NHK100分de名著ブックス アンネの日記 言葉はどのようにして人を救うのか

  • NHK出版 (2022年9月24日発売)
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Amazon.co.jp ・本 / ISBN・EAN: 9784140819166

作品紹介・あらすじ

苦難の日々を支えたのは、自らが紡いだ「言葉」だった。

第二次世界大戦下の一九四二年、ドイツからオランダに一家で移り住んだアンネ・フランクは、十三歳の誕生日に父親から贈られた日記帳に、思春期の揺れる心情と「隠れ家」での困窮生活の実情を彩り豊かに綴った。そこに記された「文学」と呼ぶにふさわしい表現と言葉は、コロナ禍に見舞われ、戦争を目の当たりにした私たちに静かな勇気と確かな希望を与えてくれる。

【以下「はじめに」より】
本書では、『アンネの日記』が本来持っている文学的な豊かさについて、真正面から考えてみたいと思います。思春期の少女が、なにを考え、それをどのように表現したのか。ここにはみずみずしい青春の息吹がみなぎっています。(略)これほどリアルな少女の声が胸に響いてくる文学を、わたしは他に知りません。

みんなの感想まとめ

苦難の中で言葉を紡いだ少女の物語は、ただの悲劇ではなく、深い文学的価値を持っています。『アンネの日記』を新たに読み解くことで、思春期の揺れ動く心情や、困難な状況下での自己肯定感、ユーモアを忘れない姿勢...

感想・レビュー・書評

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  •  『アンネの日記』は、ほぼ強制収容所に送られた悲劇の少女の話として、曖昧な記憶の中にあります。
     しかし、「世界記憶遺産」「世界で最も読まれた10冊」として有名な『アンネの日記』を、あまりにも狭く浅い読み方をしていたなと、愕然としました。

     小川洋子さんに、単なる暗く可哀想なだけの話ではない優れた文学で、作家を目指す原点とまで言わしめた『アンネの日記』。小川さんの分かりやすい文章は全て腑に落ち、『アンネの日記』と出会い直すきっかけをいただいた気がします。
     特に、「架空の友人に宛てて書く構図をとり、客観的な視点を確立したことで、この日記は文学にまで昇華した」というくだりが、胸深く刺さりました。

     本書は、10年前のTV放送時のテキストを底本とし加筆・修正、特別章等を追加、NHK「100分de名著」ブックスとして2022年に刊行されました。
     改めて、13〜15歳の少女の生の声やその瑞々しい息遣いに、そして決して絶望せず、強い自己肯定感にあふれ、悲惨な状況下でユーモア精神を保っていた様子など、感心することばかりです。

     『アンネの日記』がもつ奥深い世界‥‥この中に、困難な時代を生き延びていくヒントが隠されていそうです。再読の覚悟以上に、私的には、小川洋子さんの解説文章に陶酔してしまった感があります。
     あまりの名解説ぶりに、日記そのものはもちろん、中学生に本書を読んでほしいと切に願います。

     この機会と思い、NHKオンデマンドにて『100分de名著』 25分×4回分の番組を視聴してみました。巧みな構成と演出でアンネの実像に見事に迫っています。
     伊集院光・武内陶子の司会、満島ひかりの朗読、アニメーションの活用等もよかったのですが、やはり講師の小川さんが、付箋だらけのご自分の『アンネの日記』を脇に置き、慈しむようにアンネを語る生の声に、引き込まれました。

    ※本書に今年巡り会ったのは偶然でしょうか‥‥
     1944 アンネ最後の日記(80年前)
     1994 小川洋子さんアンネを辿る旅(30年前)
     2014 NHK 「100分de名著」で、「アンネの日記」放送
        (10年前)
     2024 (勝手に運命を感じ)本書読了・番組視聴

    • けよしさん
      本とコさん
      こんばんは♪

      ご紹介いただき、ありがとうございます。
      この日記は文学にまで昇華した、にとてもひかれました。
      わたしも...
      本とコさん
      こんばんは♪

