限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭

制作 : 柴田裕之 
  • NHK出版
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本棚登録 : 638
レビュー : 55
  • Amazon.co.jp ・本 (536ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140816875

作品紹介・あらすじ

いま、経済パラダイムの大転換が進行しつつある。その原動力になっているのがIoT(モノのインターネット)だ。IoTはコミュニケーション、エネルギー、輸送の"インテリジェント・インフラ"を形成し、効率性や生産性を極限まで高める。それによりモノやサービスを1つ追加で生み出すコスト(限界費用)は限りなくゼロに近づき、将来モノやサービスは無料になり、企業の利益は消失して、資本主義は衰退を免れないという。代わりに台頭してくるのが、共有型経済だ。人々が協働でモノやサービスを生産し、共有し、管理する新しい社会が21世紀に実現する。世界的な文明評論家が、3Dプリンターや大規模オンライン講座MOOCなどの事例をもとにこの大変革のメカニズムを説き、確かな未来展望を描く。21世紀の経済と社会の潮流がわかる、大注目の書!

感想・レビュー・書評

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  • 資本主義パラダイムの転換について考える、とても良い本。
    限界費用とはモノやサービスし追加でひとつ生み出すコストのことで、将来モノやサービスは無料になり、企業の利益は消失して、資本主義は衰退する。IoT、モノのインターネットは効率性や生産性を極限にまで高める。3Dプリンターは材料も現地調達するなどして、限界費用ゼロで太陽エネルギーパネルや電池も作れるので、太陽エネルギーが限界費用ゼロに近づく。途上国で農民の道具を3Dプリンターで作る運動家もいる。
    資本主義は垂直展開型、中央集中型で囲い込みをしてきたが、インターネット革命は分散型、水平展開型のグローバルネットワークで解放していくので、地域が自立できる。大消費時代は終わりを告げて、すべての人が自分のものは自分で作る生産者になる。所有することよりシェアするのかが当たり前になる。資本主義の衰退によって広告もなくなる運命にある。工場労働者だけでなく教員や弁護士に至るまでオンラインやコンピュータに取って代わられる大失業時代が来る。人々は短期的には新しいインフラの整備につくことになり、中長期的には地域の協働型コモンズの非営利組織での仕事につくことになるだろう。生物圏コモンズの生態系に共感することで、人類は全体の一部であることを意識する。
    人々の幸福度は、1人あたりの平均年収が最低限の快適水準である2万ドルに達するまでは上昇するが、その後は収入がさらに増加しても幸福度は減少していく。
    限界費用ゼロ社会では高齢化もあまり問題にならないかもしれない。少ない人口でも高い生産性と質の高い生活を享受できるかもしれない。
    あらゆるものがシェアされているが、使っていない裏庭を畑仕事に貸すシァエードアースというものもアメリカにはある。

    ガンディーのことば。
    世の中は、個人を中心とするひたすら広がり続ける大洋のような輪だ。真の幸福と満足は…欲求の拡大ではなく意図的な削減にある。地球はあらゆる人の必要を満たすだけのものを提供してくれるが、あらゆる人の強欲を満たすことはできない。ガンディーは共産主義にも失望していた。コミュニティの団結を唱えておきながら、工業化の過程で、資本主義よりも厳格な中央集中型の制御を行ったからだ。
    金融機関は大きすぎて潰せない、ということは、庶民は小さすぎて問題にならないということである。

