〈インターネット〉の次に来るもの 未来を決める12の法則

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140817049

作品紹介・あらすじ

人工知能、仮想現実、拡張現実、ロボット、ブロックチェーン、IoT、シンギュラリティ-これから30年の間に私たちの生活に破壊的変化をもたらすテクノロジーはすべて、12の不可避な潮流から読み解ける。前作『テクニウム』でテクノロジー進化の原理を鮮やかに描き出した著者の待望の最新刊。ニューヨークタイムズ・ベストセラー。

感想・レビュー・書評

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  • ボリューム感、コンピュータ用語満載の難書、しかも、図表がほとんどなく、ガイダンスとして、あるのは、せいぜい、段落分けと箇条書きです。

    原題は、"The Ineviable" 不可避:でこちらのほうがしっくりくる。

    30年先の未来から現在を見たときに、こんな時代もあったと考える
    テクノロジーの原点として、今のIT技術を解説しています。

    12の章立てからなっています。

    1 Becoming なっていく
    現在の技術はまだ始まったばかりだ。インターネットに関してははじまっていない。

    2 Cognifying 認知化していく
    AIの話、ビッグデータ、アルゴリズムの改良によって惑星規模の知性が誕生する。

    3 Flowing 流れていく
    音楽をはじめ、本、画像、動画など、コピーできるものは流動化され、拡散されていく。

    4 Screening 画面で見ていく
    全世界の本、映画、動画などをあつめた、ユニバーサル図書館が誕生する。

    5 Accessing 接続していく
    ブラットフォームはサービスの工場化し、所有よりアクセスすることに変化していく。

    6 Sharing 共有していく
    膨大なデータがシェアされると手に負えなくなって、選択をアシストするサービスが必要になる。

    7 Filtering 選別していく
    データが指数的に増加していくので、選別の必要性がますます重要になる。

    8 Remixing 再編成していく
    本、動画などをいったん部品化して再編成したり、再利用できるようになる。

    9 Interacting 相互作用していく
    VR,ARで、境目のないバーチャルな世界で体験ができるようになる。

    10 Tracking 追跡していく
    膨大なセンサーが、情報を収集していき、究極はライフストリームという個人ライブラリーが出現する。

    11 Questioning 質問していく
    ウィキペディア、超スマートな回答がどこにでもある世界では、完璧な質問こそが求められる。

    12 Beginning 始まっていく
    地球規模の情報プラットフォームは、超知能と生み出すのか、人間にマシンが加わって複雑な相互依存にむかうのか。

  • インターネットのこれからを、包括的に語った本。転職した業界に少し関わりがありそうだなと選んだ。直接活かしてどうこうって類の内容ではないけど読んで良かった。
    技術はどういった性質があるか、どんな方向に発展していくであろうかなど。情報の量に振り回されている今の自分には、俯瞰して捉えるきっかけになった。
    ただ、ちょくちょく語られる未来の話が私には魅力的に思えず、、圧倒的に増加していくデータを利用するためには仕方ないかなと思うんだけど。果たして楽しいのかな?


    ◎ページを模した本の形をしたスクリーンは欲しいな。育ってきた環境によっては不要なのかもしれないけど。それとも慣れ?どちらにしても
    身体性ってやっぱり大切だと思う。

  • ‪『インターネットの次に来るもの』‬
    ‪1.個人のアテンション
    益々重要視される。個人も企業も。
    なぜならば、情報が増えすぎて、個人が本来見つけたい情報、コンテンツの価値が相対的に高くなってるから。

    ‪2.コネクト→タグ→意味づけ‬
    そのために自分が作成保存した情報も、外部情報にもタグづけが益々進む。
    タグづけ→関連づけ→注釈リンクという具合に、便利になる。

    ‪3.解答<質問推測‬
    Google検査。解答を見つけるではなく、あなたの探し物、質問、これですか?
    そう、質問への重要度が増してくる。

    ‪4.n分母の変化。‬
    ‪大衆統計→自分自身‬
    僕は周りと比較して、、、ではなく、たとえば医療も益々カスタマイズが進む。
    日常のセンサーデータで情報は蓄積されているのだから。