      ご紹介いただき、ありがとうございます。
      この日記は文学にまで昇華した、にとてもひかれました。
      わたしもぜひ読みたいと思います(^^)/
      2024/09/25
    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      けよしさん、こんばんは♪
      コメントありがとうございます!
      『アンネの日記』の名作たる価値を探り、さらに
      高めた小川洋子さんの功績は大きいと思...
      けよしさん、こんばんは♪
      コメントありがとうございます!
      『アンネの日記』の名作たる価値を探り、さらに
      高めた小川洋子さんの功績は大きいと思いました。
      2024/09/25
  •  「NHK100分de名著」で作家の小川洋子さんが解説され、まとめられたものです。解説というか、小川さんの『アンネの日記』への熱い思いがあふれた本でした。
     小川さんは『アンネの日記』には、文章の奥に宝石があると書かれています。その宝石は掘っても掘っても尽きることがないと。
     ご自分が「死の床についてもなお、この一冊は手の届く場所に置かれれるでしょう。」とも書かれていました。

     本書は、本とコさんのレビューで知りました。ありがとうございます。
     本とコさんが、胸に深く刺さったと書かれて、引用されている小川さんの文章「日記は文学にまで昇華した」に、わたしは強く惹かれました。
     わたしは「文学」がイマイチよくわかりませんが、知りたい気持ちがあるからでしょう。
     「昇華」とは、文学でないものが文学に状態変化することなのでしょうか。それが起きたことに驚きました。

     小川さんの文章を読むと、わたしは書名を知っているだけで、『アンネの日記』の本当のことは何も知らなかったことがよくわかりました。
     わたしはただ、ナチスの理不尽なユダヤ人迫害の犠牲となった少女の、辛く暗い悲しい話であり、その日々を「記録」した日記だと思っていました。
     しかし、小川さんは、悲劇的な状況は事実としてありながらも、『アンネの日記』はそれだけではないといいます。

     アンネは日記を書き始めて約1ヶ月後、自由が制限された隠れ家生活に入ります。その時、アンネはまさに思春期をむかえ、心と体が大きく変化し、両親との関係も微妙に。そして、隠れ家の外ではナチスによる死の恐怖がありました。このような、何重もの困難な状況に彼女は直面していたのです。
     このような何重もの困難のため、隠れ家のなかでアンネは、のんきな普通の少女から、否が応でも大人になってゆきます。
     それとともに、リアルタイムで記された彼女の日記は、気楽な少女の日記から、自らを救うための文学作品に変わっていった、と小川さんは述べられています。
     本書にも載っていますが、アンネの写真は、すべて隠れ家に入る前のものだそうです。隠れ家を出ざる終えなかったときの彼女の姿はどんなだったのでしょうか。この事実に胸が痛みます。
     本書を読んで、作家アンネ・フランクルと文学作品『アンネの日記』が生まれたことは歴史的奇跡とも呼べるようなものであったと感じました。

     わたしも小川さんの熱いメッセージにふれ、アンネの「声を聴き」たいと思いました。
     ブクログを始めたわたしが、まさか『アンネの日記』を読もうと思う日がくるとは、自分でもびっくりです。

    • NO Book & Coffee  NO LIFEさん
      けよしさん、こんばんは♪
      レビューの温かな文章を拝読し、また感動が
      呼び起こされました。ありがとうございます(^^)
      けよしさん、こんばんは♪
      レビューの温かな文章を拝読し、また感動が
      呼び起こされました。ありがとうございます(^^)
      2024/10/30
    • けよしさん
      本とコさん
      コメントありがとうございます!

      すばらしいレビューのおかげで、よい読書ができました。本当にありがとうございます。アンネを知り、...
      本とコさん
      コメントありがとうございます!

      すばらしいレビューのおかげで、よい読書ができました。本当にありがとうございます。アンネを知り、また読書の幅が広がって、一歩すすめます。
      \(^o^)/
      2024/11/01
    • けよしさん
      本とコさん
      コメントありがとうございます!

      すばらしいレビューのおかげで、よい読書ができました。本当にありがとうございます。アンネを知り、...
      本とコさん
      コメントありがとうございます!

