限界費用ゼロ社会 〈モノのインターネット〉と共有型経済の台頭

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (536ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140816875

作品紹介・あらすじ

いま、経済パラダイムの大転換が進行しつつある。その原動力になっているのがIoT(モノのインターネット)だ。IoTはコミュニケーション、エネルギー、輸送の"インテリジェント・インフラ"を形成し、効率性や生産性を極限まで高める。それによりモノやサービスを1つ追加で生み出すコスト(限界費用)は限りなくゼロに近づき、将来モノやサービスは無料になり、企業の利益は消失して、資本主義は衰退を免れないという。代わりに台頭してくるのが、共有型経済だ。人々が協働でモノやサービスを生産し、共有し、管理する新しい社会が21世紀に実現する。世界的な文明評論家が、3Dプリンターや大規模オンライン講座MOOCなどの事例をもとにこの大変革のメカニズムを説き、確かな未来展望を描く。21世紀の経済と社会の潮流がわかる、大注目の書!

感想・レビュー・書評

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  • 所有しない経済。クラウドから好きなコンテンツを楽しみ、3Dプリンタによるインフラに居住し、シェアリングされた車で移動。ユニバーサルアクセス可能な電力やネットワークを使い、バーチャル空間で人間関係を満足させ、性欲を満たす。

    資本主義の跡継ぎとして共同型コモンズで展開されるシェアリングエコノミーがある。そうする事で過剰な生産が抑えられ、地球にも優しい。人間の労働にもゆとりが生まれ、貧富の差も縮小する。

    理想は分かるが、これだとグローバル公共経済を実現した共産主義にならねばならず、プラットフォーマや、そのシェアリングインフラを保守、提供する側のモチベーションはどのように保たれるのか。脱成長論は究極的にベーシックインカム民族と、インフラ維持民族に二分される?ような印象だ。インフラ維持勢のみ子作りトークンを配る?面白そうだが(この本には、そんな事書いてない)、結局、経済モデルが示されないと、社会が緩慢にしか動いていかない。現状資本での利益を獲得できるだけ、その転換を引き伸ばそうとするからだ。

    確かに、世界のGDPの伸びが鈍り続けている。エコノミストはその原因を高いエネルギーコストや人口動体、労働人口の伸び悩み、消費者と政府の負債、世界の収入のうち富裕層に回る額の増加、出費を嫌う消費者による買い控えといったものを指摘するが、財やサービスを生産する限界費用が様々な部門でゼロに近づくと言う理由も関係している。だが、段階的にだ。車を所有する人がある時からゼロ、とはならないように。

    そしていまだに、人口の2割が電力の使用に不安があり、他の2割は電気のない生活を送っている。女性の解放に必要なものは、電力。電力へのユニバーサルアクセスが可能になれば、女性が勉学に勤しみ、家事から解放されることで出生数は下落。これにより、最貧国の人口の急増にも歯止めがかかり、先進国とのアンバランスな、ヤンキー子沢山問題のワールドワイド現象に片がつく。

    変化は、徐々に徐々に。しかし、間に合わないなら、一気に価値観を変えるカタストロフィ。このチキンレースのサーキット場が、社会資本のあり方について、という事だと思う。

  • 資本主義パラダイムの転換について考える、とても良い本。
    限界費用とはモノやサービスが追加でひとつ生み出すコストのことで、将来モノやサービスは無料になり、企業の利益は消失して、資本主義は衰退する。IoT、モノのインターネットは効率性や生産性を極限にまで高める。3Dプリンターは材料も現地調達するなどして、限界費用ゼロで太陽エネルギーパネルや電池も作れるので、太陽エネルギーが限界費用ゼロに近づく。途上国で農民の道具を3Dプリンターで作る運動家もいる。
    資本主義は垂直展開型、中央集中型で囲い込みをしてきたが、インターネット革命は分散型、水平展開型のグローバルネットワークで解放していくので、地域が自立できる。大消費時代は終わりを告げて、すべての人が自分のものは自分で作る生産者になる。所有することよりシェアするのが当たり前になる。資本主義の衰退によって広告もなくなる運命にある。工場労働者だけでなく教員や弁護士に至るまでオンラインやコンピュータに取って代わられる大失業時代が来る。人々は短期的には新しいインフラの整備につくことになり、中長期的には地域の協働型コモンズの非営利組織での仕事につくことになるだろう。生物圏コモンズの生態系に共感することで、人類は全体の一部であることを意識する。
    人々の幸福度は、1人あたりの平均年収が最低限の快適水準である2万ドルに達するまでは上昇するが、その後は収入がさらに増加しても幸福度は減少していく。
    限界費用ゼロ社会では高齢化もあまり問題にならないかもしれない。少ない人口でも高い生産性と質の高い生活を享受できるかもしれない。
    あらゆるものがシェアされているが、使っていない裏庭を畑仕事に貸すシァエードアースというものもアメリカにはある。