    ‪著者マイノリティ・リポート アイデア出しの方。
    税抜2,000円はお得すぎました。

    ‪そうね!→会社自己に転換したくなる書籍。‬
    ‪#マーケティング ‬

  • 少し先の未来を観る眼が養われる感覚に没入できる現代の必読書。ってくらい面白かった。
    未来について。
    我々がどう思おうとも世界はBECOMING。不可避的にそうなっていく。
    あらゆるパターンはAIや機械学習によってCOGNIFYING。認知化され我々はどんどん賢くなり、
    あらゆる情報はデジタル化されコピーが可能になりFLOWING。我々を流れていく。
    私たちはそれら総てをSCREENING、画面で見ていくことになり、
    欲しいときに欲しいモノへいつでもACCESSING。アクセスするようになる。
    近代に支配された所有するという概念よりもSHARING。分け与えるほうが物理的にも地球環境的にもそして人間的にもメリットがあり、
    未知の好みはそれぞれの個性でFILTERING。不要なものをフィルタしパーソナライズされ届けられる。
    新しい価値はヒップホップばりにREMIXING。すでに存在する資源の組み合わせで再編成され、
    感覚とフィジカルはあらゆるレベルでINTERACTING。双方向に影響を与え合い、
    我々の行動は監視を望まずともTRACKING。追跡可能なデータに可視化される。
    AIの進歩により検索と回答の精度の高まる世の中においてQUESTIONING。人間の問いそのものが非常に重要になる。
    そしてそれはまだBEGINNING。 始まったばかりの序章に過ぎないのである。
    魅惑的な現在進行形ワードのみのスカしたインデックスをヒップに繋げて文章にしてみるだけでもわくわくの面白い未来のイメージが脳に浮かび上がる。
    チャンスはいつでもいくらでも平等にある気がする!

  • 原題は”The Inevitable” - 世の中が後戻りができない形で変わることはもはや決まってしまったことだ。そういうメッセージである。

    邦題に示されている通り、本書ではこれから来るべき未来における12の傾向が提示される。それらは全てプロセスであるという意味で、すべて動詞の進行形になっている。乱暴にそれらをまとめてみるとこんな感じだろうか。

    ●BECOMING: 今の時代は常に新しいものになりつつある時代だ。われわれは皆そのプロセスの中にいる。振り返ってみると今まさにそういう時代であり、それは少し前からそういう時代だった。インターネットやそれによって実現されたサービスってみんなそうだよね。
    ●COGNIFYING: AI、とにかくAI。ビッグデータでディープラーニング。それに必要なCPUもメモリもどんどん増える。AIによって思いもつかなかったことができるようになるよね。
    ●FLOWING: ビットの時代、何でもコピーされてストリーミングされる。無料になって、コモディティ化されて、共有されて、オープンになる。そうなると色んなことの前提が変わってくるよね。
    ●SCREENING: 世の中スクリーンだらけになる。1年間で1人1枚くらいのペースでスクリーンは増えている。そのスクリーンは逆に自分たちを覗き込んでいる。VRグラスやら壁やらがネットでつながったスクリーンで埋め尽くされると世の中変わるよね。
    ●ACCESSING: 所有することからアクセスすることに価値観の転換が起きている。物事がリアルタイムでオンデマンドになる。だからクラウドになるのは必然だよね。
    ●SHARING: SNSなんかそう。WikipediaやLinuxもそう。シェアしてコラボする。新しい経済原理。
    ●FILTERING: 大量のデータ。だからフィルタリングが受け取る方からも出す方からも重要になる。アテンションがますます希少なものになる。FacebookやGoogleのすごさはコモディティ化したアテンションをフィルタリングする巨大なインフラというところにある。だから儲かって成長してるんだよね。
    ●REMIXING: 既存の組み合わせから新しいものが生まれる。組み合わせるのが楽になるとどんどん新しいものが生まれるよね。
    ●INTERACTING: VRだ。それもインタラクションのあるやつ。そもそも何かアクションに対して反応がないっていうUXはなくなってくのかもね。
    ●TRACKING: ほとんどの情報が記録されていく。すごい勢いでデータが貯められていく。IoTってのもある意味そういうものだ。プライバシーにも新しい概念と規則が必要になる。いずれにせよますますトラッキングされることは不可避になっていくよ。
    ●QUESTIONING: 答えはすぐに得られるようになる。これからは質問することが重要になる。そして、良い質問がいくつも生まれていくのだ。
    ●BEGINNING: そして今が何かの始まりのときだ。多くのデータとネットワーク。何かが相転移を起こす。今こそが後から振り返ったときにまさにここが始まりの時代だと言われる時代なのかもしれない。

    新しいことが避けがたく起こりつつある。それらはこれらを組み合わせて推し進めた結果としての何かだ。何かが起こるのは不可避だ。ただし、その何かは起きてみるまで正確にはどういうものであるのかわからない。常にそれはわれわれの想像の域を超えていくものであるから。ただし、その傾向や要素を認識することはできる。そういうメッセージの本だ。

    次のビル・ゲイツの言葉を思い出す。

    「私たちはいつも、今後2年で起こる変化を過大評価し、今後10年で起こる変化を過小評価してしまう。無為に過ごしてはいけない。」
    ”We always overestimate the change that will occur in the next two years and underestimate the change that will occur in the next ten. Don’t let yourself be lulled into inaction.”

