- Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140816240
作品紹介・あらすじ
マッキンゼー、Googleなど10職以上を渡り歩いた男が、次に選んだのは日本の老舗IT企業だった-ネット登場から20年。数々の現場にいたからこそ知り得たITビジネスの仕組みをこの一冊で圧縮体験する。
感想・レビュー・書評
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点在する情報を一箇所に集めるのがインターネットの得意な所
ユーザーを獲得するために払っているコスト(=TAC)をゼロに近づけるのがビジネスの課題。ゼロに近づけることはつまりユーザーが勝手に集まってきてくれること
1.ユーザーのインテンションを正しく把握する、2.インテンションに基いて最適な物を表示する仕組みをきちんと回ることがインターネットビジネスでは重要
ネット印刷通販会社ラクスル=各印刷所の印刷機の空き時間を使って印刷を行い、通常より安く印刷物を提供する。日本の印刷機の稼働率は45%程度。
ITにより情報を細切れにして配ることでプライバシーの問題にも対処している -
・ 仕入れ値(商品の価値をそれほど感じない)⇔消費地(商品に価値を最も感じる)
・ 「点在する情報を一カ所に集める」という作業は、インターネットが非常に得意とするところ
・ ユーザーが求めている物は何かを明確にする、ユーザーのインテンション(意図)を先鋭化する
・ 情報そのもののコスト、その情報を探すための探索コスト、情報を手に入れるためにひつなコスト。その3つをあわせた物が、価格に見合うかどうかでユーザーはお金を払うかどうかを決める
・ サンクコスト(sunk cost)とは回収できない費用のことで、この場合はゲームを進めるためにこれまで使ってきた時間、取り返しのつかない時間
・ これまでは商品としての単位に足りないために売れなかった物が、仕事を細切れにすることで、売れるもの、価値ある物にできる
・ SNSではまとめて話すことができるから、みんな何となくその人のことを知る。知られることがいいのは、リセンしー効果があるため、ほんとうは会ったことはないんだけど、毎日ポストを見ているからライクしておこうか、ということになる。
・ 情報は「ディレクトリ型」「サーチ型」にわかれ、前者は上位階層からしか検索できないのに対し、後者は下位の粒度から関連情報を拾い上げることができる
・ 電話というメディアは相手の時間を奪う物です。発信する側にするととても心理的な発信コストの高いコミュニケーション手段です。
・ 役に立つかどうかは知らないけれど、とりあえず情報を垂れ流していても怒られない、迷惑じゃないとなると、発信者も心置きなく垂れ流せるわけです。まあ出しちゃえとなると、発進力が強まるわけです。情報が情報としてあるために、リアクティブな受信技術は不可欠なのです。
・ メールのようなメディアを、非同期的なメディアといいます。共時性はない、参加者は自分に都合がいい時だけ参加すればいいから、発信者、受信者ともにコストが低い。
・ 情報を発信するときには自分の持っている情報や志向を整理しなければなりませんが、その作業自体が自分を成長させてくれます。
・ 他人から尊敬され、名誉欲を充足させることができる。だから人はせっせとFacebookやTwitterに書き込むことになるのです。
・ 日本人にとってはハイコンテクストな機微こそが重要で、その機微を文章以上に表現できるから絵文字を使いたいのです。
・ ダイソーという会社は100円の商品を売っているのではなくて、このお客さんが店に滞在している30分という時間を売っているのだ。店内に並んでいる100円の商品を見て、これを買ったら生活にどんな彩りが増えるだろうとか、100円でもこんな物が買えるんだとか、色々考えを巡らせながら過ごす時間を売っている
・ ほんとうにいけてるグローバル企業は英語よりも非言語化を重視しているのではないか
・ グーグルグラスは、情報取得のコストや不安を取り除くことで、人がより人間的な生活を送れるようにしてくれます。(よけいなことを考えるコストが減り、代わりにほかのことに気がつける。) -
iモードを立ち上げた松永真理さんに「議事録を翌日早朝に仕上げて来るのには感心した」と切って捨てられたマッキンゼーのiモード立ち上げに関わったと自称する著者によるインターネットビジネスの解説本。えーっと本人は初心者向きに書いたつもりなんだろうけど薄っぺらい。楽天並みに薄っぺらい。特にクラウドソーシングに関する記述辺りは人間性を疑うというか、Google辞めて楽天に転職するのもむべなるかなというくらいの薄っぺらさ。労働力を如何に買い叩くか?という観点からしかモノを考えられないコンサルタントの本性が滲み出てます。
