NATURE FIX 自然が最高の脳をつくる―最新科学でわかった創造性と幸福感の高め方

  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (392ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140817186

作品紹介・あらすじ

水と緑に触れるだけで、あなたの脳はこんなにも変化する!日本、アメリカ、フィンランドなど、世界中の最新研究をもとに徹底解明。都会でも15分で実感!!

感想・レビュー・書評

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  • タイトルの「NATURE FIX」を訳すと、「自然が回復させる」「自然が治す」となります。

    本書は、人が自然に触れたり自然を体験することによって、日々のストレスから回復することがどうやらできるようだ、ということを解説しています。そればかりか、アメリカ、日本、韓国、イギリス、フィンランド、スウェーデン、シンガポールなどの自然と人間の研究やそれらを踏まえた実践的取り組みを取材した著者の経験をまじえながら、おおよそがドキュメンタリータッチで、認知力や創造性などの向上にまで自然の効果が認められることを教えてくれるのです。

    近年、都市部に人口が集中し、2008年には世界人口の半分が都市生活者となりました。自然と疎遠になった都市生活は、人が本来発揮できるはずの認知力や創造性を押しとどめてしまっているのかもしれません。そう考えると、認知力や想像力が自然の力によって「向上する」のではなく、もともと備わっている力を「回復する」手助けになっていると考えることだってできます。

    この観点からみてみれば、都市生活というものは、人のポテンシャルを伸ばさず、そればかりか悪影響を与える度合いの高いものと思えてしまいます。異常に混雑した環境の中に猫たちを閉じ込めるとみんな横暴になりいじめが発生し、それがラットたちだと巣作りを忘れて自分の体を食べ始め、霊長類だとホルモンバランスが崩れて生殖能力が落ちたのだそうです。これらは極端に密度の高い環境での実験例なのでしょうが、人口密度の高い場所に暮らす人間たちはどうなのかを考えてみれば、あまり良い影響は受けていないのかなあという気持ちに、容易になるのではないでしょうか。

    しかしながら、各国でなされている「自然が人間に与える好影響の研究」の成果が行政の分野で取り上げられてもいます。植樹や公園の整備など都市部の緑地化に生かされ始めているのは、人の精神面への働きかけでもあるのでした。また、日本がパイオニアとなっている森林浴の分野に代表されるように、森などの深い自然で1日でも1週間でも過ごすことによって、血圧の正常化やストレスホルモンであるコルチゾールの低下などが認められるようです。

    また、女性の退役軍人たち、それもPTSDを負った女性たちが急流下りのプログラムを通じて活力を取り戻していくのですが、その取り組みについて著者自らが体験取材の模様で伝えてくれたり、ADHDの子供たちが自然で過ごすプログラムを多く取り入れた学校で過ごしながら、症状が緩和していく様子をその傍らから伝えてくれたりなどもしています。自然からの効果はまだまだ未知の部分が多いですが、それでもこれだけの強い力を深く秘めていることが示唆されるのでした。

    これら広範な内容のなかでも、自然による嗅覚での影響、聴覚での影響、視覚での影響について割かれている部分が、僕にはもっとも興味深かったです。嗅覚ではフィトンチッドと呼ばれる森の匂いの成分に効果があるという研究があり、聴覚では、鳥の鳴き声や川の流れる音による癒しの研究があり、視覚では、自然の中にみられるフラクタル(全体の形とそれを構成する部分の形が相似形であること)による癒しの研究があるというのがそれでした。これらすべてをいっしょに体験できるのが、やっぱり森林浴になるのです。

    以前、僕は4シーズンほど自然がいっぱいの観光地で働いていました。四季の移ろいがほんとうに身近に感じられるといいますか、自然と一体となって過ごしていた感があります。ウグイスが鳴き、エゾシカが草を食みにあらわれ、桜が咲き、ルピナスなどの野の花が季節ごとに咲き誇り、晴天や雷雨、暑さや寒さを、扉が開け放たれた小さな一軒家型の受付兼カフェで体験しながら働いていました。接客商売のストレスだってあるのですが、それでもやっぱり、基本的に気持ちの良い仕事でした。脳にも身体にも好かったんだと思います。比較的楽観的にモノを考えることができ、そして感情の抑制も周囲の人たちと比べてできるほうなのは、こういった影響も大きかったのかもしれないです。

    最近は屋内にいることがとても多いです。本書の内容を踏まえると、またどこか自然に溶け込めるような場所で過ごしたくなりました。車で15分くらいのところに自然公園があるので、そこに行ってみようかなという気持ちになってきます。一月に5時間、自然のなかで過ごすと効果が出るようです。みなさんもいかがですか。

  • 自然と脳の関係について。
    小説を読んでいるよう。
    結果だけを知りたい場合、不要な文書もある。
    長いが最後まで飽きずに読めた。
    この本を読んだら自然のあるところに行きたくなること間違いなし。

  • 今、わたしに必要なもの。それは自然。
    ?ヒノキの香りかも。

  • 緑に囲まれたり水辺でのんびり過ごすことが、癒しになるなぁと大人になって思います。

    自然に囲まれて育ったので、朝の小鳥のさえずりや夜の虫の音を聞くと心がまろやかになります。

    普段都会のビル群に囲まれているならば、お休みの日に敢えて自然に触れる時間を作るのも良さそうです。

    最高の脳を作ることと健康でいる事とは密接に関係があるんだなと気づかされました。

  • 自然が脳に与える影響を科学的に装置やアンケートなど実験によって立証しようとしてところがいい.
    日本は森林浴という言葉がある様に自然への回帰思考が強い.この本にもまず取り上げられている.韓国,フィンランド,スコットランドなどの取り組みも激流ラフティングによるPTSD治療など興味深かった.
    脳という謎の分野で自然の及ぼす効果,何となく感じていたことの裏付けを得た様な気がしました.

