シンギュラリティは近い[エッセンス版] 人類が生命を超越するとき
- NHK出版 (2016年4月22日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140816974
作品紹介・あらすじ
2045年、AIが人類の知性を上回り、ついに私たちは生物の限界を超えてシンギュラリティへと到達する-フューチャリストとして技術的特異点の到来をいち早く予見し、現在はAI(人工知能)の世界的権威としてGoogle社でAI開発の先頭に立つレイ・カーツワイル。彼が世界に衝撃を与えた600ページ超の名著『ポスト・ヒューマン誕生』のエッセンスを抜き出した決定版。
感想・レビュー・書評
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シンギュラリティという用語は様々な本で見ますが、そのパイオニアと言える本書を読んでみました。
ある種、AI業界の方々から見れば突飛すぎる部分もありますが、あらゆるビジネスのアイデアにおいてイノベーションを起こすには、SFからヒントを得るケースも多々あります。
1つの要素として押さえておくべきでしょう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
未来予想の本かと思って読んだけど、読み終えて、哲学の本だと思った。
人工知能の権威が、人工知能と人間の間のアナロジーや重なり合いから、未来を予想し、自らの人生においてどんな意味を持つのか。わたしとは、持続する物質とエネルギーのパターン。深い洞察がある。 -
レイ・カーツワイル(1948年~)は、ニューヨーク生まれ、マサチューセッツ工科大学卒の発明家、実業家、未来学者。
1990年、『The Age of Intelligent Machines』を発表し、インターネットの普及、チェスの試合でのコンピュータの勝利を予言。1999年、『The Age of Spiritual Machines』(邦訳『スピリチュアル・マシーン』)で「収穫加速の法則」を提示。2005年、『The Singularity Is Near : When Humans Transcend Biology』(邦訳『ポスト・ヒューマン誕生~コンピュータが人類の知性を超えるとき』)で技術的特異点(シンギュラリティ)についての踏み込んだ記述を展開し、世間一般にシンギュラリティという概念が広まるきっかけを作った。
2012年にGoogleに入社し、2019年現在、機械学習や自然言語処理技術を開発するチームを率いている。
本書は、上記の『ポスト・ヒューマン誕生』を親本として、そのエッセンスをコンパクトに再編集した、日本オリジナル版であり、2016年に出版された。
本書は、大部の親本を編集するにあたり、カーツワイルのいう「テクノロジー進化の法則(収穫加速の法則)」、つまりテクノロジーの指数関数的な成長がシンギュラリティへと至るという主旋律を、明快かつシンプルに提示すること、そして、AIが2045年に人類の知性を超える道筋を、主に「脳という仕組みの解析とリバースエンジニアリング」という点に絞って再構成したことにより、いわば「AIとシンギュラリティ」についてのカーツワイルの主張がストレートにわかる入門編となっている。
私は、気候・環境問題のような、現代の人間社会が抱える喫緊の課題に加えて、人類の未来を左右しかねないテクノロジー(AIやゲノムテクノロジー)の進歩に高い関心を持っており、本書を手に取ったのはその流れによる。
読み終えてみると、予想以上に専門的な記述が多く、また、翻訳書特有の読み難さ(翻訳の巧拙の問題ではなく、原書の記述が日本語による思考パターンと異なることによる読み難さ)もあり、消化不良の部分も少なくなかったが、大筋は追うことができた。そして、(前半に書かれている)テクノロジー進化の速度の蓋然性、即ち、シンギュラリティへの到達が2045年なのか、もう少し先なのかはともかく、いずれにしても、(後半に書かれている)AIとGNR(遺伝学、ナノテクノロジー、ロボット工学)の進歩が、人類の未来を左右するというか、「そもそも、人間とは何なのか?意識とは何なのか?」という究極の問いを、早晩我々人類に突き付けるということを再認識し、暗澹たる気持ちになった。
カーツワイルは自らを「技術的特異点論者(シンギュラリタリアン)」と呼び、AIの進歩をポジティブに捉え、「(不老不死のために)1日も早く機械の体を手に入れることを夢見ている」とまで言っているのだが、私は、人間がサイボーグ化していくことなど到底受け入れられないし、そうなる前に、賢明な人類は立ち止まることができると信じたい。
テクノロジー進化の究極の世界を知る上で、一読の意味のある、世界的ベストセラーのエッセンシャル版である。
(2022年1月了) -
シンギュラリティとは『人工知能(AI)が人類の知能を超える転換点(技術的特異点)』と認識されているが、最初に言い出したのは著者らしい。長い間積読状態にしていたこの書籍を手に取ってみて驚いたが、彼はそんな単純なことを言っているのではなく、「シンギュラリティとは、われわれの生物としての思考と存在が、自らの作り出したテクノロジーと融合する臨界点であり、その世界は依然として人間的ではあっても生物としての基盤を超越している」と述べている。もっと深い本だ。よく読むべき一冊。
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精読するのはしんどそうだったので、ざっ~と斜め読み。
コンピュータの性能が脳に匹敵するくらい上がってきて云々、というところにかなりのページが割かれているのと、人体のバージョンが1.0-->2.0-->3.0とこれも上がっていく展開予測。