    ガンディーのことば。
    世の中は、個人を中心とするひたすら広がり続ける大洋のような輪だ。真の幸福と満足は…欲求の拡大ではなく意図的な削減にある。地球はあらゆる人の必要を満たすだけのものを提供してくれるが、あらゆる人の強欲を満たすことはできない。ガンディーは共産主義にも失望していた。コミュニティの団結を唱えておきながら、工業化の過程で、資本主義よりも厳格な中央集中型の制御を行ったからだ。
    金融機関は大きすぎて潰せない、ということは、庶民は小さすぎて問題にならないということである。

  • 我々の社会の未来をここまで刺激的かつ具体的にまとめあげた本はなかなかないのではないだろうか。それくらい面白い。

    500ページ弱となかなかのボリュームではあるが、以下のような要点に収斂される。

    ■IoT、AI、ロボティクス、3Dプリンティング、スマートグリッドといった近年のテクノロジータームの新しさは「限界費用がほぼゼロで新たな財を生産できる」という点にある
    ■資本主義社会は資本を集中させ生産性を高めてきたが、そろそろ生産性の限界に達し、かえって労働者を不要とすることで貧しい人々を生み出すという「資本主義のジレンマ」とも呼べる事態に陥っている
    ■そうした中で、従来の資本の担い手であった政府(=国有化)、民間(=民営化)とも違う第三の資本の統治形態としてコモンズ(=共有型)が着目されるべき。実際、社会関係資本(Social Capital)への注目や、共有型経済(Sharing Economy)の台頭は、この文脈で理解される。特に共有型経済においてはこれまでの資本主義とは異なり、資本や生産手段の分散化が図られるという点が重要
    ■歴史的に見れば、文明や社会の変革は、
    ・コミュニケーション
    ・エネルギー
    ・交通/輸送
    の3つのインフラがリンクしながら変化することで引き起こされている。IoTは限界費用がゼロという特徴から、まさにこの3つを抜本的に変化させる可能性を秘めており、共有型経済に必要な分散化を実現するのに最も適した技術。数十年の時間は必要ではあるが、間違いなくこの流れは第三次産業革命として、今後の社会を大きく変革させていく

    特筆すべきは上述のテクノロジータームについて、限界費用ゼロという共通項を導出したその観点の鋭さにある。限界費用(Marginal Cost)とは一般に経済学において、新たな財を一単位生産するにあたって追加で必要となるコストのことを指す。よって、限界費用がほぼゼロの世界においては、生産前の初期投資は必要であるものの、いったん初期投資さえ済んでしまえば、追加のコストはほぼなしに財を生産できる(これを会計学のワーディングに置き換えれば、固定費はあるものの、ほぼ変動費がゼロで財の生産ができる、ということに等しい)。例えば、ロボティクスは人間を介在させないことで人件費を省き、ほぼ電力コストのみで財の生産を可能とするし、スマートグリッドにおいてはネットワークに組み込まれた再生可能エネルギー源(太陽光、風力など)からほぼ限界費用ゼロでエネルギーを創出することができる。

    個々のテクノロジータームの正確な概念描写等は脇に置いておくとしても、これだけ広範な概念をこの一冊にまとめあげた価値は非常に大きい。

  • 限界費用がゼロとなると、資本主義においては価格を付けることができず、そこから利益も生み出せない状況になり、利益の創出を前提とする資本主義を崩壊させる可能性があるという。いわゆるシェアリング・エコノミーによる協働型社会の出現である。もちろん、シェアリング・エコノミーは一部ではすでに実現している。代表的な例では2015年になって日本でも多くの人が知ることとなったUberやAirBnBがある。著者の主張は、限界費用ゼロの経済原理はさらに広がり、2050年までには世界の大半で経済生活の大半を占める結果として、現在の資本主義社会を根本的に変えてしまうということである。それは、希少性や交換価値ではなく、潤沢さや使用価値・シェアを経済活動の中心に置くということになる。