    今後10年で何かが起きることはわかる。しかし、何が起きるかは、10年前に今起きていることがわからなかったのと同じようにわからない。それでもその何かに備えなければならない。いずれにせよ、それは不可避 - Inevitable - であるのだから。そういうことが書かれた本だ。

  • 1. 次の産業革命を起こした国が覇権を握るとメディアは報じており、その最先端として米国と中国が争っています。ここでそもそも何をしたら産業革命になるのか?という疑問を持ったのでヒントになるかと思い読んでみました。

    2.インターネットが普及したことは革命的であった。それにより、不可避の未来がある。本書ではbegining,cognifying,flowing,screening,accessing,sharing,filetering,remixing,interacting,tracking,questioning,beginingの12個のキーワードを取り上げています。
    人類はインターネットを活用し、テクノロジーを受け入れることを強制されています。これを活用できなくては取り残される人間となってしまいます。根本として、変化していくことを避けず、社会に適応していかなければならない。そのうえで、未来を見極める要素が何なのかを把握しなさいということです。本書では、その要素として12個上げています。

    3.かなりの分量があったので、読み切るに時間がかかりました。しかし、理解できたのは40%くらいだと思っています。外国人の著者はどうしても回りくどい口調になってしまうため、要点をつかみづらく、苦戦してしまいます。その中で得た答えとして、人口知能(AI)を人間社会に役立てていけるかどうかが産業革命の要なのだと思いました。今は研究が盛んに行われており、実験段階ですが、自動化された世の中がかつてないほど人間の生活を楽にできればそれを生み出した国が勝つということになるでしょう。日本の場合、テクノロジーを受け入れる体制が海外より整備されないため、国内企業は政府の規制に阻まれることは予想されます。そうなると日本からGAFAMのような企業は生まれないでしょう。他方、より便利な方を消費者が好んでしまい、海外産に依存してしまう恐れもあります。
    日本が産業革命によって覇権を握ることはないので残念ですが、IT企業が苦しくなっていくのが目に見えているので何かしら対策があればいいかなと思います。(現時点で自分は何も思いついていない)

  • 現在の状況から過去の事例と比較して、今後30年間で起きる方向性を12のプロセスとして示している。
    方向性と言いつつ、ある程度具体的なことも記載されていて、読み応えのある内容であった。
    通信会社に勤務する自分としては、今後の仕事にも役立つ内容であった。

    【BECOMING】
    ・商用のウェブは40%に過ぎない。それ以外は、義務感や情熱を糧に作られるのだ。

    【COGNIFYING】
    ・AIというものは、人々が使えば使うほどさらに改良されていくものなので、ワトソンはいつでもどんどんスマートになっていき、ある事象から学んだことをすぐ次に応用していくのだ。IBMはワトソンを医学の仕事に従事させようとしているので、現在開発中の最初のアプリが医療診断ツールだと聞いても驚きはない。
    ・医療分野はその始まりに過ぎない。クラウドを使っているすべての大手の企業、何十ものスタートアップが、ワトソンのような認知型サービスを開始しようとあわててこの分野に参入している。
    ・われわれはロボットに肩代わりしてもらう必要がある。政治家たちがいま、ロボットから守ろうとしている仕事のほとんどは、朝起きくさあやろうとは誰も思えないものだ。ロボットが行なう仕事は、われわれがいままでやってきて、彼らの方がらっと上手にできる分野のものだ。彼らはわれわれがまるでできない仕事もやってくれる。必要だとは想像もしなかった仕事もやってくれる。そうすることで、われわれが新しい仕事を自分たちのために見つけるのを手伝ってくれるその新しい仕事が、われわれ自身を拡張していくのだ。ロボットのおかげで、われわれはらりと人間らしい仕事に集中できる。

