わたしは「セロ弾きのゴーシュ」 中村哲が本当に伝えたかったこと

著者 :
  • NHK出版
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  • Amazon.co.jp ・本 (232ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784140818794

作品紹介・あらすじ

25キロの用水路を拓き、65万人の命をつないだ医師は、何を語ったのか

2019年12月4日、アフガニスタンで銃撃されて亡くなられた医師・中村哲さん。本書は、中村さんが出演したNHK「ラジオ深夜便」の6番組より、インタビューに答えるその肉声を忠実に再現するものです。ハンセン病根絶計画から、空爆下の診療所開設と水源確保事業、そして用水路開通まで。「長年の活動の原動力は何ですか」という問いに対して、中村さんは自らを、宮沢賢治の童話の主人公「セロ弾きのゴーシュ」にたとえました。本書には、本人が執筆したらおそらく触れなかったと思われる感慨や本音が随所に表れています。自身について多くを語らなかった医師・中村哲の心の内を知ることのできる貴重な証言の記録です。

第1章 ハンセン病根絶を目指して (1996年2月22日 中村哲49歳)
第2章 もの言わぬ民の命を (2002年2月16日 中村哲55歳)
第3章 アリの這う如く (2004年6月5日 中村哲57歳)
第4章 命の水 (2005年8月20日 中村哲58歳)
第5章 難民と真珠の水 (2006年9月16日 中村哲60歳)
第6章 開通した命の用水路 (2009年12月5日 中村哲63歳)

感想・レビュー・書評

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  • ものすごく理不尽です
    こんなに貢献されている方が銃弾で命を落とされるなんて
    中村哲さんご自身は
    「これが生きて死ぬことの意味だよ」
    っておっしゃっておられるかもしれません

    いつもの整形外科の本棚からお借りしてきました

    宮沢賢治を愛しておられた哲さん

    『セロ弾きのゴーシュ』も挟まれていて
    改めて心をこめて読みました

    押しつけではなく、ただ目の前の困っている人に手をさしのべる

    世界中が紛争災害の渦

    心を平らにして暮らしていきたい
    なにかできることを……

    ≪ アフガンに 真珠の水が とうとうと ≫

  • 訃報から1年。担当編集者が綴る中村哲さんの人柄にふれた日々のこと、そして馳せる思い|本がひらく
    https://nhkbook-hiraku.com/n/n58f84ead1aa2

    アフガニスタンの復興支援に半生を捧げた中村哲医師の証言録『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」 』のカバー公開と予約開始。自伝『天、共に在り』も重版決定で累計10万部に。|株式会社NHK出版のプレスリリース
    https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000371.000018219.html

  • まさに、魂の本。

    ①たとえば、地雷でよく足を負傷しておいでになる方があります。山の中では。片足ですと、杖をつきながらでも人に迷惑をかけずに生活ができる。。ところが、両足をなくしますと、たとえ命が助かっても、これは車椅子など使える生活ではありませんので、かえって、この人が生きておるために、一家全体が破滅するということもあり得る。その場合は、私たちとしても始めから助けない。(p40)
    ☆日本はさ、どんな方法を使っても生かすのが当たり前なんだけれども、ここでは違うんだね。よかれと思ってやることが、かえって迷惑になるというか、あだになることはよくよく考えておかなければならない。ようするに、親切にすればいいってもんじゃない。

    ②たしかに、長生きするというのもいいことですが、その長生きさせてもらったこの命をどう使うかについては、何も言わない。(p42)
    ☆自分の命の使い方。ただ生かしてもらっているだけではだめ。

    ③現地でみると、さっきも言いましたが、死んでいくということを甘んじて受け入れるということは、何も、命を粗末にしていいということではなくて、逆に、生きておるというのは、自分の意志で生きているのでなくて、いかされておるという感謝の気持ちと表裏一体なんですね。
    ☆感謝して生きる。シンプルなこと。

  • 中村さんの穏やかで控え目なお人柄が伝わってくるような柔らかな語り口で、長年にわたって現地で活動した人にしか出てこない言葉が紡ぎ出されているように感じた。アフガニスタンの人々の死生観やその魅力に触れたくだり、支援をする側や先進国への一石を投じるくだりが特に印象に残った。

    「天から人への問いかけに対する応答がわたしたちの人生そのもの」は、フランクルの実存主義に通ずる。これほど偉大なことを成し遂げながら「セロ弾きのゴーシュ」に自らを重ねる中村さんの慎しさに、胸を打たれた。