    著者はIoTインフラの専門家で、ドイツが進めるインダストリー4.0の提唱者の一人でもある。IoTへの取り組みは各地で進んでおり、巨大企業のGEのIndustorial Internet、CiscoのInternet of Everything、IBMのSmarter Planet、SiemensのSustainable Cityなどがその例だ。インフラには三つの要素 - コミュニケーション、エネルギー、輸送 - があるが、IoTはこれらのシステムと連携し単一の稼働システムとして協働させるものだという。IoTは中間業者を一掃し、このようなインフラの限界費用をほぼゼロにできるのだという。IoTを実現するための技術要素にかかる費用はどんどん低下しており、例えば無線ICタグは1年で4割価格が下がり、今ではひとつ10セントもせず、ジャイロや加速度センサ、圧力センサなどのセンサ類もこの5年で8~9割下がっているという。エネルギーについても太陽光発電により限界費用をゼロに近づけることができるという。自動運転の進化も輸送インフラに影響を与えるだろう。3Dプリンティングや、認知を得られつつあるMOOC (Massive Open Online Course)、なども製造や教育の状況を変えるであろう限界費用ゼロ社会の象徴だ。

    本書では、最後に日本版のために特別に書き下ろした章がオリジナルから追加されている。「日本は、限界費用ゼロ社会へのグローバルな移行における不確定要素だ」から始まるこの章は、日本ついてのやや一般的ではあるものの、適切な批判がつづられている。「その苦境を理解するためには、日本の現状をドイツの現状と比べてみさえすればよい」とIoTなどの新しい技術に対する国家としての取り組みの差についてドイツとの比較で語られる。メルケル首相が2005年に就任したとき、著者が新しい指導者に招かれて将来社会の変革について意見を聞かれたという贔屓目を差し引いても、ドイツと日本との取り組みに差があるのはその通りだと思う。ドイツにもユーロ問題はあろうが、世界から日本がどのように見られているのかが垣間見られて暗鬱になる。

    もちろん日本に向けたメッセージなので、日本の持つ潜在能力についても言及してもらっている。二十世紀に成し遂げた成果、超高速インターネット接続インフラ、再生可能エネルギー源(太陽光、風、地熱)はどこにも負けていない。このままだと二流国に落ちぶれるが、日本のもつ力をIoTを活用した明日の限界費用ゼロ社会に振り向けることができれば、世界を導くことに十分貢献できるだろう、というどっちの結果になっても間違いがない言葉で終わらせているのはご愛敬だ。

    夢中になって読んだかと言われるとそうでもない。どちらかというとコンサル的にきれいに(楽観的かつ空想的に)まとめすぎのような気がする。たくさん数字が出てきて興味深いのだが、何かごまかされている感じがするのはそのせいかもしれない。それでも、こういう社会の認識の変化には備えないといけないのだろうなと思う。20年前にインターネットや携帯ネットワーク・端末が今あるように進化をして、世界を変えるということは想像しなかったし、GoogleやFacebook、Amazonといった企業がここまで台頭して生活を変えるということを想像してみることもできなかった。そういう意味では、エネルギーや輸送インフラの将来像については丸ごと信じるわけではないが、大きく変わるということと、その大きな方向性については同意する。そういった数十年かつグローバルな世界の変化について考えを巡らせるきっかけになるということにはなるのかと思う。

  • 長かったが、勉強になった。


    限界費用とは物やサービスを作る費用がゼロになること。

    これによって、資本主義からのパラダイムシフトが発生するかもしれない。

    経済は熱力学的の第一第二法則に支配されていることにエコノミストは気づいていない。

    ■第一部
    1400年代ヨーロッパを中心に水車、風車の登場で、封建社会の経済パラダイムシフトが発生。

    それと同時期に印刷機が発明され、コミュニケーション革命が起こった。

    今日の資本主義は18世紀後期の蒸気の動力が導入されてから。

    蒸気という強力な動力を得た資本家は、株式会社を組織(鉄道など)し、限界費用を押し下げていった。
    垂直統合型の企業の誕生。

    電話と電話の普及てさらに限界費用が下がった。
    自動車のフォードも電気の恩恵にあずかっている。
    現在、少数の企業が、莫大な経済力をほこっている。

    自然の摂理を後ろ盾に経済パラダイムを正当化する傾向がある。むしろそれしかない?