  • 我々の社会の未来をここまで刺激的かつ具体的にまとめあげた本はなかなかないのではないだろうか。それくらい面白い。

    500ページ弱となかなかのボリュームではあるが、以下のような要点に収斂される。

    ■IoT、AI、ロボティクス、3Dプリンティング、スマートグリッドといった近年のテクノロジータームの新しさは「限界費用がほぼゼロで新たな財を生産できる」という点にある
    ■資本主義社会は資本を集中させ生産性を高めてきたが、そろそろ生産性の限界に達し、かえって労働者を不要とすることで貧しい人々を生み出すという「資本主義のジレンマ」とも呼べる事態に陥っている
    ■そうした中で、従来の資本の担い手であった政府(=国有化)、民間(=民営化)とも違う第三の資本の統治形態としてコモンズ(=共有型)が着目されるべき。実際、社会関係資本(Social Capital)への注目や、共有型経済(Sharing Economy)の台頭は、この文脈で理解される。特に共有型経済においてはこれまでの資本主義とは異なり、資本や生産手段の分散化が図られるという点が重要
    ■歴史的に見れば、文明や社会の変革は、
    ・コミュニケーション
    ・エネルギー
    ・交通/輸送
    の3つのインフラがリンクしながら変化することで引き起こされている。IoTは限界費用がゼロという特徴から、まさにこの3つを抜本的に変化させる可能性を秘めており、共有型経済に必要な分散化を実現するのに最も適した技術。数十年の時間は必要ではあるが、間違いなくこの流れは第三次産業革命として、今後の社会を大きく変革させていく

    特筆すべきは上述のテクノロジータームについて、限界費用ゼロという共通項を導出したその観点の鋭さにある。限界費用(Marginal Cost)とは一般に経済学において、新たな財を一単位生産するにあたって追加で必要となるコストのことを指す。よって、限界費用がほぼゼロの世界においては、生産前の初期投資は必要であるものの、いったん初期投資さえ済んでしまえば、追加のコストはほぼなしに財を生産できる(これを会計学のワーディングに置き換えれば、固定費はあるものの、ほぼ変動費がゼロで財の生産ができる、ということに等しい)。例えば、ロボティクスは人間を介在させないことで人件費を省き、ほぼ電力コストのみで財の生産を可能とするし、スマートグリッドにおいてはネットワークに組み込まれた再生可能エネルギー源(太陽光、風力など)からほぼ限界費用ゼロでエネルギーを創出することができる。

    個々のテクノロジータームの正確な概念描写等は脇に置いておくとしても、これだけ広範な概念をこの一冊にまとめあげた価値は非常に大きい。

  • FREE以来の衝撃だった。
    資本主義の競争の原理により、製造コストは下がり続ける。一時的に寡占企業がその流れを阻止しようとも、大局的には、製造コスト=限界費用は限りなくゼロに近づく。それは、すでに資本主義を看破したアダム・スミスの予測するところでもあった。
    という刺激的な論考により始まる本書、IoTありソフトウェアあり、シェアエコノミーありと、この数年来からの市場のある一面を理解するのにとても最適な書。
    ただし、それはインフラ投資という巨額が必要な部分については、すでになされている、あるいはオプティミスティックに生協方式などで構築できるだろうというスタンスを取っているのが、少々納得感にかける。
    しかしながら、里山資本主義や社会貢献型の企業など、オープンイノベーションなどの流れやairbnbなどに代表されるシェアエコノミーの確実な発展をみると、少なくとも、無意識ではいられないことを感じさせる。
    やはり、ハブアンドスポークのような形態になるのか、それとも多重世界のような形態になるのか。市場経済が消えることも、シェアエコノミーが発展せずに四散することも起こり得ないとするなら、その経済活動の間でどのような事態が起こるのか。それとも、過去に起きた囲い込みが違う形で起きるのか。それとも、なにも新しい経済活動ではなく旧来から存在していた地域社会における経済活動がただインターネットという媒介を介して広く広く延びていくだけなのか。興味は尽きない。

