6度目の大絶滅

  • NHK出版
3.82
  • (18)
  • (20)
  • (17)
  • (3)
  • (2)
本棚登録 : 290
感想 : 27
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140816707

作品紹介・あらすじ

地球ではこれまで5度の大量絶滅が起きている。隕石衝突、火山活動、氷河期到来など、いずれも突然の大規模な自然災害で多くの種が消滅した。そして現在、サンゴ類の1/3、淡水産貝類の1/3、サメやエイの1/3、哺乳類の1/4、爬虫類の1/5、鳥類の1/6、植物の1/2がこの世から姿を消そうとしている。恐竜時代には1000年に1種だった絶滅が、いま、毎年推定4万種のペースで人知れず進行しているのだ。このままでは、2050年には種の半分が消えてしまうかもしれない。世界各地でいったい何が起きているのか?そして原因は何なのか?絶滅の最前線で、歯止めをかけようとする研究者たちの時間との闘いが熱く繰り広げられている。『ニューヨーク・タイムズ・ブックレビュー』2014年ベストブック10冊に選ばれた話題作。

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 最初の数章が冗長に感じました。これは原著が描かれた当時に人新世、アントロポセンという概念がまだまだ一般に普及していなかったので世界中で現在かつ過去も含めて人間によって引き起こされた生物の絶滅を物語風に追い、本題(第5章以降)への誘いという体を取ったのではないかと思います。

  • 大絶滅にかかわる学説史的なものを背景に、著者が世界各地を訪ねて取材した学者たちの活動をアンサンブル的に(もとは雑誌連載)散りばめてある。カエルのツボカビ、化石発掘、恐竜絶滅、海洋酸性化、熱帯多雨林、サンゴ礁、人新世、ネアンデルタール人などなど盛りだくさん。ヒトの手により現在進行中のまさにグローバルな事態を、地質学的な時間軸の中にすっきり位置づけてくれた。

    個々のエピソードは何かしら聞いたことのある話がほとんどだだったが、個人的には以下の点などが新鮮であった:

    ・イースター島の環境破壊の原因は、直接的にはヒトよりもむしろネズミであった可能性が指摘されている(そのネズミはヒトが連れてきたにせよ)

    ・生物種の多様性は極から赤道に向かって増えていくが、それがなぜかについては通説がまだない(仮説はたくさんあるが)

    ・旧人類もネアンデルタール人も他の哺乳類と拡散パターンは同じで、海を越えてマダガスカルやオーストラリアには行かなかった。それをしたのは現生人類だけ

  • 私はこの本に「いままでに起きた大絶滅の内容と対策」を求めていました。
    しかしこの本は前文が「絶滅という現実を飲み込めなかったかつてのキリスト教信者」で、メインが「大絶滅で滅びる可能性の高い動植物の紹介」でした。

  • 地球上に「生命」が現れてから約40億年もの間に、さまざまな種が生まれては絶滅していった。
    現代の私たちは地層や化石などの研究によって過去に5回の大規模な絶滅(ビッグファイブ)があったことを知っている。
    (ウィキペディアの地質時代、大量絶滅を参照)
    過去の大絶滅では当時に存在した種のうち70〜90%が失われたといわれている。私たちにいちばん馴染みがあるのが白亜紀末の大絶滅で、当時地上で大繁栄していた恐竜類が隕石の落下による影響で一斉に絶滅したことは有名だ。

    そして、今現在、6度目の大量絶滅が進行中で、その主な原因が私たち「ヒト」である、という事がこの本のテーマである。
    私たちヒト(現生人類)が約15万年前から存在しはじめ、アフリカをはじめとしてヨーロッパやアジアの各地へ拡散していったときから、当時各地に存在していた動物たち、マストドン、マンモス、スミロドン、オオナマケモノなどの巨大獣が次々と絶滅していった。ヒトが原因となる絶滅の有史後の例としてとりあげられているのが1800年に絶滅したとされるオオウミガラスだ。

    さらにこの本では今まさに絶滅しようとしているたくさんの種について、調査や保護の様子が記述されている。
    グローバル化の影響と思われるツボカビ病によって個体数を激減させている南米の両生類。
    二酸化炭素の増加による海水の酸性化によって2000年代末には絶滅する可能性があるとされるサンゴ類。そのサンゴ礁が作りだす生態環境に依存しているといわれる数千〜数百万種の海洋生物たち。
    アメリカのコウモリが大量死しているのはヨーロッパのコウモリとは共生しているカビによる「白鼻症」のせいで、これもまたヒトのグローバル化が原因であること。等々。