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表題のITビジネスの原理は、一言で言えば、「ユーザーを集めて企業に売っている」ということ。筆者がこの本で言いたかったのは、むしろ、本書の後半に書かれている、今後のITビジネスが向かう方向(向かうべきと筆者が考える方向)のことだと思う。
日本固有のITコンテンツ(LINEのスタンプ、豊富な顔文字、i-modeの着メロ、待受画面など)に、共通するのは、ハイコンテクストなコミュニケーションが求められているということ。象徴するキーワードは、感情の機微、隙間を楽しむ、常に新しい刺激を求める、など。
筆者は、これらの日本独自のハイコンテクストなコミュニケーションをアメリカ初の効率重視のローコンテクストなコミュニケーションと対比しており、この違いが、今後のITビジネスにおいて、日本の強みになりうるという考えを持っているようだ。
今後、日本初のITビジネス・コンテンツが、世界市場にどれだけ受け入れられるのかは未知数だが、「インターネットが多言語化するにつれて、インターネットの主要ユーザが、ハイコンテクストな人達に変わる」、という筆者の仮説に基づいて、世界市場に勝負をかけてみるのも、面白いと思う。 -
点在する情報を1箇所に集めるという作業はインターネットが非常に得意とするところ
インターネット以前のビジネス モノを安く仕入れて高く売る インタネットのビジネスはユーザを安く仕入れて高く売る
世界中に散財しているユーザを1箇所に集めて、そのユーザを金を出しても欲しいと思っている企業や人と結びつける、マッチングするのが、インターネットビジネス
ソーシャルゲームの原型はポケットモンスター ポケモンを作ったのは田尻智さん 「新ゲームデザイン」
ゲームの主要な要素 交換、収集、育成、対戦
クラウドソーシングの究極 ネット通販印刷会社ラクスル 全国の印刷会社の空き時間を使う
ITやインターネットは仕事を細切れにすることで価値を生み出すだけでなく、その細切れを集めることによって新しい価値を生み出し、普段使われていない部分を有効活用することができる
タスクの細分化 レイヤーバンドル
レイヤーバンドルによるオランダの農業革命
マズロー 欲求五段階説 生理的欲求、安全の欲求、所属と愛の欲求、承認の欲求、自己実現の欲求
目的型情報発信、非目的型情報発信
ハイコンテクストのコミュニケーションの歴史が日本にはあった
日本というハイコンテクストな国は、こうした言葉ではない部分を楽しむ、隙間を楽しめるという文化がある
appleのコンテンツの市場 2012年4500億円
日本のモバイルコンテンツは2007年ですでに超えている
アメリカ人はローコンテクストだから言わないとわからない。でも日本人はハイコンテクストなので、言わなくても分かる
アメリカ的なものでつくられた無駄なき社会から人間を取り戻せるのは、日本的なもの
アメリカという国家、社会の成立事情から仕方のないことであるが、阿吽の呼吸が成立しないので、コニュニケーションを楽しむというところまでいかない。余剰の部分まで到達しないのです。この余剰に生まれるのがコミュニケーションの消費なので、だからアメリカではコミュニケーション消費が起きにくいのではないかというのが私の仮説
英語を母国語とするアメリカで生まれたインターネットは、英語が世界共通語であるとする雰囲気の中で、英語という言語に縛られてしまった。そのため、ほぼ強制的にローコンテクストにならざるをえなかったといえる
ハイコンテクストなコニュニケーションを加速するのがウェラブルであり、ギガビットインターネットなんです -
最近Webサービスについて考える事が多かったので、まさにぴったりの内容で、すっと理解が出来るコンテンツだった。米国と日本の文化的な特徴とITによって影響される部分、Googleから楽天への転職の意味するところ、今後日本が強く押し出して行くべき強く・価値について訴求されている。
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2023年12月21日読了。IT評論家・起業家の尾原和啓氏による、ITビジネスがどう成り立っているのか?どこが収益のキーなのか?の要素を平易に解説した本。COTENラジオに氏が登場した回を聴いて気になり読んでみたが、なるほど非常にわかりやすくておもしろい…!Googleの強さがどこにあるのか、「広告で儲けているんだよね」となんとなくは理解していたものの、「ユーザを商品とし、ユーザーを安く仕入れて高く売るビジネス」という説明のいかに明快であることか…!ソシャゲユーザーに課金をうながすためには「サンクコストに対して課金させる」戦略が有効であるとか、インターネット化が社会に生み出した効果の一つが「レイヤーアンバンドル」であるなど、iモードやニコ動、楽天などのビジネスの具体例を伴い説明があって大変腑に落ちた。終盤の「ハイコンテクストなインターネット」の話は新鮮、今あるコミュニケーションの形は決して究極で固定的なものでなく、技術の進化に伴い質も量も変化しうるものということなのか…この先の未来がちょっと楽しみになった。