    【FLOWING】
    ・現在、価値の軸は再び反転している。無料コピーの奔流が、既存の秩序を脅かしているのだ。コピーが超潤沢にあるとき、それは無価値になる。その代わり、コピーできないモノは、希少化して価値を持つ。コピーが無料になると、コピーできないモノを売らなくてはならない。では、コピーできないモノとは何なのか?例えば信用がそうだ。信用は大量に再生産はできない。信用を卸しで買うこともできない。信用は時間をかけて得るものなのだ。われわれは信用できる相手と付き合おうとするので、その恩恵を得るためなら追加の金額を払う。それを「ブーブンディング」と呼ぶ。ブランドカのある会社は、そうでない会社と同じような製品やサービスにより高い値段を付けることができるが、それは彼らが約束するものが信用されているからだ。
    ・他にもコピーできない信用のような資質はたくさんあり、それらが現在のクラウド型経済では価値を持っくくる。それらを観察する一番良い方法はまず、人々は無料でも手に入るものになぜお金を払うのか、という簡単な疑問から始めてみることだ。そして彼らが無料のものにお金を払うときに、本当は何を買っているのかと問いかけてみることだ。
    ・FLOWINGには、①固定的/希少、②無料/どこにでもある、③流動的/共有される、④オープン/なっていく、の4つの段階があり、これは本や映画だけでなく、全てのメディアに当てはまる。すべての分野で、ある種の流動性を持つだろう。だからといって固定的なものがなくなるわけではない。われわれの文明で固定的な優れた物(道路中高層ビルなど)のほとんどは、なくなることはない。われわれはアナログな製品(椅子や皿や靴など)を作り続けるだろうが、それらにはチツブが埋め込まれてデジタルの性質も獲得する(ごく僅かな、手作業で作られた高価なプロダクト以外)。こうした液化した流れが次々と花開いていくのは、引き算と言うより足し算の現象だ。

    【SCREENING】
    ・われわれはIMAXからアップルウォッチまで、ありとあらゆるサイズのスクリーンを使っている。近い将来には、スクリーンからまったく離れて暮らすことは決してしなくなるだろう。あなたが何かの答えや、友人や、ニュースや、意味や、自分が誰で何者になり得るかを探そうとするとき、スクリーンは最初に向かう所になるだろう。

    【ACCESSING】
    ・「所有権の購入」から「アクセス権の定額利用」への転換は、これまでのやり方をひっくり返す。所有することは手軽で気紛れだ。もし何からっと良いものが出てきたら買い換えればいい。一方でサブスクリプションでは、アップデートや問題解決やパージョン管理といった終わりのない流れに沿って、作り手と消費者の間で常にインタラクションし続けなければならなくなる。それはー回限りの出来事ではなく、継続的な関係になる。あるサービスにアクセスすることは、その顧客にとって物を買ったとき以上に深く関わりを持つことになる。乗り換えをするのが難しく(携帯電話のキャリアを考えてみよう)、往々にしてそのサービスからそのまま離れられなくなる。長く加入すればするほど、そのサービスがあなたのこをよく知るようになり、そうなるとまた最初からやり直すのがさらに億劫になり、ますます離れ難くなるのだ。
    ・しかしまだ、人が何も所有しない世界はcnpの中での話だ。ほとんどの人は何かにアクセスしながらも別のものを所有しくいるし、その程度は人によってまちまちだ。ただ、これからのテクノロヅーが明らかに向かう方向を考えるには、個人が何も持たずにアクセスだけで生きるという極端なシナリオを探ってみるのも意味があるだろう。

    【SHARING】
    ・かつて医療介護の専門家はロを揃えて、写真のシェアは良くくも個人のカルテをシェアする人なんていないと自信を持って断言した。しかしぺイシェンツライクミー [PatientsLikeMe]では、患者たちが自身の治療結果をシェアすることでお互いの治療の質を向上させており、共同行動が医師にもプライバシーの懸念にも優ることを証明しくいる。シェアの習慣-あなたの考えていること(ツイッタ―)、読んだ本(スタンプルアボン)、資産運用(モトリー・フール・キャップス[MotleyFoolCaps])、自分のすべて(フェイスブック)-がますます一般的になり、われわれの文化の基盤になってきくいる。こうしてシェアしながら、大陸をまたがるグループの会ったこともない人々と、社会階層など関係なく一緒に百科事典やニュース配信、動画アーカイブ、ソフトウェアなどを協働して作り上げくいる現状は、どうやら政治的な社会主義こそが次のステップなのだと教えてくれる。
    ・シェアの力が発揮されるのは、何も非営利セクターばかりではない。この10年で商業的に最も成功した三つのクリエイティブな会社-グーグル、フェイスブック、ツイッターは、正しく評価されていなかったシェアを使って誰も考えつかなかった方法で価値を生み出しくいる。