  • 1ヶ月で5時間の森林浴で心も身体も癒され、脳も免疫も自己肯定感も人間関係もよくなることがわかった。なによりも、子どもである時にクリエイティブを育み、結果として大人になった時に考え、行動できる人を育むのは自然であることを知れてよかった。
    しかし、その一方で私自身海が好きなので、海の効果を特に知りたかった。

  • 自然は人間をリラックスさせる。自然を欲する本能を満たすからこそ、行動を起こす意欲が湧き上がってくるのが脳のシステム
    マルチタスク以外の脳の部位がはたらくin自然
    マルチタスクを続けているとエネルギーが使い果たされてしまう。
    注意回復理論(しせん


    極めてシンプルな結論→できるだけ外に出ること。時には雄大な自然が広がる場所に出かけて畏怖の念を感じること。深々と自然の空気を吸うこと

    嗅覚→自然の匂い(アロマも効果あり)
    視覚→フラクタルが知覚に優しい
    聴覚→小鳥のさえずり。なるべく人工の音がない場所が良い
    気持ち→畏怖の念、リラックス効果。


    1ヶ月に5時間自然の中にいるだけです認知能力が改善する。この際、携帯電話は必ずオフで

    人生でやるべき自然に触れるリスト(ネイチャーピラミッド)は以下

    毎年:大自然に畏敬の念を抱く
    毎月:ハイキングや森林浴に出かける
    毎週:緑豊かな大きな公園、川辺でリラックス
    毎日:庭、観葉植物、街中の公園で一息つく

    今は都市に人口が大量流入する時代。よって、都市に緑を取り戻す仕組み作らなければならないだろう

    • skyfish4519さん
      ストレス状態と関連する脳の扁桃体の活性が、都市部居住者では田園部居住者よりも高い。被験者に同じ社会的ストレッサーらを与えたところ、扁桃体の反...
      ストレス状態と関連する脳の扁桃体の活性が、都市部居住者では田園部居住者よりも高い。被験者に同じ社会的ストレッサーらを与えたところ、扁桃体の反応は都市生活者の方が田舎生活者より過剰に強かったという。
      2017/08/05
    • skyfish4519さん
      実験の結果、被験者は都会にいる時より、屋外の緑豊かな場所や自然の中に身を置いている時の方が有意に、かつ確実により深い幸福感を覚えている。
      実験の結果、被験者は都会にいる時より、屋外の緑豊かな場所や自然の中に身を置いている時の方が有意に、かつ確実により深い幸福感を覚えている。
      2017/08/05
  • 長くてパワフルな、自然推しの本でした。

    別の本ですが『脳を鍛えるには運動しかない』のように、実験内容と効果が延々と書いてあり、とても勉強になります。

    自然には、ナチュラルキラー細胞が増えたり、創造性が向上したり、様々な効果があるとのことです。
    (メリットが多すぎて書ききれない)


    1ヶ月5時間の自然活動を推奨されており、この本をきっかけに、近所の公園に行く習慣を身につけようと思いました。

  • これを読むと自然があるところに行きたくなる。1ヶ月に5時間自然と触れ合うのは、すぐには難しい。都市計画にもう少し自然を取り入れてもらいたい。次に引っ越すときは大きな公園の近くに住みたい。

  • 読書の動機→自然が心身に良い影響を及ぼすのではないかという仮説を持ち、その検証のために読んだ。

    人類が誕生してきてから自然に囲まれ、守られ、自然と共生してきたのにも関わらず、現代は自然との繋がりが希薄になっているのは奇妙ではないか?

    この疑問から始まる本書は、自然が心身に良い影響を与えることを証明する(証明しようとしている)研究を紹介する。

    驚いたこと
    ・森林浴は日本発祥
    ・都心部を歩いている時と比べて森林を歩いている時では、ストレスホルモンと呼ばれているコルチゾールの値が下がる
    ・森林で過ごすことでNK細胞が増大し、それは持続する
    ・樹木が発するフィトンチッドがNK細胞に影響を与える
    ・実行、空間知覚、デフォルトネットワーク
    ・血圧が正常値に近ずく
    ・自然界にある幾何学的パターンのフラクタルは、視覚野にも見られる
    ・フィンランド国土の74%が森、人口500万人でコテージは200万個
    ・畏敬の念を覚えるには、「はてしない広がり」が必須、簡単には分類理解ができず、好奇心がかきたてられる、恐怖と謎と美が一体になった時に、記憶に焼きつく
    ・シンガポールの取り組みーバイオフィリックシティ、国土の緑地は年々増えている(2007年で47%)

    その他
    ・研究の信頼性や妥当性を保つのが難しそう

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