  • 限界費用がゼロとなると、資本主義においては価格を付けることができず、そこから利益も生み出せない状況になり、利益の創出を前提とする資本主義を崩壊させる可能性があるという。いわゆるシェアリング・エコノミーによる協働型社会の出現である。もちろん、シェアリング・エコノミーは一部ではすでに実現している。代表的な例では2015年になって日本でも多くの人が知ることとなったUberやAirBnBがある。著者の主張は、限界費用ゼロの経済原理はさらに広がり、2050年までには世界の大半で経済生活の大半を占める結果として、現在の資本主義社会を根本的に変えてしまうということである。それは、希少性や交換価値ではなく、潤沢さや使用価値・シェアを経済活動の中心に置くということになる。

    著者はIoTインフラの専門家で、ドイツが進めるインダストリー4.0の提唱者の一人でもある。IoTへの取り組みは各地で進んでおり、巨大企業のGEのIndustorial Internet、CiscoのInternet of Everything、IBMのSmarter Planet、SiemensのSustainable Cityなどがその例だ。インフラには三つの要素 - コミュニケーション、エネルギー、輸送 - があるが、IoTはこれらのシステムと連携し単一の稼働システムとして協働させるものだという。IoTは中間業者を一掃し、このようなインフラの限界費用をほぼゼロにできるのだという。IoTを実現するための技術要素にかかる費用はどんどん低下しており、例えば無線ICタグは1年で4割価格が下がり、今ではひとつ10セントもせず、ジャイロや加速度センサ、圧力センサなどのセンサ類もこの5年で8~9割下がっているという。エネルギーについても太陽光発電により限界費用をゼロに近づけることができるという。自動運転の進化も輸送インフラに影響を与えるだろう。3Dプリンティングや、認知を得られつつあるMOOC (Massive Open Online Course)、なども製造や教育の状況を変えるであろう限界費用ゼロ社会の象徴だ。

    本書では、最後に日本版のために特別に書き下ろした章がオリジナルから追加されている。「日本は、限界費用ゼロ社会へのグローバルな移行における不確定要素だ」から始まるこの章は、日本ついてのやや一般的ではあるものの、適切な批判がつづられている。「その苦境を理解するためには、日本の現状をドイツの現状と比べてみさえすればよい」とIoTなどの新しい技術に対する国家としての取り組みの差についてドイツとの比較で語られる。メルケル首相が2005年に就任したとき、著者が新しい指導者に招かれて将来社会の変革について意見を聞かれたという贔屓目を差し引いても、ドイツと日本との取り組みに差があるのはその通りだと思う。ドイツにもユーロ問題はあろうが、世界から日本がどのように見られているのかが垣間見られて暗鬱になる。

    もちろん日本に向けたメッセージなので、日本の持つ潜在能力についても言及してもらっている。二十世紀に成し遂げた成果、超高速インターネット接続インフラ、再生可能エネルギー源(太陽光、風、地熱)はどこにも負けていない。このままだと二流国に落ちぶれるが、日本のもつ力をIoTを活用した明日の限界費用ゼロ社会に振り向けることができれば、世界を導くことに十分貢献できるだろう、というどっちの結果になっても間違いがない言葉で終わらせているのはご愛敬だ。

    夢中になって読んだかと言われるとそうでもない。どちらかというとコンサル的にきれいに(楽観的かつ空想的に)まとめすぎのような気がする。たくさん数字が出てきて興味深いのだが、何かごまかされている感じがするのはそのせいかもしれない。それでも、こういう社会の認識の変化には備えないといけないのだろうなと思う。20年前にインターネットや携帯ネットワーク・端末が今あるように進化をして、世界を変えるということは想像しなかったし、GoogleやFacebook、Amazonといった企業がここまで台頭して生活を変えるということを想像してみることもできなかった。そういう意味では、エネルギーや輸送インフラの将来像については丸ごと信じるわけではないが、大きく変わるということと、その大きな方向性については同意する。そういった数十年かつグローバルな世界の変化について考えを巡らせるきっかけになるということにはなるのかと思う。