    【FILTERING】
    ・経験やパーソナルーフイズを強化するあらゆるテクノロジーが面白いのは、われわれが何者であるかという問いを否応なく突きつけくくるからだ。われわれはじきに、「万物のライブラリー」の真っただ中で暮らすことになり、そこでは人類が成したすべての仕事が流れていく存在となってわれわれを取り巻き、すぐ手が届くところに無料で存在する。大規模なフィルター群が寄り添い、静かにわれわれをガイドしく、われわれの望みに応える準備をしくいる。フィルターは長年われわれを観察してきたので、われわれが何を頼むかを察知している。だからほとんど尋ねられると同時に自動的にそれを満たしてくれる。問題は、何を望んでいるのかわれわれが分かっていたいことだ。われわれは自分自身をよく分かっていない。ある程度なら、自分が何をほしいのかをフィルターに尋ねることもできる。それは主人と奴隷の関係というより、われわれを映す鏡だ。自分自身の行動を反映した助言やお勧めに耳を傾けることで、自分が誰であるかについて見聞きするのだ。
    ・クノロジーがわれわれを画一化してコモディティー化するという恐れは間違っくいる。パーソナライズが進めば進むほど、フィルターはその個性を認識しやいる|それはフィルターとテクノロジーによってさらに増強されるだろう。大規模なフィルタリングを使うことで自分が誰であるかが形作られていき、自分自身という人間をパーソナライズしていくのだ。

    【TRACKING】
    ・セルフ・トラッキングは健康分野だけでなく、さらに広い応用が可能だ。それは人生と同じぐらい大きな話だ。ウェアラブルとなった小さなデジタルの目や耳が、誰に会って何を言ったかといつた1日のすべての瞬間を記録し、われわれの記憶を助けてくれる。やり取りしたメールや文章を記録すれぱ、現在進行形の心の日記になる。そこには聴いた音楽や読んだ本や記事、訪れた場所も加えていける。日常の行動や出会いの中でのちょっとしたこと、そうした日常から離れた出来事や経験も同様に、ビットの世界へと流れ込み、時系列な流れと混ざり合っていく。その流れは人生の流れと呼ばれる。デスクトップに変わるのは、新しい時系列の流れだ。ウェブブラウザーではなくストリームブラウザーだ。
    ・インターネットは世界で最大最速のトラッキングマシンで、それに触れたものは何でもトラッキングされる。インターネットはすべてのものをトラッキングしたがっているのだ。われわれは自分自身をトラッキングし続け、友人をトラッキングし続け、友人や企業や政府もわれわれをトラッキングし続けるだろう。この事実はまず市民にとって非常に困つたもので、企業にとってもかなり影響があるが、それはトラッキングが以前には希少で高くつくものだったからだ。そうしたトラッキングへのバイアスに対して断固として闘っくいる人もいるが、ついには受け入れて連携しようとする人々もいる。トラッキングを飼い慣らし、市民のために生産的に使う方法を見つけた人々は成功していくだろうが、それを否定して違法にしようと試みる人たちは取り残されていく。消費者はトラッキングされたくはないと言うが、実際には自分たちの利便性のためにマシンに自分たちのデータを提供し続ける。
    ・もちろん、私とグーグルや政府との関係は、本質的に公平でもなければ対称的でもない。グーグルや政府はすべての人のライフストリームにアクセスしているが、私は自分のライフストリームにしかアクセスしていないという事実そのものが、グーグルや政府の方が定性的により大きなものにアクセスしていることを意味している。しかしもし対称性が回復され、自分がより大きなステータスの一部となつくより大きな責任を果たすようになり、それによってより大きな視点から利点を感じるなら、上手くいくかもしれない。こう考えてみてはどうだろう。警察はもちろん市民の動画を撮影するだろう。もし市民も警察を撮影でき、警察が撮つた映像にアクセスでき、より強力な説明責任を果たし続けるためにそれをシェアできるなら、それでいいだろう。それで話が終わるわけではないが、透明な社会のきっかけにはなる。一方でプライバシーはどうなるだろう?
    ・プライバシーは信頼によってしか得られないし、信頼を得るには一貫したアイデンティティーが必要なのだ。つまり、信頼と責任こそが物事を良くしていく。すべての微量元素のよう匿名名性は完全になくしてはいけないし、それは可能な限りゼロの状態に近づけるべきなのだ。