      すばらしいレビューのおかげで、よい読書ができました。本当にありがとうございます。アンネを知り、また読書の幅が広がって、一歩すすめます。
      \(^o^)/
      2024/11/01
  • 言葉は、人の心を救い、生きる支えになるもの
    そのことを強く感じた
    アンネにとって隠れ家での生活は、不安と恐怖に満ちた毎日だった
    その中で日記は、誰にも言えない本音を打ち明けられる大切な存在であり、アンネの心を救っていたのだと思う
    ユーモアを忘れず、時には厳しい言葉で感情をあらわすアンネの姿から、彼女が必死に生きていたことが伝わってきた
    また、反抗期の影響で母親とうまくいかなかったことなど、人間らしい一面を知ることができた

     私はアンネの話は知っていたが、実際に日記をきちんと読んだことがあったのだろうかと考えさせられた
    アンネが日記を書き残したからこそ、私たちは彼女の気持ちを知ることができる
    しかし、姉のマルゴーや、隠れ家で共に生活していたペーターが日記を書いていなかったため、彼らの思いは分からない。そのことから、言葉として残すことの大切さを感じた

     アンネは「わたしの望みは、死んでからもなお生きつづけること」と書いている
    この言葉を読んだとき、私はアンネが自分の未来を予言していたのではないかと不思議に思った
    収容所では日記を書くこともできず、どれほど苦しかったのだろうか
    しかし、アンネの日記は今も世界中で読まれ、彼女の言葉は生き続けている
    アンネの日記は、言葉が人を救い、そして人を死後も生かし続ける力を持っていることを教えてくれた

  • <感想>
    世界で最も有名な日記といえば「アンネの日記」私の『アンネの日記』との出会いは小学生の夏休み。「戦争」について知るの宿題から。
    p.109「わたしの望みは、死んでからもなお生きつづけること!1944.4.5)」
    2023年の今もなお、アンネ・フランクさんは生き続けている。
    戦争について取り上げた作品はいろいろあるが、私にとっては『海からとどいたプレゼント (現代の創作児童文学) 上崎 美恵子 (著), 笠原 美子も記憶に残る。
    ちなみにこの作者、小川洋子さんの作品との出会いは『妊娠カレンダー』が芥川賞受賞で人気だった頃。姉が購入したのを借りました。
    p.07「優れた文学は必ず待っていてくれる」
    新たな物語との出会いはもちろん、再読するとその時に初めて気づかされることがたくさんあります。その時、自分に必要な言葉を物語は投げかけてくれます。もし、おもしろくないと感じたら、今はその時ではなかったのでしょう。いつかその時が来るのかもしれないと待つのも物語を読む醍醐味の一つかもしれないと思いました。
    p.16「言葉は心を外に放つ「通路」」
    「紙は人間よりも辛抱づよい」
    心の内に抱えている限り、もやもやと渦を巻き、袋小路に陥ってしまうだけの感情も、言葉にして紙に書き付けることで、外に放つための「通路」ができる。不自由ななかで自由を得る方法が書くことである。
    まさに、そうだと思う。とはいえ、
     自分の感情を出すことの大事さ。モヤモヤ感。コミニュケーションが上手くいかないとき、自分の感情にラベル化ができない人も多い。そのちょっとしたコツが分からないと困る人。言葉を紡ぐことは大事だがこれが難しいと言われている。
    「考える力」「感じる力」「想像する力」「表す力」が低下し、感情ラベリングが難しい人も多い。もちろん、コロナ禍での対面コミュニケーションが減ったこともあるが、「コミニュケーション手段が便利になればなるほど、そのあいまいさを了解し合う能力が減退」ということが問題だと再認識した。
    一方、他者とつながる方向を優先して、
    自己の内面をおざなりにしてしまっていることも多い。孤独を恐れず、自己の内面へ深く降りて行く方向への旅が必要であり、その旅の同伴者となるのが言葉であること。
    紙とペン、ささやかなもので自分と向き合う時間をとってみることが大事だと思った。
    本文P.129に
    「外界との接触を断たれる苦悩」
    「パンデミックを経験したいまだからこそ、現代の我々とは比べものにならない、理不尽で徹底的な孤立と向き合う彼女の言葉を、より深いところで受け止められるのではないか。」
    P.132
    「明日の命の保証もない状況であるにもかかわらず、何かを学ぼうとする。そんな尊い力が人間にあることを、彼らは証明してくれます。」
    とあった。今、このときだからこそ『アンネの日記』を再読する時期だと思った。