  • 2012年頃に書かれた本。
    「インターネット広告は、従来の広告より単価が安く、ユーザーはレビューを重視して広告は信用しないので生き残れないだろう」という当時の筆者の予想は大きく外れている。
    この本はネクストソサエティのような予言の本ではなく、外れていることが多いが一つ一つの事実を知るにはまとまっている。

    ・1995年から2002年にかけて、全体の生産量は3割以上増えたが、製造業の雇用は2200万人分も消失した。
    ・GDPの上昇と雇用は相関しなくなっている

    ・トレーラートラックのグローバルな輸送の積載率は1割にも満たない。輸送は効率化の余地が大きい。
    ・ロジスティクスは分散型インターネットのアーキテクチャを用いて改善すべき。最初から最後まで一つのトラックで運ぶのではなく、輸送拠点を途中にいくつも設けることで輸送を効率化できる。

    ・生産・ロジスティクス等エネルギー効率の改善、持続可能エネルギーの普及、シェアサービスの普及、で限界費用はゼロに近づき、希少性をもとにした資本主義の次の時代、潤沢さが前提となる時代が訪れるだろう(食糧問題は未解決)

    ・20世紀に入って、ヨーロッパやアメリカをはじめとする国々で女性を家事から解放したのは電力だった。地球上の人口を安定させるには、電気へのアクセスが鍵となることが分かり始めている。最貧国において、大家族というのは実質的に保険のようなもので、たとえ子どもの中に若くして命を落とすものがいても、その仕事を引き受けられるほかの担い手を確保できることを意味する。

    ・ミレニアル世代が家や車を所有したがらず、出世欲も少なく、物質的豊かさよりも人と人との関わりをより重視するのは、世界金融危機の影響が大きい。

  • IoTとシェアリング・エコノミーという現代のバズワード的な技術動向を産業革命と社会(ここではコモンズ)変化の側面から表した1冊。特にエネルギーの重要性を再認識させられる。

  • ★資本主義を突き詰めるとシェアリングエコノミーになる。稀少な資源を奪い合う時代から、潤沢な資源を分け合う時代へ。そのための障害は、地球温暖化問題、食糧問題、テロの問題。3つをいっぺんに解決できないだろうか。例えば人工光合成みたいな技術で。ミドリムシもいいかも。

  • 限界費用ゼロとは、ネットでのニュースや情報伝達など、非常に狭い世界のことかと思っていたら、著者はこれでもか、と具体例を挙げ、これは第三次産業革命なのだと説く。
    また、資本主義に変わるのは共有型コモンズだと言う。コモンズには「悲劇」という結末しかないのかと思いきや、そうではない。これも著者に論破されてしまったようだ。
    本書は2012-13年に書かれたもののようだ。ディープラーニングや人工知能の進展などは本書にはないが、著者の示す方向にどんどん進んでいるのがよくわかる。

  • 非常に面白い。レイ・カーツワイルの『Singularity is Near』が指数関数的成長をビジョナリーを語ったものとするなら、本書は学術的寄りに歴史から指数関数的成長の到来を考察した一冊だ。

    Marginal Costが限りなくゼロ化することで、利益マークアップの資本主義が弱まり、協働型コモンズが訪れるという主張は相当の説得力がある。IoTによる超効率社会とエネルギー・インターネットによりエントロピーが矮小化した潤沢な社会は、希少性を重んじていた我々現代人とは全く別の世界の到来を予感させる。

    前半は経済学書のような骨太な考察が楽しめるが、中盤以降は協働型コモンズの萌芽、つまり現段階の事例紹介が多い。前半のような論理的展開で、協働型コモンズとなった社会の経済状況、資本主義からのシフトなどが読みたかったので、そこだけはやや物足りなかったため減点。

    とはいえ兎に角新しい経済システムを提示する興味深い一冊だ。

  • 未来を予測するには、一度思いっきり極端な方に振ってみると良い。そういう意味で、極端なまでに限界費用ゼロ社会/協働型コモンズの普及を説いているこの本は、将来の予測のために役に立つ。

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