    この本の読者が読後になにか不満を感じたとしたら、それは章構成の乱雑さに混乱したせいかもしれない。
    私が思うには、「人類が絶滅という概念を獲得する話(おもにフランスの博物学者キュビエを中心とする)」と「過去の大絶滅(ビッグファイブ)に関連する話(地質学者と物理学者のアルヴァレズ親子が隕石衝突説で古生物学会に殴りこみをかける等)」と「6度目の大絶滅で(たぶんヒトと関わったせいで)滅んだ動物たちの話」と「現在進行中の絶滅危惧種の話」の章が入りまじって構成されているので、読んでいてすこし混乱するのだ。

    構成にすこし難があるとはいえこの本のテーマは刺激的で、重要な問題提起をしていると思う。
    ヒトが化石燃料を使用して大気中の二酸化炭素濃度が高まり地球温暖化をひきおこしたり、急激な環境改変が生態系の破壊などにつながっていることは一般的に認知されている問題だが、この本ではそういった周知の問題だけではなくて、もっと踏みこんで「ヒト」が世界に及ぼす影響について示唆している。

    その点で圧巻なのは最終章の手前、ネアンデルタール人のDNA採取を試み現生人類との関係を研究している遺伝学者ペーボの話だろう。ペーボが探すのはネアンデルタール人にはなくて現生人類にあったもの、彼が「狂気のようなもの」と呼ぶ何か、おそらくは6度目の大絶滅を起こさせる原因でもあり、ヒトのヒトらしさの本質でもあるものだ。それは文中で示唆されているように「飽くなき好奇心を抱く」内容である。

    上にあげたウィキペディアの大量絶滅の記事中にもあるが、現代が6度目の大絶滅の最中であるというのは大多数の生物学者の一致した見解だそうだ。
    そしてこの本が示唆するように大量絶滅の原因がヒトにあるのかどうかは確定してはいないが、ヒトは温暖化や環境破壊をする一方で絶滅危惧種の保護活動をしたり保護区を作ったりもしているわけで、とても不思議な生物であることは確かだと私は思う。

  •  米『ニューヨーカー』誌の記者を務めるジャーナリストが、いままさに進行中の「6度目の大絶滅」の実態を探っていく科学ノンフィクションである。

     地球の長い歴史のなかで、過去5億年の「顕生代」(目に見える生物が現れた時代)に入ってから、5度の「大絶滅」(「ビッグファイブ」と呼ばれる)が起こったとされている。

     大絶滅(大量絶滅)は、「世界中の生物相の大多数が、地質学的に見て取るに足らない時間で消滅すること」、あるいは「急速に地球規模で起きる生物多様性の多大な損失」などと定義される。
     いま進行中だと考えられている「6度目の大絶滅」が過去の「ビッグファイブ」と異なるのは、人類の活動によって引き起こされている点だ。

     現在、「造礁サンゴ類の三分の一、淡水生貝類の三分の一、サメやエイの仲間の三分の一、哺乳類の四分の一、爬虫類の五分の一、鳥類の六分の一がこの世から消えようとしていると推定される」という。
     消滅の原因はさまざまだが、検証すれば必ず人類という犯人にたどりつく。

     読みながら、『寄生獣』でミギーが言う名セリフ――「シンイチ……『悪魔』というのを本で調べたが……いちばんそれに近い生物は やはり人間だと思うぞ……」を頭に浮かべずにはおれなかった。

  • ダイナミックな地球史のなかで大絶滅というと、恐竜を絶滅させた白亜紀の隕石衝突説をまず連想すると思いますが、それ以外にも生物は何度か大量に地球上から姿を消し、その後は全く違う生物が繁栄するということが起こっています。過去に5回、そのような出来事が確認されていることから「ビッグファイブ」と呼ばれているそうですが、これらの要因は1つではありません。

    オルドビス紀末の絶滅=氷期
    ペルム紀末、三畳紀末、ジュラ紀初期=地球温暖化と海洋化学状態の変化
    白亜紀末=隕石衝突

    ところが現在でも生物はどんどん姿を消しています。「絶滅危惧種」という言葉を聞いたことがあると思いますが、人間のスケールで当てはめれば緩やかに減少しているように見えるかもしれませんが、地球史のスケールで見ると、尋常ではないスピードで地球上から生物がいなくなっている。それは「6度目の大絶滅」と呼んでもいい規模であり、その要因は一体何か?というのが本書のテーマ。だいたい察しがつくと思いますが・・・・。