    先日の国語世論調査の記事に、
    新語は柔軟に受け入れつつ言葉の使い方には気を配る。そうした風潮が見えてきた。
    広がるSNS(交流サイト)など言葉を取り巻く環境は大きく変化している。文化や心のよりどころとなる日本語を大切にしながら未来につなぎたい。(中略)
    一方で注目したいのが、国語への意識だ。普段「言葉の使い方に気を使っている」とした人は全体の8割を超えた。世代間でその割合に大きな差はなかった。内容を聞くと、「改まった場で、ふさわしい言葉遣いをする」「敬語を適切に使う」「差別や嫌がらせ(ハラスメント)と受け取られかねない発言をしない」の順に高かった。敬語や丁寧語を場や相手を尊重して使い分ける日本語の豊かな特性が根付いている証拠だ。ハラスメント問題や、ネット上での発言がときに摩擦を生むことへの警戒心もうかがえた。(中略)
    言葉は生き物だ。枝葉は伸びるが、幹は揺らがない。そんな日本語を大切にしたい。
    とあった。

    言葉や学びは尊厳を守る、私を人間たらしめるものだ。
    めまぐるしい情報化社会の中で、柔軟さまでも求められるのかと、置いてけぼり感、息切れすると記事を読んで思った。
    私自身は、他者とのかかわりも大事だが、今、自分と向き合うこと、その孤独の時間を大事にしたいと思った。