    IoTの登場で、垂直統合型の企業ではなく、分散水平型の経済を生み出す。つまり限界費用がほぼゼロの社会を育み、世界観をかえる萌芽期である。

    ■第二部 限界費用がほぼゼロの社会
    IoTは生産性を大幅に高める可能性を秘めているが、プライバシーなどのセキュリティ面ではまだ課題がある。

    再生可能エネルギー(太陽、風力、地熱、バイオマスなど)も限界費用ゼロになりつつある。その結果、化石燃料による発電所は採算がとれなくなってきており、駆逐され始めている。

    遅くとも2040年よりも前に、再生可能エネルギーによる電力が全エネルギーの八割に達すると予測される。

    化石燃料は限界費用ゼロには決して近づかないが、再生可能エネルギーは限界費用がほぼゼロになりつつある。

    マイクロインフォファクチャリングとは、3Dプリンタのように、情報による製造のこと。


    3Dプリンタは製造業の中央集中型の製造体制を根本的に崩壊させる。物作りを特別な企業のものではなく、個人で、考えられる物は何でも作れる世界が近づいているかもしれない。

    ビット(情報)を使ってアトム(原子)を配列するというハッカーのアイデア。

    アプロプリエートテクノロジーとは、地元で手に入る資源から作れて、協働型文化でシェアできる道具や機械を生み出すこと。

    インドのガンディーは水平型の経済力という考え方を信奉していたが、一方で中央集中化されたものが成功しているのを横目に、ある矛盾に気づけなかった、あるいは気づいてはいたが、迷いがあったか?
    資本主義体制を突き詰めて新しいテクノロジーが生まれることによって、ガンディーが思い描いていた水平分散型の経済パラダイムがおこりつつある。

    教育においても、学習は個人的な経験、知識も専有するものと考えられていたが、協働の時代においては、学習はクラウドソーシングの過程ととらえられている。

    サービスラーニングに参加することによって問題解決技能や認知的な複雑性の理解などの能力が向上した。

    スタンフォード大学の教授が人工知能の講座をインターネットで開催したところ16万人の生徒がいた。
    大学では年間5万ドルの学費を払っているのに無料で提供された。
    moocのキッカケである。

    世界で最高の教育が限界費用がほぼゼロになり、オンラインでほぼ無料で配信されるとき、それを単位として認められたとき、大学はどのように考えるか。

    製造業もロボットの導入で限界費用がゼロに近づいている。
    小売業の実店舗も今後は少なくなっていくだろう。
    生産性が上がっても労働者は増えない

    第8章まで読み進めているけど、社会主義、共産主義みたいに感じてきたんだけど、、、

    (クリーンウェブでの着想、市内の避難所案内をルート案内できないものか?)

    アメリカでは、全ての人に無料のWi-Fiをと連邦通信委員会が提言した。これは既存の通信事業者に大打撃を与えそう。

    封建制度下のコモンズではなく、ネットワーク化されたコモンズが、IoT社会の統治モデルとなる。

    ■第三部 協働型コモンズの台頭
    コモンズは規約がなければ、荒廃していく可能性が高い。

    昨今、遺伝子の特許が出されてきたが、ある営利企業に遺伝子、あるいは生命を生むものに対して独占すべきではない。
    これこそコモンズによる統治が必要だと説いた。

    コンピュータの性能が上がったことによって、DNAの塩基を解析するコストが急落しており、限界費用がほぼゼロに向かっている。

    数年前までは限られたエリート集団にしか許されなかった研究が今や誰でも可能になってきている。

    ITと生命科学の一体化。生命情報をどのようにするか最も興味深い情報とビル・ゲイツは述べている。
    この考えに近い人々はピアツーピアのコモンズ方式が適していると考えている。
    しかし、ビル・ゲイツはソフトウエアをフリーで使用することに窃盗だとも言っている。これに対してGNUやLINUXなどが登場し、フリーソフトやオープンソースソフトウェアが登場した。

    一方で、コモンズを囲い込み営利企業が独占する状況も続いていた。
    これらのコモンズの再開放を求めてアラブの春を代表とするソーシャルメディアでつながり行動を起こしている。

    今後、資本主義体制か協働型体制のどちらが発展していくかは社会インフラにかかっている。

    現在のコミュニケーションネットワークはGoogleやFacebookに牛耳られそうになっている。
    なぜならユーザーの情報が独占され、囲い込まれてしまうためである。
    コミュニケーション媒体の商業的な囲い込みという問題は今後議論されていくだろう。