    【QUESTIONING】
    ・毎年(アメリカだけで)1000億回以上もの検索がなされていたにもかかわらず、その質問に安価もしくは無料で回答することで820億ドル規模のビジネスが生まれるとは、30年前には誰も考えなかっただろう。こうした需要に応えるスキームを夢想できたMBAも多くはなかっただろう。質問と回答の需要は潜在的なものだ。すぐに答えてもらうことにこれほど価値があるとは、実際に使ってみるまで誰も分からなかった。
    ・価値を生み出す原動力は、「答えの確かさ」から「質問の不確かさ」へと移行しくいる。事実や秩序、答えはこれからも常に必要だし有用だ。それらが消え去ることはないし、実際には微生物やコンクリートのようにわれわれの文明の多くを支え続けるだろう。しかしわれわれの生活やテクノロジーにおいて最も大切な側面-最もダイナミックで最も価値があり、最も生産的な面は新たなフロンティアにあり、そこでは不確かさやカオス、流動性や質問の数々が広がっくいるのだ。答えを生み出すテクノロジーはずっと必要不可欠なままであり、おかげで答えはどこにでもあり、すぐに得られ、信頼できて、ほぼ無料になる。しかし、質問を生み出すことを助けるテクノロジーは、もっと価値のあるものになる。質問を生み出すものは、われわれ人類が絶え間なく探検する新しい領域、新しい産業、新しいブランドや新しい可能性、新しい大陸を生み出す原動力なのだときちんと理解されるようになるだろう。質問していくことは単純に言って、答えることよりも力強いのだ。

    【訳者あとがき】
    本書の12章を簡単にたどるなら、ネット化したデジタル世界は名詞(結果)ではなく動詞(プロセス)として生成し(第1章BECOMING)、世界中が利用して人工知能(AI)を強化することでそれが電気のようなサービス価値を生じ(第2章COGNIFYING)、自由にコピーを繰り返し流れ(第3章FLOWING)、本などに固定されることなく流動化して画面で読まれるようになり(第4章SCREENING)、すべての製品がサービス化してリアルタイムにアクセスされ(第5章ACCESSING)、シェアされることで所有という概念が時代遅れになり(第6章SHARING)、コンテンツが増え過ぎてフィルターしないと見つからなくなり(第7章FILTERING)、サービス化した従来の産業やコンテンツが自由にリミックスして新しい形となり(第8章REMIXING)、VRのような機能によって高いプレゼンスとインタラクションを実現して効果的に扱えるようになり(第9章INTERACTING)、そうしたすべてを追跡する機能がサービスを向上させライフログ化を促し(第10章TRACKING)、問題を解決する以上に新たな良い疑問を生み出し(第11章QUESTIONING)、そしてついにはすべてが統合され彼がホロス(holos)と呼ぶ次のデジタル環境(未来の<インターネット>)へと進化していく(第12章BEGINNING)という展開だ。

  • インターネットなどのテクノロジーがいち技術を超えて、ネイチャーと化していく未来。未来予測は数あれど、この本に書かれた未来は確実にやってくる。
    人間中心設計からAI中心設計に変わっていくのは興味深い。色んな情報が機械で解かれるために設計され、結果システムはブラックボックス化する。そうなった時のデザイナーの役割はどう変わっていくんだろう。いっそ本質が融けて、機械と人間の間を取り持つ「演出家」になるのかも。

  • かなり面白い未来予測の本です。引用したいというか、自分メモとして残しておきたいところだらけなので音声入力で抜書しました。ちなみ以下の抜粋は12ある章立てのうちのひとつ「SCREENING —スクリーニング」という読書や本の未来について書いてあるものです。自分のコメントも入れようと思ったのですがすでに超長いのでやめときました(笑)


    「大量生産された本は人々の思考法を変えた。時代の支配的な考えに反対する小冊子を出す人も現れ、こうした異端な発想も安く印刷できることで影響力を持つようになって王や教皇を退位させるような事態にまでなった。しかし今では、50億を超えるデジタルスクリーンが我々の生活を彩っている。」
    「ポケットにも鞄にも車の計器盤にも、リビングの壁にも、建物の壁面にも、スクリーンが広がっていく。我々が仕事をするときには、それが何の仕事であれ、正面にはスクリーンがある。
    そこで本の民とスクリーンの民の間で、文化的な衝突が起きることになった。」