    とりあえず、日記を書いてみようか。

    <本文で気になった文章>
    感想と重複している部分があります。
    p.07「優れた文学は必ず待っていてくれる」
    p.16「言葉は心を外に放つ「通路」」
    「紙は人間よりも辛抱づよい」
    心の内に抱えている限り、もやもやと渦を巻き、袋小路に陥ってしまうだけの感情も、言葉にして紙に書き付けることで、外に放つための「通路」ができる。
    p.034「誰かのために語るということは、物語の原点に他なりません。」
    「客観的な視点を確率したことで、この日記は文学にまで昇華したのです。」
    p.54「人間が持つ善と悪の両方の部分を見極めた上で、批判を展開してるのです。だからこそ、彼女の批評は独りよがりではなく、信頼に足るものになっているのではないでしょうか。」
    p.58「自我を確立し、不完全な大人としての親を受け入れ、自分もまた不完全なまま成長していくのだ、と認めることができたのです。」
    p.61-62 父 オットーの道しるべとなる詩
    「自分の欠点は小さく見えるものだ、
    だから他人の欠点は批判しやすい、
    他人のそれは二倍にも大きく見えるものだから。
    どうかわれわれを、おまえの両親を、広い心で見てほしい、
    これでもおまえを公平に、共感をもって判断しようといしているのだから。」
    p.68「上質な文学には、ユーモアがあります。真理を描くとき、そこに必ずユーモアが生まれます。」
    「アンネは隠れ家生活自体を、「ロマンティックな、おもしろいものと見なしてさえきました。けっして絶望しない力―。自己憐憫には陥らず、自分を徹底的に肯定していく力。それこそが、悲惨な状況のなかでのユーモアを見出す力にもなっています。」
    P.93
    「日記に対する感受性」
    「アンネはそれまでも「日記の辛抱づよさ」に何度も救われてきました。紙に思いをぶつけることで、外界との通路を開いてきたのです。」
    「不自由ななかで自由を得る方法が書くことである」
    p.109「わたしの望みは、死んでからもなお生きつづけること!
    1944.4.5)」
    p.110
    「ミープはアンネの精神の象徴である日記と、肉体の象徴である化粧ケープ、そのふたつを救い出したのだと感じました。フランク一家と本当に深く通じ合い、命を賭けて付き合った関係だからこそ、混乱の中でも真に大切なものを見極められたのだと思います。」
    p.116 紙に書かれた日記の強さ
    「ひとりの少女が決して生きる希望を失わずに、懸命に紙に書き残した言葉は、ごまかすことのできない強さと重みを持っています。」
    p.117「長い歴史の年表においては、ナチスの台頭と衰退は、数行の記述でまとめられるかもしれません。しかし、その数行に、人間の濃密な生が、いくつもいくつも積み重なっている。一人ひとりかけがえのない人生が展開され、それがやがて私たちの人生へと続いていく-。日記はそういう真理を教えてくれます。」
    p.118「数の多さに思考停止に陥ってしまいそうなとき、アンネという人間を知っていれば、ここでたくさんの「アンネたち」が奪われたのだと考えられるようになります。
    思考と止めなくて済む。数字を生きた人間としてとらえることができる。」
    P.119物語の役割
    「語る側は、体験を言葉にすることによって、抱えていた重荷を軽くします。聴く側は、自分では経験していない、怖くて苦しいことを想像力のなかで咀嚼します。」
    P.120「物語は理屈から人間を解き放ってくれるのです。」
    「トゲトゲした現実の棘の先をけずり、なめらかにしていく行為。心の内にどうしても留めておかなければならない現実があるとしたら、その棘が心のひだをつき破らないようにすること-それが「物語化」という作業だと思います。」
    「押し潰されそうに耐え難い、大きな岩石のような苦しみが、言葉というかたちをとることで頭の上から足元へと移動し、重荷から、その人自身の土台へと変わる。悲しみや苦しみはけっして消えないけれども、置き場所を変えることはできる、という発言でした」
    「ホロコーストのような厳しい体験の場合、物語化する力こそがその人を救う」
    「日記を書くという行為を通して現実を物語化し、なんとか心の均衡を保ってきたのです。」
    「自分を表現する方法は他にいくらでもあります。」「言葉の力によって無限の自由を獲得していったのです。」
    「言葉が、実用的な情報伝達のためだけの道具ではないと知っていました。言葉は、嘘をつくこともできます。あるいはこの世にないことも生み出すこともできる。ここにないことを、あたかもありかのように感じさせるのに、言葉はとても有用です。こうした本質的な言葉の役割を、彼女は早くから十分に理解していたのだと思います。」
    P.122 言葉に向き合い、自分を獲得する
    「現代社会では劇的に道具が発展し、言葉と人間の関わり方もおのずと変化せざるを得ない状況です。人は文字そのものだけをやりとししているのではなく、それがまとう、もっとあいまいで広い範囲の意味合いをも含めて理解し合おうとします。ところが、メールやラインやツイッターなど、コミニュケーション手段が便利になればなるほど、そのあいまいさを了解し合う能力が減退しているように感じられてなりません。
    「インターネットに接続しない言葉に、現代の人々はどれくらい向き合っているでしょうか」
    P.123
    「ノートに文字を書きつけるという行為は、本当に孤独なものです。」
    「孤独であることを「まるで、つばさを切られて飛べない小鳥が、真っ暗闇のなかでばたばた籠にぶつかってるみたい」と表現したりもしています。」
    「真空にぽつんと取り残された、翼を切られた小鳥のごとき孤独のなかで、自分とは何者かという問題をつきつめて考えていく」」
    「誰ともつながらない紙の日記と向き合い、言葉の持つ真の力を自分のものにしていったのです。」
    「紙とペン-。そしてそれが生み出す、さまざまな「物語」。」
    「一見無力な、このささやかなものたちが、人間の精神を救うこともあるのだ」
    P.124「他者とつながる方向ばかりではなく、孤独を恐れず、自己の内面へ深く降りて行く方向への旅、人にはどうしても必要です。その旅の同伴者となるのが言葉です。」
    P.129
    「外界との接触を断たれる苦悩」
    「パンデミックを経験したいまだからこそ、現代の我々とは比べものにならない、理不尽で徹底的な孤立と向き合う彼女の言葉を、より深いところで受け止められるのではないか。」
    P.132
    「明日の命の保証もない状況であるにもかかわらず、何かを学ぼうとする。そんな尊い力が人間にあることを、彼らは証明してくれます。」
    P.133
    「学ぶという行為は、彼らにとって外の世界とつながるための、数少ない手段だったのかもしれません。あるいは未来との約束だった、と言い換えてもいいでしょう。未来があると信じるからこそ、学ぶ意味を見出せたのです。」
    「学ぶ自由を奪うのは、髪の毛や名前を奪うのと同じです。その人がその人である本質をももぎ取る。未来を奪う。つまりは死をもたらすのです。」
    P.137
    「差別される女性の側から抗議を申し立てる態度ではなく、男女の違いを認め合い、尊重し合う精神を求めている点です。社会の制度だけでは足りない、結局は人間の心の問題なのだ」
    高い描写力
    「家族の愛情や支援者たちの勇気に、人間の善を確信していました。世界は、死んでからもなお生き続けるにふさわしいのと、信じていたのです。」
    アンネの物語る力
    「日記においても、現実の体験と描写の間に的確な距離を取りながら、冷静な観察眼を持って表現しています。」
    P.145
    文学の言葉が人間の尊厳を守る
    「肉体的な苦痛を超越した、人間だけが持つ精神の喜びを伝えてくれるにふさわしい力を、持っていたのです。」
    P.148
    「どんなに社会や文明や人間の意識が変化しようと、その時、その時、読者が必要としている何かを差し出すことができます。読者のほうが、文章の奥に潜んでいる宝石を発見するのです。すぐれた文学は、掘り起こしても掘り起こしても尽きない宝石を、隠し持っているのでしょう。」
    「作者よりもずっと長生きする力を持ち、どんな状況にあっても人間らしさを呼び覚ます。」