    エネルギーコモンズについても、同様の問題を抱えている。しかしアメリカの1930年代の電力事業にヒントがある。
    田園地帯に電力を供給しようと電線の敷設を農村の協同組合で実施し安価にアメリカ全土に拡げた。(結果的にそうなったというのはあるが)今でもこの協同組合による電力供給は続いており、原価で電力を提供している。

    次にロジスティクスコモンズに関して、従来の垂直統合型の運送会社だと、社内の最適化は可能だが、グローバルな視点で見ると、積載率は6割というムダな状態であった。
    これが倉庫を共有したり、複数のドライバーで積荷を届けるような分散水平型のやり方が出始めている。

    ■第四部 社会関係資本と共有型経済
    カーシェアリングサービスの登場で、自動車が減り、二酸化炭素の排出量も減った。
    シェアリングエコノミーは市場機会ではなく、経済パラダイムの変換点か?

    ナップスターが登場し、p2pで音楽をシェアリングし音楽業界を一辺させた。

    エアビーアンドビーのように個人宅をシェアしたり、庭を農地にシェアするコモンズも生まれてきた。更には、個人情報の最機密である疾病情報のシェアで、希少疾病の患者主導の研究などが始まった。

    3Dプリンタで臓器も作成できるようになってきている。しかも限界費用がほぼゼロで。

    広告業界においては、人々の受け身の態勢から自ら情報を取得することによって危機的状況になる可能性がある。

    2008年のリーマンショックによって、貨幣に対する信用が低くなった。
    各地で地域通貨と呼ばれる物が増えてきた、地元で資金を循環させるためのものだ。
    分散水平型のインターネットの破壊力も金融の領域には及ばないというのは視野が狭い。

    ■第五部 潤沢さの経済
    潤沢というのは主観がはいる定義である。

    2050年には人口が今より35%増加し(25億人)2030年の時点で、今の水準の資源消費は地球2個分が必要。

    幸福度はあらゆる研究で、横軸を貧困度に取るとベルカーブを描いて上下する。裕福になっても幸福度は落ちる。物質に所有されるという状態になる。

    ミレニアル世代のほうがミラーニューロン(共感ニューロン)が発達している?

    お金では幸せは買えない、ベーシックインカムは貧困層をなくすという意味でいい施策なのかも?

    富裕層のエコロジカルフットプリントを減らしても、貧困層の出生率は下がらず、資源が不足する。
    貧困層の子供はいわば労働の保険だ。
    貧困層の出生率を下げるだめには、電気の安定供給が不可欠だというデータがある。
    そうすると出生率2.1以内に収まり、世界の総人口は50億人にまで減少する。

    これを実現するための不確定要素として、温室効果ガスによる温暖化である。
    2100年には4.5℃以上上昇する可能性がある。
    現在でもあらゆるところで異常気象が観測されている。
    世界中で旱魃が発生しており、農作物の収穫量が減少している。このため、摂取カロリーも減少しており、栄誉不良の子供が増えると予想されている。
    異常気象を乗り越えるためにも再生可能エネルギーに移行すべき。

    潤沢さの経済への移行に向けた取り組みの障害になり得る不確定要素の2つ目は、サイバーテロだ。
    サイバーテロにより、アメリカの大規模な変圧器が破壊されたら、復旧するまでに甚大な被害が発生するだろう。

    日本の状況は化石燃料にいまだ頼っており、ドイツに比べて非常に遅れている。再生可能エネルギーの資源はドイツの9倍あるにも関わらず、生み出しているエネルギーは1/9である
    日本は大きな岐路に立たされている。旧来の持続不可能な古いコミュニケーションテクノロジーに固執すれば二流の経済になり下がる。

  • FREE以来の衝撃だった。
    資本主義の競争の原理により、製造コストは下がり続ける。一時的に寡占企業がその流れを阻止しようとも、大局的には、製造コスト=限界費用は限りなくゼロに近づく。それは、すでに資本主義を看破したアダム・スミスの予測するところでもあった。
    という刺激的な論考により始まる本書、IoTありソフトウェアあり、シェアエコノミーありと、この数年来からの市場のある一面を理解するのにとても最適な書。
    ただし、それはインフラ投資という巨額が必要な部分については、すでになされている、あるいはオプティミスティックに生協方式などで構築できるだろうというスタンスを取っているのが、少々納得感にかける。
    しかしながら、里山資本主義や社会貢献型の企業など、オープンイノベーションなどの流れやairbnbなどに代表されるシェアエコノミーの確実な発展をみると、少なくとも、無意識ではいられないことを感じさせる。
    やはり、ハブアンドスポークのような形態になるのか、それとも多重世界のような形態になるのか。市場経済が消えることも、シェアエコノミーが発展せずに四散することも起こり得ないとするなら、その経済活動の間でどのような事態が起こるのか。それとも、過去に起きた囲い込みが違う形で起きるのか。それとも、なにも新しい経済活動ではなく旧来から存在していた地域社会における経済活動がただインターネットという媒介を介して広く広く延びていくだけなのか。興味は尽きない。