    帯にその答えが書かれていますので、隠す必要はないのですが、では、なぜ、人類が6度目の絶滅を引き起こしているといえるのか、その証拠をつかむために著者は各地へと飛び、生物研究者と行動をともにし、そうして得た現実をまとめたのが本書。

    発端は「黄金のカエル」と呼ばれる、中米パナマ共和国では普通に見られたカエルが大量に死に、目にすることが珍しくなったことへの関心から。それからすでに絶滅した生物、絶滅危惧種、へと調査が進み、それから生物研究史(絶滅という概念、進化論など)にも少し触れ、また、もはや飼育されている数が全てだという生物、絶滅を食い止めたいと奮闘する研究者の姿が描かれています。

    さて、6度目の絶滅に加担しているとされる人類。そういうと現代人の密猟や環境破壊が思い浮かばれ、もちろんそれが大きなインパクトを与えているのはたしかなのですが、興味深いのは、大絶滅は人類が誕生した時点からすでに始まっていた、という点。

    人類と近縁種のチンパンジーやボノボ、ゴリラは、遺伝子的にはほとんど同じですが、人類にはあって、近縁種にはない特徴の1つに、仲間と協力しあって問題を解決する能力、が挙げられています。個々の能力では近縁種の方が優れている点があるものの、彼らは互いに協力して物を運んだりはしない。また、ゾウやサイ、ライオンなど、大型で獰猛という特徴=襲われない、ということにつながるのですが、この特徴も人類のその能力では意味をなさない。

    こうして人類は地球上のあらゆる地域に移動し、住むようになった。そうすることで外来種がもちこまれ、環境が変えられ、狩りが行われ、やがて生物の多様性は失われ、それが現在も続いているという。

    だからこうしましょう、ということは本書には書かれていません。もちろん、読者がこれを読むことで、自分も絶滅に加担していることを意識してもらうことには期待していると思いますが、意識しようとすまいと、人類も地球上で生まれては消えていく生命体の1つに過ぎないということでしょうか。

  • 「地球上の誰かがふと思った。『生命の未来を守らねば・・』」
    漫画『寄生獣』の有名な冒頭シーンだが、本書でも「人類は最も成功をおさめた外来種」であり、人がこの地上に出現した時、地球上の全生命体の「生存の条件が変わった」のだと説く。
    大海原を躊躇なく漕ぎ出す狂気の遺伝子を持つ現生人類は、はるかに大きく頑強な大型生物やネアンデルタール人などを絶滅させ、人間の移動がなければ維持された種の地理的分離を元に戻し、あげく海の酸性化や地上での大変動に影響を及ぼす。
    いま、これまでとは質的に異なる、何か特別なことが進行している。

    しかし事はそう単純でもなさそうだ。
    理論と現実が食い違うことはままあるし、予測が観測と一致しないこともよくある。
    人間のやること、観測の限界は避けられない。
    いまも「何千何万という新種が人知れず成育していて、正式な分類を待っている」のだ。
    しかも、絶滅には時間のかかるものもあるし、破壊で失われた生息地の再生も考慮に入れる必要がある。
    そう、自然はしぶといのだ。
    「現実はいつももっと複雑」という一文は思い上がりをくじき、謙虚にさせてくれる印象的なフレーズだ。

    それにしても本書は生命を新しい視点から見るきっかけを与えてくれる。
    18世紀の終わりまでは、絶滅というカテゴリーは存在せず、まったく自明の概念ではなかったというのも、あらためて考えると驚きだ。
    その転換となったのがマンモスなどの奇妙な骨の発見なら、現代ならさしずめ1隻のスーパータンカーやジェット機の出現が引き起こす転換も凄まじい。
    グローバル化が数百万年かけて進行した地理的分離の巻き戻し、「新パンゲア大陸」の形成過程にあるという指摘は強烈だった。

  • 絶滅という概念ができるまでや、現在絶滅に瀕している種のストーリーを眺めながら、人の手によって現在起きれいる変化を実感することができた。
    人の移動によって引き起こされる変化を止める事ができるのか?保護した生態系は果たして自然と言うことができるのか、とても考えさせられる内容だった

  • ■一橋大学所在情報(HERMES-catalogへのリンク)
    【書籍】
    https://opac.lib.hit-u.ac.jp/opac/opac_link/bibid/1001068629

全27件中 1 - 10件を表示

エリザベス・コルバートの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
アンドレアス ワ...
ジャレド・ダイア...
シーナ・アイエン...
リチャード ウィ...
トマ・ピケティ
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×