  • アンネの日記を小川洋子さんの視点から解説してくれている本。
    大体のことを「へぇ〜」と「ふぅん」で右から左へ受け流す傾向があり、そんな薄っぺらな自分を変えたいけれど、「感性」なんてコントロールしようと思って出来るものでもなく、自分の人としての浅さを残念に思ってしまう。私のような底の浅い皆さん!そんな人たちに是非読んでほしい。
    アンネの日記の一節が、小川洋子さんの感性を通すとこんなに広がっていくものかと驚き感心してしまう。同じ本を読んでも人によってこんなに得るものが違うのかと惨めな気持ちにもなる。(小川洋子と比べるなという話ですが)。
    自分だけでは物語の世界をここまで広げられないので、本の読み方指南書的な位置付けとして良い本だと思う。

    小川さんが、隠れ家同居人のペーターの心境に心を寄せているところと、「アンネは日記を書くことで苦しい現実を物語化し、なんとか心の均衡を保ってきた」という解説が心に刺さった。
    小川洋子さんの美しい言葉選びと豊かな感性に、熱烈なファンがいる理由が少しわかった気がする(すみません今ごろ…)

  • とても良い本だった。
    2ヶ月前にオランダ・アムステルダムへ行き、アンネ・フランクについて触れたことをきっかけに、帰国してからホロコーストについての本・映画・ドラマ・ネット記事を読んだり見たりし続けている。アンネの日記をきちんと読む前にこの本を手に取った私ですが、読む前でも読んだ後でも楽しめる1冊だと思う。アンネの日記に惹かれ人生を通して助けられてきた小説家が、あの日記に対しての尊敬の念と愛情をたっぷりこめて紹介し解説してくれて、読んでいてとても楽しかった。

  • 私も読んで触れてみたかった…!

    閉塞感ある隠れ屋の中でも
    生きる希望を失わず 真っ直ぐに
    世界を観ていたアンネ

    アンネから観た世界はどのように
    映っていたんだろう…

    8月中に1冊は 戦争の作品に触れてみようと思い
    今年はこちらの作品を読むことに決めました



    あの時代 あの限られた人たちの中で
    日記を通して 少女から大人へと
    成長していったアンネ

    日記で綴った自分自身の言葉に
    時には励まされながら
    決してユーモアを忘れなかったアンネ



    小川洋子さんの感性で 抜粋された
    アンネの日記の言葉に何度もウルウル…
    私も自分自身を見つめるきっかけになりました

    この本に出会えたことに感謝です!!

  • 10代の少女の文章から伝わる、生活とそのときの空気。
    文学の力。
    読み返すほどに深まる、戦争というものの恐ろしさと、どんな困難な最中にあっても文学や学びを求める気持ちや、人が人を守ろうとする姿。

    人の尊厳や、尊厳を守るということについて深く考えさせられる一冊でした。

  • 自分の置かれた状況がどうにもならない時に、文章や言葉にすることで、思わぬ気付きや救われることがあるのだと思いました。
    アンネの感性の豊かさに敬服です。

  • ◆自分の人生にとって一大事が起きている最中にも、自分以外の世界を観察している。

    ◆日記と向かい合ったとき、彼女は大人になったのです。「言葉を探す」という作業が、彼女を年齢以上に成長させたのだと思います。

    ◆真理を描くとき、そこに必ずユーモアが生まれます。人間が一生懸命に生きている姿は、やはりほはえましい。

    ◆隠れ家にあって肉体的には外へ行けないぶん、観察と考察の対象は自分へと向かいます。内側へずっと深く降りていく。逆にいえばこの環境が、彼女を普通の女の子より早く大人にさせたのだと思います。

    ◆彼女たちは隠れ家で徹底的に静かな生活を余儀なくされていたにもかかわらず、静謐さが貴重だという。外に出て思いっきり走り回りたい欲望より、ペーターと二人、無言で自然の光を静かに浴びる喜びの方が勝ると感じているのです。

