むことで心から理解できると思いました。

    「世の中は相変わらず『経済成長』を語り、それが唯一の解決法であるかのような錯覚をすりこみ続けている。経済力さえつけば被災者が救われ、それを守るため国是たる平和の理想も見直すのだという。これは戦を図上でしか知らぬ者の危険な空想だ」

    「知識が増せば利口になるとは限らない。情報伝達や交通手段が発達すればするほど、どうでもよいことに振り回され、不自然な動きが増すように思われて仕方がない」

    「戦場に身をさらした兵士なら、発砲しない方が勇気の要ることを知っている」

    「経済的利権を求めて和を損ない、『非民主的で遅れた国家』や寸土の領有に目を吊り上げ、不況を回復すれば幸せが訪れると信ずるのは愚かである。人の幸せは別の次元にある」

    レビューを書くのが難しいので、終章の中で特に心に残った文章を抜粋します。
    中村氏は物書きではないので、いささか読みにくさを感じるのは事実ですが、それ以上に読む価値がある一冊でした。

    ご冥福をお祈りします。

    2020年6冊目。

  • 他人がやらないから自分がやるしかない、というそんな言葉では信じられないほどの苦難の連続だったに違いないのに、その功績をさらっと書いている。ホント、偉人だ。

  • 今まで中村さんの本を地道に読んできたけど、この本は中村さんの軌跡が知れるから、中村哲さんという人が知りたいなら、この本がベストチョイスだと思う。
    それで、もっと中村さんのことが知りたくなったらほかの本も読んでみる みたいなチョイスはありかもしれません。


    最後のほうのページにある、過去と現在の対比写真がすごかった。過去にそこが砂漠だったことなんて分からない、完全な緑の大地になっていて、感動した。
    今までいろんな中村さんの本を読んできて、実際に中村さんがなさってきたことを文字とモノクロ写真だけでは知っていたけど、カラーで見ると感動が全然違う。
    過去には何人もの人間が死に絶えた砂漠を、緑の大地にしてしまう力。
    ほんとすごいな。ただただ感嘆の声が漏れる。
    元々は医師として派遣され、現地でハンセン病をはじめとする感染症の治療を始めて、団体を立ち上げて、無医地区に病院を作り、井戸を掘り、用水路を造る…。
    中村さんの本を読めば、流れとしてそうなっていくのは理解できるけど、実際にその場にいたときに、咄嗟に「無医地区に病院を作る」だとか「井戸を掘る」だとか、そういう判断ができるのがすごいなと思う。


    にしても、戦争って、いわゆる先進国って、ほんとに勝手だよなあ。
    誰のせいでアフガニスタンがこんな目に遭わないといけないんだろう。

    捏造と錯覚で成り立つ世界。これを読んだわたしですら、生きるのがつらくなってしまうのに、中村さんはずっとどんな気持ちで頑張ってこれたんだろう。
    けど、日本よりずっと人間らしいアフガニスタンにいるほうが、もしかしたら心地よく過ごせていたんじゃないかな。
    中村さんの生きることに対する姿勢に、ちょっとでも近づいていきたい。
    だから、生き物はすべて等しい命だと思っているわたしは、人間の勝手で辛い目に遭ってしまう動物たちのために活動している団体に毎月募金と物資を送ることにした。
    すべての生命が等しく幸せになってほしい。
    最終章はわたしたちに向けたメッセージ。心に刻みます。金と経済発展がイコール幸せではない。人間に必要なものは、そう多くない。

  •  人として何を大切にすべきか考えさせられる良書。この本に出会えたことに感謝。
     以下、心に響く2文。

    『平等や権利を主張することは悪いことではない。しかし、それ以前に存在する「人としての倫理」の普遍性を信じる。そこには善悪を超える神聖な何かがある。』
    『「信頼」は一朝にして築かれるものではない。利害を超え、忍耐を重ね、裏切られても裏切り返さない誠実さこそが、人々の心に触れる。』

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