    「スクリーン文化は絶え間なく流れ、次々とコメントが繰り出され、敏速にカットされ、生には生煮えのアイディアに満ちた世界だ。それはツイート、見出し、Instagram、くだけた文章、移ろいゆく第一印象の流れだ。どんな考えも単体で整理することはなく、他のあらゆるものとの間に膨大なリンクがそこにある。真実は著者や権威によって持たさらされるのではなく、オーディエンス自身が断片を組み合わせてリアルタイムに生成するものになる。スクリーンの民は自分のコンテンツを作り自分の真実を構築する。」

    「スクリーン文化は映画の予告編のように高速で、ウィキペディアのページのように流動的でオープンなものだ。極薄のスクリーンをモニターに採用した新しいテレビやタブレットが21世紀の初頭に登場すると、書くことは伝染病のように流行し、その傾向は未だに膨れ上がっている。人々が文字を読む時間は80年代と比べてほぼ3倍になっている。2015年までにウェブには60兆ページの情報がアップされ、毎日数十億ページずつ増えている。そうしたページは誰かによって書かれたものだ。今も市井の人々がブログに毎日8,000万ページを書いている。ペンの代わりに親指を使って、世界中の若者たちがスマートフォンで毎日石物ちょっとした書き込みをしている。」

    「ページ上の文字を読むばかりでなく、今や我々は物議に浮かび上がるミュージックビデオの歌詞や、下から上へと流れていく映画のエンドロールの文字も読んでいる。アバターのやり取りの吹き出しやビデオゲームの登場物につけられたラベルをクリックし、オンラインの図形に出てくる言葉を解読する。我々のこの新しい活動は、読書と言うよりも画面で読むと呼ぶ方が正しいだろう。スクリーニングは言葉を読むばかりか、言葉を眺めたりイメージを読んだりすることが汲まれる。この新しい活動には新しい特徴があるスクリーンは常にONなのだ。本のように読み終わると言う行為は無い。」

    「かつて読む事は現代社会が大切にする読み書き能力、理性的思考、科学、公平性、法の規則といったほとんどのものを育んできた。それが全てはスクリーンで読むことでどうなってしまうのだろう?本はどうなるのか?現在では紙を束ねた本は消滅しつつある。その後に残るのは、本の概念的な構造だ。大量の記号が1つのテーマのもとに集まり時間をかけながらある経験を完成させていく。」

    「本とは実際のところ、読書中に心が赴くバーチャルな場なのだと主張する文学者もいる。それは「読書空間」とでも呼べそうな、想像力の概念的な有様だ。こうした学者によれば、読書空間に入り込んでいると、頭はスクリーンで読んでいる時とは違う働きをすると言う。神経学の研究によれば、読むことを学ぶことで、脳の回路が変化する。読書をしている状態では、人をかき集めようとせわしなく行き来するのとは違い、人は別の空間に運ばれ、集中して没入するのだ。
    ウェブでは何時間読んでいてもこうした読書空間に行き着く事は決してない。文章の断片や1連のまとまり、ちょっと何かが見えるだけだ。こうした多種多様な部分が緩く結合している、これこそがウェブの醍醐味なのだ。しかしそれを何かに閉じ込めておかないと、ゆるく結合していた部分が解けてしまい、読者の注意が拡散し、中心となる語りや議論からふらふらと外へ行ってしまう。」

    「本をモノとしてではなく、それができるすべてのプロセスだと考えてみよう。名詞ではなく動詞として考えるのだ。本は紙や文章のことではなく、「本になっていく」ものだ。それは<なっていく>のだ。考え、書き、調べ、編集し、書き直し、シェアし、ソーシャル化し、コグニファイし、アンバイルドし、マーケティングをし、さらにシェアして、スクリーンで読むことの一連の流れとなる。その流れのプロセスのどこかで本が生成されるのだ。本、特に電子本は本になっていくプロセスからできた副産物になる。」

    「読書はソーシャルになる。スクリーンに表示されることで、読んでいる本のタイトルばかりか、その本に対する反応や注釈まで視野できるようになる。今日はまだ、文章にハイライトをするだけだ。明日にはその文章にリンクをはれるようになるだろう。今読んでいる本のある言い回しから以前に読んだ本の対照的な言い回しへとリンクを貼り、ある文章にあった言葉を曖昧語辞典にリンクし、本のあるシーンを映画の中の似た場面とリンクすること事も出来る。
    気になる人物のフィードを登録することで、その人の読んでいる本のリストばかりか、書き込み、ハイライト、注釈、疑問やらちょっとした感想までを読めるようになるだろう。
    現在グッドリーズなどの本共有サイトで行われている読書クラブの質の高い議論も、本そのものの変容に続いて、ハイパーリンクによってより深く本に組み込まれていくだろう。
    そこではある人がある文章を引用したコメントすると、その文章とコメントに双方向でリンクが貼られる。ちょっとしたコメントでも、それが積もり積もれば、実際の文章にしっかり紐付いた重要なコメントのウィキ型セットができる。」