  • 歴史上のあらゆるインフラシステムの3要素は①コミュニケーション、②エネルギー、③輸送マトリックス。

    歴史的には以下のように変遷してきた。
     ・第一次産業革命以前 活版印刷+水車+馬車
     ・第一次産業革命 蒸気印刷+石炭+蒸気機関車
     ・第二次産業革命 TV・ラジオ+石油+自動車
     ・第三次産業革命(現在)インターネット+再生エネ+自動運転

    第二次産業革命は希少資源がベースであったため、中央集権的社会を構築。

    歴史的に見て、人間の意識の変遷は、神話→神学→イデオロギー→心理→生物圏(他者や他の生物と地球を共有)のように変わっていく。

  • 限界費用ゼロのコモンズ型経済が、教育、環境、エネルギー、格差の問題を解決しうる、という希望にあふれた1冊。実際には、今の資本主義社会の既得権益を受けている「抵抗勢力」に阻まれて実現は容易ではないと思うが、コロナで中央集権的な国家・企業の必要性が問われる今、著者の展望は意外と早く実現するかもとも思う。
     限界費用ゼロ社会により、モノの交換価値ではなく使用価値が重視され、物欲主義が克服されるとき、人の「幸福」の在り方も問われていくだろう・・・ということも考えさせられた。

  • 5年たって、この本が言ってきた方向にきたものとそうでないものを分けたのが何かのそのそと考えながら読む。まだもじゃもじゃしていて書けない。考える良いきっかけになった。

  •  世界的な文明評論家である著者の本は、本書の前著に当たる『第三次産業革命』(2011年)を読んだことがある。
     蒸気機関と印刷技術が担った第一次産業革命、石油動力と電話などの電気通信技術が担った第二次産業革命につづき、いま、太陽光発電などの再生可能エネルギーとインターネット技術の融合によって、第三次産業革命が起こりつつある、という本であった。

     本書は、その続編ともいうべき内容だ。著者の提唱する第三次産業革命が、「IoT」(Internet of Things=モノのインターネット)時代の到来でいよいよ本格的に始まったことをふまえ、進行中のパラダイムシフトを改めて論じた書なのだ。

     「限界費用」とは経済学の用語で、「モノやサービスを一つ(一単位)追加で生み出す費用」のこと。あらゆるモノがネットを介してつながる「IoT」時代には、コミュニケーション、エネルギー、輸送の効率性・生産性が極限まで高まることで、この限界費用がほぼゼロになっていく。
     たとえば、電子書籍や音楽のネット配信は、印刷費や輸送費などがかからないことで、すでに限界費用がほぼゼロになっている。今後は、あらゆるモノやサービスにこういう変化が起きていく。
     そして、限界費用ゼロ社会では、モノやサービスがどんどん無料化していくことで、企業の利益が消失し、資本主義が成り立たなくなる。

     では、その先の「ポスト資本主義社会」とはどのような社会なのか? リフキンはその問いに、さまざまな角度から答えている。

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著者プロフィール

文明評論家。経済動向財団代表。欧州委員会、メルケル独首相をはじめ、世界各国の首脳・政府高官のアドバイザーを務めるほか、TIRコンサルティング・グループ代表として協働型コモンズのためのIoTインフラ造りに寄与する。ペンシルヴェニア大学ウォートンスクールの経営幹部教育プログラムの上級講師。『エントロピーの法則』(祥伝社)、『水素エコノミー』『ヨーロピアン・ドリーム』『限界費用ゼロ社会』(以上NHK出版)、『エイジ・オブ・アクセス』(集英社)、『第三次産業革命』(インターシフト)などの著書が世界的ベストセラーとなる。『ヨーロピアン・ドリーム(The European Dream)』はCorine International Book Prize受賞。広い視野と鋭い洞察力で経済・社会を分析し、未来構想を提示する手腕は世界中から高い評価を得る。

「2020年 『グローバル・グリーン・ニューディール』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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