  • なんだか胸がいっぱいで、うまくまとめられず。

  • 中村哲さんのアフガニスタンでの活動を知り、その興味から手に取ってみたが、ご本人の人柄や心根の優しさが伝わってくる。物凄いことをやっているのに、偉ぶるどころか信念さえを掲げるでもなく、自分の成し遂げたことを縁の一言で片付けてしまいながらも、問題点の本質を見抜き、愚直に真っ直ぐ謙虚に振る舞う。
    どうしてそういうことができるのか、もっと中村哲さんという人物を学んでみたい。

  • 国際協力を志す者からすると、中村哲さんは英雄のような人です。そんな人でも、最初から偉かった訳では無く、目の前の課題を一つずつ悩みながら解決していくことで、実積を挙げていったことがよく分かります。話している言葉がそのまま活字になっているので、親しみやすいお人柄が伝わってきます。

  • ガンジーといい中村医師と言い、尊い人がなぜ同じ人間の手で殺されてしまうのだろう。
    先生のことを知ってから、ずっとその疑問が頭の中にあります。答えは出ません。善悪や道徳で世界は回っていないということを突きつけられる心地です。
    そして、私はそんな正しくない世界に生かされているんだな、としみじみ思います。蛇口をひねれば水は飲めるし、近くの川が涸れることはない。職や家を失っても、いきなり死ぬことはありません。何より、生活の中で爆弾が落ちてくる危険はほぼ皆無。
    私は前世で何か偉大な功績でも残したのでしょうか?アフガニスタンの人は、何を対価に支払ったらこの生活ができるのでしょう?
    誰がどう見ても不公平なのに、これが現実です。
    不公平すぎて、“中村医師が殺されてしまうような歪んだ世界だからこそ、私は生きていられるのかもしれない…自分は世界の歪みの一部なのかも知れない…”そんな罪悪感のようなものが、じわりと胸に滲みます。
    (だからといって“日々の行いを正そう”的な話に帰結してしまうのは浅薄な気もしますし、アフガニスタンに生きる人々が不幸と言いたいわけではありません)
    (日本に生まれたせいで、物質的な欲望をずっと刺激され、当たり前の幸福感を奪われている…という見方もできるので)

    とりあえず、全くもって正しくはない世界ですが、私はなんの因果か今日も生かされています。
    生かされている以上、冒頭の問の答えを探し続けたいと思いました。
    おそらくそれが幸福に繋がると信じています。

    ※何気に『セロ弾きのゴーシュ』が収録されているので、再読したらゴーシュの不器用な人柄がいっそう好きになりました。華々しく評価される人よりも、隅っこを照らす人の灯りに気づける人でありたい。

  • 現地の人が何を必要としているのか、どうすることがここで生きる人達を幸せにするのか、また争いのない世の中を作るのか、継続出来るのか。
    人として、与えられた命をどう生ききるのか。

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著者プロフィール

1946年(昭和21年)福岡県生まれ。医師。PMS(平和医療団・日本)総院長/ペシャワール会現地代表。
九州大学医学部卒業。日本国内の病院勤務を経て、84年にパキスタンのペシャワールに赴任。以来、ハンセン病を中心とした貧困層の診療に携わる。87年よりアフガニスタン難民のための医療チームを結成し、山岳無医地区での診療を開始。91年よりアフガニスタン東部山岳地帯に三つの診療所を開設し、98年にはペシャワールにPMS基地病院を設立。2000年からは診療活動と同時に、大干ばつに見舞われたアフガニスタン国内の水源確保のために井戸掘削とカレーズ(地下水路)の復旧を行う。03年、「緑の大地計画」に着手、ナンガラハル州に全長27キロメートルに及ぶ灌漑用水路を建設。その後も砂嵐や洪水と闘いながら沙漠化した農地を復旧した。マグサイサイ賞「平和と国際理解部門」、福岡アジア文化賞大賞など受賞多数。19年10月にはアフガニスタン政府から名誉市民証を授与される。
2019年12月4日、アフガニスタンのジャララバードで凶弾に倒れる。
著書:『ペシャワールにて』『ダラエ・ヌールへの道』『医者 井戸を掘る』『医は国境を越えて』『医者、用水路を拓く』(以上、石風社)、『天、共に在り』『わたしは「セロ弾きのゴーシュ」』(以上、NHK出版)、『アフガン・緑の大地計画』(PMS&ペシャワール会)、『希望の一滴』(西日本新聞社)など。

「2023年 『中村哲 思索と行動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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