あとがきにもあるように、2005年の原著から15年たった今読んでもさほど古さを感じさせないところがスゴいんだろうなあ~。
「医学的に予防可能な症状の50%を実際に予防できれば、平均寿命は150年を超える。」というロバート・フレイタスの予測にもびっくり。 -
人工知能とかAIとか,そういう言葉自体は知っていた。個人的な出会いはドラクエ4だったかもしれない。大学でもちょこっとだけかじったこともあった。でも,それ以来遠ざかっていた。そして今年。会社の筋などからも話題になっているようであり,久々に強く興味を持ったので読んでみた。
エッセンシャル版をチョイスしたにもかかわらず,読むのに骨が折れた。なかなかの大作だと思うし,約10年近く前の本だというのに,今読むにしても相当の想像力が求められる気がした。まぁ,この本のスコープは10年どころではないので,当たり前といえば当たり前。この本のひとつのスコープは2045年。この数字はよくシンギュラリティの紹介で引用される数字であり,この本が底本であることを示している証拠でもある。
人間は今後どうなるのか。ナノボットを体に埋め込むとか正直あまりイメージができないんだけど,人工知能やAIに近づくというのは間違いなくそうなのだろう。多分,日本人は非人間に対して人格を認めやすい文化(※ロボットで人型にこだわったり,AIBOを本当のペットのように扱ったり,ゆるキャラをつくったり。アトムやドラえもんだってそう。アプリモンスターズなんて直接的過ぎる例もある)をもっているので,職を追われるとか人間の生活が圧迫されなければ,そういう意味では融合が進みやすい環境にあるのだろう。そして「受け身のシンギュラリティ」に流されないように自分で泳いでいく必要があるのだろう。 -
2005年に書かれた664ページの原書からの抜粋。と言っても254ページあります。
本書はシンギュラリティを定義した歴史的な本です。
まずびっくりしたのは13年前の著書でありながらコンピューターと人間の未来を予測している内容が少しも色あせておらずむしろ新鮮であること。
著書が2045年をシンギュラリティとした理由が当時のコンピューターパワーから論理的に導き出した説明が詳細に書かれている。
まず人間の脳の処理能力をいくつかの事例(例えば網膜から物を認識するために必要な処理速度から脳のサイズを掛け合わせる)から10の16乗CPSとした。ムーアの法則の考え方に基づいて著者がパソコンレベルでこの処理能力に匹敵するのは2020年とした。さらに記憶容量(10の18乗ビット)がパソコンレベルで手にはいるのが2030年。これだけならパソコンのパワーが人間の能力に追いついただけだが、さらに「知能」という要素を考えると2045年にはコンピューターが人間の能力を超えて根底から覆る。これを「シンギュラリティ」と呼んでいる。
そしてパソコンレベルではないにせよ、人間の脳をデバイスにアップロードできる時期は2030年と見ている。
ここに究極のBigdataとIoT、そして脳を模したニューラルネットコンピューティングとソフトウェアによって大変革が起きる。
これらによる人体を1.0->2.0->3.0と変化すると定義し、ナノボット(ナノサイズのロボット)で人体は大きく様変わり。人の寿命は著しく伸びる。3.0ではテクノロジーと人体は融合することができる。
そして著者は「人間とは何か?」という宗教的とも言える根源の質問を自分に問いかける。
シンギュラリティは一般的に「AIなどのテクノロジーが進化して人間を超える」と理解されがちだけど、著者が言いたいことはそうではなく「テクノロジーと人間が融合することでこれまでにない世界が実現する」ということだ。長生きをして世界の進化を見届けたい、とか、行ったことのない場所に瞬時に行ける体験、とか自己複製が可能になるとか…私には思いつかない驚くことがもっともっと起こるだろう。 -
著者はgoogleのAI開発責任者。私たちはgoogleに頼りきっているので、無意識のうちにこの人の未来ビジョンに向けて乗っかってるのではなかろうか。
とにかく著者自身が賢い。物理も生物も情報の基礎も知らないと本の内容を真に理解できない気がする…。私は物理的内容が理解しきれなかった…。
生物進化が専攻だった私からすると、シンギュラリティとは「生物進化の超越」を意味するんだと理解した。今まで学んできたことが消え去るような結構な衝撃を受けた。が、新たな進化でもあると前向きに捉えることができる。
かつて人類が火を使い始めたときのような転換点を自分が生きているうちに体験できるかもしれないというのは少しワクワクする。
これを読めば漠然とシンギュラリティに不安を感じることはなくなると思う。(明確に不安になる可能性はあるw)私は不安はなくなった。しかし考えたいことは増えた。
たぶんまた数年したら読んでみると思う。 -
2005年に出版された本を再編集、コンパクトにして再出版したものだそうだ。
最新のテクノロジーを題材にしているにもかかわらず、11年経っても色褪せず、本書の示唆する方向に進展していることに驚く。
しかしテクノロジー、ハードは著者が説くように指数関数的に進展していこうが、それが生命、人間の機能に代替するというのはどうなんだろう。そうあって欲しくない、という願望が否定的な見方に導くのだろうか。これが避けられない未来であって欲しくないと思う。 -
想像の及ぶ範囲を大きく凌駕した未来予想で、読んでいてクラクラする。
中盤のコンピューターの話はわたしには難解でスキップしたが、それでもお腹いっぱいといった感じだった。これはエッセンス版で、原著はさらに詳細だというのだからすごい。
難しくても未来の話は面白かった。非生物的知能との融合が果たされた未来を生きているうちに見てみたいと思うし、本書によると可能なようだ。
周辺知識をつけて再読してみたい。