- Amazon.co.jp ・本 (246ページ)
- / ISBN・EAN: 9784140881996
作品紹介・あらすじ
北海道にある浦河べてるの家。統合失調症などを抱える人たちが暮らす共同体だ。最近べてるの家では、自分の病気を自分で研究する「当事者研究」が盛ん。「幻聴さん」と一緒に暮らし思いが極まれば「爆発」する。そんな自分を「研究」してみると、いつもの苦労や絶望のお蔭で、何だか自分の助け方がわかるように思えるから不思議だね。弱いから虚しいから、絶望の裏返しの希望を見晴かせる。逆転の人生哲学の「爆発」だ。
感想・レビュー・書評
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半分は向谷地さんたちがなぜ当事者研究を始めたのか、その経緯と方法について。残りの半分は実際の当事者研究の内容。残りについては飛ばさせてもらった。
いかに自分たちがよく生きるか、そのために常識に囚われないよう徹底しているか、よくわかる内容だった。
弱さの情報公開という概念は、常識を大きく覆す考えだ。生きて行く上で順調に問題にぶつかっていって、そのときには人に頼れば良い。生活の知恵を教えあうように、よく生きるためのノウハウを発信して共有していく。
同じように、自分だけでは決めない、といった態度も、人との繋がりがあった上でこそ、人は力を発揮できるという考え方が元になっている。孤独は無力なのだ。
当事者研究は相当やり込んでいるなという印象を受けた。なぜなら、自分の病状を自分の言葉で語ることができているからだ。そこまで話せたらもう治っているかそうでないかわからないレベルだ。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
外在化の重要性。
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べてるの家での当事者研究は、
たぶんエンカウンターとかユングとかに興味ある人は、
やらざるおえないものだなと思った。
世間では障害者って括ってるけれど、
実は同じ症状って少なからず人生の中であって、
その移行がスムーズにいったか、ちょっと手間取ったか、それだけのちがいなのかなと思った。
つまり、大きく「人間の生成」とか「人間の発達」みたいな面から見れば、障害者も健常者も変わらないと思う。というか、この本からすれば、僕は「人格障害系」だということになる。
●以下引用
不安や悩みを回避して生きることが、決して安心をもたらさない
幻聴は時としてさまざまな不快でつらい体験をもたらすが、一方では、先にも述べたようにわたしたちが依存している
精神障害を抱えて生きる苦労をくり返す当事者の最大のテーマは、自分を知ること。それは想像以上に苦しさを伴います
人に心配され、保護され、管理される人生ではなく、自分らしい苦労が全うされる人生
生きづらさの中心テーマに、人からどう見られるかという人の評価への依存問題が、ある
問題探しをして、改善しようとするのではなく、人を信じるシステム、人を活かすシステム。他者の評価からの自立
精神障害というのはいわゆる心の病といわれるのですが、むしろ健康的な人が多い
信じることの先取り。計画的に順序良く物事を進めることに依存しない。臨機応変です。決めたこと。思ったことに執着しない
人は老いて怜悧になるのではない。情感が衰え自己を統制しやすくなるのだ
真実な人間とは自己の青春を終えることのできない人間
自分自身が最も力を発揮できるのは、無力を受け容れ、こだわりや囚われの気持ちから解放され、自分自身とのゆるやかな信頼を取り戻すことができたとき
チック=自分を殺して周りに適応する苦しみ
人格障害系ー一見、社会から逸脱し、適応しようとしない人のように思われるが、実は周囲の環境に懸命に適応しようとしている。自己否定による適応に陥りがち。
感情の抹殺。自分の感情をいちいちキャッチしていたら生きていけなかった
カメレオン的行為の繰り返し、自身が見えなくなっていく。相手のことを理解するのが役割であるかのように、何とか相手の波長を察知しようと努力する -
内容としては,「当事者研究」の続編的な内容です。
なぜ,当事者研究が始まったのかについて,べてるの家の始まりからのエピソードや,向谷地さんの幼少期のエピソードなども含めて紹介されています。
これを読むと,なるほど,当事者研究が生まれてきた訳はそうだったのかということが分かります。
あと,当事者研究の方法や具体的な当事者研究の内容,話し合いの内容などが紹介されています。 -
途中途中で、精神疾患の現実を知れる面白い章があるけど全体的に見ると少し読みづらい文章だったからこの評価。同筆者のべてるの家から吹く風はとても面白かったから、期待値が高かったのかもしれない。もう少しswの援助技術の話を聞きたかった。
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自由な闊達な語りが繰り広げられていれば病気は病気でなくなるような気がする。不思議な居場所だ。
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精神病に対するアプローチとして個人の治療からではなく病気のままでも社会との接点を見出すことに重点を置いた活動の紹介である。精神を患っている人向けの人間関係の理想的な築き方として「人間関係を使い捨てる」という手段。なかなかに有効である。また過度に期待されない工夫など健常者にとっても社会的サポートの面でヒントになる。
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各々の、一つ一つ極限の大変な事象、事件、病気、症状等が語られているのに、読み手にも伝わる、どんどん明るく開放的になっていく当事者研究って何?。必要なことは、こんなにどうしようもない人間だけど一生付き合っていくわけだから、まずはこの自分自身をこのままで大好きになっていくこと、まずは本当に自分を大切に気遣って信頼していくことではないかな。「安心して絶望できる人生」という題名がスゴイ。これって自分は勿論、周りの人々、環境、社会等への最終的な信頼感、肯定感があって初めて言える言葉ではないか。本の帯に述べられていることがよく分かる。…「精神病を抱えた人たちが、自分で自分の助け方を見つける浦河べてるの家。今日も順調に問題だらけだ!」「病気なのに心が健康になってきた。」…
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2014、1、26
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以前から気になっていたべてるのことについて少しわかってきた。従来の精神医学とは違う、新しい視点が提示されている。病気を治さないスタンスです。
当事者研究の章はとてもリアリティーがあり、端から見たら意味不明な行動のメカニズムが伝わってきました。
でもやっぱり、ここでの普通がどんなものなのか、よくわからないという気持ちもある。
私にとっては、べてるの活動を知ることはとても意味あることだと思うので、理解を深めていきたいものですね
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