    「実際に本の間で密なハイパーリンクが貼られれば、どの本もネットワーク化したイベントになる。本の未来についての従来の考え方では、本は今も公共図書館に並べられているように、一つ一つが完結し、お互いに独立したままだとされる。どんな本も孤立することなくつながるのだ。
    ウィキペディアはもちろん百科事典だがそれを仮に一冊の巨大な本であると考えてみよう。ウィキペディアは最初のネットワーク化した本だ。
    同様にすべての本もデジタル化していけば、それぞれの文章が他の本の文章とネットワークで相互参照され、リンクを記す青い下線でいっぱいになるだろう。1冊の本のどのページからも、他のページや他の方へと飛べるようになる。そうなれば本はもはや一作ごとに閉じられたものでなく、すべての本が織り込まれた巨大なメタレベルの本になり、ユニバーサルな図書館となるだろう。シナプスのように相互につながった図書館が集合知を見出し、個別の本からは見えない世界を見せてくれる。」

    「シュメール人が粘土板に記録を残してからというもの、人類は少なくとも3億1,000万冊の本、14億の記事やエッセイ、1億8,000万の曲13兆5,000億のイメージ、33万本の映画作品、10億時間の動画やテレビ番組の短編映画、60兆の公開されたウェブページを出版してきた。現在これら全てが世界中の図書館やアーカイブに入っている。そのすべてがデジタル化されると、すべて圧縮したとしても、50ペタバイトのハードディスクが必要になる。10年前にはこれだけを収容するのに、小さな町の図書館ほどの大きさの建物が必要だった。しかし現在は、こうしたユニバーサル図書館はあなたの家の寝室に収まってしまう。明日のテクノロジーでは、それがスマートフォンのサイズにまでなるだろう。そうなったらすべての図書館をまとめた図書館が、直接あなたの脳に細い白い線でつながっていないとしても、財布の中に入っていることになるだろう。」

    「本はいったんデジタル化されると、ページ単位に解きほぐされ、さらには文章の断片にまで縮小される。そうした断片がリミックスされて違う形で順序付けられた1冊の本だったり、バーチャルな本棚になったりする。ユニバーサルでネットワーク化された図書館は、今の音楽ファンが曲をミックスして順番を変えてアルバムやプレイリストを作っているように、段落単位から本全体まで様々な文章を集めたバーチャル本棚を作るようユーザを促し、それらが特別な情報を集めた図書館の棚を形成する。そうやって音楽のプレイリストの様に本の本棚プレイリストができると、公のコモンズで発表され、交換されるようになる。断片ごとに読まれたり、ページ単位でリメイクされたりすることを前提とした本を書く作家も出てくるだろう。」

  • クリスアンダーソンさんもそうだけど、ワイヤードの人が語る未来はたまらなく未来で面白い

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著者プロフィール

現在は雑誌「Wired」の「上級一匹狼」という役職についている。1993年にWiredを共同で設立し、その創刊から1999年まで編集長を務めた。最近の著書としては、バイキング/ペンギン社から“What Technology Wants”という本を2010年10月18日に出版した。また、毎月50万人のユニークビジター(重複を除外した利用者数)があるウェブサイト「Cool Tools」の編集者兼発行人でもある。1984年から1990年まで非正統的技術情報の専門誌「Whole Earth Review」の発行人兼編集者だった。今も続くハッカーズ・カンファレンスの共同創設者であり、また、1985年に始まった先駆的なオンラインサービス 「WELL」 の設立に関与した。ベストセラーとなった書籍“New Rules for the New Economy”(邦訳『ニューエコノミー勝者の条件―ウィナー・テイク・オール時代のマーケティング10則』1999年、ダイヤモンド社)、分散化した創発的システムに関する古典的作品“Out of Control”(邦訳『「複雑系」を超えて―システムを永久進化させる9つの法則』1999年、アスキー)などの著書がある。
※ケヴィン・ケリーのブログ(http://www.kk.org/biography.php)で公開されているプロフィールを堺屋七左衛門が翻訳

「2012年 『ケヴィン・ケリー著作選集 1』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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