    ◆ペーターは恋をしてどんどん視野がアンネだけに集中します。一方アンネはむしろ視野が広がり、さまざまなことが見えてくる。

    ◆ペーターも、アンネと同様、生き延びるために急いで大人になったのです。

    ◆不自由な中で自由を得る方法が書くことであるーー。

  • 『アンネの日記』は歴史の授業で習ったりと存在は知っていましたが内容までは全く知りませんでした。最初の入り口として分かりやすそうな本書を手に取りました。
    10代とは思えない、大人も舌を巻く文章力や表現力、何より人生の価値観がありありと溢れている内容だと言うことがわかりました。
    好きな言葉は本書のp105に出てくる、
    「じっさい自分でも不思議なのは、わたしがいまだに、理想のすべてを捨て去ってはいないという事実です。(中略)いまでも信じているからです―たとえいやなことばかりでも、人間の本性はやっぱり善なのだということを。」
    というアンネの言葉です。差別的な扱いを受け、学校にも通いたくても通えない、隠れ家生活を余儀なくされる、そんな原因を作ったのはまごうことなきナチスドイツ軍なのに、同じ人間なのに、そんな相手にも性善説を信じて希望を見出だしているのが、アンネのすごい所だと思います。

    そんな『アンネの日記』の魅力を私に教えてくれたのは100de名著を記した小川洋子さんです。まとめ方や伝え方がとても分かりやすかったです。
    いつか、完全版を読んでみようと思います。

  • 100分de名著をたくさん読む。を目標にしました。記念すべき一冊目。
    原書は有名だけど読んだことないし、けっこうネガティブな評判を聞いていたこともあり、読もうという気持ちもなく。。

    泣きました。号泣。
    いろいろ考えさせられたけど、感銘を特に受けたのは、迫害を受けている中でもユダヤ人たちがなにかを学ぼうとする、その尊い力。
    大人から子供まで、未来があると信じて学ぶ意味を見出し外の世界とつながろうとする。
    ユダヤ人が優秀で成功者が多いその一端を見た気がしました。

  • すばらしかった

    「紙は人間よりも辛抱強い」
    言葉は心を外に放つ通路

    ことばは、希望あり光であり宝

  • アンネは自分と年が近いので共感する部分が多かった。時代が違えば彼女は幸せになってただろうと思うと切ない。

  • 辛かった時期に読みたかった。言葉にすることで人はこんなにも救われるのだということを、希望が持てるのだということを、もっと早く知りたかった。

  • 小川洋子さんの拠り所のような本である「アンネの日記」
    「アンネの日記」はまだ人生で完読してないので、こちらを読んでみた。アンネが日記を書くことを通して自分を客観的に捉えていたり、過酷な状況下でもユーモアを交えて文章を書いている早熟さを感じた。

  • 小川洋子さんの綺麗な文章で世界的有名なアンネの日記について文学的な視点から説明していて非常にためになる解説本であった。

  • 知ってるけど読んだことのない、アンネの日記。

    読んだあと、今世界で起こっている戦争を思うと、複雑な気持ちになった。

    自分は同じ場合に、こう強くあれるか、とも思う。

  • 小川洋子さんといえばアンネの日記。
    時代背景も踏まえて日記の記述を紐解きながら、アンネ・フランクという一人の才能ある少女が生きた軌跡を丁寧に追う作品。
    久しぶりにアンネの日記の文章に触れたけど、大人になってから読むと確かに印象が違うなあと感じたので改めて読み返したくなったし、ホロコースト文学にも興味を抱いた。
    当時の時代背景についても平易なことばで簡潔に分かりやすく説明されており、小川洋子さんのさすがの文章力を感じる。
    これ、NHKの番組として放送されてたということ?観たかった………!!

  • 邦語訳も素晴らしいのかも知れませんが、15歳のアンネのイキイキとした表現、時にドキッとする文学表現は正に名作です!

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著者プロフィール

1962年、岡山市生まれ。88年、「揚羽蝶が壊れる時」により海燕新人文学賞、91年、「妊娠カレンダー」により芥川賞を受賞。『博士の愛した数式』で読売文学賞及び本屋大賞、『ブラフマンの埋葬』で泉鏡花文学賞、『ミーナの行進』で谷崎潤一郎賞、『ことり』で芸術選奨文部科学大臣賞受賞。その他の小説作品に『猫を抱いて象と泳ぐ』『琥珀のまたたき』『約束された移動』などがある。

「2023年 『川端康成の話をしようじゃないか』 で使われていた紹介文から引用しています。」

小川洋子の作品

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